獅子の隣に並ぶまで   作:ZZ

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食事の章

 

じゃれあいながらソノオタウンに戻って、フラワーショップ“いろとりどり”による。きのみはなまものなので(きのみ用の電子圧縮可能な袋にいれれば『機材』にいれて長期保存することもできるが)、毎日買いにお邪魔していた。普段であればまとめ買いしてストックして、旅の間にちょっとずつ出していたけど、せっかくきのみがいつでも買える場所に居を構えたのだ、新鮮なものを食べるのも悪くない。軽く会話をしていつも通りのラインナップを買い(おまけをつけてくれた。毎度のことではあるけど嬉しい)、自宅へと帰還する。

 

待ってましたと言わんばかりに飛び出てきたバタフリーが頭の上に収まったのを苦笑しながら撫でてやり、続けて出てきたヒトモシを間違えて蹴らないよう気を付けながらリビングに向かう。テーブルの上にごとごと揺れる孵化装置を下ろして、隅にひいたシートの上にラプラスを出す。ウインディは疲れているせいか、ボールの中でうとうとしているようだ。ほのおタイプが泳ぎを習得するというのは生半可なことではできないし、私も実例を知らない。水中呼吸器が売っていた以上は他にも泳げるウインディがいるのだろうから、いつか毎日体力を削り続けるウインディの努力が実る日がくるのだろうけれど、心配なのには変わりがない。最初は側にいるつもりでいたけど、ヒトモシの方を優先しろ、と首を振られてしまったし。

 

ご飯が用意できるまではウインディはそのままにしておくことにして、台所にむかう。

 

簡素な台所だが、私には十分だ。使う分だけのきのみを袋から取り出して残りを冷蔵庫にしまおうとして、扉が少し開いていたことに気付いて眉根を寄せる。……もしかして今日ずっと開きっぱなしだったのだろうか。何度か開け閉めしてみたが、冷蔵庫のドアには異常はないように見えた。中身を見てみるが、空いていたのがほんの少しだったのが幸いしたのか、冷蔵庫の中身が傷んだ様子は見えなかった。怖いので出来るだけ早めに消費しきることにしよう。ちょっと落ち込みながらきのみを冷蔵庫にしまう。

 

晩御飯、今日はどうしようかと思ったけど、まぁ、いつも通りレトルトでいいか。晩御飯くらいはちゃんと料理しようかな、と思わないでもないけど、自分の分しか料理をしないのもめんどくさいし、ポケモン達のご飯の準備も考えると時間がもったいない。旅の間は朝昼晩と完全栄養食シリーズのレトルトを適当にコンロにかける日々だったけど、家に落ち着いてからは朝はシリアルになっただけましじゃなかろうか。…ましか?完全栄養食じゃないからましじゃない気もするな?きのみや簡単なサラダとかを補助で食べてるけど、他にもなんか足した方がいいかなぁ、と思いつつ、素早くきのみをスライスしていく。きのみによっての処理の仕方の違いにももう随分慣れた。

 

ポケモン達にはお互いがいるから、ポケモンとしての心得とかやり取りとかはお互いで補えるし、何か体調不良があれば誰かが訴えてくれるし、私も気付ける。だけど、ポケモン達に対しての人間は私しかいないから、体調を崩すわけにはいかない。朝晩のストレッチと柔軟もそうだが、準備運動どころかポケモンに付き合っての激しい運動も欠かしていないし、ご飯もまぁレトルトでこそあるものの、必要な栄養を取るという意味でお金に糸目はつけていない。

 

そのお陰か旅に出てから筋肉痛以外の体の不調を感じたことは無いが、身長があんまり伸びていないのがちょっと不安といえば不安だろうか。これは旅立ってからというか、旅立つ前からの悩みだったけど。ヒトモシの助走をつけた垂直飛びは優に私を飛び越していくし。筋肉をつけすぎると身長が伸びないという話を聞いてちょっとやばいと思ったばかりである。今普通に逆立ちでダッシュとかできるし。

 

上の空のままきのみをそれぞれの皿に並べ、並べておいてあるフーズのパッケージを開ける。バタフリーの器はキャタピーの時から使っている薄緑色の陶器だ。短い手足でもフーズをつかめるように、浅い器にフーズを盛り付ける。

 

ウインディはさすがに食事量が増えたので、ガーディの時に使っていたのと同シリーズの大きい器を進化してから買った。赤いラインが入ったそれにフーズをざらざらと出し、肉風味のふりかけをかけてやる。

 

