全てはスレミオのために…   作:アブファート

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決闘した

「プログラムI-9も全て滞りなく終了、検体SM-102はパーメットスコア6を記録、その上での戦闘データを獲得することに成功しました」

「ほう、SM-102は?」

「プログラム終了後、一部身体・生命機能に異常が見られましたが、現在医療処置中です。主治医の所見として、命に別状はない、とのことです」

「化け物め…」

 

思わず口をついて出てしまう

10年間、GUND-ARM技術を秘密裏に研究してきたが、こんなことは初めてだった

何人もの検体を見てきたが、そのどれもがパーメットスコア3、よくて4で使い物にならなくなる

それが普通、それが当然、呪われた技術として当たり前の帰結であると思っていた

だが、奴はいきなり現れた

せめてスコア3環境下での、実用的な作戦遂行能力の付与を目指し、検体への薬物投与、神経への外科的処置、身体機能の増強、あらゆる肉体改造を施していた折

スコア3のデータストームを幾度も浴び、精神的破綻の兆候を見せていた検体が、スコア5に耐えきって以降、データストームによる影響を殆ど受けなくなっていたのだ

それが、検体SM-102

特殊観察対象として、あらゆる検査、実験的な肉体増強を数多試し、気づけばSM-102は

スコア4環境下であれば一切身体機能に支障を来さず、長時間の戦闘も行えるほどになっていた

スコア5まで行くと流石に身体が悲鳴を上げるようだが、それでも戦闘行動自体は可能だ

そして今回の実験で、ついに奴はスコア6のデータストームから生還したらしい

 

「我々の理解の埒外だな…」

「同意です、身体的な影響はともかく、SM-102の精神強度は異常と言わざるを得ません」

 

そう、何よりも奴の異常性は、そのメンタル…ガンダムを恐れていないのだ

それが己の精神を、肉体を大いに蝕むものと分かっているはずなのに

実験の度に何も言わず、何も表情に出さず、コクピットに自ら収まっていく様は、観察している者にある種の恐怖を感じさせた

 

「だが、もう奴しかいないのも確かか…」

「はっ、もう我が社の技術研究成果を表せるだけの材料は、SM-102しかないかと」

「アスティカシア学園…」

「学生同士のお遊びとはいえ、御三家の機体とパイロットとの戦闘を行える場は、あそこしかないので…」

 

GUNDは、呪われた技術だ

パイロットを殺す非人道的な兵器であるとして、随分前に技術ごと凍結され、以後の研究を全て禁止された

それでも我々は、それの研究をしている

GUNDは、間違いなく次世代モビルスーツに欠かせない技術であると、我々は確信している

しかし、我々も企業だ

利益を出し、技術研究の成果を示し、投資を募らなくてはならない

既に我々の研究資金は尽きかけている

ペイル社からの支援も、これ以上は望めない

このままではこの研究は闇に葬られ、今後日の目を見る機会は永劫ないだろう

研究者として、それだけは許せない

故に…

 

「SM-102を、アスティカシア学園で決闘に、特に御三家のモビルスーツに勝利させろ」

「了解しました」

 

化け物を解き放つ以外、方法はない

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

ミオリネとパーフェクトコミュニケーションをして以来、直接関わることはあまりなかった、会話もほんの少しだけだし、精々が重い肥料をハウスの近くに運んだり、いじめやら悪戯をしようとしている人間を少し妨害したくらいだ

スレミオを拝むのは俺の至上命題だが、だからって目の前の女の子がいじめられるのを見て見ぬふりしていい理由にはならないだろ?

それはそうと、この前グエルがホルダーになってたな、このまま2年生になれば、スレッタが転校してきて、ついに本編開始か…

ん?クソ会社から連絡が来てる?

え、嫌な予感しかしないんだけど

ほらやっぱり、“ホルダーになれ(超要約)”だってさ

はーつっかえ、この段階で俺がホルダーになったらストーリーに支障が出ちゃうだろぉぉん?

ままええわ、最近のグエルくん結構調子乗ってるから、てけとーな理由出して決闘挑めば受けてくれるでしょ

そんでパーメットスコアは上げずに、こっちがガンダムに乗ってることは気づかれないままパパっと負けて終わり!

そうと決まればグエルくんを探さねば、どこかな~

あ、見つけた

ん?そっちはミオリネのハウスがある方向じゃない?

そんなに取り巻き連れて一体何を…

 

………は?

 

 

 

 

 

 

いやー…

やっちゃったよ…

つい頭に血が上ってしまって…

だってせっかくハウスの近くに置いておいた肥料の容器を態々蹴り倒してたんだよ?

やることが小物過ぎるってグエルの取り巻きくん達ぃ

気づいたらそいつに絡んでしまって

あれよあれよという間にグエルと決闘することに

非常に癪だが、クソ会社のオーダー通りに動いたことにはなるから、怪我の功名ってやつか

あ、始まる?

