獅子の隣に並ぶまで 作:ZZ
「いけ、ベロベルト!」
「バチュル!頼んだ!」
ポケモンを繰り出すスピードは私の方が早かった。登場するバチュルに『ふいうち』の指示をし、着地したバチュルがステップを刻みながらベロベルトの登場予測地点へと歩みを進めて、
「そして決めろぉ!!『だい・ばく・はつ』!!」
「ベロォオオオ!!!」
「は!?」
「ばちゅっ、」
現れたベロベルトが地面に着地した瞬間、『だいばくはつ』を決めた。轟音と爆風が巻き起こり、閃光で一瞬視界が潰れる。焦げたような匂いが辺り一面にまき散らされた。巻き起こった煙でフィールドがよく見えない。咄嗟にバチュルに『まもる』の指示を出したが間に合っただろうか。それにしても正気かあのスキンヘッズ!『だいばくはつ』は自滅わざだ。これを放てば敵に大ダメージを与えることは出来るが、代償として放ったポケモンの全ての体力を消費する。要は、自分のポケモンもひんしになるのだ。大体、自傷ダメージどころか自らがひんしになるようなわざをこんな躊躇なく放てるだなんて、一体どれくらいポケモンとコミュニケーションをとって、
「……は?」
煙が晴れた時、そこにいたのは頬を染めて恍惚とした表情で倒れるベロベルトと、『まもる』のわざを放った形跡があるにも関わらず、丸焦げになって目を回すバチュルの姿だった。踏ん張ったような足跡が残っている。
両者戦闘不能だ。
「ハーッハッハッハッハァ!これが俺たちの真の実力よぉ!今までは一試合につき一回だったが、今回は全開放、全力でいかせてもらうぜぇ!『まもる』なんぞ関係ねぇ!俺たちの鍛えに鍛えた爆発は!強くて!かっこいいんだ!」
「……っ、」
ごめんよ、と唸りながらバチュルを回収し、ラプラスのボールに手を伸ばす。わざが『まもる』を貫くのはまぁ、バトルビデオで見たことがある。威力が高すぎてぶち抜いてしまうか、もしくは一点突破型の技で『まもる』のバリアを砕くか、みたいな実例があるのだ。ベロリンガの進化系であるベロベルトはノーマルタイプで、ノーマルタイプのわざである『だいばくはつ』とも相性がいいから、『まもる』を貫くほど高威力になる可能性が高いのもわかる。わかるけども。それにしたってちょっと威力が強すぎやしないか。
「そしてぇ!宣言させてもらうぜ!俺たちは
どうするもこうするもお前に勝つに決まっているだろう。情報を提示してくれてありがとう、という感じだ。両者ともに最後の一匹だった場合、『だいばくはつ』で両方が倒れたなら、負けの判定が下るのは『だいばくはつ』を放った方だ。なのに、5回『だいばくはつ』しても勝てると宣言する理由は?ブラフ?それとも……、……ああ、いや、ガチだ、これ。ビシャモンの表情がそう言っている。
「どうした
「……いくよ、ラプラス!」
「────!」
爆発するなら先に倒してしまえばいい!意思を汲み取ってくれたラプラスと息を合わせ、ボールを投げる。ラプラスの降臨同時の『なみのり』が決まり、登場したソルロックが押し流されて後退した。追撃の『みずてっぽう』を放つも、スキンヘッズの指示が飛び予想外の挙動をされて、掠っただけにとどまってしまった。ダメージが足りない。確実に倒し切らないと爆発されてしまう。なら、高威力かつ到達が早いわざがいい。
「あてろ!『ハイドロポンプ』!」
「『だいばくはつ』!」
ラプラスの放った『ハイドロポンプ』は一直線に進んでソルロックに突き刺さり、ソルロックは『ハイドロポンプ』によって瀕死になりながらもトレーナーの期待に応えて『だいばくはつ』を敢行した。恍惚とした雰囲気を漂わせながらソルロックが落下し、ラプラスも次いで戦闘不能になる。なってしまう。今のラプラスの体力はウインディよりも高いのに、それでも一撃って!わざの威力があがる『もちもの』を持たせてた?。歯噛みしながらラプラスを回収する。
