獅子の隣に並ぶまで 作:ZZ
諸々が終わった後は、通っていたスクールに特別講師枠として招かれたり、何故かキクコにあちこちで追い回されたり(形相があまりに恐ろしかったので思わず逃げた私もまずかったとは思うが、しつこいキクコも悪いと思う。オーキドの二の舞にさせてたまるか、とかなんとか言ってたけど)、地方大会に参加してはマサラの伝説の再来と言われたり(私は天才ではないのになぁ、という感想しか出なかった。バトルにおいても大体そんな感じのキャッチコピーで呼ばれるものだから、ちょっと辟易している。私たちが頑張っているから色々結果がついてきているだけなのであって、別にマサラ生まれだからすごいというわけではないのに)、審査員を連れずにもう一度いてだきのどうくつへいって、ちゃんとラプラスの里帰りを果たしたり、とカントーを満喫した。
パウワウ達は相変わらず元気だったし、コダック達も、例の人間臭いゴルダックも健在でこちらに思いっきり手を振ってくれたし、動かないスターミーも、記憶が正しければ前に目撃した場所と全く同じ位置に鎮座していた。……まさか前来た時から動いてないとかないよね?思わずきのみをお供えしてしまったっけ。その後は久しぶりにダイビングをしたけれど、前と違って今度はラプラスにベルトをかけて引っ張ってもらえるので安心感は随分違ったし、なんなら少し周囲を見る余裕すらあった。そうして、奥の洞窟へとたどり着けば、以前のようにラプラス達の集団での出迎えがあったっけ。違うのは、私がそれに圧迫感を感じておらず、むしろ皆で迎えに来てくれてありがとう!という気持ちになったことか。
そうして私のラプラスの親と対面したり、……ずっと一緒にいたからあんまり意識していなかったけれど(体重は定期で測っていたが)、他のラプラスと比べてみれば、明らかにいてだきのどうくつを出た時より成長して大きくなってるんだなぁ、というのを実感してなんだかほっこりしたりして、数日をいてだきのどうくつで過ごしたのだ。バタフリーは久々の寒さに結構参っていて飛ぶスピードが落ちていたし(砂漠やほのおのぬけみちでも似たような状態にはなっていたが、本ポケはむしろこういう気候だからこそ、と熱心にトレーニングしていた)、ツタージャにいたってはあれだけ愛用していた『つるのむち』の使用を一時的にやめていた。あれは細いし自分の体の末端部分を長く伸ばす技である、水で濡らしたタオルを氷点下の気候でぶんまわすのとあんまり変わらないし、いくら技とはいえ体の一部だから凍傷になってもおかしくはなかった。というか『つるのむち』が砕け散っても不思議じゃない。よく気づいた、とツタージャを褒めたものである。他のポケモン達も氷に囲まれた環境などめったに来れるものではなかったから、トレーニングをしながらとはいえ楽しそうに過ごしていた。
ちなみにウインディはしれっといてだきのどうくつ内で泳ぎを満喫していた。……そうなんだよな、満喫してたんだよな。ラプラスに並んで泳ぐ姿を見せるくらいには泳ぎを楽しんでいる様子が見受けられた。前に来たときは金ダライにはった水に10秒つかるだけでもしんどそうだったのに。……なんかなぁ、シンオウでブイゼルに変な技の教示を受けていたのは知ってるんだけど、なんか、……絶対に覚えるはずのない突拍子もない技覚えようとしてない?強くなってくれるのはいいけれども。
それで、ラプラスの里帰りでふと思いついて、その次はイッシュに行ったのだった。デンチュラとシャンデラ、そしてツタージャの里帰りだ。ランプラーは一通り飛ぶことやわざの扱いを覚えた、と判断した時点で自分からやみのいしを使ってほしいと伝えてきてくれたので、マサラタウンを旅立つ少し前にシャンデラに進化させたのだ。
今度は船ではなく航空便を利用してイッシュに行って、最初はツタージャのブリーダーさんの所に行った。ツタージャはたまごの時にブリーダーさんから譲渡してもらったので、ツタージャ自身に記憶はないのだけど、あの時のたまごからこんな元気な子が孵りましたよ、というのを見せたかったのだ。行った瞬間に怒られたけど。ローザ伝いに私一人で孵化と赤ん坊時代の面倒をみたという話が伝わっていたらしく、相当怒られた。ポケモン達にも手伝ってもらったし、シャンデラが特に面倒をみてくれたという話もしたんだけれど、それでもやっぱり怒られた。……あれを体験した後だとしょうがないことだなぁとは思ったので、大人しく説教を受けたけれど。
ツタージャは初めて出会う同族達に興味津々だったっけ。
前世で御三家といわれていた初心者向けのポケモンは、こちらでもやっぱり初心者向けとしてスクールや研究所、ブリーダーからトレーナーに配布されているけれど、これは旅立ちたいトレーナーが10歳になるまでに相棒に出会えなかった時の救済策のような意味合いが強い。だから誰も彼もが御三家のいずれかのポケモンを連れているわけではなく(私だって既にバタフリーとガーディがいたから、新たにポケモンを貰うことはなかった)、地方には地方の御三家がいるというのもあって、ツタージャは今まで同族に会ったことがなかったのだ。
ブリーダーさんのところには生まれたてのツタージャやジャノビーの姿があった。たまごを連れてくる役目のジャローダなんかは特に多かったっけ。私のツタージャは初めての同族との交流に戸惑ってはいたけれど、同族に囲まれた姿はちょっと嬉しそうだった。ラルトスにからかわれて一瞬でその姿は消えていたけれど。
