獅子の隣に並ぶまで 作:ZZ
あのオンバット、明日には戻ってきてくれるよな……?と思いつつ、さすがに洞窟内で夜営をするわけにもいかなかったので、一端洞窟を出てテントを張る(一度張ろうとした所はついてきていたイシツブテに駄目だしされたので、別のところに張り直した。お礼に普通にバトルでも使ってる方のモモンのみを投げてあげたら微妙な顔をされたが)。地方大会で優勝を続けているお陰で懐が大分潤っていることだし、と、思い切ってテントはウインディでも広々過ごせるくらい大きなものを買い直した。1人だと組み立てが難しいのでポケモン達に手伝ってもらわないといけないのが難点だが、バチュルの進化、ヒトモシの進化、それからラプラスもゆっくりと成長してきているから、以前のテントは随分手狭になってきていたし、狭さゆえに皆で寝る、ということが厳しくなってきていたのだ。
それがまた皆で眠ることが出来るようになったし、皆でテントの中で円になってご飯を食べることも出来る。広さだけでなく耐寒性や耐熱性、過ごしやすさなんかもこだわって探したし、テント内に敷くラグやクッションなんかもついでに新調して多めにそろえた。この後仲間にするポケモン達のことも考えて、本当に大きなものを買ったから野営の場所には苦労しそうではあるが、どうしても無理な日は今までのテントをつかえばいいだろう。相応のお値段はしたけれど、いい買い物をしたな、と思っている。12歳で百万以上の買い物をすることになったかぁ、ともちょっとだけ思ったけど。
地方大会で複数回優勝したことが影響しているのか、野良バトルでもそれなりに強いトレーナーと戦うことが増え、強いトレーナーは大抵支払うファイトマネーも多いものだから、ここの所の金銭の巡りはいい方だ。複数回優勝したお陰で、前にローザに教えてもらったようにわざマシン協会からの接触があって、一般的には手に入らないわざマシンも手に入るようになったし、同じように愛用しているフーズメーカーやポケモンの手当て用の薬のメーカー、ポケモンのお手入れ用品のメーカーや旅用品メーカーからもランクアップした商品の宣伝がくるようになった。
バトルは博打の要素も強いし、勝てなければお金は入らないどころか飛んでいく。会社員であれば安定した収入があるだろうけれど、バトルトレーナー一本に絞って生活している人間の収入は基本的には不定期だ。未熟なトレーナーはファイトマネーだけでは生活していけず、日雇いのバイトなんかで食いつないでいることも珍しくないし、それも出来なければ故郷に帰るしかない。旅立った子供の帰還理由のほとんどはそれだ。商品を買ってもらうにしろ料金を支払って貰えなければメーカー側も儲けにならないわけだし、わざマシンのほうだって、癖のあるわざは使うポケモンにもトレーナーにも技量が求められる。だからある程度の強さを証明したトレーナーでないと高い商品も癖の強いわざマシンも売ってもらえないわけだが、貯蓄も問題なく出来る程度には私は稼げるようになったわけで。
何が言いたいかと言うと、テントだけではなく、色々なもののグレードアップを行っている最中だ、ということだ。
まずはポケモン達の食事を一段グレードアップした。どうしたってご飯は毎日消費するものだから、食費に関しては毎月どの程度使うかを決めて、その費用から皆の食べる量や栄養を計算して、上限のお値段を決めた上で食べたいフーズを選んでもらうようにしているのだけど、その金額の上限をあげたのだ。美味しい美味しいと結構なんでも食べるバタフリー、ウインディ、ロトム、ラルトスと、食に大変うるさくて複数メーカーのブレンドしたフーズを欲しがるラプラス(手作り品を提案してみたところ、たまに皆と食べる手作りの特別さがいいのだ、的な返答が返ってきて、結局ブレンドフーズに落ち着いている)、栄養計算を自分でしてフーズを選び、電気の摂取量の管理もきっちり自分で行っているデンチュラ、私からの生命力をご飯のメインにするようになったシャンデラ(フーズやサプリもとらせているが、固形物に関してはヒトモシの頃より少食になった)、水とフーズを一日置きに摂取するようになったツタージャ(くさタイプはフーズだけを好む個体と、水と栄養剤だけの食事を好む個体とがいる。成長するにつれ、ツタージャは両方を好むようになってきた)、と食事に関してもそれぞれ個性が出ていた。
今までより選べる選択肢が増えたとあって一番はしゃいだのは案の定ラプラスだったし、どうやら運命の出会いがあったようで、今後はフーズをブレンドしなくてもよくなったのはちょっと嬉しいような寂しいような。そんなことをいつものレトルトを口に運びながら考える。
