エルメロイ二世の「まるで意味が分からんぞ!」 作:マメットナイツ
でも、デュエルパート……頑張るから!
エルメロイ二世の目の前にて行われたことを彼は、二世本人は信じられなかった。というより信じたくなかったし、脳が入れた情報の全てを拒絶していた。
「な、なんなんだこれは……!?」
「ふふ、これで最早。教授、あなたは私の話を信じざる得なくなった。」
極星宝フリドスキャルヴ。と、ハラルドが詠んだ黄金の玉座が現れたかと思えば、次の瞬間。
二世の脳内には地縛神と赤き竜、ダークシグナーとシグナーの古の戦いが強烈なビジョンとなって、一瞬の内に脳内を駆け巡ったのだ。
もしこれが二世以外だった場合、その荒唐無稽さと、神秘に満ちた現象のギャップに暫くの間、脳をオバーフローさせてしまったことだろう。
それほどまでのリアリティと、非リアリティが混同された情報を二世はなんとか咀嚼し、苦悶の表情を浮かべのみこんだ。
「このフリドスキャルヴは万物を見通す神の力を宿した宝具……。教授、これでお分かりになったでしょう?私の言っていたことが事実であると。」
「……ハァ……、わかった。良いだろう…信じよう……。君の話を、な。」
二世はしなだれた前髪を掻き上げ、鬱屈そうな眼差しをハラルドへ向けながらも、ようやく彼女の話をマトモに聞くように思い直したのだった……
が。
二世は、彼は忘れていた。
ハラルドによる爆破騒動は既に時計塔全体に巡り、大きな話題になっていたこと。
そして、自身の教え子兼ボディーガードが、今、この場へと全速を持って向かって来ていることを。
突如、応接室のドアが閃光と共に四散する。
戸の奥より現れるは黄金の光。
ハラルドは二世が反応する間の刹那、今一度その瞳を輝かせた。
「ッ!極星宝グングニル!!!」
「アッドォ!!」
次の瞬間、黄金の一槍と死神の鎌が交差し、火のアカを散らす。
二世は尻餅をつくも、その見覚え深い鎌に安心と焦燥を覚えた。
「師匠!遅くなりました!お怪我はありませんか!?」
「グ、グレイ!?」
「下がっていてください!拙がコレを無力化します!」
素顔を隠すため深くかぶっているはずのフードが旋風により上がることも気にせず、グレイはその鎌を払う。
その全ての一撃は、ハラルドの首への軌跡を描くが、その悉くを黄金の槍は弾き、防ぎ、制する。
ハラルドはグレイの苛烈な攻撃に対し、眉一つ歪めることは無く。
寧ろ興味深そうに鎌の形状と、体術を観察していた。
「あの動き……、グレイでは突破が難しいな。」
鎌と槍の打ち合いが三十を超えた時、二世は戦況を把握していた。
「(ハラルド嬢は元軍人であり空軍のエース。恐らく対人格闘技術は軍の中でもトップクラスのものだろう…。扱う武器も長過ぎる印象こそあるが、対人において扱いやすい槍…。それに対してグレイは対霊に特化した戦闘スタイルであり武器も対人では些か癖の強い鎌……。)」
二世の読み通り、槍と鎌の打ち合いは徐々にハラルドの優先へと傾いていた。
グレイの額には汗が浮かび、焦りの表情が強く現れてもいた。
対するハラルドの表情は変わらず、観察するような目付きでグレイを捉えていた。
二世さえもその空気に飲まれかけていた。だからこそ気付かなかったのだろう。
グレイのうなじに、1匹の蜘蛛が取り付いたことに。
「ッ……。うっ……何…が……。」
突如グレイは鎌を取り落とし、その場へと倒れ込んでしまう。
「(力が……入らない?……それに…、ナニカが……入って…い……く……)」
「グレイッ!?」
「近寄るな、教授。」
二世はグレイに駆け寄ろうとするが、ハラルドはそれを制止しグングニルを構える。
グレイの身体は痙攣するように震え、その右腕には紫の光が蜘蛛のカタチを成して現れていた。
「やはり、既に冥府の使者は生まれていたか……。」
ハラルドはその光景に一人納得し、グングニルを手元より消す。
二世はその様子から、事の状況を完全に把握しているハラルドへ問いかけた。
「ハラルド嬢……、説明を頼む…。」
「おや、私の話は信じないのでは?」
まるで仕返しだと言わんばかりに、目を細めたハラルドが二世へと目を向ける。
しかし二世の表情には困惑の色が無く、ただ強い覚悟だけがその瞳には宿っていた。
「自分の愛弟子が巻き込まれている状況を、私はただ傍観するつもりは無い…。」
「……なるほど、あなたらしい。」
二世の覚悟を受け取ったハラルドは、ルーンの瞳を三度輝かせ、天高く自らの右腕を掲げる。
光が右腕を包み、その形を変形させる。
光が収まると、ハラルドの腕は"円盤"を半分に割った形状の鎧を纏っていた。
「ハラルド嬢……それは?」
「極星宝ドラウプニルに少し手を加えたモノですよ。」
「ドラウプニル……?それは…「ッ……ううっ…。」グレイ!?」
グレイは頭を抑えるようにしてようやく立ち上がり、その視線はハラルドにあった。
しかしそれは、先程のような得体の知れない者への警戒の視線では無く……。
「よもや、だな。この世界にも、あの極神共の奴隷が居るとはな……。」
「グ…レイ……?」
この世を嘲るような、冷やかな視線だった。
その美しい緑眼も紫の光に染まり。
声色も、いつものような大人しいモノでは無く、苛烈と悦楽に満ちたとのとなり、腕には蜘蛛の痣が浮かび上がっている。
二世の脳内には、先のビジョンの記憶が過ぎる。
ダークシグナー。
その中でも蜘蛛の神に選ばれた者は、他者にその力の一端を分け与えることが可能である。
グレイを変貌させたのはその力だということを、二世は理解した。
「(だが、どうする……。ハラルド嬢が見せたビジョンでは、ダークシグナーとの戦い方が殆ど映らなかった……。人間が赤い竜と共に巨大な影と戦っている様子こそ見えたが……、一帯どうすれば…。)」
そう、先程のビジョンではダークシグナーとシグナーとの戦いはその全貌が明かされることなく。
ただ不確かな情報しか、二世の手元には無かった。
二世は思考する。
戦闘力のあるハラルドはともかくとして、ひ弱な自分はどうすればいいのか、と。
「心配は無用ですよ。教授。」
「何?」
しかし、二世の考えに割って入るように、ハラルドが二世の前へと立つ。
そうして、彼女は自ら腕に装備した鎧を水平に構え……
「ハラルド嬢、何を。」
「おい、ダークシグナー。」
「デュエルしろよ。」
ただ一言。
そう、言った。
「なんでそうなる!!!!!まるで意味がわからないぞ!!!!!!!!!!」
二世、本日四度目の叫びだった。
デュエル回だと言ったな。アレは嘘だ。
次回、本当のデュエル回です!