その次に行ったのがでんきいしのほらあなだった。………一番やばかったともいうのだけど。まず、ロトムがそれはもう大はしゃぎした。前からなんとなくそうじゃないかと思っていたけど、たぶんロトムは電気そのものではなくて、電気が通っているものか、通っていたものを好むんだと思う。家電を好むわけだ。それが古びていればなおさら良いのだろう。
その点、でんきいしのほらあなは四方八方が帯電しているわけだから、ロトムにとってはテーマパークみたいなものだったのだろう。
ブンブン飛び回るロトムをほどほどに呼び戻しつつ、かっこよく進化したデンチュラを連れてあの時の群れを探しに行って、無事に出会えたまではよかったのだけど。あの時の群れのバチュルたちは、数匹が姿を消し、数匹がデンチュラに進化し、その多くはバチュルのままで変わらずに生活していた。再会を喜び合い、お互いの近況を報告し合い、というのをにこにこしながら眺めていたのだが、ウインディの注意を促す声が聞こえてふと顔をあげると、ほらあなの壁いっぱいにあるたくさんの目が私たちを見つめていて、あの時は随分驚いた。
その全部がバチュルとデンチュラの目であることに気付いた時にはちょっとびっくりしたけど、その時までは色々冷静だったと思う。ウインディとデンチュラ、ロトムに追加でシャンデラを出す判断は出来ていたし、デンチュラ以外に警戒レベルを上げるように指示もした。最悪ラルトスの『テレポート』による脱出も考え、ラルトスのボールは震えてそれを了承してくれたのも感じ取った。
きっかけは、確か、デンチュラがかつていた群れのバチュルが、それにしてもかっこよくなったねぇ、と伝えてきた時だったか。空気が色めき立ったような気がしたのがその時だった。流石にデンチュラも出迎えにしては匹数が多いと気づいていたのだろう(後からよくて精々顔見知り、ほとんどが知らないバチュルとデンチュラだったと聞いた)、揺れた空気におや、とデンチュラが首を傾げる。
ざわめきが続くほらあな内のあちらこちらでアイコンタクトが飛び、群れのバチュルやデンチュラ達も首を傾げだした頃、しずしずと一匹のデンチュラが歩み出てきて、私のデンチュラにこう聞いたのだ。
とてもかっこよくて素敵なあなた、あなたにつがいはいますか、と。
聞かれた瞬間、私のデンチュラは文字通りびょんっと跳ねた。跳ねて私の足元に逃げ戻ってきた。静寂が空間を支配する。つがいはいますか、というのは私の翻訳だけど、ナックラーのことがあってから私の手持ちのポケモン達の求愛行動あれそれは一通り調べたし、勿論デンチュラのそれも調べたので、間違ってはいなかったと思う。私のデンチュラと、それを聞いてきたデンチュラを交互に見比べて、私のデンチュラに視線を落とす。デンチュラは黄色い体毛や青い甲殻に体のほとんどを覆われているのでわかりづらいが、興奮したり照れたりしたときは瞳や腹の辺りがいつもより鮮やかになる。そしてその時私のデンチュラも鮮やかになっていたし、短い触腕で顔を覆っていたし、ぶっちゃけ思いっきり照れていた。
顔をあげると、なんというか、その質問をしてきたデンチュラが完全に獲物を見る目で私のデンチュラを見ていて、ついでにいうとあちらこちらで似たような目で私のデンチュラを見るバチュルやデンチュラがいて、思わずひぇっと息を呑んでしまった。後私のデンチュラが初心だったというのはその時初めて知った。……いや、容姿を褒められなれてないのかもしれなかったが。
とりあえず落ち着かせる意味合いでウインディに一吠えしてもらい、代表で出てきたそのデンチュラに詳しく事情聴取すると、
・とても強そう
・真面目なバチュルだったと聞いていた
・かっこいい
・可能であればつがいたいし、彼とだったらいいたまごを見つけられると思う
・かっこいい
と大体こんな感じのことを伝えられて、思いっきり頭を抱えた。確かにレベル80代後半だしトレーニングも欠かしてないから、そりゃこのほらあな内の子達から見れば強いだろうし、ここで暮らしていたのだから伝聞や実際に見て性格の良さも知っていてもおかしくない。だけどかっこいいって。
かっこいい、とは、と聞くと、早く動けそうな足やちゃんとあちこちを見れそうな目の鋭さがバチュル系列的には最高にかっこよく見えるポイントなのだそうで、うちのデンチュラはそれにとてもよく合致しているのだとか。強いだけでも最高なのに性格もよし、容姿も良しとなればアタックをかけない理由がない、とはそのデンチュラの言だった。
確かにその、図鑑に載ってるデンチュラの画像よりはかっこよく進化したなぁ、足もスマートだし全体的なバランスも絶妙、毛並みも綺麗で瞳は涼やかでイケてるなぁ、とか思ってたけど(トレーナーの贔屓目も入ってるだろうなと思っていたのだが)、うちのデンチュラ、バチュル系列というか蜘蛛系ポケモンでいう絶世の美男子に進化してたのか。カントーにいた時はジョウト地方のポケモンを手持ちにしたトレーナーともよく戦っていたし、アリアドスやイトマルと戦うこともたまにあったのだけど、うちのデンチュラと鉢合わせた時になんか妙な反応をしてたのはそういう……?
