そうか、これが『感情』か……
めっちゃ楽しいなぁオイ!!!
2024年2月23日
第35層 迷いの森
『А to Ζ』が再集結し、てんやわんやしまくったあの日から2ヶ月ちょい。
今日は特に理由もなくバイクを走らせております。
なんか夜の森走りたくなっちゃって……。
ほら、夜風って気持ちいいじゃん?
そういうことだよ。
さて、そんな突拍子もなく走り出した俺はというと……
「うおぉぉぉぉぉぉ止まんねぇぇぇぇぇ!!!」
『なんか前より速くなってない!?』
「サイクロンが自我持ち始めやがったぁぁぁぁぁぁ!!!」
跳ね馬のように乱暴なサイクロン号に乗り、荒れ狂う森を駆け巡っていた。
「畜生こんな事になるなら『ハネウマライダー』歌いながら来るんじゃなかったよクソが!」
『まだ落ち着いた雰囲気の曲だったら大丈夫だったかもね〜……どう?制御できる?』
「できてないおかげで変身完了してるよ!プラーナ万歳!」
取り込まれたプラーナが圧縮され、仮面の瞳が光る。
今はその演出も嬉しいものではない。
つーか眩しい。
……まぁそれはそれとして。
「それにしてもなんか鬱蒼としてるよなココ」
『まぁ夜の森だもんね〜……って、アレは……?』
「んお?」
エースちゃんが何かに気づいたらしく、その声に反応し俺もその方向を見る。
そこには、フード付きのマントを被った片手剣持ちのプレイヤーが居た。
顔はよく見えなかったが、体型的に女性だろう。
さてここで問題です!デデン!!!
今俺がやってしまったのは脇見運転。
そんで、ここは森で時間は夜。
こっから導かれる簡単な答えはな〜んだ?
『あ!ヤバいゼット!前!』
「え?前?……オワッ!?」
そうだね。
事故だね。
前を見てなかった俺は、エースちゃんの掛け声で前を見たものの、その時点では既に遅かったらしく、残念ながら木に衝突する。
静かな夜の森にとてつもない音が鳴り響き、木に止まっていた鳥たちが一斉に翔び立つ。
その音は無論その女性プレイヤーにも届いたらしく、多少の警戒心を持ちながらも事故った俺に近づく。
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。ちょっと足がひしゃげたくらいだから大丈夫」
「ひしゃげた……って!全然大丈夫じゃないでしょ!?」
『大丈夫大丈夫。ちょっと動けなくなってるだけだから大丈夫』
「駄目じゃない!?……って誰さっきの声!?」
『А to Ζ』流の会話をするも、一般人である彼女には通じなかったようで。
とはいえ、戸惑いながらも心配してくれてるようだ。
優しいね。
「……さて、冗談はさておき……っと」
ベルトを操作し変身を解除、体内の《プラーナ》を放出して、顔の傷が戻ったのを確認してから仮面を外し、その人に向かう。
「心配かけさせてしまったようで申し訳ねぇ。まぁご覧の通り元気ピンピンだから心配しなさんな。……んで」
『さっきの声は私だよ〜。私はエース!こっちの運転ヘッタクソなのはゼット。気軽にゼットくんとでも呼んであげてね♪』
回復した脚を見せつつ、先ほど驚いていた声の出どころである仮面を見せ、エースちゃんが話す。
確かに俺の運転は下手だ。
だがなエースちゃん。
アンタにだけは運転ベタとは言われたくない。
「そ、そうなの……まぁ無事なら何よりだよ。……あ、私はシズ。よろしくね、ゼットくん」
「おう。よろしくだ、シズさん」
戸惑いながらも名乗ってくれたシズさんに、握手がてらに手を差し出す。
その手を見て、シズさんは答えるように手を握り、握手が成立した。
「……んでシズさん。どうしてアナタはここに?」
「ただのレベル上げだよ。それに、この剣の性能を試してみたくなってね。それで試し切りに」
そう言うと、シズさんは鞘にしまってあった片手剣を俺に見せてくれた。
なんら変哲のない片手剣のようにしか見えないんだが……。
「見てて」
そう言うや否や、シズさんは鞘にしまっていた片手剣を抜刀する。
それと同時に、銀色の剣に炎が燃え盛る。
「おぉ……!」
『燃える剣だ……!』
「『かっこいい!!!』」
「あはは……中々凄いでしょ?ダンジョンのドロップアイテム?何だけどね」
その燃える剣に見惚れる俺とエースちゃん。
この世界に居たせいでちょいと忘れかけていたが、このゲームが始まる前、俺達は中学2年生だったんだ。
燃える剣なんていう厨二心を擽るモノを見れば、そりゃ興奮する。
炎って……いいよね。
いつか俺も使えるようになりたいもんだ……。
そんな事を考え、ちょいと興奮していると。
「ピナ!!!」
