ネットのオモチャすぎる最強探索者〜毒親の英才教育から解放された俺、超有名配信者と共に圧倒的なミーム力を駆使して最難関ダンジョンの最深部を目指す   作:ぱんまつり

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第十二話 願う者

 再度大剣を持ち上げて、後ろに引き絞る。

 

 巨大な両手に数えきれないほどのライフルが握られていることを把握。

 

 無防備に接敵するタマキを視認。

 

「エミィたんがボスかァ……不思議なことがあるもんだね」

 

 無数の銃口がタマキに向く。

 武闘家衣装のタマキはDウォッチを掲げてみせる。

 

「本当に生きててよかった。みんな驚いてるよ。嬉しいのやら悲しいのやら……愛されてんじゃん」

『アンタはタマキ、だね』

「うんっ。タマちゃんだよ」

『そう、か』

 

 ──無慈悲な閃光が人体を穿つ。

 

『初めての殺人が──アンタでよかったゼェエエエエ!!!!!!!』

 

 無数の弾丸で蜂の巣にされたタマキがボスフロアのシミとなる──なんて18禁が起こり得る由もなく、タマキはしなやかな身のこなしで宙を舞っていた。

 

「うはっ! そんな姿になっても銃持つと性格変わるんだ!! てかエミィたん、あたしの事嫌いなの!?」

『大っ嫌いさ。アンタが活躍するほどにボクはオワコン扱いされる。しまいにゃダンジョン狂いのバケモノ扱いさ』

 

 無数の光弾が薙ぎ払わられるもタマキは空を蹴り、地上に舞い戻り、その勢いのままエミィにタックルを浴びせる。

 

 強靭な肉体による突貫はしかし、鉄の巨人を前にそよ風の如し。

 お返しと言わんばかりに巨大な手の張り手によって軽々と吹き飛ばされてしまう。

 

『お前ら、()()()()になっちまえば満足かよ?!』

 

 俺の元まで戻ってきたタマキが「立たせてぇ」と懇願してくる。

 ちょいちょいと肩を指してジェスチャーしてくるのを見る限り、骨が逝ってしまったのだろう。

 

「突っ走るなよ」

「エミィたんが可愛すぎるのが悪いんだよ……! てか、普通に効くなぁ。あたし、エミィたんのファンなのに」

「……俺のファンじゃないのか?」

「一人とは限らないんですぅ」

 

 軽口を叩きながらも常に相手を観察する。

 

 エミィは両手の銃を掻き消すと歩行に不便な巨躯と体型のせいかフラフラと歩み寄ってくる。

 半開きに開いた口の端からは涎が漏れる。

 

『ふふっ、母さん。少し重くなったね』

 

 奴の視界から俺たちが外れた。

 それに気を取られる暇もなく、ヤツの周囲が蜃気楼のように歪むと、ふわふわと浮かび上がりドーム上のクレーターが出来上がった。

 

『浮気者の父さんに身体はいらない、よね』

 

 両腕を広げると全身に引き寄せられ部屋中の武具が突き刺さり、大量の血が噴き上がる。

 自傷行為だ。

 白磁の肌は真紅に染まり、涙がこぼれ落ちるようにして赤が大地に吸い込まれる。

 

「今度は俺が出る」

 

 タマキの背中を叩いてから、反応が遅れないようゆっくり走る。

 クレーターの手前、ここまで来てエミィの赤く染まってしまった目がこちらを向いた。

 

『誰?』

 

 記憶が混濁している?

 

「さっき少しだけ話したと思うが?」

『し、知らない……殺したくない! 離れて!!』

 

 身体が思考性を持って下方に引っ張られる。

 胴体を見えざる巨大な手に引っ張られているような感覚だ。

 自重を軽くし右足で踏ん張る。

 パフォーマンスのため、あえて重さを消すことはしない。

 

 スプーンで掬われたかのように地面が捲り上がる。

 

「残念、俺は殺れん」

『あぴィ!?』

 

 地面を陥没させながら接近すれば彼女は素っ頓狂な声と、ごぅうううんといった重々しい音を発しながら上空へぬるりと浮かび上がった。

 

「ない、か」

 

 風がない。

 

『此処は月の裏側にして人知の届かぬ宇宙。旅人は皆死に最後に嗤うは人の悪意と神秘の化身』

 

 やけに流暢な唄だ。

 果たして彼女自身の意思で発せられたものだろうか。

 

 だが今は他に思考を巡らせる点がある。

 領域内の武器や瓦礫が奴の前に発生した──そう、黒い球体に吸い込まれていく。

 

「ブラックホール。重力を支配しているのか」

 

 ダンジョンボスは往々にして人知を超える。

 俺も似たようなことはしているが、手の届く範囲にしか干渉できない。

 

 しかし、臆するほどでもない。

 あのブラックホールは不完全だ。

 球体の向こう側が透けて見える。光すらも逃げられない──というのは言い過ぎだったな。

 武器をすり潰すのにも時間がかかっているようだし、魔素を含む物質の吸引は困難らしい。少なくとも今の大きさでは俺と()()()を即座に吸い込むことはできないようだ。

 

「下手を打ったな。いつでも討てる」

 

 無数の弾丸を放つ、爆弾を投げまくる、初手のように重力そのものをぶつけてくる──等等、厄介な戦い方はいくらでも思いつくが、理性の欠いたケモノでは賢く戦うことなど出来やしなかったようだ。

 

 苦しまぬよう一撃で斬り伏せる。

 そう決めた俺の大剣がずしりと重くなった。

 タマキの指が触れている。

 

「だめだよ。あたしを投げて」

「俺だけでいい。矮小なブラックホールに大質量をぶつければ破壊できるはずだからな」

「違う、そうじゃないの。まだあの子の声を聞いてない」

「奴はお前を殺したいと言っていたぞ?」

「エミィたんは優しい子なんだよ。本心から言ってるはずない」

 

 そうか、お前は……だが、

 

「俺がお前を助けた時とは状況が違う。あまりに危険すぎ──」

「うるさいっ、行くったら行くの! さっきみたいのじゃなくて、しっかり背中押してね!」

 

「っ、話が通じん」

 

 頭が痛くなる。

 ああ、くそ……俺一人ならもっと簡単な決断だったな。

 

 Dウォッチを一瞥してしまった俺は選択肢を増やす。

 

「ブラックホールは俺が破壊する。もう一度、その馬鹿力で叩け。体重操作で次はタマキが勝つ」

「お、おっ!? ありがとクラさん!! まじで、まじで!!!」

 

 どん、とタマキの背中を押しひと足さきに飛び立ち、

 

「まあ賭けだな。無理でも何とか巻き返してみせるさ」

 

 ブラックホールを超超重量大剣のフルスイングで叩き斬った俺の横をタマキが飛び越える。

 その最中。

 彼女は一つ、俺にとっては思いがけない言葉を残していった。

 

「なぁに言っちゃってんのさ。ダンジョンは願いを叶える場所でしょ?」

 

 これには反発せざるを得なかった。

 

 神なんていない。

 そんなもの、誰が叶えるというのだ?

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