「SM-102が、ペイル・テクノロジーズ所属、エラン・ケレスとの決闘に、敗北しました」
「そうか…」
神妙な顔で報告を聞くが
「間に合ったようだな」
「ええ、間一髪でした」
今回の敗北を仕向けたのは、我々だ
「しかし、ペイルがこれだけ積極的かつ迅速な支援の話を持ってくるとは、あの化け物を放した甲斐があったというものだな」
「先方、かなり焦っていましたからね…」
SM-102がエラン・ケレスと決闘すると知らされ、順調に御三家が保有するモビルスーツとの戦闘記録が増え、技術研究成果を示すことができると期待したのも束の間
決闘中、正確には、あの化け物が本気を出した辺りで、唐突にペイルから連絡があったのだ
“そちらの言い値で研究開発費を支援する、対価として、現在の決闘に負けて欲しい”
とのことだった
「いやはや、流石は御三家の一角、資本力が違うな」
「ええ、これだけ大口の投資は、過去に類を見ません」
これで、またしばらく研究に没頭することができる
偶然の産物とはいえ、あの化け物も、存外役に立つではないか
「して、SM-102は?」
「はっ、流石に検体SM-102も、パーメットスコア7には耐えられず、相応の肉体的・精神的損傷を負ったようです、現在は、アスティカシア学園内の医療機関で処置を受けているとのことですが…」
「死んでない、か…、流石は化け物だな」
我々がやったことと言えば、些細なことだ
外部から、強制的に奴が搭乗するモビルスーツ
ユニコーンのパーメットスコアを上げただけ。
効果は覿面だったようだが
「はい、ですが、まだ意識は戻っていないとのことで、このまま…」
「眠ったままの可能性もあるか、まぁ、化け物としては上等な最期じゃないか」
既に我々の興味はSM-102になく、潤沢な資金で行う、今後の技術的アプローチに胸を躍らせていた
「SM-102と、ユニコーンは諸共ペイルにくれてやれ、使い物になるかは知らんがな」
「かしこまりました」
今回の後始末も根回しも、全てペイルがやってくれるらしい
あぁ、あの化け物は、本当にいい終わり方をしてくれた
最低限“人命”を慮る姿勢があることを示すために、我々が作る検体用のメンテナンス方法と設備は提供するが
いくら奴でも、スコア7から五体満足で生還できる訳がない
「これでようやくおさらばだ、検体SM-102」
清々とした気持ちで、奴の検査・観察ファイル、それに貼付された顔写真に、“処理済”の印を押した
◇◇◇◇◇
「現在治療中です、面会は許可されていません」
さっきから、こればっかり
「お引き取りを」
あぁ…もう!!
「どこの指示よ!?直接ソイツに話を付けるわ!!」
「医者の指示です、お話することはできません、お引き取りを」
「このっ…!」
額に青筋が浮かぶのが、自分でもわかる
どうして会えないのよ!?
顔を見るだけでもいいって言っても、返答は変わらない
ICUに入ってても、外から顔を見るくらいの面会はできるはず…
これだけ徹底した面会謝絶、間違いない
「どこかの誰かが、スレアティアの何かを隠そうとしてる…?」
あまりにも、情報が出てこなさすぎだった
医療機関は、フロントがただ同じセリフを繰り返すだけ
学内情報ネットワークにも、スレアティアの経過どころか、治療が必要な状況であることを報じてすらいない
明らかに、何かしらの情報操作を受けている
「……いいわ、やってやろうじゃない」
この私を敵に回したこと、後悔するといいわ
・
・
・
・
・
部屋に、端末の画面を指で叩く音が響く
「…これが、こうね」
かれこれ何時間やってるかわからないが、改めて情報工学分野のことを頭に叩き込みながら、ハッキングを試すのは、骨が折れる
「……これで」
だが、学園管理下の医療機関如きのプロテクト
「やった!」
私には、造作もないわ
深いところにはあまり潜れないけど
所属の医者の権限を偽装して、院内ネットワークにログインするだけなら、何とかできた
「スレアティア・バルミオ…、スレアティア・バルミオ…」
患者の電子カルテから、あいつのものを探す
「あった」
顔写真もついていてわかりやすい
間違いなく、スレアティアのものだ
「…何よ、これ」
中を見ようと覗いてみれば、その中身は
「真っ黒じゃない…!?」
氏名年齢身長体重などの基本的な情報以外、症状や経過などの記入欄が殆ど黒く塗りつぶされていた
