卯花色のリリェ -宵の明星-   作:Eo.

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【挿絵表示】

主人公側の前日談


1.苦さは大人の味

北大西洋に浮かぶ人工浮島(メガフロート)、滑走路と管制塔、ハンガーなどがあり

 

海に浮かぶ一つの小さな空港となっており、外となりには居住区も設けてある。

 

メガフロート自体に推進用のエンジンが取り付けられており、牽引船無しでの移動が

 

可能となっている。

 

そしてこのメガフロートには、とある極秘組織のメンバーとその協力者たちが居る。

 

「......」

 

とある海が見える一角にあるベンチに座り、銀色の髪をなびかせ、永遠と続く

 

海を眺める少女が居た。

 

「そんなにここが好き?」

 

銀色の髪の少女の後ろから白衣を着てメガネを掛けた若い男が話しかけた。

 

「海が良く見えるからね」

 

振り向かず、地平線の向こうを眺めたまま少女が言う。

 

「もう海なんてここのメンバーは全員見飽きてると思うんだけどなぁ...」

 

ずっとこのメガフロートに居る人間は永遠と続く海に嫌気が差している。

 

「私に何か用?」

 

「おっと、そうだった、リーダーが君を呼んでいるよ」

 

「うん、分かった」

 

そう返事をするとベンチから立ち上がり、本部のある建物の方に歩み始めた。

 

彼女の名前は "シャルロッタ・リリェホルム" 周りからは"シャル"と呼ばれている。

 

幼いころに両親を亡くし、行く当ての無い所を"極秘組織"に拾われ、この世界で

 

生き抜く力と戦闘能力を身につけた。

 

数々の任務に関わり、今年で16歳になった。

 

「リーダー」

 

小さな一室に長机とその対にソファがあり応接室のような部屋がある。

 

「ん、またあそこに居たのか」

 

「うん」

 

「そうか、まぁ立ってるのもなんだ、座ってくれ」

 

そう言われるとシャルロッタはソファに、ぽんっと腰掛けた。

 

「それで、私になにか話?」

 

「あぁ、まず状況から説明しよう」

 

部屋の明かりが消え、白い壁にプロジェクタでとある研究施設の情報が映し出された。

 

「数日前E国にある、とあるウィルス研究所が何者かに襲撃され死傷者13名を出した。

 

このウィルス研究所では世界中に存在する病原体ウィルスの研究、その病原体に

 

対するワクチンの研究がされていた。」

 

シャルロッタは話に耳を傾けつつ、じっとプロジェクタから投影された映像を見ている。

 

「しかし、ワクチンを作るにあたって出来た副産物のウィルスがどうも人間に対して

 

相当な破壊力があるらしい。」

 

「その襲撃してきた人達はその、副産物で出来たウィルスを手に入れるために研究所を襲っ

 

たってこと?」

 

「多分その線が強いだろうな、ただ奴らはウィルスを入手することは出来なかった」

 

「どういうこと?」

 

シャルロッタが首を傾げるとプロジェクタの画像が切り替えられ一人の男の

 

写真が映される。

 

「明星博士、本名、"明星 直樹" 46歳、この男がウィルスのサンプルを持って研究所から姿

 

を消している。」

 

「この人もウィルス目当て?」

 

「いや、そもそもこの情報は彼、明星博士が現地のメンバーを介してこちらにくれたものだ。自分が

 

作ってしまったウィルスが他人の手に渡り、悪用されないために持ち出して

 

逃げたのだろう。」

 

「それで、この人は今どこに?」

 

「それがだな...」

 

シャルロッタにコーヒーを手渡し、自分用に入れたコーヒーを口にし、再度話し始めた。

 

「この情報を送ってきたのを最後に明星博士を保護していた現地の

 

メンバーと連絡が取れなくなった。その直後に今回研究所を襲ったと思われる奴らが

 

犯行声明を出した。」

 

その映像がプロジェクタに映しだされた。

 

「明星博士、君がウィルスを持ちだしたことはわかっている。君がウィルスサンプルを

 

こちらに渡してくれないのなら、君が大切にしてる一人娘、"明星 かな"を拉致する。」

 

その映像は首から上が暗くなっており顔はわからず、声にも加工がなされていた。

 

「奴らも俺達も明星博士の行方を追っている、シャル、君には今の映像でも言われていた

 

博士の娘、"明星 かな"を保護して欲しい。」

 

「わかった。」

 

「君には日本に飛んでもらい、彼女が通っている高校に転入生として潜入してもらう。数日

 

間の監視、護衛を行ってもらいたい。まぁ国は違うが歳相応の学生生活を数日だけだが

 

楽しんできてくれ。」

 

「学校、かぁ...うぇ...苦い。」

 

淹れてもらったコーヒーを手に取り口に含むが、顔を歪ませる

 

「まだまだ子供だな、ははは。」

 

そう言われたシャルロッタは少しむっとした表情を浮かばせながらコーヒを飲んだ。




・"リーダー"
本名 "ベルンハルド・バックマン"
49歳、極秘組織の創設者にしてリーダーを勤める男
主人公と同じ北欧、スウェーデン出身者、身寄りのない主人公を
この組織に招き入れたのも彼。
創設当時は彼も現場に赴き、行動していたが歳のせいもあり、身を引き現在は
メガフロートにて各メンバーのリーダーとしての役目を果たしている。
一人娘と妻が居たが、事故で亡くしている。

・"アンソニー・ベイズ"
極秘組織に所属している医療関係、メンタルケア等のサポートを行う
メンバーの一人。
メガネを掛け、いつも白衣を着ている。
24歳、出身はイギリス。

・"Kawasaki Z1000 (2014 Model)" ※挿絵
シャルロッタが乗るバイク。
日本製、1043cc、水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブエンジン搭載。
組織に改造されており、高度な姿勢制御コンピューターを搭載し、小柄な
シャルロッタでも乗りこなせるようにアシストが働く。
シャルロッタ本人も結構気に入っている。
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