全てはスレミオのために…   作:アブファート

20 / 22
お受けしました

『何を、しているの?』

 

目の前に現れた純白のモビルスーツを前に、想定よりも事態がずっと大きくなったことに歯噛みする

ニカ・ナナウラと、スレッタ・マーキュリーを排除できれば、事故としてそれで終わりにできた

しかし、ここでモビルスーツ同士の戦闘ともなれば…

 

「は、はははっ!!もしかしてもしかして、スレアティアお姉ちゃん!?」

 

事態をどう収束させるか、思考を回していると、ソフィが興奮したような声を上げた

 

『…?あなた、誰?』

「やっぱり!ユニコーン!前はスレアティアお姉ちゃんが乗ってた訳じゃなかったんだね!?」

 

他は何も見えてないとばかりに、ファラクトの側からユニコーンの方へと歩み寄っていく

 

「ソフィ、何を」

「今の動きだけでもわかるよぉ!!すっごく綺麗、やっぱりあの決闘の動画は嘘じゃなかったんだ…、あ、それならスレッタお姉ちゃんのエアリアルも見てみたいなぁ!!」

『……今はとにかく事態の収拾を付けたい、その場を動かないで』

 

興奮しすぎている、こうなったソフィは言うことを聞かない

そして、これ以上の第三者の介入も不味い

やはりここは、強引にでも…

 

『何のつもり?』

「見てわからないんですか?」

 

ジェネレーター出力を上げ、スラスターに推進剤を充填する

この状況においてこれは実質的な宣戦布告

この場が戦場となるのにあと数秒というところで

 

「決闘!!しましょう!!」

「…決闘?」

 

スレッタ・マーキュリーから、おかしな提案をされた

 

「私たちが勝ったら、ニカさんに手を出さないでください!」

「馬鹿ですか?私たちに従う理由なんか…」

「あります!!」

 

強い語気で、こちらの発言を遮ってくる

 

「この学園の生徒なら…、ルールに従ってください!!」

「………」

 

呆れた

まだ、自分達をこの学園の生徒として扱うようだ

聞くに堪えない、まずは目の前のユニコーンをどうしようかとフットペダルに足を掛け直したとき

 

「あっはははははは!!」

 

ソフィが急に笑い出した

この流れは…

 

「決闘って人が死なないお遊びでしょ?モビルスーツは人殺しの道具だよ?」

 

ソフィがスレッタ・マーキュリーに歩み寄り、目の前に立つ

そこまで近付かれると、私も手が出せない

 

「違います、ガンダムは、医療で人を救うモビルスーツになるんです」

「ハハッ、……いいよ、決闘してあげる」

「ソフィ」

 

先程の興奮もそうだが、ソフィの悪癖が出過ぎている

窘めるような声音で名前を呼ぶが

 

「いいじゃん、やろうよ」

 

こうなったらもう曲がらないのがソフィ・プロネという人間だ

 

「でも、せっかくならスレッタお姉ちゃんじゃなくて、私…」

 

ソフィがスレッタ・マーキュリーから目線を外し、上を見上げる

 

「スレアティアお姉ちゃんとやりたいなぁ?いいよねぇ?」

「っ、それは…!」

『構わない』

 

視線の先、ユニコーンから帰ってきた言葉は、短い肯定だった

 

「スレアさん!?」

「アハッ、決まりぃ!」

 

驚愕したような声を出すスレッタと、心底嬉しそうに笑うソフィ

 

「ガンダムが暴力マシーンだってこと、スレッタお姉ちゃん達に教えてあげるね?」

 

そうして、魔女同士の決闘は決まった

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

“スレアティアが目覚めた“

それを聞いたのは、あの子が既に学園へ行った後だった

 

「あら怖い顔、美人が台無しよ?」

「…どういうこと?」

 

スレアティアが目覚めたのに、自分には何の連絡も面会もせず学園へ戻ったこと

最初はそのことについて怒りの感情が湧いたが、その後に続いた報告

その中の1つ“記憶喪失・混濁の症状あり”の一文

詳しい話を聞こうにも、本人は既に学園だし、私も今は外の人間と話せる立場じゃない

結果、プロスペラ・マーキュリーくらいからしか話を聞けない状況なのだが

 

