ネットのオモチャすぎる最強探索者〜毒親の英才教育から解放された俺、超有名配信者と共に圧倒的なミーム力を駆使して最難関ダンジョンの最深部を目指す 作:ぱんまつり
炸裂する。
天を突くマグマ飛沫と、顔合わせすらしていないエリアボスの肉片やら何やらが舞う。
ヤケクソ討伐になってしまったが、構わないだろう。
コメント欄は大盛り上がりしているし、何より、乾燥しまくって涙の出ない目元を擦りながら愉快にはしゃぐタマキの姿が見れたのだ。
「うはっ、これが最強探索者! すごいなァ──ッ」
暴れるタマキを微笑ましく思いつつ警戒は解かない──これが功を奏す。
爆心地を中心として煮えたぎるマグマが、まさかまさか
遅れて凄まじい冷風が届く。
「──っ」
その場で大きく跳べば、あっという間に眼に映る全てが銀色に染まる。
奴が蓋だったのか。
それなりに長い探索者人生で初めての経験だ。
「お〜っ、さむ! 環境が変わったね。エリア移動以外でこんなことがあるなんて……」
氷の大地に降り立つ。
ぱききと小気味良い音を鳴らす様は正しく氷のそれであり、間違いなくマグマの類ではない。
急激な環境変化。
エリアどころか階層すら移動していないのにそれが起こるのは前代未聞。
不思議なことは重なる。
前方十メートルほど先に、地鳴りのような音を立てながら下層へ続く氷の階段が出現したのだ。
「来いってさ」
「ダンジョンが意志を持ってるみたいだな」
「ね、さすがに未知すぎてやばそうだから降りていい?」
「ん? もう良いのか?」
一応聞いてみる。
「うん、十分堪能した」
「そうか。それならよかった……な?」
降りたタマキは全身を犬のように震わせて氷を振り落とす。どうやら汗が凍り付いてしまったらしい。
「そんでみんな。どうすればいい、かな? 未知の現象が起きててクッソ危険そうだよ」
なるほど、集合知だな。
俺も見てみるか。
:なあ、デート終わりにしようや
:市市市市市市市市市市市市市市市市市市市市市市市市
:荒らしはほっとけ。俺らはこの先が見たい
:お願いですクラさん。今回もちゃんとクラッシュしてください!
:今北
:戻るのもアリ
:戻るのはナシ
:────俺から教えられることはもう何もない
:こっから先はガチでやばそうですね、、、
:夢ぇ見せてくれやぁあああああ
:¥50,000円
帰ったら使え
:お?
:ナイスパすぎる
:ナイっスぅ!!
:まじでナイス
:かっこよすぎィwwww
:『俺から教えられることはもう何もない』←有識者ニキイケメンすぎて草
:まじで聞かないでくれ、責任取れん。つかお前の配信を見て世界各国が研究するんだよ
:あーでもクラとタマが死んだら人類の損失すぎるぞ
うん、判断材料にはならないと思う。
「配信者としては行くしかないっしょ! 最大級の
「コラボねぇ」
あくまでもコラボです──と念を押すタマキ。
まあ、彼女としても見せ場は作りたいところだろう。
「ここが死地になるかもしれんぞ」
「冗談?」
「冗談だ」
「だよね〜。でもクラさんがいるのに、それはあり得ないって。絶大な信頼を置いてるんだから」
太陽のような笑顔を見せるタマキに目が眩む。
まったくこの人は……ついさっきまで調子落としてたんじゃないのか?
それはともかくとして、
「その格好……」
「なぁに?」
「本気の装備じゃないんだろ、大丈夫なのか? 後方支援でも俺は構わんぞ」
赤が基調の武闘家衣装は白く艶かしい手足を大胆に露出させており、見るからに防御力を欠いている。
事実、上層時点で切れていたり穴が空いたりしている。
「へへっ、挑発してるのかな??」
タマキは気の抜けた悪い笑みを浮かべると丸みのあるラインが強調された腰に手を当てて、少し態勢を前に倒し人差し指をやや濡れた赤い唇に当てた。
「心配ご無用っ、コスプレ回だからってマジは
「──っ、そ、うか。なら何も言わん」
この女、ダンジョンの中で強くなっているのか。
時間を経るごとに存在感を増しているタマキに気押されるようにして、いよいよ階段を降りることにする。
中は青白く光る氷自体が光源となる螺旋階段であった。
幻想的だが同時に心地悪い。
全方位から魔素で圧迫されているような感覚だ。
カツーン、カツーンと鳴る足音に変化が生じないか注意深く耳を澄ませていると──
「みんなごめん。通知うるさいから一旦コメント止めるね」
──太鼓の音のような、内臓の奥を震わせるような音が聞こえたような気がした。
タマキに促されDウォッチの電源を落とすと──だんだんとその音がはっきり聞こえるようになってきた。
ど、ど、ど、ど、どく──ん、どく──ん、どくん、どくん──と。
「心臓?」
「ああ」
形容するならば、それは鼓動。
しかも人体が発する心臓の鼓動そのものだ。
まるで胎児に戻ったかのようで、否応なしに安心感すらも与えてくる。
聞き入ってしまうと歩調が乱れ雑になる。
僅かに気の抜けた状態。
ヴヴヴヴヴ、ヴヴヴヴヴ────ン
「ッ、なんだ!?」
手首のDウォッチがかつてない唸り声を上げ、激しく振動する。
俺はもちろん狼狽えたが、相反するかのようにタマキは冷静だった。
否──その口角は上がってる。
妖しい魅力を放つ唇は、にちぃ、と開く。
「来たね──っ、もう最深部だってさ」