アルグリア戦記(改訂版) 作:にぇにょ
プロローグ
『アルグリア戦記』……俺がこよなく愛するラノベのタイトルである。
内容は重い過去を抱えた主人公が、学園からの長い時間を通して大人になり、内乱の中で新たな陣営として戦いを繰り広げる。
と言う、まぁ結構長い物語で、全部で五十巻以上は超えている。
主にいくつかの部に分かれており、学園編から始まって、一、二、三年生編、そして卒業直後の内乱編。
仲間を集めて戦いを繰り広げる中で、主人公は自分の力に目覚めた始める覚醒編。
そして内乱を終わりに導く終末戦争編。
他に色々あるが、主な部はこんなところだ。
特に好きなのは最初期の学園編だが……それについては置いといて。
そのラノベが一体どうしたのか、と言う話だが。
「助けてくれるとありがたいなー……なんちゃって……あはは……」
「……ラノベの世界が外から転生してきた奴らに改悪されそうだから、原作通りに進行させて欲しい、と」
俺は今、女神を名乗る謎の存在によって、その世界へと転生させられそうになっていた。
しかもその理由が、他の転生者に手によって物語が改悪されてしまいそうだから、だそうだ。
あまりにも滅茶苦茶かつ唐突、俺は全く理解できていなかった。
「要約するとそんな感じ、ですね」
「……やべぇ、何一つして理解できねぇ。そもそもアンタ、誰だよ」
「女神ですけど」
「女神なら拉致っていいと?」
今、俺がいるのはよくわからない和室。
入り口は襖だが全く開かず、真ん中には机一つに座布団二つ。
向かい合うにようにして俺たちは座っている。
俺はさっきまで外で歩いていたはず。
なのに、急に意識がなくなったと思ったら、ここにいたのだ。
拉致しかねーだろ、こんなの。
「いえ、死んでますよ。
「へ?」
「詳しいことは省きますけど。事故でお亡くなりになってますね」
佐伯……確かに俺の名字だ。
いや、というか……亡くなってる? 俺が?
「じゃあ今の俺はなんなんだよ!?」
「死後の魂、っていたところですかね。色々と都合が良かったんで、こうしてお願いしてるんですよ?」
「都合よく死んだから……?」
「それは、まぁ……ありますケド」
あるんだ、それ。
都合よく死んだから連れてこられたのかよ、俺。
「いや、それ以外にも原作に詳しいという理由がありますから!」
「なんて答えればいいのかわからん……」
俺は死んだのか? 本当に?
……その事実は飲み込めないが、言っていることは理解できてきた。
取り敢えず転生するのは間違いなさそうだ。
「……死んだという事実はどうしようもないので、話を戻しますが。原作通りに行くように転生して欲しいんです」
「…………取り敢えず、俺が死んだということを前提で聞くが。転生して原作通りに行くように……って何をすればいいんだ?」
一先ず、俺は死んでいるということを前提に話を進めることに。
もし本当に転生するならば、神というのも嘘ではないだろうから、
「基本的には軌道修正です。何かしらの要因で、キャラの性格や敵が変わっているはずなので、それを無理やり修正しちゃってください」
「どうやってやるんだ?」
「……まぁ、なんとか」
「適当だな!?」
しかし物語を原作通りにか……長い物語を軌道修正するって、なかなかキツイのではないのだろうか。
一応全部話は覚えているし、物語は細かいところも覚えている。
だが、それらを逐一思い出してやる、っていうのはかなり苦しい。
「肉体の方は私が用意した、それなりのスペックのやつを使ってもらいます。それに加えてナビゲーター……というよりサポーター? みたいなのつけますから!」
「つってもなぁ……できる気が……」
「じゃあ……もし終わったら! その暁にはなんでも願い事を一つ! 叶えて差し上げましょう!」
「……マジ?」
「はい! 神に二言はありません!!」
「じゃあ……生き返らせてくれたりもする? 地球に」
特にこれと言って未練があるわけではないが、戻れるなら戻りたい。
まだ見てないアニメがあるし、ラノベだって読んでないやつが沢山ある。
なんなら完結してないのも何個か。
俺はそれを見るまで死ねない。
「はい! なんでも、ですから!!」
「……それなら」
やってみてもいいだろう。
この自称女神の言っていることを信じるとするならば、どうせ俺はこのまま死ぬだけ。
ならばせめて転生して延命でもしよう。
そして上手くいけば、地球に戻ることができる……軽く考えれば俺にメリットしかない話だ。
「ありがとうございます!! それでは時間は入学式直前から! 経歴などは適当に作って、履歴書を荷物に入れておきますので、確認しておいてくださいね!」
しかし全く別人になっての人生か。
それはそれで楽しそうだな。
俺は女神の案内に従い、いつのまにか敷かれていた布団の上に寝転がる。
その間、自称女神は何か羊皮紙に書いていて、それを俺の上に置いてきた。
「当面の目的は主人公たちに馴染みつつ、原作を改悪させようとしているやつを探してください」
「わかった。もし見つけたら、どうすればいい?」
「無力化してください、二度と改悪させれないくらいに。最悪。殺してもらっても構いませんので」
「ころ──そんな物騒な……!」
「そのぐらい改悪は悪い、ってことですよ」
ヘタな二次創作と認めないタイプかよ、この女神。
「とにかく! お願いします! 世界を救ってください!」
「あれ!? そんな
「大事です!!」
そこまで言うと俺の体が発光し始める。
光が強くなって行くにつれ、俺の意識はだんだんと落ちて行く。
暗く沈むように、微睡みの中に。
俺はそんな意識の中で、ほとんど記憶に残らない夢のような意識の中で、女神の最後の言葉を聞いた。
「お願いします……どうか世界を救ってください。貴方なら、
そうして意識は完全に落ちたのだった。