「いいわ、やってあげる…」
そこから更に数時間、更新される前のデータをサルベージするのに悪戦苦闘して
「やっと…!」
修正される前のデータ復元が終了し、ようやく中を普通に閲覧できる状態にできた
そして
「………?…………っ!?」
そこには
「な、何、よ…、これ…」
夥しい数の
「スレア、ティア…?」
治療
服用
作用
治癒
手術
回復
施術
移植
摘出
投与
改良
強化
改造
維持
保持
追加
処理
あらゆる、”処置”の履歴
「あなたに…」
スレアティア・バルミオの
「何が…」
凄惨な歴史を示す
◇◇◇◇◇
「だから、です、今日を誕生日にするのは、どうですか?」
スレアティア・バルミオとの決闘に勝利し、GUNDの後遺症から回復しようと休んでいるそのときに、彼女は来た
「誕生日がないのは、寂しい、じゃないですか…、だからっ」
「やっぱり君は…」
こちらが求めてもいない、祝福を持って
「鬱陶しいよ」
とっくに僕は、呪われているのに
・
・
・
・
・
「エランさん、ごめん、なさい、怪我無いですか?」
「決闘の賭けは僕のことを教える、だったね」
“君は何でも持っている、希望だって”
“だったら勝利くらい僕にくれよ!?じゃなければ…、不公平過ぎる!!”
さっきまで、自分には何もないと思っていたけど
「いたんだ、昔…、誕生日祝ってくれる人」
今、思い出したんだ
「僕には何もないと思っていた、けど…」
やっと、思い出せたんだ
「そうじゃなかった、そうじゃなかったんだ…」
とても、大切なことを
「そんなの、おかしい、です」
「…?」
そして、今だって
「誕生日を祝ってくれる人、います、私もいます」
僕には、あったんだ
「エランさんに何もないなんてこと、絶対にないです!!」
「そうだね…、おかしいね…」
とても、大切なものが
・
・
・
・
・
「ハッピー…バースデー、トゥーユー…」
暗い部屋に、光が灯る
「ハッピー…バースデー…」
やがて光は収束していき
「ハ、ッピバースデー…」
全てを、白く染めた
◇◇◇◇◇
「………」
学園内に併設された医療施設
その入院病棟の中、とある病室の前に、私はいる
(スレアティア・バルミオ)
目の前の表札には、そう書かれている
事前に病室の場所を調べ、フロントや警備の眼を搔い潜り、セキュリティを誤魔化して、ここまで来た
「………っ」
意を決して、ノックをする
『……はい?』
返事が返ってくる
目は覚めてるのね…
「入るわよ」
この目で確かめる
この口で問う
この耳で聞く
あれが真実か、否か
「調子はどう?スレアティア」
「ミオリネ…?」
そのために、ここに来た
◇◇◇◇◇
…
……
………
…………ハッ!?
また気を失っていた!?
また俺は高濃度のスレミオを浴びたのか!?
あれ、でもなんか直近でそんな記憶ないんだけど…
余りに高濃度過ぎて記憶メモリごと焼き切れたとか?
そんなの勿体なさ過ぎる!!
こうしてはいられない、早く起き上がらないと…!!
「痛ぅっ…!?」
な、なんだ?
身体を起こそうとしたら激痛が走るんだが…
何か右足の応答も鈍くない?
目も…、左かな?ぼやけてるっていうか…
あ
あーーー
いや、思い出した
俺ってばエランとの決闘真っ最中だったじゃん
そしていざケッチャコを付けよう…ってときに、確か…
急に頭の中を掻き混ぜられるような、いやGUND使うときは毎度そうなんだけど
これまでのそれとは比べ物にならない違和感を感じて
気付いたらGUNDフォーマットを維持できなくなってて
ユニコーンの覚醒状態が解除されて、それと同時に意識が沈んで行って…
あぁ、そうか…
「私、負けたんだ…」
正直、本気だった
勝つ気でいってたんだがなぁ
スレッタのために、意地でも勝利を捥ぎ取ろうと頑張ったんだが…
「っ……」
くっそ
泣きそう
全力全開で挑んで
それでも尚届かないって
こんな辛いんだな
それも大切な子のためにやってたってんだから猶更だ
あーあ、もっと強くなりてぇな
大事なものを、全部守り切れるくらい
目の前の時計から日付を見るに、俺の決闘から数日経っている
もう、スレッタと4号の決闘は終わっているはず
つまり、4号はもう…
あー、ちっくしょう…
もうやめだやめ
不貞寝しよ
枕に頭を預け、瞼を閉じて、自分の意識を沈め始める
そのとき
(…?)
