獅子の隣に並ぶまで   作:ZZ

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しゅっぱつしんこう!

足元で私のズボンにしがみついているヒトモシに、さてどうしたものかと首をひねる。

 

タワーオブヘブン生活12日目、ヒトモシは随分と元気になってきた。死にかけていたのはどこへやら、ぽてぽて歩いて私の後をついて回る程度には回復している。

 

そろそろ旅に出たい頃合いではあるのだけど、それをこのヒトモシにどう伝えた物か。管理人さんや他のヒトモシたちは連れて行ってあげてくれ、ここにいるときっと彼女の傷を刺激してしまうから、といっているけれど、それは特にこのヒトモシの了解をとっているというわけではないのだ。

 

なので、まずは軽く聞いてみようと思って、私は旅人だから、そろそろ旅立ちたいと思ってるんだ、と言ったのだ。それでその後に君も一緒にこない?と聞こうと思ったのだけど、どうも順番を間違えたらしい。何かしゃべる前にヒトモシが私の足にしがみついて離れなくなってしまったのである。今までののんびりした動きはどこへやら、と言わんばかりの素早さだった。

 

あーあ、という感じの反応がそこかしこから漂ってきて(手持ちですらそういう感じだった)、ちょっと泣きたくなってしまった。弁解させてくれ、そんなつもりでヒトモシに声をかけたのではないんだ。ただちょっと順番を間違えただけなんです。

 

しゃがみこんで、顔の見えなくなってしまったヒトモシの体を撫でる。相変わらず奇妙な冷えの感覚があるが、慣れればこれはこれで悪くない。蝋の感触も妙に飽きがこなくて、ずっと撫でていたいほどだった。呼びかけても身じろぎもせず、絶対に離さないという強い意志を感じる。

 

 

「ヒトモシ」

「………」

「ヒトモシったら。話を最後まで聞いてよ。……私ね、君も一緒に来ない?って聞きたかったんだよ」

 

「……モシ?」

 

 

恐る恐る顔を上げたヒトモシの体を撫で続ける。

 

 

「バトルをたくさんして、倒したい人が居るんだ。ここに来たのは私の仲間になってくれるヒトモシを探すためだったんだけど、君とはどうも、縁が繋がったようだから。よければ君に一緒に来てほしい。…どうかな?」

 

 

ヒトモシの顔がぱぁっと明るくなる。表情がしっかり理解できるようになる程度にはこのヒトモシの面倒を見たのだ、はじまりがどうあれ、そりゃ愛着くらい沸く。ヒトモシの笑顔は、これ以上ない確かな返答になっていた。

 

苦笑してモンスターボールを出し、ボールのボタンについているビニルカバーを取り外して自分の肌に押し付ける。これで私の生体情報をスキャンして、ボールは私を認識、登録するのだ。一度登録してしまえばこれは私のボールとなる。ラプラスやバチュルの時は生息環境的に何が起こるかわからなかったので、事前にやった作業ではあったが、本来であれば捕獲直前にするのが望ましい作業である。この作業をキャタピーがやって勝手に捕まった時分は随分すねたものだったけど、そういえばあいつこれが必要だってなんで知ってたんだろうな?今更疑問が浮かんだが、後で聞くとして、まだかなまだかなと待っているヒトモシにボールを差し出す。

 

 

「モシ!」

 

 

笑顔でヒトモシはボールに飛び込んだ。

 

 

これにて、イッシュ地方での仲間集め、完了である。

 

 





ちょっと短いですが、いい区切りだったので。



ヒトモシ:♀
いつものように食事をしたら、大好きな人間が死にかけてしまって、ショックで何も食べることが出来なくなってしまったヒトモシ。まだポケモンの生命力を分けてもらえれば普通に生活できていただろうが、それすらも受け付けなくなってしまったためにゆっくり弱っていった。その上で弱った自分を守るために姿を隠していたものだから、代理の管理人にも発見されず、管理人のおばあちゃんが戻ってきたときには衰弱が激しくなってしまった後だった。主人公の手持ちになった今でも積極的に食事がとれているわけではない。

元来はやんちゃでバトル好き、かなり好戦的な性格だった。



ヒメギリとそのシャンデラ
本人の語りだけを聞くのであれば、随分色々思うところが発生するだろうし、主人公も発生させていたわけであるが、……ただ、彼女の人生はこの物語で語られた部分だけがすべてではなく、バトルトレーナーをやめた後も勿論続いていて、最終的に彼女はタワーオブヘブンにたどり着いている。野生にかえったシャンデラと、ポケモンをもたないヒメギリが今も一緒にいるというのは一つの答えであるだろう。














少女に抱えられて、ばいばい、と遠慮がちに手を振るあの子を見送った。随分大人しくなってしまったものだけど、いつかはきっと、あのやんちゃな姿を見せるようになるのだろう。

…………ああ、これで。もう心残りは何もない。振り返れば、最愛の君が炎を灯して揺れていた。いつになく嬉しそうで、いつになく悲しそうな君は、今まで見た中で一番美しい炎を燃やしてゆらゆらと揺れている。

後少しの命、最後の一さしが燃え尽きる日は、きっと遠くないだろう。


後悔ばかりの人生ではあったけど。正しくない道ばかりを選んでしまった人生だったけど。君に悲しみを背負わせてしまった人生だったけど。

それでも最期に、君におくりだしてもらえるのなら。

黄泉路はきっと、悪くない旅になるはずだ。


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