獅子の隣に並ぶまで   作:ZZ

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ピクニックの章

 

……とかいって、弁当作りに張り切りすぎて夜遅くまでかかってしまい、次の日結局寝坊してしまったのだが。私含めて全員のお弁当作り、思い立ったからといってすぐやることではなかった。十一時くらいにまだ一品増やせる!って思った時点でやめとかなかったのも敗因だよなぁ…、まだって思っちゃダメなんだよな、何と戦ってたんだか。デザートに追加でポフィン作ろうと思い当たったあたりでヒトモシに『おどろかされて』止まったからよかったものの。

 

朝と昼の間の微妙な時間に起きてしまったせいで、皆の朝ご飯を待たせることになってしまったのが申し訳なくて仕方ない。気にしなくていいからピクニックいこ!と伝えてくれたのは嬉しかったけど。昨日後は家を出るだけの状態にしておいてよかった、と思いながら服を着替え、まとめた荷物は結構な量になっていたので、往復するのも面倒だな、と一部『機材』に入れようとして、手が空をかく。あれ?と思ってそちらを見ると、ウインディが荷物を咥えあげていた。器用に手提げのところを咥えている。

 

 

「ギャフ」

「……ありがと」

「グル」

 

 

喉を鳴らしたウインディが玄関に向かい、余った荷物を持ち上げようと思ったら、バタフリーとツタージャがそれぞれぶらさげたり『つるのむち』で高く持ち上げて支えたりして荷物を運びあげていた。ありがとう、と笑って、荷物を持ち上げても大きすぎて地面に引きずっているヒトモシを荷物ごと抱え、持ち上げてるのか乗っているのかわからない様子になっていたバチュルもやっぱり荷物ごと持ち上げる。…そう二匹とも拗ねないでほしいな、体格的に仕方ないんだから。

 

途中でバチュルが体から駆け下り、ちょっと行き先が怪しいツタージャの先導をしにいってくれたのを見送って、私とヒトモシものんびり家を出る。

 

晴れて本当によかったな、と思いながらヒトモシと荷物を抱えて道を歩く。ソノオタウンから出た先にも大きな花畑があるのだが、あちらは野生のポケモン達の領域だから、目的地はソノオでピクニック向けに解放されている方の花畑だ。たまにソノオの人がくつろいでいるのを見かけるのだが、どうやら今日は貸し切りのようだった。これ幸いと目星をつけていた木の下に荷物をおろし、自分とポケモン達用のシートを広げて弁当を並べる。並べる、というかそれぞれの器に作った食事を盛っておいて、崩さないようラップをかけて持ってきた、というだけなのだけど。デザートとかどのポケモンでも食べれる用のおかずも作ってそちらも分けて別の器にそれぞれよそってきてあるので、いつも食べてもらっている量よりは大分多めだ。

 

一応各ポケモンに合わせて作ってみたけどどうだろうか。一部途中まで同じ手順で作ったものもあるが、大体は失敗しないと噂のレシピを元にしているし、変なアレンジもしてないから大丈夫だと思うんだけど。自分用のものはからあげとかオクタンウインナーとか卵焼きとか野菜とか、後おにぎりとかのいかにも手作り!お弁当!みたいな感じでまとめておいた。

 

心なしか皆の顔がそわそわしていてちょっと照れ臭い。…父と母もこんな気持ちで私を見ていたのだろうか。

 

いただきます、と声をかけると、皆も唱和してご飯を食べ始めた。反応がちょっと気になったのでおにぎり越しに眺めたが、皆結構がっついて食べていて、あの食に煩いラプラスですら嬉しそうに食べてくれていたのでほっとした。…レシピがよかったのかなぁ。これだけ食いつきがいいのなら、ラプラスのご飯、ハイブランドじゃなくてあのレシピシリーズから選んで手作りでもいいかもしれない。手間はかかるがハイブランド品よりは安上がりだし。栄養管理がちょっとめんどくさいことになりそうだけども。

 

おにぎりを食べ終わったのでおかずに手を付けようとして、お箸を包み忘れていたことに気付いて頭をぼりぼりとかく。どうにかなんないかな、と思って包みをひっくり返したが、ピックも刺していないからちょっとどうにもならなさそうだ。家はここからでも見えるくらいの距離だし、いったん戻って取ってくるか。

 

一声かけて立ち上がると、バチュルが肩にかけ登ってきた。

 

 

「いいのに、一人でいけるから。ご飯は?」

「ちゅるる」

 

 