「言葉通りの意味です、彼女は、少なくとも学園に来てからの記憶がありません」

「……学園に来る前って」

「それも、先程お話した通り、あなたの認識でそう間違いはないと思いますよ?」

「…そう」

 

最悪の気分だ

今すぐにでも、彼女の元に行って話をしたい

あの時のことを謝罪したい

これまでのことを聞きたい

これからの自分を伝えたい

きっと、沢山の言葉が必要だ

自己嫌悪は、もう飽きた

飽きたからと言って止まる訳ではなかったが、それ以外にも、やるべきことがある

あの子が、ガンダムに乗るために生まれてきた訳じゃないこと

あの子の大切なものを殺してきたガンダムは、決して人殺しの道具なんかじゃないってこと

あの子も、幸せになる権利があるんだってこと

全部じゃないけど、少しでもあの子に伝わってくれればと思った

私だって、あの子から奪った側の人間だ

だから、贖罪をしたかった

だから、自分の会社が作った義足であの子が歩く姿を見たときは、心の底から嬉しかった

だから、これからも、自分ならあの子を救えるものだと思った

だから、いつか、許されるのだと…

だから…

なのに…

 

「私ももう少しで聴取が終わるはずよ、そうなったら直ぐに学園に戻るわ」

「えぇ、娘もきっとお待ちしています」

「部屋に戻るわ、それじゃ」

「えぇ、また」

 

早々に会話を終わらせ、自室へと足早に向かう

 

「……」

 

学園に戻って、あの子に会ったところで、自分に何ができるのか

もしかしたら、また、あの子から…

 

「っ…」

 

力を込めて掌を握っても、私程度の力では、ほんの少し痕が残る程度で

 

「スレアティア…」

 

自分の無力さが、ひたすらに鬱陶しかった

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「早くっ、早くっ!」

 

モビルスーツハンガーにユニコーンを格納、搭乗用連絡路がコクピットユニットの前まで伸びていく

それが、とてもゆっくりに感じます

 

「早く…っ!」

 

連絡路が伸び切り、警告灯が消えると同時に、駆け出す

 

「スレアさん!」

 

直ぐにユニコーンの正面に辿り着いて

数秒後、ゆっくりとコクピットのハッチが開き始めます

先程の騒動は、ファラクトの調整中にトラブルが発生し、それに対応しようとしたユニコーンが止むを得ずハンガーの一部区画を破壊した事故として、処理されていました

事情聴取や報告書は多少覚悟しなきゃですが、今は置いといて!

 

「お久しぶりですね!スレアさん!」

 

外部装甲が展開完了し、内部のユニットがプシューっという音と共に開いていきます

あの事件から、ずっとずっと会いたいと思っていました

ついに、やっとあの時のことを謝れると、そう思って

ゆっくりと、開いていくハッチの先は

 

「ご無事でしたか!?スレアさ……」

 

まず見えたのは、無機質な瞳

前は無表情ではありましが、どこかこちらの視線を引き込むような、不思議で綺麗な目をしていました

目の前の人は、以前にも増して無表情で、無機質で

まるで、別人のような

 

「スレア…さん、その、目」

 

そして、不思議で綺麗だった瞳は、左側が眼帯で覆われていました

それは、今の無機質な印象をさらに増幅していて

少し、怖い

そう感じてしまったとき、その人は口を開いて

 

「あなたが、スレッタ・マーキュリー?」

 

少しは表情を読み取れるようになったな、と思っていたのに

そんな自信なんてなかったみたいに、何も感じることができない無表情のまま、私の名前を呼んで

まるで、初対面の人を見るような

そんな、冷たい視線

悪夢であって欲しい

自分の身体の奥底から滲み出た恐怖に、そう願ってしまいました

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「え、スレアティアお姉ちゃん記憶ないの?」

「うん、少なくとも、アスティカシア学園に来た後のことは、何も覚えてない」

「ふーん」

 

もしかして、スレッタお姉ちゃんがあんなに元気なかったの、そのせいかな?

