エロゲー乙女たちの欲望全開ダンジョンバトル!! 作:はめるん用
信貴山カナメは正々堂々としたクズである。
特に暗い過去など無く、純粋に支配する側として君臨し権力と財力と暴力を自由に使える立場へ成り上がりたいという夢を抱いている、何処にでもいない普通じゃない男の子だ。
もちろん一般的な家庭に産まれ、夢を実現するために必要不可欠である金もコネも望めないことはカナメ自身もしっかりと理解していた。
だが自分には鍛冶技能の才能があり、容姿の良さにも恵まれているという立派な『武器』があることにも気付いていた。
そして戦闘技能を持つ女たちは性的に餓えている者が多い、となれば……ヤることなどはひとつしかない。女たちを誘惑し、誑かし、籠絡し、手駒として支配すればいい。
ゲーム製作陣の「ユニットのロストとかどうせリセットするだけだし、プレイヤーのストレスにしかならないから無しで」という粋な計らいが反映され、迷宮内部で人が死なないことも彼の計画を後押しした。
別にわざわざこんな危険な橋を渡るような真似をしなくても、この世界の男たちの出世方法として“鍛冶職人として真っ当に信頼と実績を積み上げる”という道もちゃんと存在している。
だがカナメはそれを選ばなかった。何故なら彼はただチヤホヤされたいのではない。あくまで自己中心的に、自分勝手に女たちを支配して悦に浸りたいのだから。要はカナメという少年はリンドウの前世で言うところの『悪女』ポジションな主人公なのである。
「まぁ、うん……。先輩らしく、後輩のお手本になれてるなら別にいいんだけどさ。ホラ、俺って手当たり次第なんでも作ってみるタイプだからさ。いわゆる“広く浅く”ってヤツ。だから、もっとこう……得意分野がハッキリしてる人のほうが目標にしやすいんじゃないかなって思ってさ。器用貧乏なんて言葉もあるしな」
「先輩、もしかしてほかの先輩たちや先生たちがリンドウ先輩のこと悪く言ってるの気にしてるんですか? あんな連中の言うことなんて無視すればいいんですよッ!! リンドウ先輩は器用貧乏なんかじゃない、なんでも作れる万能な鍛冶職人なんですッ!!」
「お、おぅ。ありがとう……?」
(え、なにコレ怖ッ。なんで俺こんな懐かれてんの? そりゃゲーム転生だからって全部が原作通りになるとは思ってなかったけど、それにしたってここまで露骨に慕われてんの意味わかんないんだけど?)
原作ゲームは、あくまで原作。知識が通用する部分は有効活用するにしても、ここは異世界なのだと割り切らなければ必ずどこかで大きな失敗をするだろう。
そう自分に言い聞かせているリンドウであったが、自分の知識の中にいる信貴山カナメの“目的のためなら他人を平然と道具として利用する”というイメージがあるため、どうしても警戒心を捨てられない。
当然と言えば当然である。このカナメという少年はR15タグ程度では描写できないような手段で女キャラたちを屈服させ成り上がりを狙うクズ系エロゲー主人公なのだ、無責任で安全な場所からプレイヤーとして操作するならまだしも現実で交流を持ちたいとは普通は思わないだろう。
その
(タイミング的には原作開始前のはずだから大丈夫──ってのは原作アリの異世界転生では定番の失敗フラグだ。けど、ここで俺が邪険に扱ったせいで変な拗らせ方されても困るしなぁ……)
すでに女子生徒の支配計画に着手しているのであればともかく、無実の相手を先入観だけで拒絶するのは如何なものか。
もちろん、気付いていないだけでチュートリアルが終わっている可能性もある。だが知力も判断力も正しく凡人であることを自覚しているリンドウは、結局カナメを普通の後輩として受け入れることにした。下手の考え休むに似たり、である。
