陶磁を連想させる白い腕に透き通るような白い髪、無駄に露出度の高い鎧は捨てさせてそこら辺に落ちてた服(訳あり)を着てもらった。着替えシーン?僕は策略家だ。ここでは見ない。僕が普段掛けている眼鏡を掛けてみたがもう最高だ。僕は今までこのような運命と出会うことは無いと思っていたが、人生は何が起こるか分からないものだ。誰かが引き寄せてくれたと言うのなら100万円そいつにくれてやってもいいと思う。
すると、愛しの戦闘神さんが何か言ってきた。
「おい!いつまで私を抱えながら歩くんだ!離せ!」
「そんな罵声も僕にとってはただの養分だ。もっと浴びせてくれ。」
「気持ち悪ぃ!!」
ああ、やはり最高だ。無理を言って来た甲斐があった。一緒に来てくれた人にはご冥福をお祈りして、さっさと軍の中継基地に移動しよう。僕が乗っていたVTOL機の所属は第一陣だった筈だ。攻撃の第二陣は今からたしか8時間後に始まるはず。と言っても、そのボスは既に僕の手中にあるのだがね。さっさと軍の奴らに攻略したと言って引き上げさせてもらおう。
「それにしても、まだまだ遠いな…あと何時間掛かるんだ。」
僕は今余裕の表情で歩いているが、体の内部は悲鳴を上げまくっている。前にも言ったが、僕はもう三十代後半に差し掛かって、こんな重運動したら確実に明日筋肉痛になる。腰だけは絶対に死守しなければ。
「頼む…そろそろ下ろしてくれ。変な運び方をされて酔いそうなんだ。」
「心が?」
「ぶち飛ばすぞ。良いから降ろせ!」
戦闘神さんが懇願してきたので、仕方なく降ろしてあげる事にする。
「おい、足の紐も解いてくれよ。歩けないだろ。」
「え、引きずって運んで欲しいんじゃないのか?」
「違うわ!更に酷いことになるじゃないか!」
ああ、そうだったな。ちょっと
僕は彼女の足を縛っている紐を解いた。何か反撃されたら怖いので取り敢えず後頭部に銃口を突きつけておく。
「え、何で銃を突きつけるんだ?」
「そりゃ天下の神様に反撃されたら怖いからな。自分の癖ど真ん中の子に突きつけるのは死んでも有ってはならないことだがな、戦場では悲しいことに当たり前のことなんだ。」
そのまま拳銃を突きつけっぱで前へと進む。暫く経った所で、またもや戦闘神さんが話しかけてきた。
「ちょっと、銃降ろしてくれないか?今までに感じたことがない恐怖を緩やかに味わうことで胃が悲鳴を上げてるんだ。反撃しないから、な?」
「神様にも胃袋はあるのか。」
「気にするのはそこじゃない。」
しょうがない…僕は甘々なので戦闘神さんから銃を降ろした。反撃は確かに無かった。
そんなこんなで、僕達はいつの間にか僕が最初に降り立った場所であるVTOL機の残骸の横を通り過ぎていた。
通信機はいつもどうり肝心の通信機能が使えない。事前に登録してあった中継基地の場所は、まだ6時間ほど掛かる場所に位置している。
僕達は無言で歩いていた。戦闘神さんは勿論バテることなどあり得ないが、僕はもうバテそうだ。
あぁ、水は行く時に全部飲み干してしまった。僕は天才科学者だが、そういった計画は基本立てない。理由は勿論スリルが無くなるからだ。これでも人生で失敗することは無かったのだが、ここに来て裏目に出てくるとは思わなかった。
しかし、この世界は不思議だ。ずっと日が出ているのは前に気づいたが、『太陽の熱さ』らしいものを感じない。もしかしたらそのお陰でまだバテていないのだろうか。
「おい、まだ歩くのか。流石に退屈なんだが。」
「しりとりでもするか?」
「お前は特定の言葉で攻めてきそうだから嫌だ。」
相変わらず酷いことを言う人だ。興奮する。それにしても、しりとりを知っているのか。神様だから当たり前、とかそんな感じなのかも知れないな。しかし、今気づいたが僕は戦闘神さんの名前を知らないな。僕も名前を教えていないし。きっと暫く一緒に居るだろうから(意味深)名前を聞いておこう。
「なあ、戦闘神さんの名前は何だい?」
「え?名前なんてある訳無いだろ。あるのは識別コードとあだ名だけだ。」
「そうか…因みに識別コードは?」
「教えるわけ無いだろ。識別コードは最重要機密だ。言っておくがどんな拷問を受けても教えないぞ。」
「僕が拷問を受けたら教えてくれるか?」
「教えるわけ無いだろ変態。」
立場を逆にしても教えてくれないのか…じゃああだ名を聞いてみよう。
「あだ名はどうだ?教えてくれても良いんじゃないかい?」
「何か教えると私の何かが穢される気がする。」
「何も穢されないよ。寧ろ浄化されるな。僕の心が」
「そういう所のせいだろ。」
戦闘神さんはその後少しもじもじした後、顔をそっぽ向けて口を開いた。
「…イザベルだ。」
「………」
「何か言えよ。」
「尊い。」
「死ねっ!!」
縄で縛られた両手で殴られた。痛いな。それにしても、あだ名がイザベルか…識別コードやらと何か関係があるのか?まあ教えてもらったし僕の名前も教えよう。
「僕の名前は二釘惣市だよ。気軽に惣市って呼んでくれ。」
「気軽に呼んだらいけない名前だな、分かった。」
言っておくが僕は塵ほどもダメージを食らっていないぞ。ダメージを受ける時は大体スーパの寿司ででわさび入りの寿司を買った時に大量にわさびが入っているのに気付かなくて食べたときぐらいだ。
そんな事を考えていると、奥に何やら光るアンテナのような…いや、アンテナだ。まだ中継基地に着くまでに4時間ほど掛かるはずだったのだが…何か予定の変更でも有ったのだろうか?
