全てはスレミオのために…   作:アブファート

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〇した

「ここで死ね!デリング・レンブラン!」

 

あ、俺死ぬ

 

そう思った

咄嗟に総裁を守ろうと体を盾にするように前に出たはいいけど、向こうはもう撃つ気満々みたいだし

えぇ…、やだなぁ

せっかくここまで来たのに

結構辛いことも我慢してきたのに

頑張ったのになぁ

ま、スレミオを守れるならむしろ本望っていうか…

……

待て、スレミオ…?

総裁がここで死んだらどうなる?

……

………

 

 

守らねばならぬ…

 

 

ここで、総裁を殺させる訳にはいかない

それはスレミオに差し支えるし

何より…、ミオリネが曇っちゃうだろうがぁ!?

 

持っていた包帯を投げつけ、敵の注意が一瞬そちらに向く、その刹那

総裁を載せた担架を後ろ蹴りで飛ばしつつ、その反作用でテロリスト側に飛ぶ

腰に忍ばせていたハンドガンを抜きつつ、低く低く、這うように距離を詰める

 

「貴様っ!?」

 

対人戦闘は昔から仕込まれてるんだよなぁ

GUNDって、結局モビルスーツを自分の肉体の延長線として操作する技術だから、操縦者のフィジカルがしょぼいとガンダムもしょぼいってことになる

だからガンダムに乗る人間には白兵戦を仕込む必要があったんですね

敵は地球のテロリスト

戦闘訓練を受けているとはいえ、それは地上で行ったものが殆どのはずだ

故に…

 

「なんだ!?その動きは!?」

「……」

 

無重力空間での戦闘に慣れていない

いつもより軽い体

独特な慣性

スーツで着ぶくれし、視界は狭い

重力下ではありえない3次元的な動きも織り交ぜ、困惑した敵は冷静さを失い、闇雲に射撃を繰り返す

最後にはトリガーを引いても出てくるのは金属音のみとなり

 

「クソッ!!」

 

リロードする時間はないと即座に判断

サイドアームであるハンドガンを抜こうとする

当然、その隙を逃がすような俺ではないぜ…!

今、ここで決める

決意と共に、右膝の裏で手すりをホールドするように絡ませ

左脇を絞め、右腕は地面と水平に、ハンドガン全体が大きく傾くような、コンパクトな射撃姿勢

身体は固定され、射撃用のセットポジションも完璧

照準の先にはテロリスト

ほんの少し感じた、罪悪感と共に

 

「死ね…」

 

トリガーを引く、そのとき

 

「!?!?」

 

凄まじい爆音を響かせながら、外壁の一部を突き破り何かが入ってくる

っておいおいおい、あれって…

 

「ユニコーン!?」

『……す、れあ…さん』

 

愛機が、そこにいた

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……す、れあ…さん」

 

どうして、ここに?

エアリアルのところへ向かおうとしていたとき

いきなり、ユニコーンがひとりでに動いたかのように、プラントの壁へ突撃し始めた

そして突き抜けた先には、どういう訳かスレアさんがいる

もしかして、ユニコーンは

 

「まもら…なきゃ…!」

 

スレアさんが、銃を構えている先

きっと、悪い人だ

この人が、スレアさんを傷つけようとしている

だったら、私は…

 

「やめ、な……」

 

ユニコーンを動かし、悪い人をやっつけようとして

 

『スレッタ!!駄目!!』

 

スレアさんの制止の声に、止まった

 

止まってしまった

 

お母さんの言葉

“逃げれば1つ、進めば2つ”

なら、止まってしまったときは、どうなるのか

答えは簡単だ

 

何も、手に入らない

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「銃声!?」

 

クソ親父のものだろう痕跡を追い、プラントの中を移動していたとき

突然、道の奥から破裂音が聞こえた

 

(間に合え間に合え間に合え!!)