いろいろ手探りではあるものの、とりあえず普通の後輩として接することに決めたリンドウ。それに対してカナメはというと──。
(チッ! 反応が悪いな、調子にのって少し急ぎ過ぎたか。ほかの有象無象どもなら少し煽ててやればホイホイ僕の言うことを聞くチョロカスだらけで楽勝だってのに。でも……うん。さすがはリンドウ先輩、一筋縄ではいかない強敵だな。だからこそ尊敬できるし素直に頭を下げることも出来るんだけど)
これである。
一応、動機は不純でも先輩後輩という立場では純粋に慕っていた。それがリンドウにとってプラスとマイナスどちらに転ぶのかは不明だが、少なくともカナメはリンドウを使い捨ての対象とは見ていない。
本人は前世の知識を活用してマイペースに武器やアイテムを作っているだけなのだが、その姿がカナメには我が道を往く自由人に見えていたのだ。支配される側ではなく支配する側でありたいカナメにとって、教科書の内容や教師の指示など関係無しに高品質のアイテムを作成できるリンドウは憧れの先輩であった。
が、それはそれ。
(僕の計画を成功させるためには、開発していることを公に出来ないような『オモチャ』や『クスリ』の早期完成は必須。そのための理想としては、リンドウ先輩を計画に巻き込むことだけど……それには先輩から充分な信頼を勝ち取る必要がある。先輩の足元にも及ばない錬成しか出来ないクセに、プライドだけは一人前のゴミムシどもなんて関わるだけ時間の無駄なんだから)
リンドウの錬成には無駄がない。システムという名の世界の理を知るリンドウは、必要最低限の素材を使い、必要最低限の道具と手順で、学生レベルを余裕で超える品質のアイテムを作ることが出来るのだ。ゲーム転生者の特権フル活用である。
その上で、リンドウは決して悪目立ちしないよう表向きは“学生の作品にしてはそこそこ使える武器”程度の評価に落ち着くよう加減をしているのだが……主人公特権として素材の特性を正確に把握できるカナメには、それらの武器やアイテムに隠されている性能も全て『見えて』いた。
そんな事情もあって、カナメはリンドウのことを師匠的存在として慕いつつもどうにか上手く利用できないものかと試行錯誤を繰り返しているのである。先ほどの犬っぽさを全面に押し出した後輩ムーブもその一環なのだ。失敗したが。
(まぁいい。慌てて距離を詰めなくても、男同士で鍛冶技能持ちの僕とリンドウ先輩なら接点はいくらでも作れる。まずは錬成の技術を吸収して、僕も先輩みたいに商品価値のあるアイテムが作れるようになるところからだね。軍資金はいくらあっても足りないだろうし)
◇◆◇◆
鬼畜ショタとしての活動を開始してからの関係性はどうしたものか。そんな遠くないであろう未来の問題を先送りにしつつ、空いている錬成部屋にやって来たリンドウはカナメにせがまれるままアイテム作りを始めることにした。
たぶん上手いこと利用されているのだろうな……とは理解しつつも、カナメの学ぶ姿勢そのものは大真面目である。そうなると中身がオジサンであるリンドウとしては、頑張る若者を応援したいという欲求に抗うのは難しいのだ。
それに、リンドウは別に正義の味方ではない。自分にさえ飛び火しなければ、見えないところでカナメが女の子たちをどんな扱いをしようと知ったことではないという凡人らしい保身的な考えもあった。
「それで先輩、今日はなにを作るんですか?」
「投げナイフ。普通の武器よりも簡単に作れて、使い捨てが前提だから女子たちも気軽に購入できて小遣い稼ぎにも丁度いい。数を用意しなきゃいかんのが難点だが、スキルを磨くという意味では悪くない」
「なるほど。でも、先輩? 使い捨てのナイフを作るにしては、すごく準備が丁寧というか……」