活路があるならノーマルタイプのわざはゴーストタイプにはきかないということ。そしてヒトモシはゴーストタイプであること。ああ、でも、嫌な予感がする!だけど試合は止められない、だから、嫌な予感がしようがポケモンは繰り出さなければならない。
「…っ、お願い、ヒトモシ!」
「マタドガス!」
着地したヒトモシが、その反動を利用して出現したマタドガス目掛けて直線軌道で跳ねる。『でんこうせっか』にも近いその特攻は、完全に相手の先手をとった。
「『シャドーボール』!」
「モシモシモシィ!」
至近距離からの技の直撃は爆発を引き起こし、その爆風にのってくるくると回転しながら後ろに飛んだヒトモシが距離をとって着地する。
「もう一発!」
「モシ!」
ふらりと揺れたマタドガスに鋭い『シャドーボール』が飛んで、
「『みちづれ』」
「…あっ!?」
わざが当たったマタドガスがひんしになると同時にそのわざが発動する。自分が倒れると同時に相手も文字通り道連れにしてひんしにする技が。咄嗟に逃げようとしたヒトモシがそれをかわしきれずに倒れ、恍惚とした顔でマタドガスも落下した。ヒトモシを回収する。『だいばくはつ』を警戒しすぎた。
……というか。バトルとは別で、さっきからこう、連続して続くと、さすがに物申したいんですけど。
「あの!さっきからなんなんです!?なんかあの、顔が…」
さっきからポケモンがこう、えー、あー、マイルドにいうと、気持ちよかった!(意味深)的な感情を駄々洩れにしながら倒れていくの、ツタージャにみせたくないんですけど……。自分の能力を下げる技、ないしは自分を傷つける技、そして自分が倒れた後のことを前提にした技も、ちゃんとポケモンに使ってもらうには、トレーナーとポケモンとの深い信頼関係が必要になる。極論怪我してでも、倒れてでも、トレーナーを勝たせたいと思っているか、みたいな話になるからだ。そう思っていたんだけど、あー、いわゆる
「何が悪いってんだよ!全部を出し尽くして敵をぶっ倒してんだ、かっこいいだろうが!」
「そうかなぁ……そうかも……」
……いやそんなわけないでしょ!
「その、ツタージャの教育に悪いって言うか……」
「は?何言ってんだお前?」
ものすごく真顔かつマジトーンで言われた。……そりゃそうだけど、で納得しかけてしまった自分が嫌だな。いや、正気に戻れ私。それとこれとは話が別でしょうよ。ツタージャの方をチラ見すると、しっかりロゼリアに目を塞がれていた。うん、ありがとう。
その辺突っ込み入れると長くなるからバトル続行してくれ、みたいなアイコンタクトが審判してくれているジムトレーナーさんから飛んできて、とりあえず思考を戻すことにする。お前が何言ってんだ!みたいなブーイングはギャラリーから飛んでるけど。スキンヘッズもやり返しだした様子を見て、ジムトレーナーさんは頭を抱えている。………頑張って。
さて、ちょうどいいので整理する。
現時点で三連続での両者同時戦闘不能。相手の手札はわかっているが、わかっているからどうにかなる類のものではないのはよくわかった。だって既に『まもる』も高体力による耐久も、タイプ相性によるわざの無効も突破されてしまった。冷静になってみてみれば、地面に残る焦げ跡はスキンヘッズの方にはほとんど伸びず、私のポケモンがいた場所に向かって伸びている。
つまりは、『だいばくはつ』をある程度コントロール出来ている。ということは、出来るようになるまで練習したのだ。『だいばくはつ』という放てばひんしになるわざを、だ。ちょっと変態入ってるのは確かだけど、その努力自体はとんでもないものだと思う。一度しか放ったことのないわざよりも、百回練習したわざの方が威力も高いし命中率も上がるのが当たり前である以上、コントロール出来るまで練習した『だいばくはつ』の威力はどうなっていることやら。それに『もちもの』の補助まで加わっていたのであれば、まぁ、大概のポケモン相手に『だいばくはつ』で相打ちの状態にまで持ち込めるのだろう。
