エルメロイ二世の「まるで意味が分からんぞ!」   作:マメットナイツ

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二話目~、エルメロイ二世は優雅たれない


自称救世主、取り調べ中…

時計塔、某月某日。

爆破テロから早数分。

時計塔での騒動の収集が開始され、慌しく補修作業が行われていた。

 

…………

 

この一室を除いて…。

 

 

 

時計塔における応接室の一つ、未だ砂と砂利の匂いが漂う中でエルメロイ二世は眉間を押さえた。

その原因はハラルドと名乗った彼女。

最初は圧倒されていたが、よくよく観察して見れば服装自体は至って平凡だった。

ベージュのジーンズに、同系色のシンプルなシャツ。

その上を白のファーが付いたアーミージャケット、しかしその平凡差に似合わぬ程の美形。

何より彼女の美しい銀髪と金色の瞳が、神秘的な風貌を作り出していた。

 

 

「……ミスハラルド、君のことはあらかた調べさせてもらった。」

「流石は教授。素晴らしい仕事の速さです。それで、何か質問でも?」

 

 

時計塔に真っ昼間からテロ行為をし、先ほどまで拘束されていたにも関わらず余裕は崩さない。

拘束に対しても一切の抵抗を見せなかった不気味さ、そしてあの魔眼。

そんなハラルドと手元のノートパソコンとを交互に見ながら、エルメロイ二世は口を開いた。

 

 

「ハァ……。ハラルド・ラグナ・ヴィリジスール。1990年4月8日生まれ、年齢は18。父親にアメリカ空軍大尉を持ち、幼少より英才教育を受ける。飛び級を繰り返した後、アメリカ合衆国空軍士官学校を卒業。卒業後はそのままアメリカ空軍のパイロット部隊に入隊。その後も昇進を重ね、階級は少尉に。そして……。5日前に一つの書置きを残し失踪。以後、現在まで行方不明…。さて、プロファイルが確かなら君は先週より行方知らず、更に言えば君のご両親及び、その血縁と家系を遡っても、魔術に関する経歴が一切ない。それどころか、君の祖父と曾祖父も、アメリカ空軍に所属していた子孫代々の軍人一家だ。」

 

エルメロイ二世は彼女のプロフィールを調べること自体は簡単だった。

なにせアメリカ本国では行方不明事件としてニュースで取り上げられていたのだ。

顔も名前も報道で流されていたために、少し拍子抜けもあった。

そしてそんなハラルド・ヴィリジスールは、魔術師の家系でもなければ一般家庭でもない。

ある意味では魔術からは最もかけ離れた軍人及び、その家系。

 

 

「もちろん、元軍従事者で魔術師なのは多くはないが珍しくない。ただし、それらの事例は元から魔術師であったり、魔術使いであることが殆どだ。」

「つまり教授。貴方はこの私が元から魔術師、あるいは魔術使いであると言いたいのでしょうか?」

「いや、悪いがそのようには微塵も考えていない。君の態度、行動が自身を非魔術師、魔術使いであることを証明している。」

 

 

 

そう彼女は魔術師ではない。それは絶対だ。

魔術使いですらないとも断言出来る。

エルメロイ二世は目頭を抑え、溜息をつくとただの一言。

魔術師としての常識と異なる事実を述べた。

 

 

 

………

 

 

 

痛む頭を抱えながら…。

 

 

 

 

君が一切の魔術の秘匿を行っていなかったからだ…!

 

 

 

 

そう嘆く視線の先のノートパソコンには……

 

 

『目撃者多数!空飛ぶバイク!』

『大陸を跨ぐ虹?』

『リアルレイン〇ーロードwww』

『怪奇!徘徊するミイラ人間!』

『不審者の目撃多数。近隣住民に注意喚起が。』

 

 

その他にも多数の記事があげられており、いくつかの掲示板サイトなどでも纏められていた。

その数はすさまじく、アメリカ各地方からのものである。

それぞれの記事は疎らなものだが、共通している点が一つ。

 

 

「…これらの記事は全て、君が失踪した後に作られたものだ。」

 

こういった記事はオカルト雑誌などではありきたりだが、ハラルドの失踪に合わせて急激に件数が増えていた

そう彼女はその力を一切躊躇わずに使い、アメリカからこの時計塔まで一直線にやって来たのだ。

もはや魔術使いとしても有り得ない行動だ。手の内を明かすどころか見せびらかすようなもの。

兎にも角にも、ハッキリ言って頭がおかしい。

あの正義の味方希望でさえ自重はしていたことを、この女は全くしていない。

そして絶賛胃薬服用中のエルメロイ二世を尻目に、ハラルドは優雅に紅茶をしばいている。

エルメロイ二世のストレスが直下堀でも始めようかという時に、ハラルドが口を開いた。

 

「教授。貴方の危惧は分かります。神秘の秘匿というのも理解しています。しかし、そんなものに構っていられるほどの時間は残されていません。」

「時間が残っていない?それはいったい…。」

「単刀直入に言いましょう。これより遠くない時に世界は滅びます。」

 

 

ハラルドの口調は重かった。

エルメロイ二世はその言葉が冗談ではない事を悟った。

ハラルドはエルメロイ二世の目を見た、思わずその瞳にルーン文字を浮かべるほどに。

余命宣告でもするように、これから起こりうる最悪の未来を続けた。

 

 

 

「冥府よりの使者『ダークシグナー』と『地縛神』たちの手によって……。」

 

 

 

 

そしてハラルドはエルメロイ二世を輝く瞳で見つめながら、高らかに宣言した。

 

 

 

「私、ハラルド・ヴィリジスールは救世主として世界を守り、救う為にここに来ました。故にロードエルメロイ二世、貴方をチームラグナロクに迎え入れたい。共にデュエルで、世界を守るために!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

シリアスとは長続きしないとは誰の言葉だったか。

彼はただ一言。

恐らくこれからも言い続ける事になろう気持ちを呟いた。

 

 

 

 

「ま、まるで意味が分からない……。」

 

 

 

エルメロイ二世の胃痛は始まったばかり。

 





ハラルド・ヴィリ「自爆神が……来る!」

冥府の王「なにそれ知らん。怖ぁ…。」
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