栄養剤をかけたフーズを一個一個手に持ってカジカジとかじりつくバタフリーに、ふりかけとサプリ入りのペレットフーズをがつがつと食べるウインディ。大きなご飯入れに頭を突っ込んでいて顔が見えないラプラスに、静かにウェットタイプのフーズを減らしていくデンチュラ。シャンデラはペレットタイプのフーズを腕で器用にすくい上げては火種をくべるようにランプ部分に放り込んで燃やし(ランプラーの時からそうだが、シャンデラの食事は本当に不思議だ。あれで栄養になっているらしい)、ツタージャは今日は水の日なので栄養剤入りの水をおいしそうにちびちびとやっている。ロトムはペレットタイプのフーズを浴びるように食べていて(ロトムは自分の体積と同じかそれ以上を平気で食べる。特にフォルムチェンジをした日にはその傾向が強く、今のところうちのパーティで一番大食いなのはロトムである)、ラルトスは腕で何個かずつフーズを持ち上げては上品に口に運んでいた。
8匹分の食事ともなると用意するだけでちょっと時間がかかったりもするのだけど、皆の様子や体調に合わせてブレンドする栄養剤やサプリ、ついでにアクセントとしてかけているふりかけや食後のきのみなんかも変えているから、こればっかりは時間をかけるべきことだった。食事は生き物の体を作る。体一つで戦うポケモン達に対して、食事はとても重要なものであるから。
まぁ私も彼らに対して唯一の人間であるので、体調を崩すわけにもいかない。レトルトとはいえ食事には気を使っている方だ。もうちょっと高いシリーズにしようかな、とも考えたのだけど、ダイゴにひと手間でおいしくなるよ、と色々なレトルトレシピを教わっていたのもあって(めんどくさくて活用しない日がほとんどだが)、結局私の食事はそのままだ。
後は寝床周り。私の周りにぎゅうぎゅうになって皆寝てくれているから、思い切って大きい敷布団というか、マットのようなものを特注で注文した。もう寝発火はしないけれど、念のためウインディがよく陣取る位置は耐火性のある素材にしてもらったし、ラプラスが陣取る辺りは冷感強めの素材を使ってもらったし、私の寝るところは人間向けにクッション性高め、とあれこれ無茶ぶりをしたけれど、結構いいものが仕上がってきた。ちゃんと洗濯機で洗えるのも素晴らしい。今までも敷布団を繋げるとか、大型ポケモン用の寝具を並べるとか工夫はしていたけど、どうしてもつなぎ目のところの違和感はあったからなぁ。これもまぁそれなりのお値段はしたのだが、それだけの価値はあった。むしろ安かったかもしれない。また仲間が増えたらあそこに発注してみよう。
……カントーの旅用品メーカーに頼んだのだが、キクコに追い回されたことを思うとちょっとカントーに戻りづらいというのが問題と言えば問題か。オーキド博士の頭が上がらない数少ない相手であるせいか、オーキド博士の庇護はあんまり効果がなかったというか、キクコに関しては火に油を注いだような感じすらあった。仲間集めを終えて、修行も終えたらちゃんとセキエイリーグに挑みに戻るのだから、放っておいてほしいんだけどなぁ。
打倒レッドにあたって、目指すべき最低ラインはでんどういりだ。そして、初めてのでんどういりはカントー・ジョウトのセキエイリーグでと決めている。地元であるのも勿論ではあるけど、ポケモン協会運営のポケモンリーグ、その総本部が置かれた伝統あるリーグにして、魔境のリーグとも呼ばれる大変わくわくする楽しそうなリーグでもある。でんどういりするならここしかないだろう。……それをちゃんと伝えたらキクコも大人しくなってくれるだろうか。チャンピオンになる気はないからその辺ばれたら逆に怒られるだろうか。どうだろう。最初に逃げてから逃げ回ってばかりで話はまともにできてないと言えばいないので、それは私が悪いといえば悪いから。
そんなことを考えながら筋トレやストレッチ、情報集めや勉強のルーティンをこなし、もそもそと寝具を広げて潜り込む。頭の上の辺りではバタフリーがクッションにもたれかかって陣取り、その横にデンチュラがうずくまる。腹側にはウインディが、背中側にはラプラスが寄り添い、腕の中にはツタージャとラルトスが喧嘩しながら収まって、ロトムは大体私の体の上のどこかでひっかかっている。最後にくるりとテント内を一周したシャンデラがテント内の照明を落とし、自らの光量も落として私の上で浮遊する。シャンデラは私の手持ちの中で唯一物体モチーフのポケモンであるからか、あるいはゴーストタイプであるからか、それともその両方か、睡眠時間はもともと少なめだったけれど、進化してからはさらに少なくなった(ロトムもどちらかというとそちらよりのカテゴリだと思うのだが、うちのロトムはよく食べるしよく笑うしよく眠る)。明け方に数時間少しまどろむ程度でいいとかで、夜間のことは大体シャンデラに任せるようにしている。
さて、明日はオンバットを仲間に出来るだろうか。相性の問題も大丈夫とあれば、後は出会って口説き落とすだけだ。