だからそれが主軸になる戦術をとってきたのだ。ネタみたいな戦術のくせして、対応できなきゃあれよあれよという間に終わってしまう辺り容赦がない。
そして、恐らくだが、ラストのポケモンは『だいばくはつ』を放っても体力を残せる何かの手段を残している。じゃなきゃあんな宣言するものか。三回目は『みちづれ』でこそあったが、マタドガスは『だいばくはつ』を覚えるポケモンだし。ゴーストタイプが出てきたときの対策もそうだが、あの宣言、その後の展開がどう転んでも布石になり得る辺り、全く大したトレーナーだ。変な方向に振り切れた人だけど。
私の手持ちは残り2匹。耐久向きのポケモンではなく、致死ダメージを食いしばるだけの『もちもの』もとくせいも、2匹は持っていない。あるのは絆と信頼と、積み上げてきた技術だけ。それでも、先に倒れた3匹のお陰で道は見えた。ああ、ぞくぞくする。これだから、ポケモンバトルは楽しいのだ!
カツ、とボールを爪で弾くと、応えたウインディのボールが一気に発熱する。野次に応戦していたスキンヘッドがびくっと震えてこちらに向き直るが、まぁ、いくら野良バトルだからって相手のトレーナーに時間を与えた方が悪い。
「……はっ、不利なのはそっちだっつーのにその面しやがるかよ。ナットレイ、ぶっ飛ばせ!」
三番目に仲間になったラプラスが出来ることは、当然ながらウインディも、バタフリーも出来る。ただ、バタフリーにやらせると彼の飛翔を邪魔するだけで、ウインディにやらせると私が火傷しかねないからやってこなかっただけだ。でも、ここでその札をきる。
いつかの前世で見た漫画の技法は、現実のこちらでも同じくレッドという少年が形にしていた。わざのボール内先行準備による発動時間の短縮と、それから威力の上昇。代償はポケモンと息を合わせるのが非常にシビアになることと、ボール越しにわざの余波が漏れ出ること。
触れるのも憚られるような熱さになったボールを躊躇なく握りしめ、持ち上げて、腕を引く。登場したナットレイと、その向こうのビシャモンを見てわらい、そして、
「頼んだ!ウインディ!」
直線の軌道でボールを投げる。一直線にナットレイ目掛けて飛んだボールからウインディが飛び出し、まるでボールから直接射出されたかのような軌道で炎を纏った獣が駆け抜ける。
轟音と閃光、そして振動。ビシャモンにはそれがちゃんと見えただろうか。
ウインディにぶっ飛ばされたナットレイの巨体がビシャモンの横を滑るように通過し、バトルフィールドを囲うフェンスギリギリで減速して止まる。気持ち斜め下に向かってわざを放つよう指示したのは、ギャラリーへの被害がいかないようにするための配慮だったけど、うまくいったようだ。恍惚とした表情をする暇もなく、純粋に目を回したナットレイの姿が見える。
わざの先行準備による『フレアドライブ』、実戦で使うのは初めてだったが
「……は?」
「ギャォオオオオオ!」
初のこちらがとったアドバンテージ。勝利の咆哮をあげたウインディが、体を翻して私の方へ戻ってくる。見たとこ『フレアドライブ』による自傷ダメージよりおってるダメージがちょっと多いのは、ナットレイのとくせい“てつのトゲ”辺りが原因か。
先に攻撃することは間違ってない、そう気づいたのはラプラスのお陰だ。だって、あの状況で出されたビシャモンの指示は結構ギリギリで紙一重だった。こちらがもう少し早ければ倒し切れていただろうし、逆にビシャモンがハンドサインによる指示を出していたのなら、あんなぎりぎりでの『だいばくはつ』にはならなかっただろう。たぶんひんしになる前に『だいばくはつ』が出来ていた。
そして、どうやらトレーナーの指示が出ないと動けないポケモン達である、と気づけたのはヒトモシのお陰。ビシャモンのポケモンたちは、トレーナーの指示を予測して動くとか、自分で考えて動くとか、そういうのが一切ない。それが一番顕著だったマタドガスは終始ただ浮いて技を受け、トレーナーの指示を待っていた。待つだけだったともいえる。自発的にかわそうとするとか、何か技を放つための準備をするとか、そういった動きがなかったのだ。それまで登場したどのポケモンも、
