俺はアグネスタキオン   作:キサラギ職員

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お久しぶりです
“また”ですか。またなんだ済まない。今度は俺口調となっております
続くかどうかは気力次第。投げても怒らないでね


絵を練習したので絵もついてきます


一章 DRAMATIC JOURNEY
1、一瞬のドラマが、永遠に語り継がれる


 平均時速220km。最高速度331km。

 それは名誉の戦場であると共に、墓場でもある。得られるのはわずかな金銭と、スピードの向こう側という薄氷を踏むが如くの、存在さえ危うい景色。

 その小さい島で開催されるレースに訪れるのは現役を退いたライダーから、現役まで多種多様。共通点はたった一つ。

 “ネジ”がないことだ。引くことを知らぬ命知らずどもが、やって来る。

 

 一陣の風が甲高いエキゾーストを伴ってやって来る。

 

 ギャラリーからは、白、あるいは赤や黄色の閃光が視界の隅から隅まで横切っているようにしかみえない。

 

 戦闘機のフラップにも似た構造体を前方に備えた、それでいて爬虫類のような不気味さを帯びた独特な車体に跨っているのは、様々なスポンサーの広告をスーツとヘルメットに縫い付けた人物であった。

 

 時速300km超の世界ともなれば訓練したレーサーとて視界はトンネルに入ったも同然だ。地形を手探りで追いかけていき、適切なタイミングで減速をかけ、そして、車体をバンクさせなければ待っているのは即座にやって来る死だ。

 丁寧に舗装された道ではなく、一般道を走っているのだ。エスケープゾーンもなければクッション材も存在しない。バリケードはあるがそれにぶつかったら最後人体など粉々になってしまうであろう。

 

 もっと、もっと速くだ。

 

 渇望にも似た感覚が彼を後押しする。

 フロントが浮く。リアも浮いた。その時一切の重力から解放され、自由になった。

 着地。強靭なまでの体幹が車体の動揺を押さえ込む。

 さらにスロットルを吹かし、回転数を上げていく。ブレーキングに要する時間はわずか。

 

 背後で自分を風よけに使っている、旧知の仲のレーサーの気配を感じながらも、飛ぶように流れていく景色を目で追いかけずに、ただ路面と、前方に集中する。わずかな障害物を見逃せば命取りだ。

 もっと速く。もっと、もっと、もっと。

 

 そうして彼は、限界を超えた。

 

「ブレーキング!!!」

 

 ブレーキング。バンク。全ては完璧であった。ゴールも直前であった。あと少しで夢は完成していた。地面に小石さえ落ちていなければ。

 たった一つの石が彼のすべてを変えてしまった。

 

 最高時速350km。島の記録を一段階と塗り替える最高速の新記録。

 それはマシンの限界性能に近い速度でもあり、その領域に達したことで彼は伝説になった。

 

 

 

 

 そして………。

 

 

 流れる景色。

 狭苦しい車体に跨って、先へ、先へ。とにかく先へ。

 車体をバンク。膝どころか肩までするようなコーナリング。

 

 そして、いつも夢に見るのは最後の光景だ。

 あらゆるものが溶けていく速度の中で、自分が舞う光景。激痛。そして、寒気と、眠気。意識が遠ざかっていく。

 夢はいつもそうして終わる。これがいわゆる前世なのだろうことは察するが、それは致命的に矛盾している。ウマというのは少なくとも人間ではなく、従ってオートバイに乗ることなど出来ないはずだ。

 

 

 

「ああ………やってしまったようだ……」

 

 ふと気が付くと、そうなっていた。

 生まれ変わりという概念があるならばきっとそうなのだろうが、まさかこうなるとは。

 ウマ娘。競走馬のソウルを受け継いだ違う世界のさしずめ獣人。人と同じ容姿、性質を備えもちながら、同時に、ウマと同等の力を発揮できる超人。それになってしまったなどとは全く笑えない。

