「SM-102の本気、ですか?」
「あぁ」
先日、SM-102が、他者と共闘していたとはいえ、御三家であり、ホルダーでもあったグエル・ジェタークに勝利したとのことだった
だが、戦闘データを見て、私は確信した
「奴は、全く本気を出していない」
「そんな…」
そもそも、SM-102の機体は、GUND-ARM無しでもそれなりのスペックを誇る
“パイロットの安全は保障できない”という前提はあるが…
「あれは、スペックの高さを実現するために、動力の動作温度安全マージンはかなり切り詰めている上に、GUNDから流れる膨大なデータを処理するだけのプロセッサ、あらゆる要因が重なり、あのガンダムがフルスペックを発揮するときの発熱は膨大になる」
「つまり…問題は…」
奴の機体を設計する際、開発チームの頭にあったのは
【ハイエンド】
この一言に尽きる
「放熱だ、既存の材料技術や、熱伝導技術では間に合わないと早々に結論付けた我々は、これまでの常識、言うなれば“静的放熱”を前提とした技術に見切りをつけ、“動的放熱”の道を取った」
「“動的放熱”…?」
性能を上げれば上げる程、それが機械である以上、多くの場合発熱が問題になる
どこまでも引き上げられたハイエンド志向の末に作られたモビルスーツは
どこまでも引き上がる発熱量で、開発チームの頭を悩ませた
その末に、出た結論が
「モビルスーツ全体に誘電式熱伝導ヒートパイプを張り巡らせ、一定以上の発熱が起こったとき、装甲を変形させることでヒートパイプを露出、超高圧電流をプラズマ化することで、大容量の熱を真空環境下でも扱えるようにした」
「つまり、装甲を剥がして、直接外空間に放熱を行う、と?」
当然、デメリットはある
「それでは、機体内部を晒したまま戦闘することになります、耐久力に甚大な影響が出ますし、それに熱をプラズマ化…、どれだけの異常な電磁場が発生するか…、それの真っただ中にいるパイロットの身体に、どんな悪影響が出るかも…」
「だから言っただろう、あの機体は、最初から“普通の人間”が乗ることを考慮していない」
この若い研究者が考えていることなど、我々はとっくの昔に通り過ぎている
「その上で、問題ないパイロットを作るのが、我々の研究だ」
「………」
自分たちが何をしているのか、ようやく正しく理解してもらえたようだ
「そして、先に言った通り、あの機体は一定以上の性能を発揮するとき、装甲が変形するのだが、プラズマとして放熱する関係上、あの機体は…」
「まさか…」
おや、気づいたか
あの化け物が本当に目覚めるとき、それは直接目にすれば非常にわかりやすい
「機体各所から、紅く輝く燐光が溢れ出すんだよ」
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「…すまない、最近睡眠時間をあまり取れていないんだ、もう一度、聞かせてくれ」
「はい…、あの…、SM-102が、グエル・ジェタークに、……求婚されました」
「………何故?」
「それは…、私にも…」
「そうか…」
いや本当に何故?
◇◇◇◇◇
いやーーーーーーー、やらかしたね
まっさかグエルに求婚されるとは思わなんだ
いやマジで、やらかした
本来あの場所にはスレッタがいないといけなかったんだが…
求婚されるその瞬間まで忘れてたとか言えない…
取り敢えずその場は何とかお茶を濁して切り抜けたが
プロポーズされた昨日から、知らん人間からの有形無形の好奇心がすごいんだわ
玉の輿だの、子供は何人欲しいかだの、式はいつ上げるのかだの
そもそもまだ結婚してないし、するつもりもない!
俺はスレミオを拝むのに忙しいんだ
男にかまけてる暇はない
だがグエル・ジェタークは有名人
そんな有名人に求婚されたとあっては、相手である俺にも非常に注目が集まるのは仕方のないことだった
何ならスレッタがホルダーになったこと以上に話題になっているかも知れん
やっぱ少年少女は色恋に関する話題の方が好きなのだろう
昨日一晩考えたが、スレミオを成就させる上で、今回の原作ブレイクは問題ない、というのが俺の結論だ
最終的には、グエルはミオリネと協力して、後方彼氏面するだけだったし
グエルがスレッタに好意を向けたことで、ミオリネが嫉妬してどうこう、という描写もなかった…、はず
つまり、スレミオを達成することに、グエスレの要素はいらない、ということだ
ん?今回もグエスレと言えばグエスレか?
