獅子の隣に並ぶまで   作:ZZ

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おや、たまごのようすが……?
借家暮らしの章


 

ヒウンシティから飛び立って大体二週間、私はシンオウ地方のソノオタウンで暮らし始めていた。野営するとか宿に泊まるとかそういうのではなく、家を借りてのガチのソノオタウン暮らしである。

 

新しい仲間であるバチュルとヒトモシの育成もきちんとしたいし、たまごは頻繁に揺れるようになってきている。いくらポケモンとはいえ赤ちゃんが孵るのだ、どこかでいったん腰を落ち着けて面倒を見たいと思っていたところに(本当はライモン近辺で野営しようと思っていた)、借家の情報である。見学にいったとき、一見するとかなりのボロでちょっとやばい家なのでは、と思ったが、明かりをつけてみればそんなことはなかったし、住み始めて草刈りとか掃除とかをきちんとやるようになってからはずいぶんと様変わりした様子を見せるようになった。

 

天井が高めで広い代わりに一階のみ、いわゆる平屋と呼べる家ではあるが、家具と庭付きで家賃電気代水道代も安い(家賃が安いのはボロだからだろうが)。ガス代だけちょっと高いらしいと聞いたけど、ちらっと見たイッシュの家賃相場に比べればそんなに、という印象だった。何より花畑の広がるソノオの雰囲気は生まれ育ったマサラに近いものがあって、私には随分と落ち着ける場所だった。幸いシンオウについてからすぐに参戦した初の地方大会で優勝賞金を獲得していたこともあって、私の懐は潤っていたし(タワーオブヘブンで長居したこと、地方間移動でお金がちょっとやばかったのだ。バチュル先発固定でヒトモシ以外の子にバトルしてもらった。病み上がりというのもあってヒトモシには見学をお願いしたけど、終わった後うずうずしている素振りがあったのでいい発破になったようだ)、色々と条件が重なった。

 

元々目的はハクタイのもりだったのだけど、その借家がいい感じに小刻みの期間契約で出ていたのも最後の一押しになって、思い切って家を一軒借りることにしたのだ。

 

 

最初はハクタイの森にテントでもはって野営して籠ろうかなと思ったものだけど、初めての孵化ともなれば万全を期した方がいいだろう。入居した当初はコンセントにバチュルが強い興味を示したがその程度で、思ったより皆順調に慣れてくれた。バタフリーとウインディはともかく、他の野生組は人間の巣ってこんな感じなんだね!という反応ではあったけど、いったんルールを決めてしまえば楽なものである。

 

最近の日課は205ばんどうろをたまごを抱いて散歩をして、そこで軽くトレーニングをすることだ。今日も勿論来ているのだが、最初に野生のポケモン達にバタフリーとウインディといううちでの最高レベルコンビの保護付きで挨拶をしたのが効いたのか、今にいたるまでちょっかいをかけられたことはない。バトルの特訓とかで協力してくれた子にはきのみという形でお礼をしているので、ほどほどにいい関係を築けていると思う。

 

 

軽いトレーニングとはいえ、全匹同じメニューをやってもらうわけにはいかないので、私の目の届く範囲で散らばってトレーニングをしてもらっている。さて、今のポケモン達の状態はどうだろうか、とヒトモシの手当てをしながら散らばっている皆の様子を見た。

 

まず、水上をスピードを出して爆泳するラプラスを見る。この205ばんどうろには水場があるので、そこでラプラスを泳がせてやれるというのもソノオで家を借りてよかったな、と思えるポイントだった(借りた後にここで野営して生活してもよかったのでは、とちょっと思ったくらいだ)。今のところはまだそういうところでバトルをしたことがないけれど、バトルフィールドが一面プール、とか、バトルフィールドが一面氷、一面マグマのような場所、とか、ギミックフィールドというやつはそれなりに見る。そういうのはそれを売りにしている地方大会は勿論だが、ジム戦、リーグ戦でも普通に出てくるので(例えばこおりのしてんのうカンナがチャレンジャーとバトルするときは氷のフィールドだし、水ポケジムの場合も大概がプールである)、現状唯一水場で自由に動けるポケモンであるラプラスの遊泳能力は育てておいて損はない。というわけで水中、水上、どちらも自由に泳げる訓練をしてほしいということを伝えたら、大喜びで運動を繰り返すようになった。ちらりとカンナ戦のラプラスの動きを動画で見せてやったのもきいたのかもしれない。何より、陸上ではいくら出してやれたとしても、人間でいう寝たきりで動けないようなものなのである。少しでも好きなように運動させてやりたかった。

 

ちなみに水棲ポケモン達に関してはラプラスが自分で話を付けたようである。休憩しながらメノクラゲやケイコウオと戯れているのを見た時には微笑ましく思うべきか野生の子だからね、と注意すべきか迷ったものだったが、手持ち内で抜きん出ているコミュニケーション能力の高さは伊達じゃなかった。ともだちできたよ!と水棲ポケモン達を引き連れて私に紹介にきたのも驚いたのだが、その中にいたネオラントの一匹が水場内のぬしかそれに近い実力者っぽかったのである。うちの子と遊んでくれてありがとー!これお礼!できのみをばらまいたらその実力者も普通に喜んでくれたのでよかったが。その辺パウワウ達直伝っぽい。ヒトモシが最初ちょっと馴染めず悩んでいた時に解決したのもこの子だったし。

 

