卯花色のリリェ -宵の明星-   作:Eo.

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4.本当の始まり

保存日時:2014年08月25日(月) 00:40

 

「おはよう。」

 

「おっはよ~!」

 

シャルロッタ、潜入二日目。

 

季節的には初秋が始まっているが、まだ少し暑さが残る。

 

明星にとっては何ら変わらないいつもの朝。

 

「今日も帰りにどこか寄っていく?」

 

「まだ学校についてもないけど...」

 

「そうだよねぇ~...」

 

「そういえば、かなのお父さんってどういうお仕事してるの?」

 

すでに分かっては居るが、それとなく聞いてみる。

 

「ウィルス研究の科学者だって、お父さんは言ってるけど実際仕事場とか見たこと

 

無いんだよねぇ、それって凄いことなんだとは思うけど...。」

 

明星が寂しそうに語る。

 

「やっぱり離れて暮らすのは、ちょっと寂しいっていうのもあるよ、うん...」

 

「そっか...」

 

「あぁ、ごめん!」

 

「ううん、こっちこそ。」

 

若干の気まずさの中、学校に到着。

 

「おはよう~!」

 

「おはよう。」

 

「「おはよう!!」」

 

クラスメイト達から挨拶が帰ってくる。

 

「よいしょっと、シャル~まだ二日目だけど学校どんな感じ~?」

 

「楽しいよ、みんな優しいし授業も楽しい。」

 

「そっかそっか~!、部活動とかもあるからもっと楽しくなるかもね~!」

 

「そうだね。」

 

ホームルーム開始10分前の予令が鳴る。

 

開始は8時30分だが必ず10分前に予令が鳴る様になっている。

 

「10分前!、ちょっとお手洗い行ってくるね~」

 

「うん。」

 

明星が席を立ち階の一番端にあるトイレへと向かう。

 

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午前8時22分、北棟職員室

 

「というわけでして、今後とも先生方には~....」

 

職員室では教師達の朝礼が行われていた。

 

「では、これにて...」

 

こんこん、っと校舎外につながる扉を叩く音がした。

 

「どちら様でしょうこんな朝早くに。」

 

「自分が出ますよー。」

 

明星達の担任、林田が扉を開ける。

 

「はい、どちらさまでしょうー?」

 

外に居たのは全身黒ずくめの男だった。

 

「あぁ、すいませんここの生徒の"明星 かな"さんに用があるのですが。」

 

「明星 かなですか、その生徒の担任の林田と申しますご用件というのは...」

 

カシュッ。

 

乾いた音。

 

「あっ...がぁっ...」

 

バタッと倒れこみ、体を中心に血が広がる。

 

「えっ...!?」

 

職員室にいた全員がこの光景を目の当たりにした。

 

「先生方、お静かに、我々はここの生徒"明星 かな"に用があるだけだ。」

 

「あなた達一体...!?」

 

「聞かれたこと以外口を開けるな!、じゃないとそこの先生みたいになるぞ。」

 

別の男が倒れている林田を持っているサプレッサー付きの銃で指す。

 

『同志、こちらアルファ班!準備完了です!』

 

「ようし予定通りだな、始めろ。」

 

無線機からの報告に応答し、近くにあった椅子に腰掛ける。

 

「明星博士、娘はいただくぞ。」

 

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午前8時23分、南棟一階女子トイレ

 

「あれ、リボン曲がってる...?」

 

用を済ませ、鏡を見つつ頭の後ろについたリボンを直す。

 

このリボンは明星が幼いときに父からもらった唯一のプレゼントである。

 

「よしっと~。」

 

改めて鏡を見直す。」

 

「(お父さんとは次いつ会えるかな...。)」

 

リボンの鏡越しに見つめ、そんな気持ちになる明星。

 

「よしっ、今日も一日...」

 

バリン!!!

 

ガラスの割れる音、それとともに聞こえる生徒の叫び声。

 

「えっ...!?何...?」

 

突然の音にびっくりする。

 

生徒達の悲鳴は相変わらず聞こえる。

 

「何が起きたんだろう....」

 

そおっとトイレの扉を開け教室の方を覗く。

 

そこにあった光景は、割られた窓ガラス、廊下に落ちたガラス片、銃を持ち

 

黒の服に身を包んだ男達が数名とその足元に手と足を縛られ、倒れている

 

生徒たちだった。

 

「なっ...なにこれっ...!?」

 

音を立てず扉を閉める。

 

「えっ...なんで...何あの人達...。」

 

手が震える。

 

すると、トイレの外で声がする、が全く聞き慣れない国の言葉だった。

 

「日本人じゃない....目的は何なの...」

 

耳を澄ませよく聞くと、聞きなれない言葉の間に"アケボシカナ"

 

自分の名前が話されていた。

 

「私...?この人達私を探してるの...?」

 

