CAUTION!!
・ネオユニヴァース×女性トレーナー前提
・まだトレーナーはネオユニヴァースの“観測”のことを知らない
・日本ダービーか菊花賞想定。クラシック級ジャパンカップより前のお話です
宙色の瞳がまっすぐ私を見ている。吸い込まれそうな深淵と計り知れない叡智を湛えたその瞳は、私に一切の感情を読み取らせない。
レース前の更衣室。ネオは勝負服の下、レオタード姿で椅子に座っている。同性しか見ていないとはいえ無防備にも程がある格好だが、やはり彼女の顔から羞恥といった感情は感じ取れなかった。
「トレーナー、塗って?」
ネオは私に指を差し出した。
勝負服を着る大きなレースの前には、メイクさんではなくトレーナーの私が彼女の爪を宙色に塗るのが習慣になっていた。
わざわざ専門家でもない私に塗らせるのだから、彼女の中ではこの行為にそれなりの価値があり、ある種の儀式や願いかけのようになっているのだろうと予想はつけられるが、実際のところはわからない。私の担当ウマ娘の言葉は難解で、読み解くのはそう簡単じゃない。
ひとつひとつネイルを仕上げていく。
右手の親指から小指まで、左手の親指から3つ塗り終えたところで、私は今日も躊躇した。
「ねえネオ、やっぱり薬指は……」
この指は、いつか彼女が大切な人を見つけた時のために取っておいた方がいいんじゃないか。そんな思いが湧き上がるが、
「NPB。トレーナーなら気にしないよ」
いつも通り彼女はそう答えた。
仕方ないので薬指も宙色に染めていく。若い子の大切なものを奪っているのではないかという罪悪感と、そんなこと気にしないと言ってくれているネオの信頼に答えて余計な雑念は払わなきゃという義務感が私の胸の中で戦っている。
とは言ったものの、流石に何回も塗っていると少しは慣れが生じるようで、普段はいけないことをしている気がして急かされるように仕上げるのだが、今日は少しだけ余裕があったので、
ちらり、とネオの顔を見上げてみた。
「……?」
どうしたの、と言わんばかりに彼女は小首を傾げた。
気のせいだろうか。見上げたネオの頬が、少し赤みがかっている気がする。
「なんでもないよ。ほら、次は小指塗るよ」
私はまた顔を下げて次の爪に取り掛かる。
『トレーナーなら気にしないよ』。その言葉はどういう意味だろう、なんて雑念が振り払えない。
……気にしすぎだ。気のせい、そう気のせいだ。
私の胸が異様に高鳴っているのも、きっと気のせいだろう。