獅子の隣に並ぶまで 作:ZZ
砂漠歩きの章
砂漠を歩く。ふくらはぎの途中まであるブーツを買ったけれど、なんかそれでも靴の中がじゃりじゃりしているような気分だった。歩く度に砂に足をとられて歩きづらいし、燦々と照りつける日光は巻いたターバンとゴーグル、マントで避けているけれど、それでもじりじりと蒸し焼きにされているような心地がある。汗はかいた端から蒸発していくせいで、かいているのかもわからないくらいだった。
ベルトに挟んだ水筒から水分を補給しつつ、隣を歩くウインディの様子を見る。ウインディに限ってはケロッとした顔というか、むしろいつもより元気そうな様子すらあるのが恨めしいところである。熱い気候の方がほのおタイプとしては居心地がいいのだろう、昨日の組だったランプラーも結構元気だったもんな……なんとなくゴースト入ってるから強い日差しは苦手かなとか思ってたけど、そんなことはなかった。ちなみに今空から私達を見下ろして辺りを警戒しているのはロトムなのだが、そのロトムも慣れるために通常形態ではなくウォッシュ形態になっているのが幸いしているのか、こちらもふよふよと飛びながら余裕そうな顔だ。…うーん、あんま楽しててもトレーニングにならない気がするし、やっぱ通常形態に戻ってもらおうかなぁ。
かわりに今日の組でしんどそうなのはデンチュラとツタージャだ。デンチュラは体毛がある上に地面に近い分地面からの照り返しもあり、そもそもむしタイプ持ちだからほのおというか熱に弱い。ツタージャも言わずもがな、初日こそ少しはしゃいでいたけれど、7日も経過した今は暑すぎてかなり萎れかかっている。皆にはこまめに水分を補給させ、その都度どこかやけどの兆候がないかと調べているが、そちらは今のとこ大丈夫そうだった。ただ、砂漠の夜はかなり冷えるから、やっぱりつらい環境だろう。ラプラスを除いた手持ちたちを二つに分けて、一日交代で外に出しているとはいえ、皆よく頑張ってくれていると思う。
名前のない砂漠であるが、ここの砂漠はかなり広大だ。幻影の塔の目撃情報も、伝説のポケモンが1匹眠る遺跡もあるというのもそうだが、単純にめちゃくちゃ広い。まっすぐ道から道へと突っ切って移動したとしても10日~14日はかかる。あちこちに特徴的な岩が転がっているのもあって一応安全ルートのようなものは示されているが、それでも早くて10日だ。行方不明になる人間の数も多く、砂漠を通って移動することはあまり推奨されていない。……当然だろうなぁ、と思う。ちょっと歩いただけでそれなりに好戦的なポケモンに遭遇したし(ウインディが大きく『吠えた』途端に及び腰になり、砂煙をたてて姿を消したが)、よくよく見ればあちこちに流砂なのかポケモンのわざによってつくられたのか、それすらもよくわからない窪みがあった。暑さだけでなく、流砂も充分気をつけなければいけないものの中に入っている。私は軽い方だからまだいいけれど、180kg前後をうろうろしているウインディは結構やばいと思う。ラプラスもまだ子どもなので130kg程度ではあるが(大人のラプラスは220kgある)、出す場所はちゃんと考えないといけなさそうだ。
後、最悪遭難しかねないので、その辺も。広大ではあるけど岩壁に囲まれた砂漠だし、今回は岩壁近くのオアシスに陣取るつもりでいるから(ゲームでは存在しないが、こちらではあちこちにある)、よほど大丈夫だとは思うが。最後に調べた限りでは変なポケモンの縄張りということもないし、それなりに修行場所としても利用されている場所のようだったから、その点でも安心だ。もし先に誰かいるようだったら、是非とも手合わせ願いたいものである。
目的のオアシスまでは私の入った入り口からだと大人の足で8日かかる場所にあるらしいが、移動だけで大きく時間をとられるのもあれなので、ちょくちょくウインディに乗せてもらって距離を稼いでいた。そのおかげもあってか、ランドマークの岩を見ている限りではそろそろオアシスが見えてくるくらいの距離のところまでこれている。