ちなみに、同じむしタイプのバタフリーに聞いたところ、まぁ僕からみてもかっこいいと思ってたと伝えられて二度頭を抱えた。
強さも、その種族にとっての外見の良さも、一緒に暮らしていたのだからこのデンチュラの性格の良さだって知っているわけだし、……まぁその、うちのデンチュラは、そういう感じで見られる存在になったらしいのはよくわかった。周囲のバチュルやデンチュラの圧からして、わからざるを得なかったともいう。たぶん蜘蛛系ポケモン相手限定で“メロメロボディ”に近いものを発揮できるレベルなのかもしれない。
最終的に照れまくるデンチュラ自身をしゃんとさせ、説得して話をつけさせたからよかったものの、なんというかその、“ガチ”の目線ばかりだったので、一時はどうなることかと思った。………次に行くときどうしよう。
イッシュで最後に寄ったのはタワーオブヘブンだ。管理人さんは……ヒメギリは亡くなっていて、私は私のシャンデラと、タワーオブヘブン近くに建てられていた墓への墓参りをする形になった。ここを出て一年以上が経過していたとはいえ、……ヒトモシの成長を見せたかったなぁ。
墓に寄り添ってほろほろと涙をこぼしたシャンデラの前に、野生の…、いや、ヒメギリのシャンデラが現れた時はさすがに驚いたけれど。
一歩下がった所から私が見守る中、私のシャンデラはじっとヒメギリのシャンデラを見て、その炎を見つめ、……そして、ぼたぼたと大粒の涙をこぼしながらぐっと腕を張って、人間でいえば胸を張るような仕草をし、くるりと一回転して泣きながら笑った。ヒメギリのシャンデラはそれに大きく炎を揺らして応え、こちらも静かに微笑んで、そしてふわりとその姿を消した。ヒメギリのシャンデラが消えた空間を私のシャンデラがいつまでも見つめていたのが印象的だった。その日は久しぶりにシャンデラは私から離れようとはせず、どこまでもくっついて回ってきて、夜になっても私から離れようとしなかった。次の日には元に戻っていたけれど。
その次はシンオウに行ったっけ。ソノオの例の家は空き家の状態だったので、大家さんにお願いして特別に一日だけ泊まらせてもらった。ロトムは堂々と家電に入ってはしゃいでいたので、一個買い取れないかちょっと真剣に迷ったくらいである。ついでに205ばんどうろのお世話になったポケモン達にも挨拶に行って、久しぶりにトレーニングの相手もしてもらった。よく姿を見せてはすっぱいきのみを食べたがっていたあのカラナクシの姿はなかったのだけちょっと残念だったが。
合間合間に地方大会を挟んでいたのもあり、それでちょうどホウエンを発って一年くらいだったので、ホウエンにも一度行った。例のサーナイト“吉祥”は姿を見せなかったけれど、私のラルトスがお世話になっていたというキルリアは姿を見せてくれて、少しだけ会話のようなものをさせてもらった。強くなったよ!と楽しそうに語るラルトスを目を細めて嬉しそうに見つめるキルリアの姿は、ちょっとほんわかするものだった。
そして、その後。ダイゴにも挨拶しようと思ったのだが、ダイゴはタッチの差でシンオウへと旅立った後だった。既にチャンピオンの座を降りたとはいえ、有名人であるのにかわりはないからか、普通に報道されていた。プライベートでシンオウって何しに行くんだろ、ちゃんと覚えてないけどゲームじゃ確か別荘があったんだっけ?他地方のポケモンと石の話は聞いたけど特にその辺の話はしなかったんだよな。別に連絡を取ってもよかったけど、特に重要な話があるわけではないし、すれ違いじゃしょうがないので諦めて、私はカロス行きの飛行機に乗ったわけである。