俺はアグネスタキオン   作:キサラギ職員

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小説一年ぶりでわかんねぇっすね、ええ
マジで雰囲気で書いている……こうだったらいいよねを具現化しているので勘取り戻したい


6、“お友達”

 

「足を取られる……が、しかし……」

 

 ダートコース。ようは砂地を走るコースなのだが向いているウマ娘と向かないウマ娘がいる。曰くデジタルはどっちも行けるらしいが全く理解できない。よく足が耐えられるものだなと思う。

 ダートと言えばオフロード。オフロードと言えばダカール・ラリーだ。

 ……こんなにもバイクについて理解できるのは、あるいは前世の記憶のせいなのか。だが俺の脚はバイクの車輪ではなく人体のそれだ。砂地に対するクッション性と適応力が不足しており、十分に活かせない。

 

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」

 

 距離2000m、ダートコース。軽く流しているだけだが、どんどんと体力が吸われていくのがわかる。一つだけ秀でていても、結局勝つことはできない。あらゆる面で鍛え上げなくてはならない。

 実験対象は自分、実験者は自分だ。

 足がとられるのがわかる。力が吸収される。なるほど、足腰を鍛えるにはうってつけだが。

 

「遅い! もう一回やろう」

 

 タイムを計測していたトレーナーが大声を張り上げてくる。発光しながら。とある薬の副作用がいまだに取れないらしい。解毒剤? ないよ、そんなの。

 

「言う方は楽でいいよなァ………よしもう一度……ん?」

 

 ふと観客席に目をやると、スカートなのに胡坐をかいているカフェがいた。手を顎に置いており、目つきはいつもの比にならないくらいに鋭い。

 スカートで胡坐は中々大胆だと思うが、しかしあんなところで何をしているのだろう。試しに俺はストレッチをする素振りでその視線が動くか、歩いてみた。視線が追いかけている。視線を返してみると、なぜか奇妙な懐かしさを覚えた。

 視線と視線が交錯し、そうしているうちにカフェは立ち上がってスタスタと歩いて行ってしまった。担当トレーナーらしい人物が声をかけているが無視している。

 

「あんな性格だったか?」

 

 疑問に思ったが、すぐに思考を切り替えていく。

 

「じゃあ並走よろしくな」

「えへ、えへへ、あたしがタキオンさんと並走なんて恐れ多いというかぁ……」

 

 今回、ダートで走るにあたって助っ人を用意してある。同室のデジタルである。

 

『しょしょしょ勝負服の作りについて撮影させてくれたら…………! させてくださいませんか!』

 

 と迫真の表情で迫ってくるので『じゃあ並走しろ』と注文を付けた。その後なぜか主に後ろを撮影されたわけだが、『これで描ける』とかなんとか言ってたがなんのことなんだろうな。

 アグネスデジタル。この女は大変に面白い女で、とにかく柔軟だ。どこでも走れる。普通に考えてラリー用設計のバイクでサーキットが走れるはずがないのだが、こいつの場合走れるのだ。足の作りが違うのだろうか。

 だが流石に長距離と短距離は厳しいらしい。それはそうだ。大型アメリカンでサーキット走れは無茶ぶりが過ぎるのと同じようなものだ。

 

 ちなみに勝負服だが、これはデザイナーに任せたらこうなった。変質的な……もといウマ娘への愛情のあるデザイナーと有名だったので、目についたから適当に発注した結果がこれだ。スソが妙に短いじゃないかとか、袖ダブダブじゃないかとか、そのあたりはどうでもいい。着るとなぜか力が湧いてくる。これが最適解だと言わんばかりに。

 俺は屈伸をしつつデジタルに言った。

 

「実に面白い。興味深いよな、その足はよ。さあさっそく実験開始と行こうか。距離2000m、ダート。手を抜いたら写真没収な」

「そんなー! そんなお慈悲を!」

 

 別にコピーでもなんでも取ってればいいのにな。そういうところ義理堅い女である。

 デジタルが目をウルウルさせているので、ポンポンと頭を撫でてやる。

 デジタルが身をうねうねさせる。タコ踊りか?

 

「あっあっ………お花畑が見えるぅ……」

「コイン投げるからスタートだ。手を抜いたら絞めるぞ」

「ひいいっ!?」

 

 なんか怖がってばっかりだなぁ。そんなに怖いこと言ってるつもりはないんだが。

 俺はコインを取り出すと、それを指でくるくるともてあそびつつトレーナーに腕を振った。

 デジタルが感心したように俺の手元を見つめてくる。

 俺とデジタルはスタート位置まで戻った。

 

「器用ですねぇ……」

「まァね研究がうまくいかないときの手遊びってやつだ、まっ、それか」

 

 バイクでも弄ってるほうがいいと小声で言ってからコインを指ではじく。

 落ちると同時にスタート。トレーナーが腕を振り下ろした。

 

「お先に……チッ」

 

 手を抜くなと言っただけあって、デジタルは速かった。序盤はついていけたが、中盤で圧倒される。

 圧倒的なタフネス。そして粘り強さ。差し策でなどと言っていたがとんでもない。ついていけない。

 ダートの適性は俺にはない。それがわかっただけでも収穫だが。

 

「時々振り返るのをやめろぉ!」

 

 涎流しながら振り返るのは気味が悪いから止めて欲しい。

 俺は絶叫しながらどんどん遠ざかる小さい背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 トレーナーの制止を振り切って、歩みを進めるマンハッタンカフェは、気になってもう一度ターフを覗いていた。

 走り、仕草、そして全て。見終わって確信した。

 

「人生は逃げってか……」

 

 拳を握りしめ、歯をむき出す。まるで獣のように闘争心を発しながら呟いた。

 

「逃がすか…………もういいんですか?」

 

 そして、まるでついさっきのことがなかったかのようにカフェは我を取り戻した。ここではないどこかに独り言をしている。

 マンハッタンカフェには目には見えない何かが見えている。それをなんとなく悟っている周囲は、その独り言を遠巻きにしていた。

 マンハッタンカフェはぼんやりとした、それでいてみるものを惹きつける目を周囲にやっていた。なにかがいる。ここではないどこかに。そしてそれは恐ろしく速く、顔を見ることも叶わない。

 もう一人もいる。もう一人も恐ろしく速かった。

 あまりに速かった。残像しか映らない程に。けれど怨念じみた執念があった。“お友達”が呪縛霊ならば、それは怨霊に近かった。それを当然の如く飼いならす、その異常性。この学園において気が付けるものはほとんどいなかった。

 マンハッタンカフェは微笑んでいた。

 

「ふふ………でも不思議なこともあるものですね」

 

 

 

 

「お友達も、賑やかで楽しそう」




ピコンッ

『オルターエゴ』

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