ラプラスも成長期だからかたくさん食べるので、成長も考えてかなり大きいサイズのフーズ入れを購入した。15Lのポリバケツより少し大きいサイズだけど、倒れづらい上に模様もかわいくて、私とラプラスは結構気に入っている。気に入りすぎて、食べ終わってきれいになめつくした後に被って遊びだすので、早めに回収しないといけないが。彼女に与える量が一番多いので、気合を入れてフーズの袋を持ち上げてフーズ入れに投入し、目星をつけた辺りまで入ったのを確認してから、違うブランドのものを上からいれてやって、軽く混ぜる。一応妥協点っぽいブレンドは見つかったものの、たまに微妙な顔をしているので、やっぱりハイブランド品に手を出さないといけないようなのだが、あれ、高いんだよなぁ…。いっぱい食べるラプラスにハイブランド品ってお金がガンガン飛んでいく未来しか見えない。もう少し我慢してもらうしかないだろう。

 

次はバチュルの分だ。パウチの口をとめてあったクリップを外し、必要な分だけをはかりながら黄色い小さな器にペースト状のフーズを絞り出す。本当は進化後のことを考えて大きい器を買ったのだけど、本ポケがフーズ入れの中に入って食べ出したので、これはいけないと小さいものを買い直した。そりゃバチュルは手のひらサイズだし、大きいサイズのフーズ入れじゃそうもなる。これはちょっと私の考えが足りなかった。

 

最後はヒトモシだ。ほのおタイプ向けかゴーストタイプ向けかどちらを好むか気になっていたのだが、ヒトモシはほのおタイプのフーズを選んだ。ほのかに香る木の風味がたまらないとは本ポケ談だけど、どんな味をしているんだか。というか木なのか。燃料的な意味で木?その辺のフーズあれそれはいずれ実食してみたいなと思っている世界ではある。ラベンダー色の浅い器に固めのペレットを少し少なめに出して、それで全匹の食事の用意が整った。

 

それぞれの食事場にフーズときのみを並べ、私は私で暖まったレトルトのパッケージを開けて食卓につく。イスとテーブルがあるときの食事は、ポケモン達はテーブルの上には登らない、というのは一つのルールとして決めている。そんな大きいテーブルというわけではないのも一つだったけど、一般的なマナーを学んでもらうためにそのルールは必要だった。椅子の上にクッションを重ねてやって、椅子に座ってお行儀よく食べてもらうというのも考えたけど、今は皆がポケモン用の食事スペースでご飯を食べるのを私は食卓から眺めながら食べる、という方式をとっている。テントだとその辺めちゃくちゃ窮屈ではあるが、かわりに皆の近くで食べれるからよかったな、と思うが、でも一応私も人間で、彼らはトレーナーのポケモンなので、人間世界での生活というやつも学んでもらわないといけない。それはトレーナーとしての義務なので仕方がないんだけど、離れて食べるというのはちょっと寂しいなと思う。

 

たまにポケモン達の食事スペースの方に混ざればいいか。

 

 

「ばちゅ、ばちゅ!」

 

 

肩から降りなかったバチュルが耳元で鳴いて、ぼんやりしててごめんよ、と言いながらテーブルの上に置きっぱなしだった体重計…もとい料理用のはかりを引き寄せて床に降ろす。1.5kgまでしか測れないものだが、バチュルにはこれで十分だった。腕を伝って降りたバチュルが自分で電源ボタンを押し、恐る恐るその上に乗る。

 

 

「0.98kg…、お、とうとう1kgきったじゃん!おめでとう!」

「ちゅるる!」

 

 

律儀にはかりから降りた後、喜びに飛び跳ねたバチュルをすくい上げて思いっきり撫でまわす。バチュルの平均体重は0.6kgなのに対し、このバチュル、最初は1.24kgあった。一か月でここまで落としたのはかなりすごいことだと思う。一週間に数度の電気食になったのも響いているのだろうが、暇を見つけてはせっせと体を動かしているバチュルをずっと見ているから、単純に本ポケの努力の結果だと思う。

 

これからも頑張る!でも、ご主人のご飯が冷めちゃうから、ここまでで大丈夫!的なニュアンスで鳴いたバチュルが飛び降りて行ったのを見送って、改めて席につき直した。いただきます、というと、待っていたポケモン達も合わせて合唱して、食事を始める。行儀が悪いがスプーンを咥えながらライブキャスターに今日のバチュルの体重を入力して、ついでにニュースを見る。あんまり目新しいものはない。明日の天気は晴れだ、というのが朗報だろうか。ひとりしきりライブキャスターを確認し終わるころには食事も一緒に終わっていた。

 

 

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