であれば、トレーナーの指示が追い付かないほどの速さで相手を倒せばいい。
「…んで、……」
「これでイーブン…!」
「……
言われた意味が一瞬わからなくて、少しだけ首を傾げる。それは勿論、2匹のお陰で勝てたからだけど。バチュルはとてもよく頑張ってくれたし、バタフリーはとても張りきってくれたし。私だって負けるくやしさをまた味わいたくなかったから、結構頑張ったのだ。
「……そういえば、さっきなんて言ってましたっけ?」
「ああ!?」
「『
「……は、ははは」
ビシャモンはわらった。わらうしかない、と言わんばかりの表情ではあったが、目は据わっていた。その顔のまま、ビシャモンは腰のベルトから乱暴にボールをつかみ取ってぶん投げる。
「マルマイン、そいつをぶっ飛ばせぇ!!!」
「『インファイト』!!」
「ギャウウウアアアアア!!」
やられる前にやれ、と言わんばかりにウインディはマルマインの出現予測地点に高速で接近するが、既にボール内で準備を済ませていたのか、『だいばくはつ』が起きたのはマルマインの登場と同時だった。タイミングこそシビアではあるが、それなりに有名な技術だからやり返されても不思議じゃない。『インファイト』を当てるのにマルマインに近づいていたために、ウインディはもろに『だいばくはつ』の直撃を受けた。
「……ゥルルル……ゥゥ…」
……最後は任せた、だなんて、随分気障なことを伝えるようになったものだ。それを聞いたバタフリーのボールが分かりやすく震える。どさりと倒れて戦闘不能になったウインディを回収し、相手もまた戦闘不能になったマルマインを回収した。
「……」
「……」
ギャラリーも静まり返り、私達もただ黙してにらみ合う。共に最後の一匹。火傷にこそなっていないようだが、わざの準備の余波をくらって真っ赤になった手のひらで大事にボールを握りこむ。ボールをどこに投げるかも、ボールからどう現れるかも、そして『だいばくはつ』に対してどうするかも、私とバタフリーはもう決めていた。
「……俺たちは、強くてかっこいい。だから勝つ。いけ、スカタンク!」
「バタフリー!君の練習成果を見せてやれ!」
ボールからの登場は同時。スカタンクは現れた瞬間、大きく体毛を膨らませて吠える。バタフリーは私の指示に静かに応え、滑らかにスカタンクに接近、そう、接近する。バタフリーは私の手持ちで現状唯一飛べるポケモンだ、ポケモンのわざは距離を放せば威力は減衰することが多いし、近寄れば威力が上がることも多い。多い、であって、例外はもちろんあるのだけれど。それを考えれば空高く飛ばせて『だいばくはつ』を避ける、ないしはわざの威力の減衰を狙うのが最善ではあるだろう。
でも、それでは
かっこいい『だいばくはつ』を真正面から突破する、それが私とバタフリーの出した答えだ。
「………ハ、ハハ、決めようぜスカタンク!『だいばくはつ』!!」
「『まもれ』ぇ!」
大きく息を吸い込んだスカタンクが発光して体から爆風と衝撃波を放出して爆音を響かせ、それに呑まれてバタフリーの姿が一瞬だけ見えなくなる。煙が晴れた時、フィールドには肩で息をするスカタンクしかいなかった。やっぱり、『だいばくはつ』を使っても体力を残せたのだ。どう見てもひんしの状態ではない。これでバタフリーが倒れていればあちらの勝ち。でも、私にはわかる。倒れていないことが分かる。
見上げれば、ボロボロになりながらも生存しているバタフリーが上空から降りてきた。……オボンのみを使ったかな、これは。まだまだ飛行訓練の必要はありそうだ。
「……バタフリー!『ぎんいろのかぜ』!」
「フリィァァア!」
「『こらえろ』!」
「カァアアア!」
