ネットのオモチャすぎる最強探索者〜毒親の英才教育から解放された俺、超有名配信者と共に圧倒的なミーム力を駆使して最難関ダンジョンの最深部を目指す   作:ぱんまつり

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第五話 セーフ理論

 超然とした実力を持ちダンジョン教に喧嘩を売りつけ世間を賑わせるダンジョンクラッシャーなる人物の話題でメディアは持ちきりだった。

 

 そんな中()()()あっという間に特定された父親を名乗る人物は、身振り手振り激しくインタビュアーに語る──偉大な探索者を私が育てたのだと。

 数十本のマイクと幾条ものフラッシュに囲まれながら彼は自宅を案内する。

 

 TVスタッフの面々が眉を顰めていることにも気付かず聞かれても無いことを説明している様は悦に浸っているようにしか見えず痛く滑稽に映る。

 

 眩しい光の中、インタビューの最後に父親はこう言い切った。

 

「自慢の息子です。いずれお見せしますよ!」

 

 

 ニュースタイトル。

 〜親子二人三脚でのダンジョン攻略記録。教会の支配を越えて〜

 

 

♧♧♧♧♧♧

 

 

「ダブスタ親父じゃん。胸糞〜」

 

 聞き慣れない単語に俺はうどんを喉に詰まらせた。

 

「っ、ダブスタ?」

 

 都内某所のうどん屋にてタマキと共に設置されたテレビのニュースを見ながらうどんを啜っている。

 彼女は有名人だからダンジョンで聞き取り調査をしたら簡単に情報を入手する事ができ、家出の翌日に再開することに成功したのだ。

 

 ここはタマキ行きつけのうどん屋で、どうやら彼女はうどんを偏愛しているらしく毎日お忍びで通っているとのこと。

 そんな大切なうどん屋に『クラシーだけの秘密だよ』などとわざとらしく供述して連れ込まれたのだ。

 

「教会の次は世間に媚び売ってるってこと。息子と共に乗り越えたことを謳ってるのに、まんまと宗教まみれの家見せちゃってるあたり金に目が眩んでるね。彼の発言に説得力はないし息子を危険な目に合わせたことで炎上確定。まんまとマスゴミのビュー稼ぎに使われちゃってるよ」

「……なるほど?」

 

 彼の行く末は微塵も気にならない──そんなことよりもうどんが美味すぎる!

 うどんってこんなに美味かったっけ?

 

「はふっ、ハフ──っ」

「あっはは。なんか嬉しいな、おいしいでしょ」

「うまい。その……うまい!」

 

 割り箸を振り上げた拍子に汁が飛んで対面に座るタマキの綺麗な顔にかかってしまう。

 

「あ、すまん」

「いいよいいよ。でもほんと美味しそうに食べるね。初めてうどん食べた感じ?」

「そんなことはないけど……こんなに美味いものを食ったのは初めてなんだ」

「そっか……じゃあさ。これ食べる? 海老天」

 

 タマキが油が滴る塊を割り箸で持ち上げる。

 

「いいのか?」

「うん」

「なら食う」

「あーん」

 

 待ってましたと言わんばかりにタマキが塊を差し出してきたので俺は喰らいに行く。

 

「ふんま(うんま)!?」

 

 箸の向こうに屈託なく幸せそうに笑うタマキの顔があり、あまりにも魅惑的で心臓に痛みを与えてきたので俺はすかさず海老天とやら飲み込んだ。

 舌鼓を打つ暇も与えてくれないのか……。

 

「っ、何でタマキの方が嬉しそうなんだ」

「ぇだってこうするのが夢だったんだよ? この箸だって持って帰るつもりだし」

 

 あ、そう……。

 別に否定する気はないが妙な悪寒を感じたので俺は頬を引くつかせ、うどんを啜る。

 

「それ取って〜」

「ん」

 

 心地よい木漏れ日のような喧騒とうどんを啜る音だけが響く穏やかな時間が流れる。

 時折、タマキが顔を上げてチラチラ見てくるがそれだけだ。

 

「あたしの顔なんかついてる?」

「いや? あ、いや、ネギ付いてるぞ」

「あ、ほんとだ」

 

 見ているのは俺の方だったか……何とも落ち着きのない。

 力なくうどん啜りに戻る。

 

「しかし……これからどうしようか」

 

 曲がりなりにも存在していた目標が消え失せた。

 そんな俺が辛うじて目標たり得ると感じているのは、今タマキに感じている予感のようなものだ。

 

「(ずずっ)ダンジョンクラッシュやめちゃうの?」

「タマキは何か仕事やってるんだろ? よくしてくれてるし協力しようかと思ってる」

「あ〜配信一緒にやる感じか。ぐへへ、唆るっすね〜」

 

 ニマニマするタマキ。

 初めて気持ち悪いと思った。

 予感は気の迷いだったのかもしれない。

 

「でもダメだよ。今はクラシーが大変そうだからお力添えしてるだけ」

「……なるほど?」

「理解してない時そういうリアクションするんだね。まぁ、いろいろ理由あるんだよ。こちとらアイドル営業……に近いことやっちゃってる訳で普段からクラシー好きを匂わせてるとはいえハードルは割と高いと思ってる」

「そうか……」

「そそっ。それに推しとの距離感バグりすぎるのも考えものだしね〜」

 

 自分でもびっくりするほど残念な声が出た。

 もっとも、対面のタマキはちっとも苦にしていないどころか目をキラキラさせているが。

 

「あっ、そうだ。クラシー自身が配信者にならない? コラボはセーフ理論でゴリ押していこう」

 

 なんだその理論。

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