獅子の隣に並ぶまで 作:ZZ
タワーオブヘブン生活7日目の朝、近くにはったテントの中で、私はちょっと頭を抱えたい気分になっていた。別に初日はよかった。管理人のおばあちゃんに挨拶をし、お墓の概念をポケモン達に教え、手を合わせるということの意味を教え、タワーオブヘブンのてっぺんから見る景色と、そこで鳴らす鐘の音色の美しさを一緒に覚えた。
その後、もう一度ゆっくり時間をかけて、改めて一階からタワーオブヘブンを登っていくことにしたのだ。ヒトモシの気配はたくさんあったから、そうしていけば旅立ちたい子やバトルをしたい子たちが出てくるだろうと思ったのである。それに、仲間に加える子の生息地の状態はちゃんと調べておきたいというのもあった。でんきいしのほらあなだって、長居こそできなかったけど、バチュルを仲間にしてからちゃんと調査をおこなっている。
それでもお墓なのだ、無遠慮に歩き回るのもどうかとは思った。だから、回らせてもらうかわりに掃除でもしていこうと思って、管理人のおばあちゃんにほうきとスポンジとバケツを借りたまではよかったし、それはとてもはかどっている。
ただ、ヒトモシと出会えても、どうにも勧誘がうまくいかないのだ。
バトルをしてくれた子には手当はもちろんきのみもあげたし、普通に会話してくれる子もいたから、たぶん順調に仲良くなれていると思う。バチュルのそれよりちょっとわかりづらかったけど、一応コミュニケーションは成立しているし。
なんだけど、よければ一緒に旅に出ない?と声をかけても、皆一様に首を振るのだ。
お供えバトル(君が天に昇った後も元気にしていますよ、もしくはバトルが好きだった君にバトルを捧げます、的な意味合いがあって、多くの地方で行われている行事というか作法である)をお願いされた時、うっかりみずタイプのラプラスを出してしまったのがいけなかっただろうか。ほのお・ゴーストタイプのヒトモシには十分警戒の対象になっただろう。周囲に被害を出すわけにはいかないから、本当は物理攻撃のできるウインディか、『ふいうち』を覚えているバチュルかを出すべきだったのだけど、出たがっている雰囲気を察してしまってちょっと手が滑ったのだ。ラプラスに甘いのはいいけど、ほどほどにな、と後からウインディに言われてしまったが。ウインディだって毛づくろいさせてやったり、どうにかして背中に乗せてやった後立ち上がろうとしてひっくり返りそうになったりしているでしょ(これは真面目に叱った案件である。いくらウインディが大きくて、ラプラスが子供だからといって固定具もないのに背中に乗せるというのはそれこそ大怪我に繋がりかねなかった。移動させてやろうとしたんだろうけど。バタフリーが支えようとしてあわや潰されかけたのもやばかったし)、そっちだってめちゃくちゃかわいがってんでしょうが、と言ったが聞こえないふりをされた。あいつめ。
この一週間、仲良くなれたヒトモシは多くいても、皆旅に出るのはちょっと……、と返事をするのである。こうも続けばそりゃあちょっと滅入るというものだ。しかも、理由を聞いてもいい?というと、こう…なんだろう、しわしわの顔をされるのだ。映画のピカチュウがしていたような感じの。バチュルのあれといい、イッシュのポケモンって顔芸が上手なのだろうか。鳴き声や身振り手振りから翻訳しようにも、大きい、とか、古い、とかの意味合いっぽいのが入り混じってどうにもはっきりしない。ぬし?と聞いてもそれもちょっと違う、みたいな反応が返ってくる。
ただ、連れて行ってほしい子がいる、とも言うのだ。かといって、どこにいる?とか、連れてきて、というと、またしわしわの顔をされたり、古いとこに行って、とか言われてしまう。手持ちも翻訳に手こずっているようで、いまいちうまくコミュニケーションがとれていない感じがある。いつもが翻訳機越しの会話だとしたら、翻訳機なしで片言をどうにか訳そうとして失敗しているような感覚だ。
もうタワーオブヘブンのヒトモシを総当たりするくらいのことをしないといけないかもしれない。
正直いうと自分のゴーストタイプへの適正を疑いたくなるくらいである。いや、ラプラスの時のような根気が必要なのはわかっているのだけど、ヒトモシとリグレーとたまにオーベム(彼らからはがんばれー、的な思念の接触はたまにあるが、特に強い干渉はない。応援してくれたっぽい子には一応ありがとうと返しているが)、それからズバット系列のみと遭遇し(バチュルのバトル相手になってもらっていたらゴルバットに進化した子が一体いた。いてだきのどうくつと同じくズバットとゴルバットは群れを分けているようで、進化できたバトルの相手だった私たちに、卒業式?移動式?のようなものを見せてくれた。後でデータをオーキド博士に送るつもりである)、場所は狭いお墓の続く塔の中となると、……やっぱこう、滅入るんだよな。あまりにいてだきのどうくつやでんきいしのほらあなとは環境が違いすぎるし、痒い所に手が届かない感じがこう、ちょっとだけイライラする。
ポケモンとのタイプによる相性問題、手持ちにする前でも他人のポケモン、野生のポケモンと触れ合うことでもある程度ははかることが出来るというのはまぁ有名な話だ。今までバトルしまくってるついでにちょっと触れせてもらうとかで、色んなタイプのポケモンと触れ合ってきたけど、特に相性が悪いというのは感じたことがなかった。強いて言うならはがねタイプに対してちょっとだけ感触が悪いかな、という感じだ。だから、てっきりオールラウンダータイプか、複数タイプに相性がいいのだと思っていたけれど、ひょっとしたらゴーストタイプに対する相性悪かったりするのか。前に両親にお墓参りに連れられて行ったときに会ったゴースとは普通に対面したし、相性が悪いとかはなかったと思ってたんだけど。この辺の相性に関しては本当に才能の領域になってしまうから、私が嘆いたところでどうしようもない。瞑想とかしてみるべきだろうか。
この一週間で起きた良かったことが、タワーオブヘブンのポケモン達と交流ができたことと、バチュルがフーズを気に入ってくれたことと、たまごが揺れる頻度が増えたことくらいしかなかったとなれば落ち込みもする。
そんなことを考えながら朝の身支度をして、テントを畳んでしまう。しかし、参ったな。昨日で四階の掃除を終えてしまったから、後は屋上の掃除くらいしか出来ることがない。後は管理人のおばあちゃんとお話するくらいだろうか。掃除道具を借りるついでに色々話をするのだが、人当たりも柔らかくて私にしては珍しいことについつい話が弾んでしまうのだ。掃除用具をあっさり貸してくれたこともそうだが、ヒトモシを捕まえるときのアドバイスもくれたので、本当に優しい方だと思う。
バタフリーだけ頭に乗せて卵を抱え、タワーオブヘブンへと向かう。ここ一週間毎朝してきたように、管理人のおばあちゃんに挨拶をしにいくと、ちょいちょい、と呼ばれた。
そのまま奥に案内されて、机に座るように促される。
それは、初めてのことだった。
「管理人さん?」
「やぁ、成果が出とらんようじゃったからな。ばばあの節介じゃ」