獅子の隣に並ぶまで   作:ZZ

40 / 78
あざやかにはなかおるまち

 

「あー…、いないか」

 

その日のノルマで最後のゴミ捨て場だったのだが、ロトムの姿はなかった。ゲームでこそ始めて出てきたのはシンオウだったが、こっちだとシンオウでのロトム、他地方産のポケモンをシンオウで野生で見つけるみたいな難易度になりそうだ。というかいるのかどうかも定かでないものを見つけるというのがちょっと、うん。縛りにこだわらなければいい話ではあるんだけども。

 

私が始めたのは、ジャンク屋とかリサイクルショップなんかで電池をいれればなんとか動くようなおもちゃを買ってきて、電池を入れたままあちこちの廃墟やゴミ捨て場に置いてくる、ということだった。ゴミ捨て場のものは一週間もすれば回収されてしまうので、ゴミ収集車がいったあと、せっせとおもちゃを置きに行く必要があるのだが。ほんとをいうともったいないので再利用してローテーションでも組もうと思ったのだが、移動する人形みたいな感じでホラーな都市伝説になりそうだと気づいて(そこまで町の人たちが見てるかどうかは置いといて)、電池は収集車がくる前に回収し、おもちゃ自体はそのままゴミとして回収してもらうことにしている。おもちゃに意思があったら恨まれてそうだが、売り飛ばされた時点で寿命だったと思ってもらうしかない。

 

ゴミ漁りをする推定10歳の幼女が外から見たらどう見えるかはちょっと考えたくないので考えない方向でいるが、人目は忍んでいるので大丈夫だといいなぁ……。一応もりのようかん内部にも置いてきたが、次の日には壊されていたのでそれから設置をやめた。歩いて行った形跡があればロトムが入ったかと思って追ったんだけどな。

 

とりあえずコトブキ、ソノオ、ハクタイに限定し、各地のゴミ捨て場と廃墟の事情を把握してから始めたことではあるが、今のところ成果はない。かといってこれ以上地域を広げれば、私の足では限界がくる。『そらをとぶ』の免許の取得を真剣に考えようかと思ったが、『そらをとぶ』を使えるポケモンがいないのだ。というかヒトモシが未進化なので飛べるポケモン自体バタフリーしかいない。

 

そのバタフリーも一応私を持ち上げて飛ぶことは出来るが、長距離の安定飛行が約束されていないということで『そらをとぶ』使用免許認定対象範囲外のポケモンなのだ。『そらをとぶ』持ちのポケモンをレンタルするという手もあるし、ジムバッジ取得のバトルと各ひでんわざ免許の取得バトルは別途分けられているので別に取りに行ったっていいのだが(筆記と実技だけでなく、試験バトルがあるのがこの世界の免許取得である)、私『そらをとぶ』の世界免許取得可能年齢じゃないんだよなぁ……。地方ごとの免許取得であれば10歳からとれるのに、世界基準の免許となると15歳からになるのだ。今後もあちこちを巡るつもりでいる以上、各地方でその都度免許取得のためにさく時間はちょっともったいないな、というのが本音である。私だけでなくひでんわざ持ちのポケモンも勉強しないといけない以上、毎度勉強してバトル関連のトレーニング時間やコミュニケーションの時間が減るくらいだったら、五年待った方がいいかな、と言うのが私の考えである。『なみのり』免許の取得も同じ理由で止めている。……ラプラスには申し訳ないけど。

 

どっちにしろカロスにいくまでは『そらをとぶ』を使えるポケモンが仲間になる予定はないので、それよりかはレンタルで『テレポート』を使えるポケモンを雇うか、『そらをとぶ』専門のタクシーを週間単位で雇うか、の方がすぐできるし確実かなあ…。でもお金がなぁ……。ゴミ捨て場や廃墟への移動ついでに道行くトレーナーとバトルをしてはお金を頂いているので酷くお金に困っているわけではないが、それを思えばもうちょっと稼いでおくべきか。ヒトモシとツタージャの公式戦デビューもさせたいし、またどこかで地方大会やってないかを探しておいた方がよさそうである。

 

今後の予定を組み立てながら家に戻ると、また冷蔵庫のドアが開いていた。この数か月の間でも何度か開いてたので、閉め忘れではなく故障を疑って業者を呼んだりもしたのだが異常なしと言われてしまってちょっと困っている。いっそテープで止めようか迷っているのだけど、冷蔵庫込みで借りてるからテープの跡を残したくないし。大家さんにもっかい連絡しておこうと心に決め、中身の傷みがないことを確認して、ドアをちゃんと締め直す。足元でツタージャがドアもないのに何かを閉じるような仕草をして満足そうに笑ったので思わず抱き上げて撫でまわしてしまった。かわいいやつめ。ちょっとぬぐぐ、みたいな顔をしてヒトモシが足元に居るので、ついでにヒトモシも抱き上げてやる。バチュルは勝手に肩に登ってきたのでちょっと首を傾げて頬ずりのような真似をすると、バチュルは思いっきり体を擦り付けてきてくれた。