というか見えていた。岩壁の手前なのでちょっと見づらいが、砂漠の中で木が生えている場所なんて、蜃気楼でなければオアシスで間違いないだろう。どう?とウインディを見上げると、においがしたのだろう、間違いないという頷きが返ってきた。
「デンチュラ、ツタージャ、もう少しだよ。もうちょっとしたらオアシスだから。頑張ろう」
途端に2匹がちょっとしゃきっとしたのに少し笑って、ペースを崩さず歩みを進め、なんとかオアシスにたどり着く。入る手前でフンフン、と鼻を鳴らしたウインディが一度オアシスの奥の方を見るよう促した後、まぁ大丈夫、という判断をした。オアシスに入った途端に気温が下がったような感じがして、ほう、と息を吐き出す。やっぱり、暑いのは私もちょっとしんどい。いいトレーニングだけど。私から自分用の水筒を受け取ったロトムが舞い上がって警戒に入ったのを確認して、改めて息をついた。
ウインディに促された奥の方を見ると、木の陰にそれは大きなテントが張られていた。見張りのポケモンがいるとかの様子はなく、テントの持ち主達はどうやら揃って留守にしているらしい。ていうかあれデボンの一番高いテントの最新作か?将来買おうか迷ってるリストの一つに入ってる奴だ。シルフカンパニーのもそうだけど、大企業の発表しているものだけあって大きさも質も機能も値段も段違いで、今の私にはとてもじゃないが手が届く品じゃない。…ということは手が届くトレーナーが修行に来てるのかな?これは幸先がいい。相手にもよるけれど、可能であれば是非バトルしてもらいたいものだ。
振り返ると木陰でツタージャがぺしょんとへばっており、デンチュラがしんどくてもまだ起きてなきゃ、と突っついている。2匹に水分をあげてボールに戻るか聞くと、ツタージャはよじよじと私の肩までよじ登った。…君ねぇ。私も砂漠行軍でそれなりに疲れてるんだぞ。まぁいいか、といったんターバンを一部緩めてツタージャの上にかけるように伸ばしてやると、ツタージャは器用に『つるのむち』で日除け代わりにした。デンチュラは、と聞くと、もうちょっと頑張れそうとのことだったので、しんどかったら声をかけてね、と言い含める。
さて、どうしようかな。プライバシー的な意味であのテントからは距離を離した方がいいだろう。その上でここを水飲み場として利用しているだろうポケモン達の通り道を塞がないような場所を探さないといけない。憩いの場所だったりすればそれはそれでまずいし。
残りの皆もボールから出し、あちこちをうろうろして、漸く適していそうな場所を見つけた時にはお昼を過ぎていた。先に皆の食事を済ませた後、手早くテントを設置して、野営の準備を整える。砂もそうだが、砂漠での生活は昼夜のひどい寒暖差も十分な敵だった。近場に砂漠があるお陰かその辺の装備はキンセツシティに揃っていたのでよかったけれど。防砂と温度変化に対応したカバーをしっかり隙間なくテントに被せた後、テント内にはいてだきのどうくつで使った防寒シートを敷き詰めた。防寒できる、ということは要は断熱できる、ということだ。先を見越して熱い時にも使える両用タイプを買っておいたのだが、ここでも思いっきり役に立っている。上にはからっとした肌触りのラグを敷き詰めて、真ん中にはこれまた前と同じく電熱ストーブを設置する。昼間は使うことは無いが、夜間は10度台の気温になることを思えば必須だろう。
寝床の設置を終えて外に出ようとしたところでとうとうツタージャが力尽きて寝落ちたので、肩から降ろして抱えてやりながら今度こそテントの外に出る。そうしたら空を飛んでいたバタフリーが選手交代、とロトムをこちらに放り投げてきて、それも受け取ると両腕はいっぱいになった。朝は元気だったとはいえ、さすがに疲れ始めていたらしいロトムも大人しく腕の中で休憩の姿勢をとった。