夢を見ていた。小さい頃の夢だろうか。5歳か6歳くらいの俺と詠深と珠姫がキャッチボールをしていた。
幼い頃の詠深「どうだった?ミツキ!」
幼い頃の光希「すげぇ!ぐーんって曲がってきた!魔球だよ魔球!」
光希は詠深の魔球に興奮していた。
幼い頃の詠深「この魔球でプロになれるかなぁ?」
幼い頃の珠姫「プロの人は硬球だから無理だけどもし投げられたらー」
ー大人になってもこの3人で野球しようかー
ーいいよー
さて、自己紹介と行こう。俺の名前は永島光希。今日から新越谷高校に通う1年生だ。しかし、俺の通う学校はつい最近共学になったばかりであるため男子がほとんどいない。しかし、詠深と同じ学校に行けるのが唯一の救いだ。
詠深とは赤ちゃんの病院から一緒で幼稚園、小学校、中学校も一緒という偶然には程遠い何かを感じる上に、席がずっと隣ということもあり家族みたいな存在である。
光希「お!俺のクラスは3組か!詠深は?」
詠深「私も3組だよ!一緒だね!」
クラスに入ると男子は俺以外一人もいなかった。席を探していると詠深の前の席であった。詠深は幼馴染の近くの席であった。
詠深「(光希の前だぁ〜ラッキー〜!それに隣の子かわいい!週べ読んでるし)」
詠深は席に着く前に隣の子に声をかけた。声をかけると光希も話に入ってきた。
詠深「それ・・・東さんが表紙のやつだよね」
芳乃「ん?そだよ」
詠深「私、武田詠深。こっちが」
光希「永島光希。よろしくね」
芳乃「川口芳乃だよ!2人ともよろしくね!私のことは芳乃でいいよ!」
それにしてもこの学校には美人が多いな。入って正解だった。芳乃は俺と詠深にヨミちゃんとミッくんと名付けた。
芳乃「ヨミちゃんとミッくんは電車通学なんだね」
光希「そうだよ。20分くらいかなぁ。芳乃さんは?」
芳乃「歩きだよ〜!家がすぐ近くなんだ〜」
すると、芳乃は週べを見せつけてきた。
芳乃「ところでヨミちゃんとミッくんは野球好きなの?」
光希「うん。一応俺ら野球部だったし」
野球部だったと聞いて芳乃は目の色を変えて問い詰めてきた。顔が近いです芳乃さん。
芳乃「ポジションは?」
光希「詠深がピッチャーで俺は一塁手だったけど・・・」
芳乃「すご〜い!どこまで行けたの?」
光希「二回戦までかなぁ」
芳乃「そっか・・・」
詠深はエースとして、俺は4番打者としてチームを引っ張っていたがプレッシャーやコンディション不良が続き、残念ながら二回戦負けであった。
芳乃「ヨミちゃん、手見ていい?」
詠深「え?うん」
芳乃は詠深の手を触った。
芳乃「すごく硬くなってる!めっちゃ投げ込んだ証拠だよ〜。決め球はカーブ系かな?見てみたい〜!それとミッくんのも硬いね!素振りの結果かなぁ?」
詠深の決め球がカーブ系と見破るとは・・・良い目の付け所。えっと芳乃さん?その言葉聞くと何か別のように聞こえて・・・おっといかんいかん。ここは共学になったけどほとんど全員女子!紳士として気をつけねば
芳乃「こんなに努力したのに2人とも二回戦負けって・・・よっぽど運が悪かったんだね・・・」
すると芳乃の背後からそっくりな子が顔を覗かせる。
息吹「こら芳乃!その子たち困ってるじゃない」
芳乃「あっ!息吹ちゃん」
息吹「知らない野球経験者にちょっかいかけるなっていつも言ってるでしょ〜」
芳乃「えへへ・・・つい・・・」
え?もしかして双子?そっくりさんだなぁ
光希「息吹さんだっけ?2人は姉妹なの?」
芳乃「そうだよ!」
息吹「姉の息吹よ。よろしく。男子1人しかいないけど頑張ってね」
光希「あぁよろしく。にしても双子にしては少し似てないなぁ」
息吹「どっちよ。忙しい人ね・・・」
芳乃「隣の席の元野球部でエースのヨミちゃんと前のミッくんだよ!4番だったんだって!投げ込みと素振りで2人の手がすごいんだよ〜」
息吹「どれどれ・・・へーすごいわね!」
あのー息吹さん。釣られてやってしまってますよ?
息吹「(はっ!つい芳乃のペースに!)