まぁそんなことはどうでもいい
とにかく、俺は男に興味はないってことだ
どうせグエル君は恋愛には奥手も奥手
好意を持った相手には素直な気持ちを言えずにツンツンしまくっちゃう奴だ
そのノリでお互い「別に好きじゃない」っていう言動をしていけば、このグエスレは自然消滅するって寸法よ
原作ブレイクなんてなかった、いいね?
とか考えてたら、件のグエルくんじゃーん
やっほー、元気―?
相変わらずツンツンしてるー?
「スレアティア、結婚の件、前向きに考えてくれただろうか?」
君なんか原作と違くない??
◇◇◇◇◇
「スポッターと、メカニック…」
モビルスーツの実習には、協力者が必要不可欠だと言われ
手伝ってくれる人を探して、早半日
「やっぱり…、私なんかを手伝うの、嫌…ですよね…」
様々なメカニック科の生徒に声をかけましたが、返ってきた答えは、皆さん同じでした
言い方は様々だったけど、その中には…
「………っ」
顔が、下を向く
ダメです
泣くのは、ダメです
弱虫な自分は、ダメなんです
だから、歯を、食いしばってでも…
「スレッタ?」
「!!」
いきなり、俯いた自分の顔を覗き込まれる
そこにいたのは
「すすす、スレアさん!?」
「大丈夫?…スレッタ……悲しい?」
あぁ
この人は、本当に優しい人なんだ
こんな、私なんかのことも、心配してくれて
私なんかの気持ちも、汲んでくれようとして
「ぜ、全然、大丈夫です!す、少しお腹が痛くなってしまって!あ、あー、トイレはどこかなー?」
だからこそ、私なんかと関わるのは、この人のためにはならないんです
皆さんの、言ってたことが正しい
今日一日で、馬鹿な私も、学習しました
だから、私は…
「んっ」
「わぷっ!?」
え…えぇ!?
「悲しいときは、こうするといい、本に、書いてた」
「え、え、え…あの…、えぇ…?」
私は、スレアさんに抱きしめられていました
「私たち、友達だって、スレッタが、言った」
「あ、あの、そ、そそそれは」
「だから、スレッタの悲しい、は、私も、悲しい」
「っ!!」
「進めば、2つ、だよ、これも、スレッタが、言った」
あぁ、もう
そんなこと言われたら、私…
「あり、がとう、ございます」
「うん」
「す、少し、困ったことになってしまいまして」
「うん」
「それで、て、手伝ってくれると、嬉しいな、って」
「うん、いいよ」
やっぱり、お母さんが言ってた通りだ
・
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・
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「ごめん…、私、役立たず」
「そそそそんなことありませんよっ!?」
いざスレアさんと2人で協力してくれる方を探してみたはいいものの
スレアさんも先日のグエルさんからの求婚の件で一躍有名人となっており
それもあってか未だ良い返事を聞かせてくれる方は見つかっていません
「こう、なったら、私の、友達に、聞いてみる」
「スレアさんの、お友達…?」
・
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・
・
「ってニカさん!?」
「スレッタさん?」
もしかして、スレアさんのお友達って…
「ん、二人とも、もう、知り合いだった?」
「え、えぇ、前に、少し…」
「あ、あはは…」
どこで誰が繋がっているかわからないものですね…
「ニカ・ナナウラ…」
「ニカでいいよ?」
「ニカ、スレッタの、スポッターか、メカニックを、やってくれないだろうか」
「んー」
ニカさんは少し考えて
「ごめんね、私も後輩の追試を手伝わなきゃいけなくって」
「そう、ですか…」
困った顔で、断りの返事をされる
「私は手伝えないけど…」
「?」
それとは一転、悪戯っぽい笑顔を浮かべると
「紹介なら、できるよ?」
・
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・
「あんでここにスペーシアンがいんだよぉ!?」
「ここは地球寮だぞぉ!?」
「二度と来んな!!クソスペーシアァン!?」
せっかく、手伝ってくれる人が見つかったと思ったのに、追い出されちゃいました…
「どうしよう…、これじゃ実習受からない…」
「………私も、友達、もういない」
スレアさんと2人、夕暮れの中で途方に暮れていると
「また、困ってる?」
「え、エランさん!?」
「エラン・ケレス?」
スレアさんと同じ、いつも無表情だけど、すごく優しい、エランさんが、そこにいました
「ど、どどどどうしてわかるんですか!?」
「君たちはわかりやす過ぎると思うけど」
こちらに歩み寄ってきて、話を促すように、こちらを見つめてくる
「その…、実習、一人じゃできなくて…、でも、誰も手伝ってくれなくて…」
「じゃあうちの寮来る?」
「え…?」
「嫌?」
「あ、え、ちがっ、ちちち、ぜんぜ、全然嬉しいです!!」
「おぉ、その手があった」
スレアさんもこう言ってますし!
