獅子の隣に並ぶまで 作:ZZ
カロスに到着した私は、道中で地方大会を挟みつつ移動を繰り返し、18ばんどうろへと来ていた。目的はこの道路にある終の洞窟と、終の洞窟内で目撃情報のあるポケモン──オンバットだった。
ぶっちゃけると、サトシのオンバットがそれはもう可愛かったのだ。バタフリー、ラプラス、ツタージャに続いてまたサトシの手持ちではあるのだけど(これで最後のサトシの手持ちであるが)、可愛かったのだ。カロス地方のゲームの方では遭遇が難しかったけれど、やっと手に入れた後のポケパルレが可愛かったのだ。ほんと可愛かったのだ。進化系のオンバーンもかっこよかったし。是非とも手持ちに加えたかった。
とはいえオンバット、あの小ささと可愛らしさに似合わずちゃんとドラゴンタイプである。カロス地方のゲームではちょっと捕まえるのが難しかったが、ガラル地方のゲームのワイルドエリアでは他のドラゴンタイプに比べてたくさん出てきていたし、なんなら怯えて逃げるモーションすらとっていたくらいであるけど、ドラゴンタイプなのだ。こちらでは気軽に手持ちにしているトレーナーはいないし、やはりこちらでもワイルドエリアでそれなりの目撃情報があるようだけど、目撃情報にとどまっている。
別にポケモンを捕獲するだけならいくらでもできる。特に私たちは鍛えているし、レベルも全員50レベル以上だから、大抵の野生のポケモンは返り討ちに出来るだろう。囲めば逃がさないようにすることは出来るし、デンチュラのわざの一つの『くものす』にはポケモンの逃走を防ぐ効果がある。バトルを挑んで負かして気絶させ、ボールを投げれば捕獲完了だし、役所で手続きまで済ませてしまえば晴れて手持ち入りだ。
なのだけれど、捕まえたポケモンをすぐにバトルで起用できるか、と言われると、難しいことの方がほとんどだ。
まずバトルで負かして捕獲というのは基本的なことではあるけれど、モンスターボールに入ったからと言ってポケモン達が何でも言うことを聞いてくれるようになるわけではないし、急に懐いてくるわけでもない。モンスターボールは洗脳器具ではないからだ。精々外からロックをかけることでボール内からポケモンが勝手に出てこなくなるように出来る、とか、その程度の拘束力しかない。
じゃあポケモンに懐いてもらえるようにするにはどうするのか、というと、普通に仲良くなっていくしかないのである。
バトルに負かされたのだから仕方ない、でこちらに従うようになるポケモンもいれば、名目上バトルを挑んできただけでそのトレーナーに捕獲されたがっていたというのもいるし、絶対に捕まりたくなかったのに捕まってしまうポケモンだっている。捕獲の後にきちんと交流して絆を育み、信頼関係が築けるのであればそれでいいし、大抵はそうやって距離を縮めていく。ただ、人間にもそれぞれいるようにポケモンにもそれぞれいて、一方的な捕獲に納得がいかず、表面上は言うことを聞いていても実はあんまりトレーナーのことが好きではなかったとかもあるし、そういう例は拗らせすぎると最後は悲惨なことになる。
そして、仲がいいという事と、バトルの時に言うことを聞くのは別でもあるのでややこしかったりする。トレーナーの指示に従う、というのはバトルに置いての大前提なのだけど、わざを放つということは要は他の生き物や物体を害するということであって、それをトレーナーが制御できない、というのはまずバトルに出る以前の問題だ。人間の領域でやるバトルだから、人間の指示に従ってもらえない、というのは駄目なのだ。極論、トレーナーのことを思って指示とは違う行動をとって勝ったとして、要はそれは息が合っていないという事なので、ちゃんとしたトレーナーとポケモンとの強さ、というやつではないだろう。指示はポケモンへの指令であると同時に後押しであり、手助けでもあるのだから。
友達としての関係と、仕事としての関係は別、と言えばいいのだろうか。
仲間にしてからちゃんと信頼関係を築けるか、というのもそうだし、信頼関係を築けてもポケモン側がトレーナーより上の立場であると思っていても駄目だし(人間の領域で暮らす以上は人間を上位に置いてもらわないといけない)、その上でバトルにおける指示にちゃんと身を委ねてもらえるようにならないといけない。ただ、それにも相性とか適性があるし、人間とポケモンは違う種族である分余計に知識もいるので、特定タイプに得意なトレーナーがいたり、オールマイティに大丈夫なトレーナーがいたり、と色々なのだ。人間だって色んな人間がいて、仲良くなれる人もいれば理解を積み重ねてやっと信頼関係を築ける人もいるし、あの人だけは絶対に今後も話したくないとかそういう人もいるわけだから、感情豊かなポケモン達にも同じことが当てはまる。
くさタイプのお世話が得意な人間は他のくさタイプのお世話も得意になりやすいし、そうなればくさタイプポケモン側からも好かれやすいとかの話は分かりやすい例だろう。特定タイプに好いてもらいやすい
本当はここにくるまでに自分のドラゴンタイプへの適性をちゃんと見ておきたかったのだけど、結局ここにくるまで、ホウエン行きの客船で出会ったアランのガブリアス以外、一切ドラゴンタイプのポケモンを手持ちにしたトレーナーと出会うことは出来なかった。セミプロになってからはプロも参戦する地方大会にも出場できるようになったので(プロオンリーのものももちろんあるが、プロ、セミプロ両方が混在している地方大会もあるのだ)、どこかで遭遇するだろうと高を括っていたのだけど、運が悪かったとしか言えない。バトルビデオを見る限り、ドラゴンタイプを手持ちにしているトレーナー、全くいないわけではないようなんだけど…。ローザにアランのガブリアスに引き合わせてもらうべきだったなぁ、と思わずにはいられない。縁があったわりには連絡先すらも知らないのだ。息子の方がうるさかったのであんまり近寄れなかったんだよなぁ。
カントー・ジョウトに戻っていた時期にフスベに行っておけば……、いや、キクコに目をつけられていたあの時期に行ったところで面倒ごとになっていただけだろう。ホウエンに行ったときにりゅうせいのたきに行くのもありだったかもしれない。りゅうせいのたみが存在していたかどうかは不明だけど。
……適性がないと、この後仲間にしたいポケモンにも大きく影響が出るから、はっきりさせるのが怖くてちょっと逃げていたという面もあるといえばある。ドラゴンタイプはオンバットともう一匹迎えたいと思っているからだ。
先延ばしにした結果が現地でぶっつけなのであんまりよろしくないことになってしまっているのだが。仲間にするのとドラゴンタイプから身を守るというのは別問題で、身を守る方は大体クリアできるだろうという目算があるものだから、考えないようにしてきてしまった、ともいう。
ふー、と息を吐いてぱん、と頬を叩く。
なるようになるだろう。無理なら無理でその時はその時だ。縁がなければそれまでのことだし、幸運にも私は今まで欲しい縁を引き寄せてこれたのだ、きっと大丈夫だろう。
ポケモンとの相性は本人の技能やコミュニケーション能力も勿論ですが、体質も関係してくるよ、という話。何もしていないのにめちゃくちゃ好かれる体質の人もいれば、何もしていないのにめちゃくちゃ嫌われる体質の人もいるそうな。
この主人公や世界ではないですが、モンボが洗脳も同時に行う道具だった世界線の話をポケモン視点から書いていたらシンプルに地獄になっちまって…。これもいつかどこかでお出ししたいところです。