ラプラスの通り過ぎた水しぶきにちょっと目を細めて唸ったのはウインディだ。浅瀬で首までつかっているウインディであるが、このどうろにきてから、なんと泳ぎの練習を始めた。自分からトレーニングのために水につかろうとするのはガーディの頃から変わりがなかったし、最初、この辺で出してやると同時に浅瀬に向かうウインディを見た時は熱心で嬉しいなぁと思ってみたものだけど(進化してからは水場のない場所で野営した日はラプラスの弱めの『みずてっぽう』を被っていた)、何日か経った頃、急にバシャバシャやりだしたものだから驚いて駆けつけたら本ポケはどうにか泳ごうとして真剣にもがいていたという状態だったのだ。いけそうな気がしたので思わず、と目をそらしていたが、詳しく聞いてみたら泳ぎを習得したいというので、とりあえずグラエナが泳ぐ動画を見つけてきて、それを教材にさせている。ほのおタイプであるし、体力の問題もあるので一定期間ごとの休息をとることだけ強く約束させたけど、向上心が高いというのは本当に嬉しい。そろそろと犬かきのようなものをし始めているので、感覚をつかみ始めているのだろうか。溺れる可能性がこわいので一番こまめに気にしているのがウインディだけど、たまにラプラスや水棲ポケモン達が手伝いいる?とかまいに来ているのも見るので、よっぽど大丈夫そうではあるが。一回何が起きたのか、ドククラゲに乗せられてええ…?って顔してたし。

 

バタフリーはといえば、バチュルと一緒にトレーニングをしてもらっている。今なんかはちょうど、バチュルがバタフリーに『エレキネット』の実演を見せている最中だ。バタフリーには天敵であるひこうタイプに対する有効な技がほとんどないので、出来ればサブウェポンとして覚えてほしい技だった。カントー生まれのうちのバタフリーはわざマシンでは『エレキネット』を覚えられなかったので、自力習得の道しかないのである。他の地方のバタフリーは普通に覚えるんだけど、生息地別の特性のようなものだと私は考えている。

 

『エレキネット』、威力は低めではあるのだが、電気の流れる糸をはけるようになるだけでも随分悪巧みが出来る。設置式トラップとかもできるようにならないかな、と思っているので(どちらかというとそれはバチュルの方向性ではあるが)、頑張ってほしいところである。少しだけぴりつく糸がはけるようになってきているから、たぶんもう少しだと思うのだが。

 

 

バチュルはバチュルで、仲間にしてからそろそろ一か月が経過してきているのだが、一回りほど痩せた。体格の大きさはそのままであったけど、ペーストタイプの虫ポケ用フーズがお気に召したようで、電気メインの食事からフーズメインの食事への移行はかなりスムーズだった。軽い運動から始めてせっせとバトルに出していた影響もあってか、順調に体重が落ちてきたのと同時にスピードも上がってきている。体が思うように動くというのがうれしいのだろう、最近は数字の読み方まで覚えたようで、夜ごはん前の体重測定の時はそわそわして待っている。見るとシャキッとした顔で何もしてませんよ、という顔をするけど、バレないように見ればそれはそれはそわそわしているので、噴き出さないようにするのに苦労する。

 

 

そして、ヒトモシである。ヒトモシは正式に元気を取り戻したのはこのソノオタウンに来てからだったけど、なんというか、君そんな元気になって大丈夫か?という感じだった。簡単に言うと、()()()()()()()()。30cmくらいある体長の5倍は跳ねているといったらびっくりしたのも伝わるだろうか。一回ひっくり返して足とおぼしき場所を見せてもらったが、こんな平らな脚部でどうしてこんなに跳躍力があるのか。試しに野生のポケモン相手にバトルの練習をさせてみたけど、カラナクシの『みずてっぽう』を飛び跳ねて宙返りして避けるというアクロバティックさを発揮してくれて、トレーナーの方が困惑してしまった(頭の炎が『みずてっぽう』に掠めてたけど大丈夫かと思ったら大丈夫じゃなかったらしい、後で露骨にテンションが下がっていた)。タワーオブヘブンのヒトモシたちは普通にえっちらおっちら走って避けていたというのに、とんでもないヒトモシである。私の記憶が確かなら、あそこにこんな風にジャンプするヒトモシはいなかったと思う。動きが早く、自由度が高いというのはとても強みだけど、これ、進化したらどこに影響が出るんだろう……?キャタピーとかは脚力がそのままバタフリーの脚力に受け継がれたお陰で、あいつはいつでも私の頭にへばりつけるようになっているわけだけど、ヒトモシは文字通りの完全変態タイプの進化をする。ランプラーに進化したからと言って、このトリッキーさが消えるとはちょっと思えないし。今から楽しみだ。

 

 

とはいえ、いくら本ポケの動きが機敏だと言っても、やっぱり私に指示を出されてするバトルに慣れてもらわないといけないから、私とヒトモシはひたすら野生の子たちとバトルを繰り返していた。揺れるたまごを抱えながらの指示出しはちょっと苦労するが、野生のポケモン達もトレーニングだというのは理解してくれていたから(遊びに付き合ってくれている感じだろうか)、私を直接狙ってくることもない。いい環境で訓練させてもらえていると思う。

 

 

たまごはそれは頻繁に揺れる。いつひびが入ってもおかしくない頃だと思うが、どうだろう。ポケモンセンターでもみてもらったけど、恐らく一週間以内には孵るだろうとのことだった。できれば家で孵ってもらった方が色々安心できるので、どうろでトレーニングするのは今日までだろうか。どちらにしろ明日は休息日のつもりだったし。

 

 

 

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