「い、いいんですか?」
今度こそ、手伝ってくれる方が見つかる!?
っと思ったんですが
「「ダメ(だ)!!」」
「え?…ミオリネさん?」
「グエル・ジェターク?」
◇◇◇◇◇
スレッタをいい感じに励ましつつ、上手いこと地球寮とのコンタクトを取らせ、いざエランからスレッタを引きはがしムーブをするミオリネを拝もうと思ってたら、何故かグエルも来た
しかも、何故か俺を引っ張ってエランから離そうとしてくる
ちょちょちょっ、スレミオ、今スレミオチャンスなんだって!
な、何をするんだグエル!?
って力つよ!?
ヤメッ、ヤメロオォォォ!?
あー!!そんなひっぱらないで!?
あっち!あっちにスレミオがあるんだ!!
あーでも!!いきなりスレミオを見たらそれはそれで強すぎるだろうから!!
ゆっくり、ゆっくりですよ!?
ゆっくり向こう側に戻してもらって…
(ミオリネがスレッタの腕を必死に抱えて引き寄せている姿)
イイィィッ↑↑タイ↓↓メガアァァァァッ↑↑!?!?!?!?
・
・
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・
・
なんか今ジェターク寮のロビーにいる
高濃度のスレミオを一瞬のうちに浴びて、俺の意識が半分飛んでいる間に、グエルが連れてきたらしい
なんだか俺の入寮手続きをしようとしてるみたいだけど、規則とかしがらみ的に大丈夫なんか?
まぁ確かに、元々俺はペイル寮所属だけど、バックが零細企業もいいとこだし、立場としては縛るものがないも同然だし
先日のグエル求婚事件以来、なんか「お前なんでここにいんの?」みたいな目で見られてたし
過ごし辛いなーって思ってたから、転寮は歓迎なんだけど
あぁ、ほら、受付の人困ってるじゃん
ダメだよグエル君、未来のトップがそんな一個人を贔屓しちゃ
あーあ、スレッタとミオリネどうしてっかなぁ
……
………あれ!?
もしかして、今晩って
あのイベントじゃないか!?
スレミオお泊りイベント!!!!
そ、そうだ!そうだよ!
二人のパジャマパーティが開催される日だ!!
それが、今日…!!
こ、こうしちゃいられない、グエル君、俺可及的速やかに対処すべき事項ができたからここで……
「待ってくれ!」
え、なに
腕そんな強く掴まれたら、い、痛いんですが
い、いつになく真面目な顔ですが、あの、グエルさん…?
「スレアティア、俺は…、本気だ」
ふーん、ガチじゃん…
◇◇◇◇◇
モビルスーツ実習試験、当日
『私には、無理でずうぅぅ』
「あんたが決めたことよっ、戻ってスタート地点に立ちなさい!」
あのスペーシアンが、この前のあーしと同じ妨害を受けていた
オープン回線で話してるから、こっちにまで会話が丸聞こえだったが
それを聞くに、どうやらあいつはあいつで、故郷からの、想いを背負っているらしい
それを…
「「キャハハハハハッ」」
嘲笑っている奴らがいる
「ホルダー様がみっともねぇの」
自分たちは何も背負わず
何もせず
邪魔するだけ邪魔して
遠くから、嘲笑ってる奴らがいる
「田舎者は大人しく引っ込んでなって…」
そういう奴らが、あーしは
スペーシアンとかアーシアンとか関係なく
心の底から…!!
「誰の思いも背負ってないやつが…」
大っ嫌いなんだよぉ!!
「邪魔してんじゃねぇ!!」
思いっきり殴り飛ばしてやる
それを見たもう一人が、すかさず反撃に出ようとしてくるが
「うん、それには、全面的に、同意する」
いきなり現れた、昨日のスペーシアンの片割れ
「スレッタと、ミオリネの、邪魔は、ダメ」
その拳が、相手の顔に減り込むのを見て
「ありがとう、チュアチュリー・パンランチ」
スペーシアンにしては、多少マシな奴だと思った
曇らせすぎ?
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今すぐやめろ、人の心とかないんか?
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やりすぎだ!加減しろバカ!
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もうちょっとこう、手心というか…
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ままええわ、いい塩梅や
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ここに追加でひとつまみ…wwww
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頂戴頂戴!そういうの頂戴もっと!!
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構わん、行け