気を取り直し、俺らは野球の話を続ける。
芳乃「新越谷(ここ)に来たってことはもう野球はしないの?」
息吹「不祥事とかで活動停止くらってるんだっけ?部員もほとんどいないらしいわよ」
俺らにはこの学校の野球部で起きた不祥事はあまりよくわからないが詠深は答えた。
詠深「・・・うん。野球はもういいかな・・・光希は?」
光希「俺もそうだなぁ。折り合いをつける時が来たのかもなぁ。それに詠深は学校の制服でここを選んだしな」
詠深「うん。この学校の制服可愛いよね〜」
小さい時からずっと見てきたが詠深の制服姿はとても可愛い。今すぐにでも鼻血出そう。そうしていると先生が教室に入ってきて、みんな席に着いた。
光希「芳乃さん?そろそろ手を・・・」
芳乃「あっ!ごめん」
まだ手を繋いでいことに気づいた芳乃さんは顔を赤らめながら手を離した。そして教室に入ってきた先生が口を開いた。
先生「みんな入学おめでとう。これから君たちと1年間一緒に生活していく。それに今年から共学となりこのクラスにも男子がいるわけだが・・・社会のルールは守るように」
分かってますって。それにまだ俺Dの一族(未経験者)だし。詠深は俺のことどう思っているのだろうか。聞こうと思っても中々聞けない。
しかし、俺光希の顔立ちは良くも悪くもないが決してモテない訳ではない。俺がただ単純に恋愛に疎いからだ。詠深がいるのに何でかって?俺はそういう目で彼女を見たくないからだ。
放課後、俺と詠深と芳乃さんと息吹さんの4人でどこか遊びに行こうという話になった。
詠深「どこか遊びに行かない?光希はどこ行きたい?」
光希「詠深確かレイクタウン行きたいって言ってなかった?そこ行くのは?」
息吹「じゃあそこでお昼食べましょ」
詠深「良いね〜!お話もしたいし!」
教室を出て、4人でレイクタウンの大きさやらを話しているとある子から話しかけられた。
???「光希と・・・ヨミちゃん?」
声の主をよく見ると俺のもう1人の幼馴染の山崎珠姫(呼び方 珠姫)であった。小さい時はよく遊んでいたが突如転校してしまったためそれ以来であるが彼女も詠深同様、可愛くなっている。どっちかを選べと言われたら迷ってしまう。
珠姫「やっぱり光希とヨミちゃんだ。珠姫だよ。覚えてるかな?」
光希「幼馴染の顔を忘れる訳ないじゃん珠姫」
すると詠深が珠姫に抱きついた。おぉこれが百合というのか・・こっちの路線を行くのも悪くはないな。
詠深「急に転校するんだもん〜あぁ懐かしいなぁ〜昔よく遊んだよねぇ〜うんうんタマちゃんの匂いだ」
タマちゃん。それが詠深が珠姫に呼んでいるあだ名である。俺は恥ずかしくて言えないけどね。それに珠姫の匂いって・・・やめいやめい変なこと考えなさんな
息吹「知り合いみたいね芳乃?」
芳乃「山崎珠姫選手・・・なんでこんなところに・・・」
芳乃はあわあわとしながら珠姫の選手の特徴や経歴などを早口で言っていた。すごい情報量。俺でなきゃ聞き逃してまうね。
「ファンです!サインください!」
詠深は芳乃から受け取った色紙にサインを書きながら話を進めた。
詠深「タマちゃんも野球やってたんだね」
珠姫「ヨミちゃんと光希もやってたの?」
光希「うん。二回戦負けだけどね」
詠深「そーだ!2人ともアレしよっか!」
光希「アレ?」
アレって何です詠深さんや。もしかして阪◯の優勝のことでしょうかね?
詠深「幼馴染の野球人の再会といえばキャッチボールでしょ!」
先生にグラウンドの使用の許可を取り、グラウンドへ向かった。
光希「ってことでグラウンドに来てみたけど誰もいないな」
珠姫「停部期間終わってるはずなんだけど・・・」
しかし、なぜかグラウンドの整備はされている。阪◯園芸がこの学校にいるのだろうか?