 

急いで地面を蹴り、恐らく戦闘に発展しているであろう場所へ向かう

 

「今度は何!?」

 

更に、銃声とは比べ物にならない大きな崩落音のようなものまで響かせ始め、一層の焦燥を与えてくる

 

「お父さん!?」

 

目の前に、担架に乗せられ、巻きつけられた包帯に赤黒い血を滲ませながら眠る、父親が現れる

ということは、ここまでクソ親父を連れてきたのは…!?

ハンドガンを構えつつ、死角となっていた道の奥を覗くと、そこにいたのは

 

「スレアティア!?」

 

銃を構えたスレアティアの先、恐らくテロリスト

通路の外側

広い吹き抜けのような空間に、ユニコーンがいた

どういうことだ

ユニコーンには、スレアティアが乗って、プラント宙域のテロリスト達と戦いにいったわけではないのか?

そうでないとして、今ユニコーンに乗っているのは…

 

「スレッタ!!駄目!!」

 

スレッタ?

ユニコーンに

どうしてあの子が…

 

「うおぉぉぉ!!」

「しまっ!?」

 

ほんの一瞬、動きを止めたユニコーン

それを見たテロリストは、咄嗟の判断でスレアティアに突進し、組み付いていた

モビルスーツに同士討ちを嫌わせる狙いだろう

2人が縺れるように私の方へ来て

 

「スレアティア!そのまま動かないで!!」

「ミオリネ!?」

 

丁度テロリストの背中が私側に向けられる

これなら外さない

スレアティアを守れる

 

(あいつを殺して、スレアティアを守る!)

 

セーフティは事前に外してある

あとは、引き金を引くだけ

 

(テロリストを、殺して)

 

引くだけ、なのに

 

(人を…殺して…)

 

引けない

 

(私が…人を…)

 

トリガーに掛けた指が、動かない

 

動いて、くれない

 

ほんの数秒、私は迷った

 

それが、どんな結果を招くかなんて、考えもせずに

 

 

「がっ!?くっ…、は…なして!!」

 

テロリストがスレアティアの顔に頭突きをする

それに怯みながらも、男の胴体に膝蹴りを入れ、拘束が緩んだ隙に抜け出し、距離を取る

 

「っ!!」

 

そのまま持っていたハンドガン、その銃口をテロリストに向ける

そしてテロリストも、即座に態勢を立て直し、ホルスターから抜いたハンドガンをスレアティアに向けていて

 

「待っ…」

 

幾度も、乾いた音が響いた

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「いっちょあがり~!」

 

あの鬱陶しかったジェターク製モビルスーツ2機

その内の1機が、ミサイルの雨の中、連続する爆炎に包み込まれていく

爆発の痕には、焼け焦げた装甲、バラバラになった構成パーツ

“そこにモビルスーツがいた”

それだけを証明する残骸が残っていた

 

「今の動き…、庇ったのか?下らない」

 

ノレアが不機嫌そうに、今しがた撃墜した敵に吐き捨てる

 

「堕とせたんだから別にいーじゃん、それに、まだ1機残ってるし!」

 

動きとしては、あの深紅の機体の方が強者に見えた

一度、ヒヤリとする場面はあったが…

いや、あの感じ…、そもそも実戦に不慣れなのか…?

 

「ま、高慢ちきなスペーシアン様としては、当然っちゃ当然か」

 

確かに強いが、自分とノレアが揃っているこの状況

2対1では、どうあがいても相手に勝ち目はない

 

「…?というか、味方堕とされてショック受けちゃった?ぜんっぜん動かないじゃん」

 

試しにガトリングの銃口を向け、レーザー照準を当ててみるが

 

「あんたみたいな奴がさ…」

 

ロックオンアラートが鳴り響いているはずだが、やはり動く気配がない

 

「最初から出しゃばって来るなよ」

 

興醒めだ

モビルスーツの操縦は結構上手かったのに、ここに来て戦意喪失するとは

落胆の意思とともに、最早興味も無くなった対象に向けて、トリガーを引こうとしたところで

 