激しく羽ばたいたバタフリーの羽からりんぷんののった強烈な突風が巻き起こる。それは渦を巻きながらスカタンクに直撃し、しかしスカタンクは『こらえる』のわざの効果でひんしぎりぎりで踏みとどまる。もう一発の指示をする寸前、わずかに光るスカタンクの姿を見て指示を変える。『だいばくはつ』にしてはどう見てもエネルギーの充填が少ない。…たぶん、回復済みのバタフリーなら耐えられる。
「だよなぁ、あれで倒れず残ったなら、攻撃してくれるよなぁ!」
「カァ!」
再びの爆音。予想通り今までの『だいばくはつ』より小さい爆発が起きた。……エネルギーを絞った『だいばくはつ』?いや違う、とくせいの“ゆうばく”か?ゲームの方だと直接攻撃でひんしになった場合、相手に四分の一のダメージを与える、だったけど、確かダンジョンとかだと直接攻撃で大ダメージを負った場合反撃ダメージを与える、だったような…?うろ覚えだが。こちらでのとくせいの効果はどうなのか、はまだ全て調べきれていないのだ。知らないとくせいだってごまんとあるから、そっちである可能性もある。
滑り込ませた指示は間に合っていて、バタフリーの体力もオボンのみで回復していたお陰で残っていた。再びの爆発に呑まれ、煙に消えたバタフリーから一条の光線が伸びてスカタンクに突き刺さる。それはバタフリーのもう一つの切り札である、
「フリィイイイイ!!」
「スカタンク、戦闘不能!よって勝者はマサラタウンのラディア!」
わっと巻き起こった歓声の中、戻ってきたバタフリーを羽を痛めないよう気を付けながら思いっきり抱きしめる。ありがとう、よくやってくれたね、と感謝を伝えると、傷にも気を付けてよね、的なことを言いながらもバタフリーは私の首元に擦り寄った。ああ、嬉しい。そして、とても楽しかった。
バチュルが倒れた時、その足元には踏ん張ったような跡が残っていたから、『まもる』を突破されてしまうにしろ猶予があるというのは分かっていた。だから、バタフリーがしたのは単純に『まもる』で一時的なクッションを作って、迫ってくる爆風そのものに乗っかる。説明してしまえばそれだけのことだった。タイミングを間違えれば爆風に呑まれたろうし、……うちのバタフリーが目指すところであるレッドのバタフリーは、自分に向かってくるわざの起こした風圧に乗ってわざをかわす、とかの意味が分からない技術を平然とやることを覚えば、『まもる』を使わないとそれが出来ない上にダメージを受けているからまだまだだろう。でも出来た。生き延びることが出来た。そして、相手を倒せた。それを今は喜びたい。
ひとしきり褒めたバタフリーをボールに戻し、ビシャモンと握手をする。
「ありがとうございました!とっても楽しいバトルでした!」
「……ああ、すげえもん見させてもらった。だが、俺は大爆発四天王の中でも最弱、これで『だいばくはつ』に勝ったとは思わねぇこったな」
「だいばくはつしてんのう」
ビシャモンみたいなのが後三人もいるの?それはさすがに勘弁してほしい。固まった私にビシャモンは笑い、規定通りの賞金を渡してくる。
「頭数ハンデが、とか言って悪かったな。ちっとキレてたのはそれでだろう?」
「……あー、はい。こちらこそ色々と気遣ってもらったのに、挑発してしまってごめんなさい」
「ハッハッハ、まぁ、ガキのうちは感情を好きに爆発させとけや。大人になればそう出来ない時も増えてくるからな」
「そうですね、大人になれば責任も生じてきますからね」
冷え切ったジムトレーナーさんの声が割り込んできて、二人そろって固まる。
「私、くれぐれもギャラリーやフィールドには配慮してくださいといいましたよね?ただでさえあなたの『だいばくはつ』の影響で苦情が出ていたのに、五発も『だいばくはつ』させるとか馬鹿ですかあなた」
「いや、一応勝とうが負けようがこれで最後にしようと思ってたんで、最後くらいは…」
「配慮してくださいといいましたよね?フィールド破損してるんですけど?」
「はぁ!?ちっこいヒビが入ってるだけじゃねぇか!」
「ちっこい!?ちっこいですって!?あの私の腕より長いヒビが!?
