獅子の隣に並ぶまで   作:ZZ

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Side:ラプラス

 

 

ラプラスの世界はあまり鮮やかな世界ではなかった。いてだきのどうくつで生まれ育ったラプラスの視界に入るものは氷の白と水の青、後はあそこで暮らすポケモン達の色彩が添えられているばかりで、決して色鮮やかな世界ではない。ただ代わり映え無く同じ景色が続く暮らしを、ラプラスは当たり前だと思っていたし、鮮やかという言葉の意味だってよくわかっていなかった。

 

だから、初めてリーダーと慕う人間に連れられて外に出た時、とてもとても驚いた。あれだけ色のある世界というのは初めてのことだったからだ。しばらくはきちんと直視することも出来なかったくらいだ。何せ、余りにも鮮やかで、まぶしいくらいだったから。地面が緑や茶色で、空は青。壁はどこにもない。あの大きくて鮮やかな岩はなんだろう、中から人間が出てきたけれど、あれは人間の住処?きょろきょろと辺りを見回すラプラスに、喉を鳴らして笑ったラディアがそっと寄り添ってくれたのを覚えている。その後あまりに熱心に辺りを見すぎて、初めての直接浴びる日差しにめまいを起こしてポケモンセンターに担ぎこまれたところまでがセットだったけど。

 

ほんの少し外に出ただけだったのに、世界は一気に色づいた。出された地面を氷と同じように滑ろうとして、全然進まなくてパニックになったこともあったっけ。白くなくて熱い地面は滑らないのだ、というのはその時初めて知ったことだ。熱いといっても火傷しそうとかそういう類ではなくて、暖かさのほんの少し上程度の、じっとしていられる程度の熱さであったけど。それを訴えると、そうか、君にとっては地面は熱いか、と笑ったラディアはいつからかひんやりとするシートを用意してくれるようになった。

 

いてだきのどうくつが特に()()()()世界であって、世界の熱さも地面の熱さも普通のことなのだ、というのは旅をして学んだことだ。季節が巡り、木や植物は、生い茂っては枯れるものなのだ、ということを知ったのも、花を見たのすら初めてだったし、きのみを見たのも初めてだった。食事にあれだけバリエーションがあるのだ、というのも、ラディアに教えてもらったことだ。食事のおいしさについてだって、初めてだらけのことだった。色んな味が食べてみたくて、色んなものを食べさせてもらって、それでリーダーは困っていないかな、とちょっとだけ不安だったけど、ラディアはラプラスの食べっぷりを見てはにこにこ笑って今日はどう?と聞いてくれたし、今日こそは気に入ってもらえるブレンドだといいな!と笑いかけてくれる。それはラプラスにだけのコミュニケーションだったから、ラプラスはそれがとっても嬉しかった。

 

でも、そろそろラディアにもっとかまってほしいなぁ、とも思う。毎日ラディアは皆に気持ちを配ってくれているけれど、それでも比率というものはあって、特に最近はツタージャとロトムに対しての比率が重くて、ちょっとラプラスに対する触れ合いが少なめなのだ。しょうがないことではあるとわかっているけど、それでも一抹の寂しさはある。

 

 

 

 

 

「────……」

 

 

205ばんどうろの水場に出してもらって、ラプラスは思いっきり伸びをする。今日はおやすみの日じゃなかったっけ?とラディアを振り返ると、内緒だよ?と笑ったラディアが腕を広げてラプラスを見る。服装を見て、あ!と気づいたラプラスは喜び勇んでラディアをくわえ上げた。後ろの方でバタフリーとウインディが渋い顔をしていたような気もするが、気にするものか。

 

誰かの目につきそうなところでは、ラプラスは人を背中に乗せて泳いではいけない。それは丁寧にリーダーに説明されたことだ。なんでも、お互いの身の安全のためにそういうルールが定められていて、本当は資格というやつがないといてだきのどうくつでも背中に乗ってはいけなかったのだそうだ。いてだきのどうくつ内はちがいほーけんみたいなものだから、カンナさんも何も言わなかったけど、本来はそうなんだよ、とラディアは言った。ちがいほーけんの意味はわからなかったけど、どうしてもだめなのだということはラプラスは理解した。

 

じゃあ、くわえて運ぶのはいい?と聞くと、ラディアはしばらく固まった。その発想はなかった、という顔をしていたっけ。それでいいの?と聞かれて、背に乗せるのも大好きだけど、一緒に泳いで一緒に水面を見つめたいのだ、ということを一生懸命に伝えると、ラディアはやっぱり笑って頷いてくれたのだ。一応本人もあちこち調べた上で、ポケモンにくわえられた状態での遊泳は法律違反かどうかを確認して、それが違反と明記されていないことを確認したようだったが。

 

不思議なことに(周りからすれば分かりやすいものではあったが)、ラプラスがどうしてもラディアにかまってほしくなったとき、ラディアはこうして涎にまみれても、水に落ちても大丈夫な服を着て両腕を広げてくれる。その瞬間がとても嬉しかった。

 

 

「──!」

 

 

くぐもった声が水面に響く。今日はとってもいい日だ!

 

 

 

 

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