 

ひとしきりポケモン達とじゃれあった後、買い込んだおもちゃを外に置きに(よりいっそう古くするために、買ったおもちゃは一端庭に置いて雨風に晒すことにしている)出ると、そちらに移動してやっとウインディとバタフリーがボールから出てきた。珍しく出てこないな、と思っていたら、どうやら庭から夕焼けを見たかったので運んでもらう魂胆だったらしい。ここからだとソノオタウン一面に広がる花畑と一緒に夕焼けが見れるので、確かに絶景だった。ソノオではポケモン達の影響もあるのか一年中花畑が満開だ。あざやかにはなかおるまち、というキャッチコピーは伊達ではない。まだ出てきていなかったラプラスのボールが震えてわたしも!と催促してくるので、笑いながらバタフリーに声をかけると、バタフリーは窓からラプラスのシートをとりに行ってくれた。適当な場所の石をウインディが蹴り飛ばしている間にバタフリーはシートをぶらさげて戻ってきて、ウインディと協力しながらシートをひく。引き終わるか引き終わらないかというところで、待ちきれないと言わんばかりにラプラスが飛び出てきた。

 

 

「────♪」

 

 

今日のラプラスは随分ご機嫌らしい、ハクタイに行くついでに、人目がないのをいいことに205ばんどうろでちょっとだけ背中に乗ってやったからだろうか。歌を歌い出したのを聞きながら、ブリキのロボットやシンバルを鳴らすエイパムのぬいぐるみや、変身ベルトなどを並べていく。あんまり雨風に晒しすぎても今度は電源を入れられなくなってしまうので、この辺加減が難しい。以前から晒しておいたおもちゃも、乾いていることを確認してから一つ一つ電池をいれて電源が入るかなどを調べ、並べ直す。

 

腰を上げると、歌で気付いたのか、開いた窓からはバチュルとヒトモシとツタージャも顔を出していた。

 

ざぁっと風が吹き抜け、舞い上がった花びらが夕焼けの中で煌めいている。単純に、ああ、綺麗だなぁ、と思った。………家借りてから思ったより余裕なかったんだな、とも思う。もう4ヶ月どころか5ヶ月にも届こうかという長さでここで暮らしているのに、ここでこの景色をみて、綺麗だなぁと思ったのはこれが始めてだったから。

 

 

「……うーん、なんか、ゆっくりしたくなっちゃったな」

「フリ。フリィ?」

「あー、うん、明後日おもちゃ置きに行ったっていいしね」

「ガウ」

「……ん。ありがと。皆、明日は休息日にしてもいい?ピクニックとかどうかな。花畑を楽しむってそういえばしてなかったし」

 

 

一斉にいいよ!といってくれた皆にもう一度ありがとうを返して、ラプラスを回収してシートを払い、家の中に戻る。…せっかくだしお弁当も作ろうかな。レトルトじゃなくて、いつか母が作ってくれたみたいなちゃんとしたお弁当。小さい頃は家で一人になるのは当たり前だったけど、ちゃんとしたお昼ご飯はいつも両親が用意してくれていた。父と母はそろって審判業をしているが、カントーどころか世界でも数少ないチャンピオンカップ決勝戦の審判経験者だ。だからこそ毎朝『そらをとぶ』での迎えがくるような立場でもあったんだけど。両親の休みが被るのは滅多になかったし、そもそも両親が休みをとれる日というやつも少なかったけれど、料理だけは父も母も代わる代わる私のために作ってくれていた。グリーンの生家に預けられる日のお昼ご飯だけはなかったけど、どんなに忙しいシーズンでも、朝昼夜と必ず私のためにご飯が用意されていたし、出来るだけ食卓は三人で囲んでいた。……今思うと、二人とも帰りの時間だけはいつだって定時だったのも私のためだったんだろうな。10歳で旅立つ子どもを見送るのも不安だろうに、他地方に行く報告をしても笑っていってらっしゃいを言ってくれるのも、ほんと、愛されているな、と思う。

 

 

確かスーパーはまだぎりぎり開いていたはずだ。皆にもいつもとちょっと違うご飯を用意してみようか。手づくりポケモンご飯、一応手持ちのタイプに合わせてレシピは目を通したことがあるし。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。