後で頂く、一応ついていかせて、と返事が返ってきて、このバチュルは本当に真面目というか、なんというか。町の外ならともかく、ソノオタウン内で何かが起きるってほんとよほど運が悪くないとありえない。ゲーム主人公じゃあるまいし、大体この地方のシナリオはちょっと前に終わっている。しいて言うなら移動中にバトルをふっかけられたときに困るかもしれないが、それだって後で手持ち連れてくるので、と言うだけで済むし。

 

気持ちは嬉しいのでそのままバチュルを肩に乗せ、家まで少し早歩きで移動する。早く皆のところに戻ろう、お箸は野営の時に使ってるやつが『機材』にあるからあれにしよう、と思いながら玄関のカギを開け、ドアを開いて、

 

 

 

 

 

 

────()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「「!!!????」」

「■■■!!??」

 

 

待って待って待て待て待て待て、うそでしょ!?脱兎のごとく逃げ出したロトムは家の中を滑るように飛んでいく。慌てて飛び出したバチュルが追うも、思いっきり意表をつかれたせいで大分出遅れた。それでも窓際まで追い詰めたが(慌てていたらしく何度か窓に激突していた)、ロトムはするっと窓をすり抜けて屋外に出てしまった。……窓をあける時間が惜しい!

 

 

「バチュル!()()()()()()()()()()()!」

「ばちゅ!?……ばちゅ!」

 

 

戸惑いながらも窓際に到達したバチュルが派手にガラスをまき散らしながら窓を割って外に飛び出し、着地してハンドサインを汲み取ったバチュルは『くものす』をロトムに向けて吐き散らして、────当たった!命中した『くものす』はロトムをからめとって地面に落下させた。同時に暗示に近い効果を発生させ、この戦闘からは逃げられない、という強迫観念を植え付ける。

 

 

「…■■■!!!」

 

 

なんとか『くものす』を振り払ったロトムが再び浮かび上がり、臨戦態勢をとってこちらに挑みかかってくる。できれば交流なりなんなりしたかったけど仕方ない!ロトムがバチュルのいたはずの場所に向かって黒い風のようなものを吹き出すが、バチュルは既にそこにはおらず、『ふいうち』の姿勢に入っていた。綺麗に入った『ふいうち』にロトムがよろめき、動きの止まったロトムに追加の『むしのさざめき』が命中する。

 

 

「■■■■■■!!!!!!」

「…っ、」

 

 

悲鳴かと思ったが、次の瞬間発生した目に見えるほどの音波がバチュルに命中して、バチュルは踏ん張れずに吹っ飛ぶ。『さわぐ』だろうか、家の中にいる私も鼓膜が痛い!でも耳を塞げばハンドサインでの指示も出来なくなってしまう。どうにかこらえながら『さわぐ』ロトムに対して、『むしのさざめき』と────『ぎんいろのかぜ』『かみくだく』の指示をする。

 

 

「フリィィイイイ!!!」

「ギャゥウウアア!!!」

 

 

家の窓が割れる音と戦闘音。離れた場所の手持ち達に聞こえるかはちょっと賭けだったけど、ソノオタウンが田舎で助かった。マサラでだって何かが壊れた音(例:近所のケンタロス牧場から柵を破壊してケンタロスが脱走する音)は結構遠くまで響いていたのだ、同じ田舎なら音が通るんじゃないかと思ったが、届いてよかった。

 

バタフリーが巻き上げた『ぎんいろのかぜ』が先に到達して『さわぐ』ロトムを押しとどめ、体勢を立て直したバチュルの『むしのさざめき』が直撃し、最後のとどめのようにウインディの『かみくだく』が命中した。………焦りすぎたなこれ、完全にオーバーキルだ。慌てて『機材』からげんきのかけらを引っ張り出し、勝手口から庭へとダッシュする。

 

 

「どうなった!?」

「フリ」

 

 

落下したロトムに駆け寄ると、ロトムは完全に目を回していた。げんきのかけらを飲み込ませようと素手で触れようとして、そういえばロトムはでんきタイプだった、と慌てて手を引っ込める。プラズマで体が出来ているといわれるほどだ、ろくにコミュニケーションをとっていないどころか、バトルした相手になる私が今触れられるかどうかは怪しい。……絶縁手袋は『機材』の中だ、げんきのかけらと一緒に持ってくるべきだった。ゴーストタイプ的な意味でも触れられるかは怪しいし、ポケモンセンターの方が早いか。ごめんよ、と謝りながらポーチのモンスターボールを近づけ、気絶しているせいかすんなりとロトムはゲットされた。

 

遠くからソノオタウンの誰かが大丈夫かー!と声をかけてくれているのが聞こえる。……やっちゃったなぁ。

 

 

 





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