獅子の隣に並ぶまで   作:ZZ

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私の全てを君に捧ぐ

 

ダイゴはしばらくした後に戻ってきた。心なしか萎れた顔をしているように見えるのは気のせいか。

 

 

「………ごめん、後で意味が分かると思うけど。止めきれなかった」

「〓〓〓〓」

 

 

付き添っていたメタグロスもなんか萎れぎみに見えるのはなんでだろ。

 

 

「えーっと、一応確認するけど、君のポケモンの統率とってるのはバタフリーだよね?他にこう、なんていうかな、統率の補佐してたりとか、全体のこと見てる子はいる?ウインディがそう?」

「え?ああ、そうです、トップはバタフリーで、補佐はウインディです。普段は上下関係とかあんまり気にしてないですけど……えーっと?」

「……あー、それなら他の皆も呼んでくれ」

「はぁ」

 

 

とりあえず皆を呼んだけれど、わちゃわちゃしてるとこに呼び掛けたので、当たり前といえば当たり前なんだけど結局ダイゴのポケモンまで含めて全員がくっついてきた。すいません、とダイゴを見上げると、いっそその方がいいと思う、とダイゴは頷いた。

 

 

「………じゃあ、彼女を出すけれど。彼女に敵意はないから、身構えないでくれよ?」

「はい。あ、オンバットがわかんないと思うから説明すると、前にホウエンにいったときに知り合ったナックラーっていうポケモンがいてね。……まぁ、色々あって恋愛的な意味で告白されたんだけれど、お断りさせてもらったの」

「きゅう!?」

「びっくりするよねぇ。ただ、その時の状況があんまり、あー、よろしくないというか、皆が怒るような告白の仕方だったもんだから、その時のことについてお話したくて追いかけてきてくれたみたい。……皆も、いい?」

 

 

即答でこそなかったし、微妙な顔をしながらではあったけれど、皆が頷いてくれたのを確認する。

 

 

「大丈夫です」

「わかった。じゃあ、出すよ」

 

 

そう言ってダイゴがボールを放る。

 

 

ボールから出てきたのはフライゴンだった。それも、とても高レベルな。

 

 

ぎょっと目を見開いて思わず身構えそうになったものの(ポケモン達は完全に身構えた)、現れたフライゴンは静かに着地する。……ほんとに、あのナックラー?確か別れた時は30レベルくらいじゃないか、と思っていたけれど、……私の目が確かなら、80レベルを超えているように見える。当たり前だが、レベルは高くなるほど上がりにくくなる。出会ってから8年、ずっとずっと一緒に努力してきた私のバタフリーとウインディでさえ、やっとこの前95レベルを超えたところだ。私の育成だと60レベルくらいまでは割と早めに持っていけるのだけれど、それ以降の伸びは緩やかになる。たぶんだけれど、このフライゴン、シャンデラのギリギリ下くらいのレベルになってないか?ダイゴ、随分大人げなく育成したな、と思ってダイゴに視線を向けたが、ダイゴは黙って首を振った。……まさか、自分で?

 

 

「フラ」

「……久しぶりだね。進化したの?」

「フラ!」

 

 

嬉しそうに鳴いたフライゴンは、私を見てきゅっと目を細めた。大きく尻尾を揺らすと同時に、小さく羽が震えて低い女性の歌声のような音が一瞬漏れる。

 

 

「……話したいことがあるんだって?」

「フラ」

 

 

フライゴンは一歩私から距離をとると、大きく頭を下げた。体勢すらも低くしたその姿は、人間側から見れば間違いなく謝罪している姿だった。

 

 

「……謝罪を受け取るね。追いかけてくるの、大変だったろうに」

「…………フラ」

 

 

これで終わりか、と思ったけれど、顔をあげたフライゴンは予想に反して私の目を覗き込んできた。

 

 

「フラィ……、……フラ?」

「ん?」

 

 

ダイゴと私を交互にみて、フライゴンは私の腰についているボールを見る。

 

 

「……らるるる」

「……ありがと、ラルトス。バトルは大好きだよ。勿論続けてる。それがどうかした?」

 

 

フライゴンが何を訴えたいかはちょっと分かりづらかったのだけれど、相手の感情を読み取るのが得意なラルトスが翻訳してくれた。どうも、まだバトルは好きか、と聞いてくれたらしい。そりゃあ勿論大好きだから、大好き、と返したわけだけど。

 

 

「フラ。フララ、フラ。……フラィ」

「フリィ!?」

 

 

待った待った、今なんて言った?バタフリーがはぁ!?と声をあげたのも無理はないこと言った気がするんだけど!?呼吸を整えて、恐る恐るフライゴンに問いかける。

 

 

「…………ごめん、フライゴンに会ったのは君が初めてだから、私の翻訳が間違ってたら申し訳ないんだけど。自分を売り込みに来た、って言った?」

「フラァ!」

 

 

嬉しそうに頷いたフライゴンにマジか、と唸る。

 

 

「フラ、フラ。フララ。フラァ!」

「…らる、……らるる」

「……うん、ラルトスありがとね、いやでも、バトルの戦力として自分を売り込みに来た、って、」

「フララ」

「…………」

 

 

絶句して動きが止まる。……いや、いやいやいや。そう、そうくる?