 中央。府中にある学園。正式名称“日本ウマ娘トレーニングセンター学園”に入学した“俺”は、退屈な日々を過ごしていた。

 求めているものがここにあるのか、ないのか。そもそも勉学に励んだところで何か意味があるのか。そもそも……といくつものそもそもが立ちふさがって来ていた。

 実験と称して薬品加工にも取り込んだりもしたが何しろ設備が限られるし、小遣いで研究室を借りられるわけもなく。法律に引っかからない程度に抑えつつ理科室で……と理科室で何度爆発を起こしたかは定かではない。

 爆発は過程だ。結果的にそうなっただけであってその先が肝心なのだが、あのデコ出し優等生が出て来て制止されるのでその先に行けた試しがない。確か学級委員長ことサクラバクシンオーだったか。

 

「はー……」

 

 うまいことサクラバクシンオーの追跡を振り切った(そもそもやつは短距離向けであって、俺の脚には根負けする)かと思いきや、角を曲がったところで誰かと正面衝突してしまったのだ。

 ウマ娘の脚力で体当たり仕掛ければそれで大怪我は免れない。俺ははっとして被害者を見下ろした。

 スーツを着ている。外見は平凡と言ったところで、首から下げられている名札から学園関係者、それもトレーナーであることがわかる。

 少なくとも怪我はしていないようだ。一応頭も触ってみたが、コブができている感じでもない。いい感じに受け身を取ったらしく、しかし、脳震盪でも起こしたのだろう。詳しくはCTでも取らないとわからないが。

 

「まァ、つばでもつけときゃ治るだろうよ」

 

 俺はそう結論付けると保健室へとその男を担ぎ上げて運んでいくのであった。

 

 

 入学した当初、俺はやる気に満ち溢れていた。最速という称号を追い求めて勉学に励んできた甲斐があったというものだ。前世のせいなのか、とにかく最速であろうとした。

 どれくらいやる気があったかというと早々に『勝負服』を発注して誰よりも早く着ていた。

 しかし日々を過ごすうちに浮かんだ疑問が俺から情熱を失わせた。

 

 ―――本当に?

 

 学園に入る前、祖母や両親からの期待があった。ウマ娘には所謂血統の要素があるらしく、優秀な子からは優秀な子がうまれるらしい。その理屈から言えば、俺は優秀なのだろう。

 だが俺の追い求める最速は本当にそれだったか? もっと違う切り口があるのでは?

 ふと気が付くと、俺はウマ娘の研究者の卵になっていた。理論の本を読み漁り、時にはオカルトにも手を出して、ウマ娘とは何かを考えていた。授業とレースはさぼった。

 そんなことをしているうちにやってきたのが学園側からの遠回しな圧力だった。

 

 選抜レースに出なければ、退学させると。

 

 参加したことがないわけじゃないが、その際にはワラワラと虫のようにトレーナーが寄ってきてスカウトしてこようとしたのだ。そのとき、既に情熱を失いかけていた俺はその光景に怖気すら感じた。何人かと話してみたが俺を見ているというより俺の素質を見ているだけではないかと。スケジュールも確かに一流の選手にするには必要かもしれないが、無駄が多い。

 これは前世の影響かもしれない。断片的に訪れる夢の光景を想像すれば、何かしらの選手だったことは道理であり、従って合理的ではない無駄の多い指導にはついていけないと本能的にわかるというべきか。

 端的に言うと貴重な本格化の時期を預けるに値する人材がいなかった。

 

「さーてと……」

 

 もはや勝負服というより普段着のそれになっている白衣を着込んだまま俺は、おもむろにシガレットタイプのキャンディーを取り出して口に咥えた。

 

「タバコは……肺に悪い……」

 

 とかなんとかいいつつベッドに転がしていたトレーナーが目を覚ました。

 

「あぁ、おはよう。こいつはタバコじゃなくてキャンディーさ」

 

 俺は半分呆れた様子でひらひらとキャンディーの箱を提示してみせたのだった。

 

 

【挿絵表示】

 




続きはじゃあ誰かよろしくね…

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