「カナメ。これはあくまで俺の考え方なんだが、良い物さえ作れば理解してくれる人が現れるなんてのは甘えだと思ってる。だって宣伝しなきゃ客はそもそも商品の存在を知らないんだから、買いようがないだろう?」
「それは、まぁ」
「宣伝しなきゃ商品は売れない。けど俺たち学生鍛冶屋に出来ることは限られている。だから、商品そのものに小細工をするのさ。ま、見てな」
いくつかの低ランク素材を手に取ると、リンドウは意識を集中し魔力を高める。すると素材は粘土のように柔らかく変質し、簡単に型を整えることが出来るようになるのだ。
それをリンドウは機械を使わず丁寧に手作業で練り上げている。別に機械を使わないことを美学としているのではなく、そのほうがスキルのレベルアップが早いからである。マスクデータで数値の確認が出来なくても、錬成の精度が上がったり扱いの難しい術式がスラスラと刻めるようになったりと、レベルアップしたことを知る方法はいくらでもある。
練り上げた素材を板状に伸ばし、ナイフらしい形に加工して、魔力を込めた金槌で叩くことで硬度を高める。あとは砥石で磨き、握るためのグリップを取り付ければ完成なのだが……リンドウの小細工はここからだ。
(あれは……防御力アップの効果? でも、なんで投げナイフなんかに? それに、あの刻み方だと普段は発動しないし、ナイフが壊れるタイミングで防御力が上がっても──そうかッ!! モンスターの攻撃を受け止めたときにッ!!)
リンドウが刻んでいる術式の意味が『見えた』カナメは野心も打算も忘れ、ひとりのクラフターとして純粋に感動していた。
なるほど投げナイフならばいつでも使えるように実体化したまま装備するだろうし、そうでなくても咄嗟にインベントリから取り出せるようにしておくだろう。
それは攻撃を仕掛けるときに限らず、不意打ちを受けたときやメインで使っている武器をなんらかの理由で手放してしまったときにも使いやすいということ。上手くピンチを切り抜ければそれでよし、万が一ナイフが折れてしまっても防御力アップの魔法が発動すれば探索者の行動選択にも余裕が生まれる。
値段以上の利用価値があると知ったとき、女たちはこのナイフを作ったのは誰なのかと考えることだろう。購買部から購入した者たちが答えにたどり着ける可能性は限りなく低いが、目の前の先輩は個人的な取り引きをしている相手が何人かいたはず。
(少なくともその女たちに関しては、ほかの無能たちよりもリンドウ先輩に武器やアイテムのクラフトを依頼するに違いない。販売ルートの把握と個人的顧客の確保、それを同時に……ッ! アハッ、アハハッ!! いいぞ、そういうやり方は僕に必要なモノだッ! あぁ──リンドウ先輩、やっぱり先輩は尊敬に値する人ですね。これはどんな手を使ってでも僕の計画に協力してもらわないといけないなぁ……ッ!!)
哀れなり水澄リンドウ……ッ!! どのような態度で接するべきか保留している間に、信貴山カナメからの評価は順調に上昇するという泥沼状態……ッ!!
ちなみにリンドウ本人はカナメが推測しているようなハイレベルな駆け引きのことなど特に考えていない。ゲームに登場していた“一定回数、受けるダメージを減らす”という効果をとりあえず再現しているだけである。
(なんか、熱心に見られてる気がする。お金になりそうな技術を教えているうちは敵対視されることはないと思うけど……。どうせなら俺みたいなモブじゃなくて、原作にも登場したネームドの男キャラんとこにでも行ってレベル上げとかしててくんないかな~?)
大丈夫だ、問題ない。何故ならリンドウの望み通り、現在進行形でカナメは頼りになる先輩から鍛冶技術を学んでレベルアップしているところなのだから。
学生探索者はともかく、学生鍛冶職人って変な感じですね。学生なのに職人とは。
なにかいいアイディア浮かんだら次から別の呼び方に変えていると思います。たぶん。