……ああ、えーっと、ラディアちゃん?でいいかしら?」
「はいっ!?」
そーっとロゼリアからツタージャを受け取って退散しようかと思っていたのだが、途中で声をかけられて思わず大声が出てしまった。
「ハクタイのためにありがとうね。……ロゼリアも久々に子供の面倒を見られて嬉しかったって」
「はい、……はい、こちらこそ、審判だけじゃなくてツタージャまでありがとうございました。あー、えーっと、あの、フィールド破損は私も一因がありますから、何か、」
「再三言われても公的場所での野良バトルってやつのマナーが理解できてないこいつが悪いからラディアちゃんはいいわよ。それより早くポケモンセンターに行きなさい」
「……俺も行きてぇんだけど」
「マタドガスとナットレイとスカタンク以外は自滅なんだから、あなたは急がなくても問題ないでしょう!ここで手当てするのはいいですけど、もうちょっと話を詰めさせてもらいますよ!」
大人の話が始まり、とりあえず言葉に甘えて退散させてもらうことにする。ぺこりと頭を下げると、二人ともこちらに向けて軽く手を振ってくれた。…後でハクタイで公営寄付金とかやってないか探しておこう。
結局その後ハクタイには一泊した。ポケモンセンターでの手当てに時間がかかったのと(通信交換があるように、ポケモンは生きたままデータ化できるという特性を利用して、破損データを修復する要領で治療が行われる。なのでポケモンセンターの治療用の機械にボールごと入れれば治療は短時間で完了するのだが、今回は機械の方に空きがなかったのだ。ビシャモン、どうやらあれで暴れ切った後だったらしい)、ハクタイの皆さんがよく声をかけてくれたのが原因だった。ギャラリーがうわさ話を広めたのが理由のようだったし、旅の子供でイッシュのツタージャを連れた少女なんてそうそういないから、そりゃぁまあ、見つけやすいわけだ。
とうのツタージャは、と言えば、とても、とても目がきらきらしていた。バトルを見た後はどう思ったか聞こうと思ってたけど、聞くまでもなく、ぼくも!ぼくもあれやりたい!と駄々をこねだしたのである。バトルにはまだ早いと止めたら泣き出したので、試しにローザのバトルビデオ(最後の一匹になったジャローダが3匹倒し切った大逆転のやつ)を見せたら泣き止んで見始めた。…バトルに強い興味を持ってくれたようで何よりである。なんか真似し始めないかだけ気を付けた方がよさそうだ。
<だいばくはつによるひんし>
通常の瀕死状態より外傷が少ない影響か、通常の瀕死状態よりも回復が早く、放っておいても翌日には復帰していることが多い。
<大爆発四天王>
『だいばくはつ』に魅せられた子供たち四人が名乗り始めたものであるが、大人になっても名乗り続けて『だいばくはつ』の魅力を世に広めている。四天王のうち一人はとある地方で『だいばくはつ』一本ででんどういりを果たすほどの腕前。尚、自爆四天王たちとは因縁の仲。