 

「そんな状態で、決闘は大丈夫な訳?」

 

あの場では、スレッタお姉ちゃんが急に決闘って言い出して

どうしてか、エアリアルよりもユニコーンの方が、何かこう、ビビッとくる、そんな気がして

 

「問題ない」

「へー」

 

そう直感が告げていたのだが

こうして見ると、今更何だか失敗した感じが…

 

「ユニコーンに乗った記憶とかも無いんでしょ?ガンダムがどういうものか、それも忘れた訳?」

「最近の記憶は、私にはない、でも、最近の私が何を為したかは、ユニコーンが覚えていた」

「ふーん、それで?」

 

これまでの会話で思ったが、どうにもガンダムに乗ることに対して忌避感を覚えていないようだ

もしかして、前のお姉ちゃんは私と似てたりして、と考えて

何となく、目を合わせて

 

「ユニコーンは、私は、誰かを救おうとしていた」

「………」

 

綺麗だ、そう感じた

初めて見たときは、ひたすらに暗い瞳、という印象だったのに

今はまるで、暗い暗い、透き通るような暗さがそこに宿っていて

 

「私は、ガンダムは人を救うものだと思う」

「……ィヒ」

 

嘘だ、そう思った

その言葉は、スレッタお姉ちゃんみたいな、“信じてる人間”が発する言葉だ

ドロドロと蠢く泥のような

それでいて奥底まで覗けてしまえそうな

濃密で、むせ返るような“死”の匂いを纏った視線

そんな目をする人間が、本心から放つような言葉ではない

故に、嘘をついている

その確信があって

 

「だから、私とユニコーンは大丈夫」

 

それでも、その瞳は吸い込まれるように深くて

とても、綺麗

 

「いいねぇ、スレアティアお姉ちゃん、最っ高」

 

絶望しているはずの人間が、希望を語っている

諦めているはずなのに、どこまでも期待している

まるで、死にながらにして生きているようなちぐはぐさで

その感情、その在り方、その楽しそうな(本当に死んだような)

私が、知らないものばかりだ

 

“欲しい”

 

 

「決闘に賭けるもの、今決まったよ」

 

“ずるい”

 

「私が勝ったら」

 

私も、“それ”になりたい

 

「私だけのお姉ちゃんになって?スレアティアお姉ちゃん?」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「ほらここ、地球寮の皆さんと一緒に会社設立パーティーした場所ですよ!写真もあります!」

「うん、楽しそうだね」

 

モビルスーツハンガーで、久しぶりにスレアさんと再会したのが、昨日

 

「ここがパイロット科の演習場です!」

「おぉ、広いね」

 

学園での思い出を忘れてしまったと、スレアさんはそう言っていました

 

「ここはミオリネさんの温室で、私が初めてスレアさんに出会ったのも、ここなんですよ?」

「ふむ、ここがミオリネ・レンブランの…」

 

私と会う前のスレアさんは、こんな感じだったのかな

でも、グエルさんと決闘することになったあの時

まだ知り合ってなかった、初めて見たスレアさんは、もっと…

 

「どうです?何か思い出せそうですか?」

「うーん」

 

学園に入ってから、変わったのかな…

私と会ったときから、お友達はあまりいなかったみたいですし

それこそ、ニカさんと知り合うまではミオリネさんくらいで

 

「ごめんなさい、まだちょっと…」

「そう、ですか」

 

私が大好きな、あの温かくて、綺麗な目

ああなったのは、ミオリネさんのおかげだったのかな…

私が来るまで、スレアさんは、ミオリネさんとどんなお話をしてたのかな

きっと、私と居る時よりも…

 

「スレッタ・マーキュリー?」

「は、はははい!?ごごごめんなさい!?」

「?、謝ることはない、それより、次はどこに行くの?」

「あ、つ次はですね…」

 

ボーっとし過ぎです…

話しかけられて反射的に謝ってしまいました

変に思われてないでしょうか…

やっぱり、私何かじゃ、スレアさんには…

 

「?、何かの告知?」

 

突然、校内放送が始まり

 

『こちら決闘委員会、ランブル・リングに参加する生徒は、第9戦術試験区域に集合して下さい』

 

ランブル・リング…

ランブル・リングって、確か…

 

「ホルダーは毎年参加する習わしって…」

「スレッタ・マーキュリー?」

 

す、すっかり

 

「忘れてましたぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 




話が…進まない…?

曇らせすぎ?

  • 今すぐやめろ、人の心とかないんか?
  • やりすぎだ!加減しろバカ!
  • もうちょっとこう、手心というか…
  • ままええわ、いい塩梅や
  • ここに追加でひとつまみ…wwww
  • 頂戴頂戴!そういうの頂戴もっと!!
  • 構わん、行け
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。