そう考えながら3人でキャッチボールをしていると守備位置について話していた。
光希「珠姫は捕手(キャッチャー)だったんだな」
珠姫「光希は一塁手(ファースト)でヨミちゃんが投手(ピッチャー)だったんだね」
投げ合いながら話をしていると詠深と珠姫のスカートが風でめくれそうになっている。しかしこの学校のスカートは短いなと思う。良いんだけどね。
詠深「どう?私の直球は?」
珠姫「普通かな!(だけどヨミちゃんと光希がいて二回戦負けはもったいないな・・・)」
結構良い球を投げていた気がするが捕手目線からだと普通に見えるのだろう。
光希「投球練習してみる?」
そういうと息吹はバッターをやり、珠姫はキャッチャーを、詠深はピッチャーをやる。芳乃は審判をやるのだろう。あぁぁい!というのかな?それは某球審の人か。
珠姫「そうだ!ヨミちゃんあの球は投げないの?昔光希も興奮していたあの魔球だよ」
すると詠深の表情が変わった。あの魔球ね・・・
詠深「投げていいの?捕れるの?」
珠姫「投げられるようになったの?このボールで?そうなの光希?」
光希「似たような球なら投げれるようになったぞ」
すると珠姫は腰を低くし、ミットを構える。見えそうだけど今はそれどころではない。
珠姫「(何が来るんだろう?きっとカーブ系だと思うんだけど)」
詠深「いくよ」
珠姫「こい」
詠深は珠姫のキャッチャーミットに目掛けてボールを投じた。しかし、詠深の投げたボールはバッターの息吹に向かっていった。
光希「すっぽ抜け!危な・・・!」
いやこれは落ちる。その予想通り、詠深の投じたボールは珠姫のミットに収まっていたが息吹が尻もちついていた。
光希「大丈夫か?息吹?」
息吹「ありがと」
尻もちをついていた息吹を起こそうとした時、見えそうで見えなかった。気を取り直しもう一度投げることになった。
珠姫「ナイスボール!もっと投げて!」
詠深「うん・・・」
珠姫「(それにしても今の球、何て落差のボールだったんだろう・・・ちゃんと捕れて良かった。でもこれほどの球どうやって・・・)
ここからは俺と詠深の中学の時の話をする。中学時代、俺は4番としてホームランを、詠深はストライクが入るというだけで一番を目指していた。詠深が俺にあの時の魔球を投げたいと言い一緒に基礎トレからプロが投げる球を真似しながら特訓に励んでいた。
野球部員「武田と永島は?」
野球部員「帰ったよ。何か特訓するみたい」
野球部員「へぇ〜熱心だなぁ」
公園にて
「ねぇあの子毎日練習してない?」
「1年くらい前からあの男子とやってるよ」
「マジ?やべぇな!」
そういう会話を耳にしながら俺は詠深の魔球習得練習に付き合った。そして
中学時代の光希「良いぞ今の球!これは試合で使えるかもしれない!」
中学時代の詠深「ありがとう光希!」
ということがあった。しかし、野球は二人では成立しないのもそうである。
捕手「ちっまた振り逃げで1点・・・詠深、もうあの球投げないで」
中学時代の詠深「え・・・でも」
捕手「捕れない私が悪いみたいじゃん。それに私たちは内心目当てでやってるだけで詠深や永島みたいに本気でやってないし勝てなくて良いんだよ。だからもうサインは出さないから」
俺はその話をその場で聞くことは出来なかったが試合後に一緒に帰っている時に泣きながら話してくれた。
中学時代の光希「詠深の頑張りは誰よりも知ってるから気にしないほうがいいよ」
中学時代の詠深「そう・・・だよね・」
しかし、中学最後の試合、同じ捕手から「あの気持ち悪い球投げないでね」と言われ詠深は大量失点し試合に負けた。俺もホームランを期待されたが中々練習できない期間があり、スランプに陥り15ー0で負けてしまった。
それでも詠深は諦めずに練習をし、今に至るのである。あの3年間は無駄ではなく、今日のためにあったと気づいた。
詠深「光希以外の誰かと真剣に野球できたの初めてかも・・・だから思い残すことは・・・」
珠姫「2人はもう野球しないの?ヨミちゃんの最後の球気持ち良かったよ!」
珠姫の笑顔を久しぶりに見た。しかし、もう俺の野球感覚はあれ以来鈍ってしまっている。今始めようにも足手まといにしかならないかと思う。それでも珠姫の今の言葉で未練を無くしたいと思った。
光希「俺は・・・珠姫と、みんなと野球がしたい。だからやるよ。詠深は?」
詠深「私もやってみたい・・・タマちゃんがボールを受けて、光希が援護してくれるならやりたい!」
珠姫「いいよ。やろっか」
すると詠深は泣き出し、俺と珠姫に抱きついてきた。この5人で少しでも長く楽しく野球が出来るならそれで良いと思った。
光希「あっ。でも高校の女子野球だと男子の出場できないかも・・・」
芳乃「それなら大丈夫!ちょうど今高校野球連盟と日本野球機構の偉い人が選手出場に関しての会見やってるらしいよ」
何とタイムリーな。芳乃のスマホ画面を見ながら会見の映像を見る。
連盟の偉い人『新年度より我々はジェンダー改革として高校女子野球の試合での男子選手の出場を認めます。今までは中学の出場は認めていましたが、昨今の情勢の変化から男子は男子の野球、女子は女子の野球という考え方を一変していく方針です。また、投手の負担を減らすためDH制度を追加します』
なるほど。つまり俺でも出れるというわけか。それに守備が不安な俺にとってはありがたい。
連盟の偉い人『ですが男子選手の出場を認めるにあたって注意すべきことがあります。それは風紀の維持です。周りが女子しかいないからといって行き過ぎた行動は慎みましょう』
なるほどね・・・つまり秩序を乱すようなことはするなということね。分かりました。この永島光希、新越谷高校野球部の秩序を守ることを約束します。プライベートでは分からないけど。
芳乃「よし!これで5人だね!これから部員増やして頑張っていこう!」
残りの4人「おー!」
それに今日すっかり入学式だったということに気づいた。しかし、片づけしていると仲の良いチームメイトみたいであった。