キヴォトスでサバイバル生活 作:ころんあっと
______目が覚めるとそこは、暗い森であった。
まだ太陽が真上にあるというのに、背の高い木々の葉が陽の光を遮って、そこかしこに薄暗い空気を作っており。
地面には僅かな木漏れ日を求めて低木が生い茂り、その間にクモが巣を張る……そんな場所に、私は気がつくと立っていたのだ。
私______
え?何故言い切らないのかって?
……というのも私、前世の記憶がかなり曖昧なのだ。自身の性別すらあやふやで、まるで抜け落ちたかのように記憶が無い。一応、学校で習うような勉強だとか一般知識だとか、一部無事なものもあるのだが、大半はまともに覚えていない。
ここで目を覚ます直前の記憶だって、大量のエナジードリンクと書類が積まれたデスクに突っ伏した光景を朧げに思い出したのみである。転生というのも自分の状況をもとにした考察で、本当にそうであるかは一切不明。
そして目が覚めたら1人ぼっちで森の中であった。
始めは混乱……というよりは、何か夢でも見ているのかと呆然としていたけども、それも徐々に落ち着いた。
どうせ来てしまったものはどうしようもないし、前世も確実にろくでもない所だろう。それならばいっそここでおとなしく暮らそう。そういうことにしたのである。
「やべ……階段足りない……」
そして、私が自分を転生者と思った理由は実はもう一つある。というよりも、こっちの方がメインの理由かもしれない。
それは、私にとある
「よいしょ……っと」
今まで立っていた場所から降り、手頃な木に近づく。そして、自分の視界に表示させた『インベントリ』から、私は
それはまるで、ドット絵で描いたような見た目の
ガッガッガッ…………ポコッ。
すると、丸太は軽快な音とともに、小さなキューブ状になり私の足元に転がった。
そう。私にはかの有名なゲーム…… 『マインクラフト』の力が使えるのである。
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「ふぃ〜……やっと完成した……」
無事に階段をクラフトし、家の屋根に設置した。これで、この世界での我が家の完成である。3日ぐらいかかってしまったが。
周りにはリアルな木々が生えている中、キレイな四角に切り出された素材で出来た家が鎮座している様子は改めて見ると異様としか思えない。
まぁ……完成させたものは仕方ないしいいか。私はマイクラでやれることができるってだけで、枝を組んで家を建てる知識も、火を起こす技術も無いのだから。
「お邪魔しま……あれっ?」
暗い。あまりにも暗い。この家に窓が無いということに、私はドアを開けて中に入ってから、初めて気づいた。
ひとまず壁に穴を開け、木のフェンスを設置する。部屋は明るくなったものの、フェンスには隙間ができるのが気になる。ガラスの方が映えるだろうが、あいにく私の手元にはガラスが無かった。
そういえば、森の中に川はあったものの、川底は砂利ばかりで砂は見当たらなかった。これは早急に砂を手に入れる必要があるな。
部屋の中は、ベッドとチェスト、作業台だけというとても簡素なものだ。というかそれ以外に置くものも無いし、スペースも無い。いつか広げるだろうが、まあしばらくはこれで問題ない。
ベッドに寝っ転がる。思えばここ最近ずっと作業をしていたから、休憩らしい休憩をしていなかった。でも体は全然疲れた感じはしない。不思議なものである。
しかし一体、此処はどこなんだろうか。周りを見た限りでは僅かに残る前世の風景とすごい似ている。
だが、ひとつ気になることがある。それは、木々の隙間の青空に浮かぶ、巨大な謎の、光輝くサークルである。空にいくつも浮かんでおり、夜になっても消えることは無いそれは、前世では一度も見たことはない。……多分だけど。私の記憶は信用できない。
まあ、そんな事を考えても仕方ない。ただひとつ確かなことは、私にはマイクラの能力が備わっているということだけ。
大人になってからこそやっていないが、子供の頃の自分はかなりマイクラをやり込んでいた。そんな大好きなゲームの能力を手にしたとなれば、そんなのやる事は一つに決まっている。
「決めた……私はこの世界で、悠々自適なサバイバル生活を送って見せる!!!」
こうして、私のサバイバル生活が始まったのである。
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さて、この世界に来て、はや1か月が経とうとしていた。その間に私は畑を作り、鉄を焼き、時にはアスレチックをしたりと所謂マインクラフターとしての生活を謳歌していた。
この体、なかなかに身体能力が高く、空中でブロックを設置しながら素早く飛び移ったり、屋根までジャンプで届いたりする。また、私が壊したものはキューブ状になるため、どんなに重い物も普通に持ち運ぶことができる。
さらに、マイクラ内でできる動きだけでなく、釣り竿を木に引っ掛けて移動したり、弓で矢以外にも剣とか飛ばせる。すげ〜。
あと、怪我をしても満腹になればしばらくして回復するらしい。一度だけ高い所から落ちて大ダメージを喰らったが、パン食べてしばらくしたら治った。傷がみるみるうちに塞がっていく感覚は何だか新鮮だ。
ちなみに、農作物は取った直後にはドット絵だが、何かに加工した途端に何故かリアルな見た目になる。パンもベイクドポテトもとっても美味そう。一体何故こんな仕様なんだ……?
まあそれは置いといて。
それなりにこの生活を謳歌していた私はついに、この森の「外」に出る事にした。
つまりは大遠征である。
「パンが2スタック……原木と丸石がそれぞれ3スタック……あ、バケツも持って行こ」
目的はガラス用の砂を集めること。食料も資材も十分過ぎるほどあるし、鉄の剣やシャベルも用意した。ベッドも一旦壊してインベントリに入れ、準備満タンである。
なんだかんだ住み心地の良かった我が家を離れるのは少し寂しいが、今よりもっとカッコいい我が家にするために必要なことだ。
それに、この遠征の目的はそれだけでは無い。
今のいままで、ずっと森に引きこもってサバイバルをしてきた。けれども私が思うに、『サバイバル』とはただ生きるだけでは無いのである。
きっとそこには、『冒険』が無くてはならない。
だからこれも、サバイバルなのである。
「それじゃあ……いってきます」
我が家に別れを告げる。きっとこれから、私は色々なものに出会うだろう。その出会いはなんであれ、自身を成長させてくれる筈だ。そんな期待を胸に、私は歩き出した。
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「なあ、お嬢ちゃん……悪いことは言わねぇからさ……私達にお金貸してくれよ?」
「痛い目見たくねぇなら、大人しく従ってくれよな?」
「ハッハッハ! このゲヘナにこーんな無防備で来るやつがいるなんてなぁ? ま、お前の運でも恨むんだな!」
………えー……………私は現在……最悪な出会いを果たしております………
とある街の、とある裏路地。私は現在進行形で、眉間に銃口を突きつけられてカツアゲにあっていた。