 

 

「……ボクが補足するのもなんだけれど、バトルの戦力として手持ちに加えてほしいそうだよ。勿論、下心は一切ないそうだ」

「フララ。フラ」

 

 

あなたの指示の下で戦ってみたい、って。

確かに手持ちにじめんタイプはいないし、今後も迎える予定はないから、タイプ的な意味で言えばフライゴンの加入は助かると言えば助かるのだが。……これ、私から、フライゴンに今は私のことどう思ってる?って聞きづらいんだけど。いくらダイゴが下心ないって言っても、二年越しに私を追いかけてきたことと、フライゴンが抱いていたらしい私への恋心が無関係とはちょっと思えないし。

 

 

「グルルルル……。ギャウ。ワフ」

「フラァ!フララ」

 

 

…………ウインディが代わりに聞いてくれたのだが(バタフリーは黙ってフライゴンの品定めに入っていた)、フライゴンは随分はつらつとして、もう恋心はないよ!と返してきた。ああ、でも、それを告げてきたフライゴンが満面の笑顔であったのが、ちょっとほっとしたといえばほっとしたかもしれない。

 

それでもナックラーのあの様子を見ていた私たちからすると驚愕は抜けきれなくて、それに気付いたらしいフライゴンは補足で説明をしてくれた。私達と別れた後、それなりに暴れるとかして荒れた数日を過ごしたそうだが、それでもフライゴンはすっぱりと私への恋心を捨て去ったのだそうだ。それで落ち着いて冷静になったフライゴンは、そういえば、私達が楽しそうにバトルの修行をしていたなぁ、と思い出したとかで。元来バトル好きだったから、ちゃんと私達の修行を思い出したら恋にかまけて素敵なトレーナー相手にもったいないことをしたなぁ、と思ったらしく、居ても立っても居られなくなって、修行をしながら私を追いかけたのだそうな。でも私はとっくにホウエンを出た後で、地方を跨いだ移動はとてもじゃないが出来なかったフライゴンは、発想の転換でダイゴを追いかけたのだとか。

 

 

「……あー、私にもう恋心はなくて?単純に手持ちの一体としての売り込み?私が聞くのもなんだけど、失恋した相手の手持ちになるって大丈夫なの…?」

「フラ!」

「い、いいの…?ええー……」

 

 

いいのかい。随分さっぱりした様子でそう言い放つものだから、なんだかこちらも拍子抜けしてしまった。色々と唐突なのはこの子の元々の性分がそうなのかなぁ、と思いつつ、フライゴンを検分する。恋のあれそれのことを流していいのであれば、バトルへのモチベーションは高くて、もうすでに故郷も出てきていて、努力する根性もあって、って、手持ちに入れるとしたら結構ありがたいことである。いや、仲間にしてきてる皆そうだけどさ。レベルが高い分私と彼女の息の合わせ方とか、そういった方向の調整には手間取るかもしれないけれど、即戦力と言っても過言ではないだろう。

 

 

「フリィ……?」

「フララ」

 

 

あの強烈さだったのに、ほんとに諦めたの……?と疑うバタフリーに、フライゴンは静かな瞳で諦めたよ、と返した。……これ以上つっつくの、逆に失礼になるかな。浮いているバタフリーに腕を伸ばすと、微妙に首を捻りながらバタフリーは腕にとまった。ちらりと皆を見渡すと、……うん、若干呆れたような顔をしてはいるポケモン達がほとんどだけど、概ねは私が言いたいことを察したらしく、それでも止めようとするポケモンはいなかった。

 

 

「……わかった、それなら君を歓迎するよ、フライゴン」

「フラァ!!」

 

 

ぱぁっと笑顔になったフライゴンが嬉しそうに寄ってきて、そっと頭を差し出してくるので、よしよしと頭周りを撫でてやる。嬉しそうに尻尾が一振りされたのを目で追って、それからダイゴの方に視線を向ける。ダイゴはなんというか、すごく奇妙な顔をしていた。

 

 

「ダイゴさん?」

「あー、いや、なんでもない。いいんだね、君たち」

「はい。恋がどうこう、ってなると私も困っちゃいますけど、単純にバトルで、ってことで、しかも私の指揮に好意をもってきてくれたならこんな嬉しいことないですし。よろしくね、フライゴン」

「フラ!」

「……わかった、わかった。そうしたら、譲渡の手続きをしないとね。それなりに拘束時間が発生すると思うけれど、大丈夫かい?」

「一か月でしたっけ?ブリーダー挟まずトレーナー同士の譲渡ってなると、ちょっと手間っていうのはスクールでやった覚えがあります」

「そうそう、よく覚えてるね。手続きだけなら1日なんだけれど、譲渡先との相性も見るから一か月はかかるんだ。ただ、このカロスはボクらの籍がないから、ただでさえ手間のかかる手続きがもっと複雑になってしまうし、出来ればホウエンかカントーで譲渡手続きを行いたいんだけど」

「それならホウエンでもいいですか?譲渡元トレーナーの本籍がある方の地方のがいいでしょう」

「いいのかい?じゃあそうするとしようか」

 

 

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