獅子の隣に並ぶまで 作:ZZ
エスパータイプの訓練をさせてもらうのであれば、ラルトス次第ではあるが、下手をすれば一か月はこちらの研究所にお世話になることになる。先にキャンプ地の許可とお風呂だけは使わせてもらえるようにお願いした後、バタフリー以外のポケモン達はオダマキ研究所の庭の方に預けているのでそちらに移動する。ついでに皆にも予定変更を伝えよう。
だが、庭への出入り口へと近づくにつれ、何やら外が騒がしいことに気付いて眉をしかめる。ドアを開けるとおろおろした様子のデンチュラ(この前のカイナ大会で進化した)が呼びに行こうと思ってた!と待ち構えていた。どうもドアノブをひねれずに困っていたらしい、物質を霊化して通過できるロトムを投げ込もうとしていたのか、短い腕にロトムが抱え込まれていた。……ロトムも嫌なことは嫌ってちゃんと言えばいいのに。ロトムは電気に近い体を持っているせいか、電気を食べるデンチュラには弱いところがある。
ていうかどうしてロトムにドアノブ捻ってもらわなかったんだ。そもそも普通にお願いすればぶん投げなくてもドアをすり抜けてくれるだろうに。
デンチュラはたまにその真面目さが一周して変なことをやらかすことがある。慌ててたんだろうなぁ、と思いつつ、デンチュラからロトムを受け取ってバタフリーと一緒に抱え、案内のデンチュラの後をついていく。
そうして、広がっていた光景に思わず頭を抱えそうになった。
「……何やってんのかなあの子たち」
「フリィ……」
「ものすっごい喧嘩してるねぇ…」
広場のようなところで、それは見事なキャットファイトが開催されていた。ツタージャとラルトスがそれはもうくんずほぐれつで取っ組み合って、言いあいながら双方の短い手足でひっかくというかたたくというか、そんな感じの喧嘩をしていた。技を使ってないというか使わせてないのはたぶんヒトモシが頑張ったんだろうけど、そこどまりだったようで、当のヒトモシはウインディの頭の上でやさぐれていた。完全にオーラが死んでいる。あそこまであきらめてる姿を見るのは珍しいというか、初めて見たというか。ウインディはといえば、二匹のキャットファイトに参加したそうなラプラスを止めるのに必死になっている。いや、なんで?
「……バタフリー、あれ止めてこれる?」
「フリ!?」
ヒトモシで無理だったのに僕が出来ると思ってんの!?的な反応をされて、だよねぇ、と唸るしかない。いやまぁ、自分のポケモンの不始末(余所様のお宅で大喧嘩)なので自分で何とかするのが当たり前なんだけど、軽い現実逃避くらいは許して欲しい。自分のポケモンが今までここまで分かりやすく大喧嘩した例はなかったのだ。数が増えてる以上、いつか起きてもおかしくないとは思ってたけど。……キャタピーとガーディの頃に一悶着あったのは知っているが、二匹で解決してたので詳しいことは未だに教えてもらってないのだ。
ふー、とため息をはくと、一旦バタフリーとロトムをおろし、両腕を開ける。
「ツタージャ、ラルトス。何してるの」
声をかけた途端に二匹がぴたりと止まる。恐る恐るという感じで二匹ともこちらを向いて、私と目が合った瞬間、ツタージャが私に向けて『つるのむち』を向けた。大人しく上腕を差し出すと、巻き付いた『つるのむち』の反動を利用して、ツタージャがこちらにすっとんでくる。最近力加減を覚えてきたとはいえ、私の体重が足りていないので結局よろけそうになるものの、さりげなく寄り添ったデンチュラが足元で私の体を支えてくれる。ぽかん、と口を開けたラルトスがツタージャを見送って、行き先が私の腕の中だと気づいたのか、きっ、とにらみつけるような気配に変える。
結果として、私の両腕には『つるのむち』で飛んできたツタージャと、『テレポート』で飛んできたラルトスの二匹が収まった。あっぶね、ツタージャとラルトスの座標が被ってたらこれ普通に落っことしてたぞ。
……仲間にしたばっかりでラルトスへの距離を測りかねているのだが、なんかどうも、この子もラプラスのような感じがあるんだよなぁ…、後の事情聴取でシンオウで暮らしていた数か月間ずっと私達の側にいたらしいことが判明したロトムはともかくとして(というか私たちがロトムの住居に押し掛けた形になっていたので、追い出してしまっていたともいう)、私の知らない所で比較的短期間で好意を育てられているっぽい感じがどうにもラプラスに似ている。
「らるる!」
ラプラスとは違うもん!かな、これは。ちゃんと表現してもらえれば、ラルトスが人型ポケモンなのもあってか結構読み取りやすい。というかそっちじゃなくてね?なんで喧嘩してたのかをね?教えてほしいかなーって。事情によってはというか、事情によらなくてもお説教は確定だぞ君たち。そこまで考えて口を開いたところで、諸々を読み取ったらしいラルトスはふいっと顔をそむけた。こやつめ。
ツタージャは私とラルトスの顔を交互に見て、ぷくっと頬を膨らませる。置き去りにしてきたはずのラルトスが自分の隣にいて、しかも自分より先に私と会話していることに拗ねたというか、怒ったらしい。短い腕を伸ばしたツタージャは、べちん、とラルトスの頭をひっ叩いた。
「あっこら」
むすっとしたラルトスがツタージャの鼻先をはたき返して応戦する。
ぺしん、べちん、べち、べしぺしべしべしべしべし。
「だめだって!ちょっ、やめなさい!」
よりによって腕の中でやるものだから私の腕で物理的に止めてやれないし、抱えた腕を離そうにも私の体躯がまず足りない。ええい、身を乗り出してまで応戦しあうな。じたばた動く二匹を取り落としそうになって、慌てて膝を折ってしゃがみ込む。
「やめろ!」
強い声で止めにかかると、二匹はべちん!とお互いを強く殴り合って、こちらを向いて、だってこいつが!とお互いを指をさ…し……て、あ…?
何かと
最後に見えたのは、バタフリーのわざを受けて戦闘不能になるラルトスの姿だった。