誰かが、病室の扉をノックした音がする
はーい?
◇◇◇◇◇
「あんまり体調は芳しくなさそうね、何か食べたの?」
「ううん、さっき、起きたところ、だから」
「そ」
本当のことなのだろう
声を出そうとして、少し喉が掠れているような音がする
「ほら、水、喉乾いてるでしょ」
「うん、ありがとう」
コップに入った水を差し出し、スレアティアが受け取ろうと手を伸ばす
そのとき
「…?」
伸ばした手が、勢い良くコップに当たり、少し水が零れてしまう
自身でも困惑しているのだろう、珍しくほんの少し目を見開いている
その目を、ふと見つめていると
「…まさか!?」
「え…?」
ほんの少し抱いた違和感
弾かれたように、スレアティアの左目に近付き覗き込む
瞳孔が、揺れている?
「あんた…、左目…」
「…ん?あ…、うん?…なんか、見えにくい、かも」
まさか
「他は?目鼻口、五感とか、手足とか、痛みは?」
「ん……」
矢継ぎ早に質問し、スレアティアが自身の身体の各所を確かめるように、モゾモゾと動かす
「…?………ん、問題、ない、よ?」
「嘘ね」
右足を動かそうとした段階で、少し止まり
そのあと、無表情のまま、こちらに問題ないことを伝えてくる
嘘と断定するのは早かった
急いで右足の裾をまくり、太腿の上辺りまで露出させる
そこには
「何よ…これ…」
薄く、赤く、ぼんやりと光るような、痣が浮き出ていた
「…他も見せなさい」
「え、ちょっと…、ミオリネ?」
何を隠しているかわかったものじゃない
取り敢えず両手足を見ようと腕の袖を捲ってみると
「……………」
言葉が、出なかった
余りにも
余りにも、多過ぎる
日常生活を送る上では、絶対に必要ないはずだ
手首
二の腕
外腕
肘関節内側
この様子だと、肩から上も…
スレアティア・バルミオの腕は…
夥しい量の、注射痕で埋め尽くされていた
「…………」
頭に過るのは、あのカルテ
「あの…ミオリネ?」
およそ人間に施すものとは思えない、“治療”の痕の数々
「説明…」
「え…?」
アンタに、これまで何があったのか
「説明、してくれるわよね?」
「………」
洗いざらい、吐いてもらうわよ
・
・
・
・
・
「ん………、ごめん、ミオリネ」
長い沈黙の後、スレアティアは口を開いた
「なんで…」
アンタが謝るのよ
「今は、まだ、話せない」
「………」
いつもの無表情
でも確かにそこには、悲哀の感情があった
「ごめん、ね、いつか、必ず、話すから、だから…本当に、ごめん」
「……なさいよ」
「え…?」
そんな顔しながら、何度も謝ってまで、自分の過去を話そうとしないって…
どうしてよ
なんでなのよ
そんなに私は頼りない?
ほんっとに、あんたは…!
「本当に辛かったなら、つべこべ言わず私に相談してみなさいよ!?」
何があったのかくらい、勿体ぶらずに言いなさいよ!!
「辛かったって!」
そう言いなさい
「苦しかったって!!」
言ってよ
「素直に言ったらどうなの!?」
お願いだから…
「スレアティア!!」
辛いのはスレアティアのはずなのに
何で、こんなに強く当たってるのよ、私は…
「うん……、本当に、ごめん、ミオリネ」
こんなヒステリー起こしてる女に
そんな顔して謝らないでよ…
「バカ…」
少し寝かせる、このひと手間が大切なんですね
お盆が終わるので、毎日投稿は難しいかもですね
知らんけど
曇らせすぎ?
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今すぐやめろ、人の心とかないんか?
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やりすぎだ!加減しろバカ!
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もうちょっとこう、手心というか…
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ままええわ、いい塩梅や
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ここに追加でひとつまみ…wwww
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頂戴頂戴!そういうの頂戴もっと!!
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構わん、行け