獅子の隣に並ぶまで 作:ZZ
ポケモンセンターの章
フキヨセのポケモンセンターでバチュルを預け、全体的な健康診断をしてもらうことになった。流石に野生で太っているとなると滅多にみるものではないし、本ポケに心当たりを聞いたら特に思い当たることはないという。いやでもなんかあるでしょう、と突っ込んで聞くと、ただ食欲が無くならなくて、気が付いたら食べている、と訴えてきた。食欲が無くならない、ってどういうことだろう、と首をひねったものの、よくよく考えたら病気が原因で太っている可能性もあるのだ、ということにようやく気付いて、慌ててポケモンセンターに連れてきたのだ。
本当はオーキド博士に診てもらおうかなとおもったのだけど、イッシュのポケモンは専門ではないから、生息地に一番近いポケモンセンターで診てもらうのが一番いいだろうと言われてしまった。ただ、データだけは送ってくれ、と言ってくれたので、あとで詳細をもらったら送るつもりでいる。
幸いすぐに他地方トレーナーの新規ポケモン捕獲申請書類の発行と合わせて健康診断もしてもらえることになったので(フキヨセは空港があるから、運のいいことに登録申請がポケモンセンターで出来た。ヒトモシと、もし孵ったらツタージャもここですませようと思う)、今は待機の時間だ。待ちついでに調べたら、民間の航空会社も他地方への発着を行っているとのことで、どうやら貨物だけでなく人間も他地方へ運んでくれるらしい。ヒウンシティに戻らなければいけないかと思っていたけど、ここから次の地方にいってしまえばいいだろう。バチュルの結果を待つ間に、必要な手続きを調べてリストアップしておく。
「タブンネ~」
「あ、終わった?」
「タブンネ」
その鳴き声にどっちだ、と言いたくなるけど、まぁまず呼びに来てくれたタブンネなので、ライブキャスターとメモをしまって立ち上がる。机の上でうとうとしていたバタフリーは片腕で抱えて孵化装置の上に乗せ、タブンネについていく。
診察室ではジョーイさんが待っていた。てっきりバチュルもいるはずだと思ったけど、そこにはその姿がなかった。座るように指示されたので大人しく腰掛ける。
「どうでしたか…?」
「…その、一応確認なんだけれど、特に餌付けをしたわけではないわよね?トレーナーから譲り受けたとか、トレーナーに逃がされたとか、そういった様子も?」
「餌付け?」
普通に群れの中にいたポケモンだった。確かに電池への食いつきはよかったが、特別に餌付けされていたり、過去にトレーナーとのかかわりがあったというならあんな態度で捕まりには来ないだろう。それを伝えると、ジョーイさんはううん、と唸った。
「私もね、疾患があるんじゃないかと思って疑ったんだけれど、調べたら普通にただの肥満だったのよね…。ほら、普通の家族が普通に連れてるポケモンとかだと、ご飯をあげすぎちゃってちょっとぽっちゃりしているとかあるでしょう?」
「はい、たまに見ますね」
街に限ればポケモンが太る、という現象は特に珍しいものではない。ちょっとぽっちゃりめのポケモンがトレーナーと連れ立って歩いているのはよく見るし。要は地球で言うペットを太らせてしまうようなものだ。その辺は各家庭の付き合い方、各トレーナーとの付き合い方なので、病気にならない限りは口出しすることではないけれど。
ジョーイさんはそれを疑ったようだ。
「野生であれだけの肥満って本当に珍しいから…、他のバチュルたちは普通の体型だった?」
「ええ、はい。比較対象にさせてもらいましたから」
「そうなの?となると、生まれつきそういう性質の子なのか……、それか精神的なものでしょうね。よければケアのサポートをするけれど」
「…………色々様子見てみて、もしかしたらお願いするかもしれません」
「もちろん、任せてちょうだい。ここのポケモンセンターでなくてもいいから、異変を感じたらすぐにポケモンセンターに連れていくように。今のところは太っているだけで、体は健康そのものだから安心して」
「そうですか。病気じゃなくてよかったです」
「でも、油断は禁物よ。今は病気は見つからなかったけど、このままだといつ病気になってもおかしくない状態なのは間違いがないから。是非ともダイエットさせてあげて」
「あ、それ聞きたかったんです、バチュルのダイエット食って何かあります?出来れば食事量減らすとかはやりたくなくて」
「……その辺は徐々にやっていった方がいいでしょうしね…、そうね、バチュルにはフーズをメインに食べさせてあげて」
「フーズを?電気じゃなくて?」