「ソフィ!回避!」

「え?…あっぶ!?」

 

幾条の光線がこちらに殺到し、回避行動を取らざるを得なくなる

ビームの発生元は…

 

『タイムリミットだな、全員帰還しろ、撤退する』

「えぇぇぇ~~!?まだ暴れたりないのに~!?」

 

何隻いるのか数えるのも億劫になるほどの数の戦艦

何機いるのかレーダーに捉え切ることもできないモビルスーツ

ドミニコス本隊が、すぐそこまで迫っていた

 

『本気の魔女狩り部隊とやる気?』

「ぶぅー!」

 

業腹だが、無意味に己の命を散らす趣味もない

 

「今度は本気のお姉ちゃん達と戦いたいなぁ」

 

今回、自分のハートを射止めてくれる相手は現れなかった

結構期待してたんだけど…

遣る瀬無い気持ちを抱えながら、ノレアと共に母艦へとスラスターを噴かした

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

体中が怠い

 

「はぁ……はぁ……」

 

軋む関節、霞む視界、沈む思考

あらゆる要素が休息を求めてくるが、それを圧して、ユニコーンのコクピットハッチを開ける

 

「う…んんっ!」

 

指一本ですら、動かすのが怠い

それでも、身体に鞭打って外に出る

 

「す、れあ…さん」

 

会いたい人がいる

 

「みお、り…ねさん」

 

守りたい人がいる

 

あの人たちの、ところに…

痺れる足を引き摺って

痛む腕を抑えながら

そうして、スレアさん達がいるはずの方向を見て

 

「うわっ!?スレアティア!?何を…」

 

遠くに見えた、スレアさんの背中

その奥から聞こえる、ミオリネさんの声

 

「スレアさ」

 

突然、その場に座り込んだスレアさんに声をかけようとして

その直後、赤い光が、私たちを包みました

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

あ…

あ…っぶねぇ…

し、死んだ?

何発も撃ったんだから死んだよね?

よ、よかったぁ、1発もらったけど、運よく右足に当たっていた

義足の部分だから、少し挙動が怪しいけど、生身よりかは全然マシだ

よ……

 

「よか、った…」

 

スレッタがユニコーンに乗って現れたときはどうなることかと思ったけど

何とか“やめなさいっ”の回避はできた…

 

「何がよかったのよ!?怪我はない!?無事なの!?」

 

あ、ごめん…

呆けたように呟いたら、ミオミオに怒られて心配されてしまった

 

「ん、大丈夫…、私より、デリング総裁を…」

 

そう言って、さっき蹴り飛ばした総裁の担架がどこにいったのか、辺りを見回そうとしたとき

突然浮かび上がった、ボールのような形状のものが目に入る

 

「は、はなる…地球、に…栄光……あれ」

 

ボールの正体は、ピンを抜いたグレネード

 

「!?」

 

それを握った手を開いた、テロリスト

それを理解した身体は勝手に動き

 

「うわっ!?スレアティア!?何を…」

 

ミオリネを、遠くへ突き飛ばし

自分も早く離れないと、と踏み込もうとしたら

 

「あっ…」

 

力を込めた右足、それが突然地面に沈み込むような感覚を受けて

力なく尻もちをついてしまって

 

「スレアティア!!」

 

ミオリネがこっちに手を伸ばしているのを見て、それを最後に

 

世界が突然、暗転した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は短め

やっぱ書いてる途中「これ面白いか?」って思っちゃいますよね
これは早めに対処しないとスランプに入っちゃうやつ

曇らせすぎ?

  • 今すぐやめろ、人の心とかないんか?
  • やりすぎだ!加減しろバカ!
  • もうちょっとこう、手心というか…
  • ままええわ、いい塩梅や
  • ここに追加でひとつまみ…wwww
  • 頂戴頂戴!そういうの頂戴もっと!!
  • 構わん、行け
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