卯花色のリリェ -宵の明星- 作:Eo.
日本、東京都某所
「同世代とはいえ学生、それも高校生はこれで初めてなんだ、演技するにしても
色々注意してくれ。」
シャルロッタは頭の中で、メガフロート出発前のリーダーの言葉を思い出しつつ
目的地の高校を目指し、一人歩いていた。
「高校、上手に馴染めるかな。」
小学校はおろか、中学にさえ通ったことがない彼女は、今までしてきた潜入よりも
若干ではあるが緊張していた。
「...ここだ。」
携帯端末の地図と照らし合わせ、潜入をする高校に辿り着いた。
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「君が転校生の小百合さんだね。」
「はい、小百合 シャルロッタです。」
事前にリーダーから当日のするべきことが書かれたメモを渡され、登校後は
最初に職員室に向かい、自分が転校生であることを伝える。と、書いてある
とおりに行った。
「北欧生まれなんだって?にしては日本語が上手だね。」
「むこうで日本語勉強してきましたから。」
学校へは行ったことがない彼女だが、組織に入った後生きていくのに必要なことや
世界の常識、各国の言葉など小~高校で習うことはすべて教えられてきた。
「なるほどねー、あっ先生ちょうどいいところに、この子が本日付で先生の
クラスに加わる小百合 シャルロッタさん、小百合さん彼があなたの担任だよ。」
「おっす、俺が担任の林田だー、よろしくなー。」
体育の教師をしている林田 昇、体育会系のガッチリとした体格で彼が
受け持っている、空手部の生徒たちからは"鬼教師"と言われているほどである。
「よろしくお願いします、林田先生。」
「硬いなー、日本に来てまだ経ってないのにこっちの高校だもんなー、なーにすぐ
友達の4、5人できるだろう。」
そんな話をしていると、朝のホームルームの開始を知らせる予令が鳴る。
「お、じゃあそろそろ教室に行こうか。」
「はい。」
この高校には北棟と南棟があり、北棟にある職員室から連絡通路を通り
南棟の1階に1年生の教室がある。
1年生は全部で3組まであり、シャルロッタが転校生として入るクラスは2組で
この2組には護衛対象である"明星 かな"が居る。
「じゃあ呼んだら入ってきてくれー。」
「わかりました。」
「みんなの前ではニッコリと、なー」
彼が歯を見せにっとしつつ教室に入っていった。
「にっこり、にっこり...」
普段、顔に感情をめったに出さない彼女にとって"にっこり"とは
どうすればいいのか、若干悩んでしまったがとりあえず"笑う"
ということに結びつけ、演技というお面を被る。
「よし、入ってきていいぞー」
林田先生の合図が出た。
「(自己紹介、あいさつ、にっこり...)」
頭の中でもう一度言葉を一周させ、扉に手をかける。
扉を開けると、教卓が最初に目に止まりその奥に担任の林田先生、そして左には
こちらへと視線を向ける、2組の生徒たちが居た。
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教室に入ってきたのは銀髪の、明らかに日本人の顔つきではない"可憐"という言葉
が良く似合う少女だった。
「(うわぁ可愛い...!!!)」
彼女は目を輝かせ、その転校生を見ていた。
彼女を含め、教室にいる男女すべてが同じことを思っただろう。
「はじめまして、今日からこの学校に転校してきました。」
くるっと後ろを向き、黒板にチョークで名前を書く。
「小百合 シャルロッタと言います、北欧、スウェーデンから来ました。
お母さんは日本人、お父さんがスウェーデン人のハーフです。
まだ日本に来て少ししか経っていないので、分からない事が沢山有りますが
どうぞよろしくお願いします。」
転校生の彼女は自己紹介をし終わると、一礼をした。
教室は拍手喝采、周りでは"可愛い"、"お人形さんみたい"など様々な声が
上がっていた。
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「(自己紹介、あいさつ、にっこり、出来た。ちょっと恥ずかしかった....)」
顔には出さないが、頭のなかではそう思っていた。
「じゃあ、小百合の席はえーっと窓側の後ろから2番目の右側、あー明星の隣だ。」
「明星...」
小声で口に出した、担任の指差す方を見ると大きめのリボンに、ツインテールを
した少女がこちらに向け、熱い視線を送っていた。
「明星ー、隣の席だから小百合にいろいろ教えてあげてくれー。」
「はいっ!わかりましたー!」
手を上げ、元気に返事をする彼女こそ今回の護衛対象であり、保護対象でもある
"明星 かな"である。
シャルロッタは指定された席に座った。
「よろしくねっ!」
席ついた途端、右、つまりは明星から声をかけられた。
「うん、よろしくね。」
にっこりと笑顔で返す。
「なんて呼んだらいいかな?」
「呼びやすい呼び方でいいよ。」
「うーん、じゃあシャルロッタから最初の三文字を取った"シャル"なんてどうかな!」
「シャル...うん、分かった。」
「よしっ!じゃ決まりだねシャル"ちゃん"!」
「ちゃ...ん...?」
"シャル"そうシャルロッタの事を呼ぶのは"リーダー"くらいである。
幼い時、両親が自分のことをなんて呼んでいたかなんて覚えてない。
「私はあなたをなんて呼べばいい?」
「"かな"でいいよ~、みんなそう呼んでるから。」
「じゃあ、かな、よろしくね。」
「うん!、よろしく!」
こうして高校への潜入と"明星 かな"の護衛の作戦が始まるのであった。