「そろそろ着くかな…」
「一体何処に向かってるんだ?」
「僕の帰るべき場所。」
イザベルさんから疑念の目を向けられる。
「どうせお前はあの兵士たちの仲間なんだろ?私をどうするつもりだ。」
「そうだな…各種検査を受けてもらって、僕の研究所兼自宅に来てもらおう。」
「僕の研究所…?」
「まあまあ、後で分かることだ。」
奥に小さく兵士の姿が見えてきた。どうやらあちらも僕達の事を認識したようで、此方に手を振っている。
僕はイザベルさんを両手で持ち、限界を迎えそうな足腰を動かして走っていった。
「何で持ち上げるんだ!?」
「その方が効率的かなって。」
兵士はイザベルさんの姿を見た瞬間、一気に顔を強張らせた。全員が銃を構え、銃口を向けてくる。
「二釘博士…その少女は一体?」
「落ちてたから拾った。」
「落とし物のようにかm…〜〜ッ!!!」
危ない。咄嗟に口を手で覆って助かった。イザベルさんが神(っぽいもの)であることがバレたら一緒に穴開きチーズになってしまう。
「彼女はなぜか知らないけど、塔の近くで眠っていたんだ。服もまともな物を着てなかったから、しょうが無しに近くで死んでた兵士の服を借りた。僕の勝手な推測だが…傷こそ無いが、きっと酷い目に遭ってたんだろう。この混乱に乗じて逃げていたんだと思う。」
此処までホラを吹けるとなると、僕には詐欺師の才能があるかも知れない。まあ100%嘘ならバレないって誰かが言ってたしな。
「……申し訳ありません。博士が幾ら研究バカだからって、生きたまま神を連れてくるなんて事は無いですもんね。失礼しました。此方へどうぞ。」
どうやら納得してくれたようだ。聞き分けの出来る軍人で助かった。
兵士は、僕と一緒に行動していた部隊の事について聞いてきたので、先遣部隊と自分の居た部隊のいくつかのVTOL機乗員は、少なくともほぼ全滅したと話した。先遣部隊はイザベルさんが倒したんだけどな。それと、敵が予想よりも弱いことから、進軍の速度が早くなっているらしい。
「お二方は此方で休んでいてください。疲れたでしょう。」
兵士は複数人用のテントに僕達を入れてくれた。中に入り、イザベルが最初に口を開いた。
「口を塞いだのは許せないが…ともかく、二釘“博士”ってどういう事なんだ?お前は、兵どもから随分と慕われていたじゃないか。一体お前は何なんだ?」
「僕はね…科学者なんだ。専攻は磁力工学で、此処への行き方を見つけたのも、この銃を開発したのも、僕自身だ。一応地球では名の通った人間でね?」
「なら…お前がこの戦いの元凶だということか?」
「おいおい、元は君達が攻めてきたからだろ?何を言っているんだ。」
イザベルさんは信じられないと言う顔をしていた。
「私はそんな事一切聞いていない。これでも模擬神を束ねる者だぞ。そんな事があったのなら聞いていない筈がない。」
どういう事だ?イザベルの話が本当だとするなら、模擬神は悪くなくて、別の元凶が存在する、ということになる。
そうだ。やはり進軍速度が早すぎる。地球が襲撃を受けた時にはあらゆる都市が被害を受け、使者は1万人に登った筈だ。何かを僕達は履き違えている。
「…イザベルさん。この世界は、一体何個あるんだ?」
「ん?二つしか無いに決まってるだろ。此処は
…やられた。これは完全に罠だ。最初からこの世界に神界が“一つだけ”だと考えるのがいけなかったんだ。
今すぐにでも侵攻を止めなければならない。このままでは大変な事に成る。
「イザベルさん。裏について何か知っているか?」
「
ああ、余りにも運命は無情だ。こっちからは現界には連絡ができない。詰んだも同然だ。
「君達にはとんでもない迷惑を掛けたようだ。ただ、こっち側も暫くすれば地獄を見る。」
「お前はさっきから何を言ってるんだ?」
「このままだと地球が終わる。めでたくデッド・エンドだ」
「話の要点を纏めすぎだ。」
兎に角、この無益な戦いを終わらせなければ。地球が終われば此処で永住する羽目になってしまう。
「ちょっと俺は外に出てくる。イザベルさんはそこで待っててくれ。」
僕はテントのカーテンに手を掛け、一旦立ち止まった。
「もし球に勝手に触ったら18禁なコトしてやるからな。」
「なんだ?ジュウハチキンって。神獣の名前か?」
ちっ。ここは通じないのか。
◆◇◆◇
今日も不穏な風邪が吹いている。図らずしも時間が止まることはない。
《イザベル》
さいきょうの戦闘神さん。対人特化★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
二釘製拳銃が強すぎた。武装さえしてれば一振りで敵を屠れる。
二釘のタイプど真ん中。本人はまだ迷惑に思っている。
頼れるヒロイン。