俺の超研ぎ澄まされた聴覚が、少女の叫ぶ声を感知する。
声帯的に女性、それにこの声の高さは幼い子だ。
つまりロリだ。
別にそういう性癖ってわけじゃない。
なんせロリコンじゃないんだからな。
言ってしまえば年上の方が好きだ。
それよりもエースちゃんの方が大好きだ。
ただ、助けを求める声が聞こえて、俺が……『シン・仮面ライダー』がやることなんて1つだろう。
「エースちゃん!」
『わかってる。行くよ!ゼット!』
エースちゃんに声を掛けると、話したい内容を理解してくれたらしく、遠隔操作で倒れていたサイクロン号を起き上がらせ、エンジンが吹き上がる。
ひとりでに動いてひとりでにエンジンを吹かすバイク。
一種のホラーである。
……そうだ。
「シズさん!シズさんも一緒に来てくれ!俺の後ろに乗ってさ!」
「……えぇ!わ、私も行くの!?というか何処に向かうの!?」
「……行先不明の旅のほうが面白いもんだぜ?」
「なにそれ恐いよ!……って力強っ!?」
そう言いシズさんの腕を引っ張り、サイクロン号に乗り込む。
ちょいと無理矢理な手段ではあるが、我慢していただこう。
「さ、行きますぜ〜」
「ねぇ大丈夫!?さっきみたいな事故にならない!?」
「大丈夫大丈夫。俺強いから大丈夫」
「理由になってないよソレ!」
『大丈夫大丈夫。ゼットはそんなに事故らないから大丈夫』
「信憑性にかけてるよその言葉!」
焦るシズさんを宥めようとするも、更に慌ててしまう。
安心させるって……難しいんだね。
まぁそれはそれとして。
後ろに人が乗ってるって事なんで、さっきよりも安定した走りでその声の響いた方へと向かう。
ただ、あくまで安定してるだけ。
速さは普通のバイクよりもヤバい。
それはもう段違いである。
そうこうしてると開けた場所に飛び抜けれた。
そこに居たのは、ゴリラ……じゃなくて《ドランクエイプ》が3体と、綺麗な羽根を見つめる少女、そして……
「あ、黒ボッチいるじゃん!わっぴー☆」
「いてっ!?」
見慣れたマックロクロスケが居たんで、取り敢えず轢いて、地面に埋める。
サイクロン号は人を轢くのに適してる。
良いマシーンだ。
「ゼットくん!?轢きましたよ今!」
「まあそれの対処は置いといて、アレ」
俺の指差す方向には、その少女に向けて棍棒を振りかざそうとする《ドランクエイプ》。
それを認識し、シズさんは瞬時に剣を抜刀。
バイクから飛び降り、3体まとめて横一閃に薙ぎ払う。
まさしく『炎の剣士』だ。
「すげぇ……」
『かっこいい……』
小並感程度の感想しか出なくなる俺とエースちゃん。
あの炎の剣といっしょに語彙力も燃え尽きてしまったようだ。
是が非でもウチに勧誘したいものだ。
……っと、見惚れてる場合じゃねぇ。
下に人がいるままのサイクロン号から降り、仮面を片手にシズさんと、その少女の元に寄る。
「あたしを一人にしないでよ……、ピナ!」
その娘は泣いていた。
青白く輝く羽を胸に当てて。
「その羽……そういう事か」
ちょいとした独り言を呟き、その泣いてる娘に歩み寄る。
取り敢えず慰めてあげるのが、俺流の優しさだ。
「ゼットくん……?」
「俺に任せといて。……お嬢ちゃん、俗に言うビーストテイマーってやつか?」
「……はい」
「そんで、その羽根はお嬢ちゃんの使い魔の……」
「…………はい。私が……一人でもこの森を越えれるなんて考えちゃったから……ピナが……」
「ふむ……」
……大切な存在の死ってのは、乗り越えるのにとんでもない時間がかかる。
それに、この娘はまだまだ幼い娘だ。
幼い分、メンタルも幾分か脆い。
どうすべきか……。
シズさんに「俺に任せといて」なんてカッコつけたのに……。
「……私が対応しようか?ゼットくん」
「あ、はい。ゼット退きます」
『情けない……』
固まっていた俺を助けるべく、シズさんが俺に変わってこの娘の対応をしてくれる。
自分が情けなくなった俺はサイクロン号の元へと戻る。
……あれ?下になんか居る。
「おやおやキリト。何時までそこで寝てるんだい?サイクロン号は掛け布団や毛布じゃ無いんだぞ?」
「……」
「物言わぬ死体だぁ……スルーしとこ」
踵を返し、再びシズさんの元へと歩む。
どうやらパーフェクトコミュニケーションができたらしく、その娘は泣き止んで、シズさんに抱き着いていた。
立ち直れたようで良かった……。
「……ありがとう、シズお姉ちゃん」
「いいんだよシリカちゃん。支えになれたのならそれで何よりだから……。今は眠ってて」
……とても美しい関係が出来上がっている。
……なんか俺空気じゃない?