バチュルの主食は電気だったはずだ。しかも、電気には種類がある、というか味があるらしい。でんきいしのほらあなの電気の味と、電池から発せられる電気の味は違うとかで、バチュルたちにとって電池や人間が持ち込む『機材』や機械から摂取できる電気はごちそう扱いなのだそうだ。だからこそ電池に突っ込んでしまったらしいし、いつもだったら紐を噛み切って電池だけ頂いていたそうなのだが、今回は噛み切るのに手間取っていたら釣られてしまったのだと身振り手振りで言っていた。あのサイト、ネタどころか大真面目なやつだったらしい。絶縁を兼ねて結構強靭な紐を使ったのが幸いしたようだ。
ちなみにその辺のポケモンが食べるご飯問題というやつは本当に種族によって多岐にわたるから、フーズ業界はいつでも人手不足と聞いたことがある。腕のいい開発者、ポケモンとのやり取りについて才能の高いトレーナーなんかは引っ張りだこなんだとか(だから地方大会で優勝するようになると接触があるのだろう。強いトレーナーは大抵ポケモンとのやり取りにおいて高い才能があることが多い)。
「そうなんだけど、実はバチュルやデンチュラ、それから電気を主食にしているポケモンにとって、電気って高カロリーらしいっていう研究結果があるのよ」
「……そうなんですか?」
「直接エネルギーとして摂取できるから、体内で変換する必要がない分結果的にカロリーが高い、みたいな理屈らしいわ。逆にフーズだと体内で消化吸収してエネルギー変換の必要が出てくるから、直接電気を摂取するよりはカロリーが低いらしいの」
「…理屈はわかりました。でも、消化器官の方は大丈夫なんですか?電気だけ食べてた子がフーズ食に切り替えたらびっくりしちゃうんじゃ」
ジョーイさんはあら、という顔をして微笑んだ。
「よく勉強しているのね。でも大丈夫よ、バチュルって、電気が食べられない場所に連れていかれると、苔とかキノコとかも食べるって報告があるの。たぶん野生でも副菜みたいな感じで食べてるはずよ。ただ、電気食を完全にやめさせてしまうと逆に体に悪いから、比率を考えた方がいいでしょうね」
「わかりました。…ってなると、電気食タイプ用じゃなくて草食タイプ用のフーズの方がいいんですかね…?虫タイプ用のと電気食タイプ用は用意があるんですけど」
「……ああ、そうね…、その辺はバチュル自身の食いつきによって、という感じかしら。栄養的にはどれを食べても問題なかったはずよ。できれば小さく砕いた状態であげてちょうだい。バチュルにはちょっと大きいことが多いから」
「わかりました」
「後はホープトレーナーの称号をとっているなら大丈夫だと思うけど、運動をたっぷりね」
「それは勿論。いっぱいバトルしてもらうつもりです」
「ならよかった。タブンネ、バチュルを連れてきて」
バチュルを受け取ってお金を払い、ポケモンセンターを出る。ボールから出してやると、バチュルは随分不安そうな顔をしていた。病気かもしれない、と事前に伝えたから、自分がどんな状態なのか伝えられるのが怖いのだろう。
手のひらに乗せてやると、重くない?と伝えてくるから、安心させるように手のひらで全身を撫でてやる。その後額のあたりをこしょこしょと人差し指でくすぐってやると、気持ちいいのかバチュルはきゅっと目を細めた。
「大丈夫だよ、バチュル。病気でも何でもないって。健康だっていってくれたよ。ただ、いつもと違うご飯を勧められたから、あとで食べてみようね。おいしいと思ったやつを教えて」
「ばちゅ……」
「食べちゃいけないなんて誰も言ってないよ。ご飯食べない減量なんて元からさせる気ないし。お腹がすいたらいつでもいってくれていいから。大丈夫、大丈夫。午後はお店に行ってみよう?色々見てみよっか、肩においで」
「ちゅる」
大人しく頷いて肩まで這い上がってきてくれたが、その感覚はキャタピーのそれとは違って大分くすぐったかった。足が違うからだろうか。頭上のバタフリーが、頭は僕の領域だからね!肩までだよ!と威嚇しているのをこら、と諫める。私の頭は私のものなんだけど、いつからこんな我が物顔をするようになったのか。微笑ましいやらなんやらである。
「同じ虫タイプなんだから仲良くしてよ、私の
「……フリィ~~!」
……ニュアンス的に、も~~!!!!この人は!みたいな返事をされたが、さて。君がエースだというのは随分前から決めていたことだし、レッドのピカチュウというとんでもエースの前例だってあることを思えば、バタフリーにエースを任せるのは別に奇妙な話でもない。大体、格上や苦手なタイプの敵を倒す戦法ばっかり勉強させているのを不思議に思わなかったのだろうか。
その辺はウインディどころかラプラスすら察していたことだ。言わなかったっけかなぁ、と思ったが、そういえば明言していなかった気がする。
「…ちゅる?」
「バチュルはバチュルで色々覚えてもらうからね、私だって色々手探りなんだけどさ。大丈夫、悩む暇なんてあげないよ」
「……ばちゅ!」
嬉しそうな返事を聞いて、ショップに向かって歩き出す。
「いったい!髪の毛引っ張るなっていってんでしょうがもう!」
「フリィ~~!!!!」