確かに先ほど扉から覗いた時、生徒の顔を確認していたのを彼女も見ていた。

 

「なんで私を...?あの教室に私だけ居なかったから...?」

 

すると外からつたない日本語で生徒に質問している声がした。

 

「"アケボシ カナ"か?」

 

「"アケボシ カナ"はどこだ?」

 

「違う...あの人達の目的自体が私....!?」

 

バンッ!バンッ!バンッ!と、銃声が聞こえた。

 

「ひっ....?!」

 

明星の体がはねる。

 

立て続けに続く銃声。

 

「誰を...誰を撃ったの....?!」

 

いろんな想像が頭を回る、が、よく聞くと生徒の叫び声では無く

 

男達の声だった。

 

「......急に静かになった....?」

 

と、こちらに近づいてくる足音がする。

 

「こっちに来てる....!?」

 

足音はどんどんとこちらに近づいてくる。

 

「あぁ......」

 

トイレの前で足音が止まる。

 

明星はその場に座り込んでしまった。

 

音を立て扉が開く。

 

「っ.......!」

 

「かな。」

 

聞いたことのある声だった、

 

さっきまでほんの10分前まで聞いていた声。

 

「えっ....。」

 

そこにいたのはシャルロッタだった。

 

ハンドガンを右手に持ち、左肩にスリングを通されサプレッサーが装着された

 

サブマシンガンを背負っていた。

 

「シャ...ル...?」

 

「助けに来た。」

 

手を差し伸べる。

 

「さっきの音って...」

 

「私があの人たちを撃った。」

 

顔色一つ変えず答える。

 

「撃ったって...えっ....?」

 

「ここに来た人達は皆、明星 かな、あなたを狙ってる。」

 

「ど、どうして...?!」

 

「詳しいことは後、ここから逃げるよ。」

 

「逃げるって...!」

 

明星の手を掴み、トイレを抜け出すとちょうど前から黒ずくめの男がこちらを確認し

 

銃を構えた。

 

「かな、伏せて。」

 

「わっ...!?」

 

シャルロッタは明星の頭を押さえ、姿勢を低くさせ銃を構えた。

 

バンッ!バンッ!と、黒ずくめの男に撃ち込み男は間も無くその場に倒れた。

 

「大丈夫だよ、かな。」

 

明星がそっと顔を上げると、頭から血を流した男が倒れていた。

 

「ひっ....!」

 

明星が後ずさりする。

 

「私は明星 かな、あなたを保護するためにこの学校に転校して来たんだ。」

 

「保護って...私何かした!?」

 

シャルロッタに問う。

 

「ううん、かな自身が何かしたわけじゃないよ。」

 

「じゃあどうして....!」

 

「明星博士。かなのお父さんがテロリストに追われてる。」

 

「お父さんが!?」

 

明星の表情が変わる。

 

「今、行方が分からなくて明星博士を誘き出すためにかなを誘拐してっていうのが

 

あの人達の魂胆だよ。」

 

「それでシャル...あなたは一体...」

 

「私はとある極秘組織に所属するオペレーター、さっきも話した通り、あの人達から

 

かなを保護するためにここに転校生っていう名目で潜入してる。」

 

「にわかには信じ難いけど...、もし本当なら私が捕まったら....」

 

「かなのお父さんはかなを守るために身代わりとして出て来ちゃうだろうね。」

 

「お父さんは今どこにいるかわかるの...?」

 

「私たちも数日前までは分かってたけど、今はわからなくなってしまったんだ。

 

とにかく今はここを離れないと。」

 

シャルロッタが再び歩きだそうとすると、明星は手を掴んだ。

 

「かな?」

 

「私だけ逃げるなんて出来ないよ...」

 

「どういうこと?」

 

「この学校には私やシャルだけじゃない...、他の生徒もいる...私だけ逃げるなんて出来ないよ...!」

 

「他の生徒も助けるって事?」

 

「うん...一緒に過ごして来たんだもん...。」

 

明星がうつむく。

 

「分かった、でももしもかなが危ない状況になったらかなを優先するよ、それでいい?」

 

「うん...」

 

「後、これ着て。」

 

明星に防弾ボディアーマーを渡す。

 

「これは...?」

 

「防弾ボディアーマー、いわゆる防弾チョッキだよ。さっ私たちの教室の前にいた

 

人達から取ったものだけど。」

 

「シャル...。」

 

「?」

 

ハンドガンと敵から奪ったサブマシンガンを再装填し、準備をするシャルに聞く。

 

「人を殺しちゃうことに躊躇いはないの...?」

 

「無いよ、任務のためだもん。」

 

「そう...なんだ...。」

 

ガチャンっとサブマシンガンのコッキングレバーを引く。

 

「行くよ。」

 

「う、うん...」

 

シャルロッタに手を引かれ、校舎を走るのであった。

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