「あ、ゼットくん。何とかこの娘も落ち着いたよ」
「あぁ……はい。お疲れ様でした」
「それで、1つ相談があってね……」
「相談?」
安心させた娘……名前はシリカちゃん。
その娘を膝で寝かしつつ、シズさんは俺にシリカちゃんのこれからのことを相談してくれる。
どうやらこの娘、自分の使い魔を助けたいようで、その蘇生アイテムが第47層にあるらしい。
が、今のシリカちゃんだとレベルが足りないらしく、ちょいとばかし厄介なことになってるらしい。
「……なるほどな」
『だいぶ厄介だね……』
「それに、そのアイテム……《プネウマの花》が使えるのは3日だけなの」
「あ、ならいけるな」
「え?」
『そうだね。そんだけ猶予があるならどうにかなりそうだね』
「ほ、ほんと……?」
「おうとも!俺ら『А to Ζ』に任せてくれ!」
「……うん!」
シズさんに向けてサムズアップをし、最高の笑顔を見せる。
その笑顔に応えるように、シズさんも笑顔を返してくれた。
畜生、顔がいい。
そんなやり取りをしてると、安眠できていたであろうシリカちゃんが目覚める。
「んぅ……シズお姉ちゃん?」
「起きたの?」
「ぅん……」
「もう大丈夫だよ。頼れる人がいるから」
「頼れる……人?」
そう言うと、シズさんは突っ立ってた俺をシリカちゃんに見せる。
頼っていいのか〜?こんなの。
「あ、どもども。改めて自己紹介を。ゼットで〜す」
『エースで〜す』
「は、はじめまして。シリカって言います」
「おう。よろしくなシリカちゃん」
まぁ今回は握手は無しにしといて……。
俺達は目覚めたシリカちゃんを連れて、『А to Ζ』のギルドホームへと向かおうとした。
……のだが。
「あ、あのゼットさん!」
「どしたのシリカちゃん。時間は限られてるからなるはやで行こーぜ?」
「そうしたいのはそうなんですけど……アレ!」
「アレ?」
シリカちゃんが指を差して示したのは、サイクロン号。
……の下に倒れ込んでいる黒の剣士であった。
「あの人……大丈夫なんですか?」
「私もそれは気になったけど……轢いてからだいぶ時間経ってるよ?」
「あ〜……その事ね?」
『まぁ安心していいよ。ほらアイツ……』
「『ベジタリアンだから』」
「んなわけあるかぁ!」
心配してくれる優しさを持ち合わせたシズさんとシリカちゃん。
それにボケて返す俺とエースちゃん。
そんな二人のボケが重なった時、キリトはそれをツッコむべく復活した。
そっから始まるのなんて……
「けっ。生きてやがったか黒いの」
「こんなんで死んでたまるかよ犯罪者」
「しぶといんだよゴキブリ」
「お前も埋めてやろうかプラーナ廃人」
暴言大会である。
シリカちゃんの教育に悪いったらありゃしない。
「……そんで?お前の後ろにいんのは誰だよ」
「あぁん?聞いてなかったのかよ……まぁいいこの方たちは」
キリトにシズさん達を紹介するべく、後ろを振り向く。
そこには、フードを深く被り片手剣に手を伸ばすシズさんと、その背後に隠れるシリカちゃんが居た。
何でそんな防衛体制を……?
「え、えーっとシズさん?コイツはキリトってやつでね?悪いやつじゃないのよ」
「……ゼットくん」
「は、はい」
「ちょっとこっちに来てくれる?」
「……はいよ」
何故か冷や汗を流していたシズさんに連れられて、キリトたちとはちょいと離れた場所に来た。
冷や汗を流してる理由……俺には何とな〜くわかった気がする。
「……シズさんやい。貴女、過去に何があったのさ」
困惑したような表情を浮かべるシズさん。
その口から語られる真実とは……。
自分で言うのもアレだが、今回めっちゃシリカちゃんのこと可愛く書けたと思うんだ
んで、『А to Ζ』の苦労人一人目、シズさんの誕生である
『朱に交われば赤くなる』って言葉がこの世にあるように、いずれ彼女も毒されていくのだろう……可愛そうだ
あ、コメントバシバシくださ〜い
それが次回を書くための燃料になるんです!