獅子の隣に並ぶまで   作:ZZ

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Side:ウインディ

 

 

夜、ウインディはラディアに体のブラッシングをされていた。換毛期が近いのか、ブラッシングすればするだけ毛が湧いてくるうえ、そもそもウインディの体は随分と大きく、小さな子供のラディアにとってはブラッシングだけでも随分手間だろう。それでも、毎日のようにラディアはウインディにブラシをかけてくれていた。

 

「大きくなったなぁ、ほんと!」

 

毎度そういわれるのも、もはやお約束のようなものだ。ウインディの体は随分と大きい。ガーディであった頃はラディアに抱えられる程度しかなかったけれど、今ではウインディを抱えてもらうよりは、ウインディがラディアを抱える方が様になって見えるだろう。ラディアがウインディを抱えようとしても、まず抱き着いているようにしか見えないだろうとも言えるが。

 

ラディアのウインディは平均的なウインディの体躯より大きい。大きい、というよりか、実のところは大きすぎるともいえる。人間でいえば2mの身長があるようなものなのだ、しかも時間をかけて成長したものではなく、進化で一気にそこまで大きくなったことに、当初ラディアは随分と心配していた。実際健康診断にも連れていかれたけれど(そもそも捕獲、もしくは進化の時点でポケモンセンターに連れていく、というのはラディアは徹底しているが)、ポケモンセンターの医師の返事はゆるいものだった。身体機能に異常はないし、ちょっと大きくなりすぎちゃっただけだよ、珍しいことだけれど、個性の範囲だ、と言っていて、実際その通りだった。

 

大丈夫ならよかったけれど、と主人は胸をなでおろして、改めてその後に進化を祝われた。バタフリーには騒がせないでよ、と小突かれて、ラプラスにはおっきいねぇ!と無邪気にはしゃがれたのだっけ。

 

 

実は、ウインディはここまで大きくなったことに心当たりがある。

 

ずっともやもやと心のうちに抱えていたことだったけれど、はっきりとああ今の体が嫌だ、と思ったのはいてだきのどうくつに訪れた時だった。大きい体のポケモン相手にバトルをする、というのは何度かしてきたことではあったけれど、パウワウ達やジュゴン達、コダック達やゴルダック、そしてラプラス達に囲まれての生活をした時、自分たちより大きい体のポケモン達に囲まれて生活している、というのをガーディは常に意識していた。何せ野生のポケモン達の真っただ中であるから、何が起きてもおかしくない。

 

なのに、ラディアの側にいたのは小さなバタフリーとガーディだけだった。あの空間にいたポケモン達は自分たちに優しかったけれど、優しいポケモン達ばかりではない、というのは、ラディアもバタフリーも、もちろんガーディとて、とてもよく知っている。

 

もしもあの場で一斉に襲い掛かられたら、きっと体格の良さだけでガーディたちは押しつぶされてしまっていただろう。

 

優しい世界だったけれど、ラディアの身の安全を任されていた以上、ガーディもバタフリーも、その想像はずっと続けなければいけないことだった。

 

 

バタフリーは最終進化だ。種族的にも、進化という意味でも、もう体が大きくなる見込みはない。ラプラスだって、生後一年か二年程度の体躯はまだまだ小さく、大人の体になるにはもう数年かかる。この後仲間にする予定のポケモン達の話もラディアに聞いたけれど、大きくなるポケモン達はいたが、それこそ進化を重ねなければ大きい体にならないようなポケモン達ばかりだった。

そのポケモン達の加入と進化を待っているのでは遅いのだ。

 

 

ウインディは生涯忘れることのない後悔をその身に抱えている。血の匂いと薬の匂いを強く漂わせ、白いベッドに埋もれたラディアの姿はきっと一生忘れないだろう。お互いに言葉を重ねて許しあったことではあるけれど、それでもずっと、忘れない、忘れてはいけない楔としてあの光景を覚えている。

 

 

だから、()()()()()()、と自分に定めていた。

 

起こさせるつもりはないが、もしも何かがあってしまった時のため、何があってもあの優しい主人を守れるよう、ガーディは強くなりたかったし、大きくなりたかった。ラディアも、バタフリーも、まだ子どものラプラスも守れるくらい、大きく。何が来ても自分の背に庇ってやって、時には背中に乗せて逃げてやれるような、そんな大きな体が欲しかった。いつしかラディアも成長して、ラディアの父親と母親のように大きくなるのだろう。成長したラディアをも、覆って守れる体が欲しかった。

 

そうやって思いを蓄え続けた結果が、きっと、進化に反映されたのだ、とウインディは思っている。

 

「ほんと大きくなったよねぇ、ウインディ。ブラッシングで出た毛量見る?私の体よりいっぱい毛が出てる気がするんだけど!」

「クゥーン…」

「え?気持ちいい?……ならよかったけれど」

 

ブラッシングの時間が伸びたのもまたいいことである、というのは、手間をかけさせている後ろめたさと同時にウインディが抱えている思いでもあった。この時間が長引くだけ、ラディアと接する時間が伸びるから。

わざと体をラディアに擦り付けると、ラディアから服がもっとやばくなる!と悲鳴があがった。もう毛まみれで、自分の匂いまみれでもあるのだから、今更だろうに。これくらいの甘えは許してほしかった。

 

「あー!もう!どうせ毛まみれだし!」

 

叫んだラディアがウインディの体に丸ごとダイブする。体全体でぐりぐりとウインディを撫でまわすラディアに、ウインディは知らぬうちに喉を鳴らして喜びを表していた。

 

 

 





<キャタピーとガーディ>
キャタピー加入時、彼らは一度大喧嘩をしている。
まもれなかったキャタピーと、同行しなかったガーディ。お互いの主張は平行線で、下手をすれば一生の亀裂にすらなっていたかもしれない。
だが、彼らは最終的に気持ちの置場を決め、今では親友と言っても過言ではないほどに距離を縮めている。

後からラディアの元に来たキャタピーが一番。
先にいたガーディが二番。

序列はその時決められたものである。

ガーディはそれをしっかりと受け入れ、二番手としての立場を全うしようと決めている。

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