あーあれね、はいはい

 

“勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず”

 

“操縦者の技のみで決まらず”

 

“”ただ、結果のみが真実“”

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

決心、開放(フィックスリリース)

 

戦闘開始の文句と共に、機体を固定していたユニットが外れていく

それと同時、一気にスラスターを噴かし加速

ある程度スピードが乗ってきたところで、アフターバーナーを点火

身体がシートに押し付けられる感覚を楽しみながら、トップスピードで疾駆する

ジェターク社の機体は装甲に重きを置いているため、機体重量は他社と比べるとかなり高くなってしまう

しかしそれを補って余りあるこの加速力

優れた推力重量比を実現する圧倒的パワーを持つスラスターだが、その大きすぎるパワー故に、制御するのは簡単ではない

だが、俺“グエル・ジェターク”なら

 

「速攻で沈めてやる…!」

 

目の前の、一本角のようなブレードアンテナを持った白いモビルスーツ

推力は多少あるみたいだが、見るからに貧弱な装甲と、気の抜けたような牽制射撃

ディランザの敵じゃねぇ!!

 

「もらったぁ!」

 

ほんの続いた射撃戦の合間を縫い、敵の射撃を自慢の装甲で弾きながら、一気に距離を詰める

苦し紛れのビームサーベルの攻撃を曲芸じみた機動で回避しつつ、敵のブレードアンテナを破壊する

その刹那

 

「…っ!?」

 

白い機体に、一瞬赤いラインが走った

 

「なっ…に…?」

 

気づけば、ディランザのブレードアンテナが、離れた地面に突き立っていた

 

 

 

 

 

 

『勝者、グエル・ジェターク』

 

勝ったのは、俺だった

あの刹那の仕合の間に、互いが互いのブレードアンテナを破壊していたのだ

判定は委員会の預かりとなり

0.28s

それだけ俺の方が早かったらしい

 

「くそっ」

 

屈辱だった

確かに勝者は俺で、ホルダーも依然俺だ

だが、この俺が、社名も聞いたことがないような零細企業の機体とパイロットに、ブレードアンテナを折られたのだ

 

「スレアティア・バルミオ…」

 

いつか、もう一度、本当の決着を

今度こそ、完膚なきまで

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

いつものことだった

私を嘲笑う連中が、いつものようの下らない嫌がらせをしてくる、そんな日常

いつも通りに片付けて、いつも通りに犯人にツケを払わせる

そんないつもの(クソッたれな)日常を送っていくと思っていたのに

 

「な、なんだよお前、離せよっ」

「…質問、答えて欲しい、何を、していたの?」

「か、関係ないだろ、いいから離せって痛ぅ!?」

「見ていて、気持ちのいいもの、ではなかった」

 

まただ

 

「…何をしているの?」

「げ、レンブラ痛たたた!?」

「はぁ…、離してあげて」

「ん」

「痛うぅ、クソがっ、覚えてろよ!」

 

THE・小物のような捨て台詞を残して、小物は去っていく

 

「また、余計な手間を増やしてくれたものね」

「…すまない、ミオリネ・レンブラン、見つけた時には、こうなっていて」

「あんたが謝ることじゃないわよ」

 

ハウスの壁に、落書きがされていた

下手人の小物には相応の報いをするとして、けしかけた奴も炙り出せるかしら

 

「全く下らない、ほら、あんたも手伝いなさい」

「ん」

 

こいつのことは、よくわからない

いつも無表情だし、言葉はカタコトだし、何考えてるのか何を言いたいのかもわからないけど

少なくとも私に嫌がらせをしてどうこうしようという人間ではない

私が見てないところでも、何やら動いているみたいだし

たまにハウスの近くにまで肥料や設備が運ばれているのも、そういうことなのだろう

先日はあのグエルにまで突っかかって、もうあと一歩のところで勝利を逃していた

もしもあれに勝っていれば、こいつがホルダーになっていて

それってつまり、私の婚約者になっていたってことで

そんなことがあっても、こいつは相変わらず何を考えているのかわからない

私に対しても全く詮索してこないし

レンブランの娘が欲しいわけじゃないの?

グエルとの決闘も、原因を聞いてみれば私への嫌がらせに腹を立てたような話だったし

 

「変な奴…」

 

少しだけ、頼ってもいい人間なのかもしれない

………って

 

「何考えてるんだか…」

 

今日、運び屋と連絡が取れた

これまでの素人とは違い、あらゆる対応や所作が違う

ようやくアタリを引いたと思った

これで、地球に行ける

こんな箱庭、さっさとおさらばして、私は地球に行く

母親が愛した、あの星に

そうしたら、あいつとも二度と…

 

「ミオリネ・レンブラン」

「キャァ!?」

 

いきなりあいつが目の前に立っていた

 

「な、なによ!?驚かせるんじゃないわよ!?」

「すまない、何度か、声はかけたんだが」

 

どうやら考え事に夢中になっていたらしい

気づけば落書きは、きれいさっぱり掃除されていた

 

「ふん、ご苦労様、あとは自分でやるわ」

「そう、わかった」

 

さり気なく掃除に使っていた道具を手に持ち、あいつがこの場から去っていく

 

「…………」

 

その背中を見つめていて、さっきの考え事の中でも感じた、よくわからないこの感情は、いったい何なのだろうか

何となく、本当に何となく

寂しさ、に似ているなと、少し思った

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「あれが、学校…?」

 

コクピットの中から、外の様子を伺う少女

 

「お母さん、とうとう来たよ…!」

 

世界を動かす物語(本編)が、始まる

 

曇らせすぎ?

  • 今すぐやめろ、人の心とかないんか?
  • やりすぎだ!加減しろバカ!
  • もうちょっとこう、手心というか…
  • ままええわ、いい塩梅や
  • ここに追加でひとつまみ…wwww
  • 頂戴頂戴!そういうの頂戴もっと!!
  • 構わん、行け
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