ガチでクズなトレーナーの物語 リメイク版   作:アグリ

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清く正しいブラックな職場です

 さまざまなウマ娘がレースで勝利するために努力する。

 そしてその努力を支え、より良い結果のためにウマ娘と共に手を取り合う存在『トレーナー』。

 トレーナーとなるには血の滲むような努力と、邪な考えを持つものがトレーナーに成らないように厳しく設定された面接を突破せねばならない。

 その余りにも厳しすぎる条件のため、トレーナーとなれる者は皆優秀にしてウマ娘のことを第一に考える者たちばかりだ。

 

 ────だが、そんなトレーナーにも例外が存在する。

 

 

 そのトレーナーは無駄に才能があった。そして自分の才能を鼻にかけ、自分のことしか考えず、他人の不幸を心から笑い、周りを常に見下していた。

 

 まず間違いなくトレーナーに相応しくない人材………では、何故そんな者が面接を突破できたのか────?

 

 

 

「ねぇ、君っていつも私達のことを一番に考えてくれるよね」

 

 頭に耳をはやし『CB』と書かれた帽子をかぶっている。可愛いと言うよりは美人顔の少女が、資料に目をむけている男に話しかけた。

 

「───ん?」

 

 話しかけられた男は資料に向いていた顔を上げ、少女の方を見る。

 その顔は氷を連想させるほどの無表情……だが、寝ていないのか男の目の下には隈ができていた。

 

「トレーナーは基本的に皆そうだろう。俺達は君達のようにレースに勝ちたい、目標を達成したいって思っている子たちのサポートをしてやりたいんだ」

 

 男はさも当然のように答えた。けれど少女は男の返答にどこか不満げな様子だ。

 

「それって、自分の健康を犠牲にしてもやりたいこと?」

 

「ん??……まぁ、俺はそうだが……突然どうしたんだ?」

 

 男はいきなり担当の口から犠牲とか言う物騒な単語が出てきたことで、若干困惑気味であった。

 

 ───だが、そんな疑問の答えはすぐにやって来た。

 

「だって、トレーナー()()寝てないよね?」

 

「……バレてたのか」

 

 男は少女の言葉を受け、ばつが悪そうな顔を浮かべる。

 

「私達のことを考えてくれるのは嬉しいけど、トレーナーが無理してるのを見るのは嫌だからちゃんと休んでっていつも言ってるでしょ」

 

 少女の声色からは不安と心配の感情が読み取れた。男の身を本気で案じているのだろう。

 しかし当の本人は自身の身を案じられている事に気づいていないのか、特に気にした様子はなかった。

 

「いや、次のレースまでにトレーニングメニューを考える必要がある……それに、これも君たちの為になると考えると楽しいからな、無理はしていないさ」

 

「………はぁ、目の下に隈つくりながら言われても説得力ないよ」

 

 男の言葉に少女は諦めたように溜め息を吐きながらも、その端整な顔をしかめ抗議の視線を送っている。

 

「……昨日夢中でメニューを作っていてな」

 

 少女の視線に、男は観念したように言う。

 その顔は無表情でありながら、どこかイタズラがバレて落ち込んだ子供のようであった。

 

「はぁ………」

 

 少女は何度目かの溜め息を吐く。

 だが自分のことを考えてくれていたからか、その顔は心配と同時に少しの嬉しさが混じっていた。

 

 

 

 ────さて、これだけ見れば、少女の為に寝る間も惜しんでメニューを作っている最高のトレーナーだろう。

 

 

 そう、見た目だけなら……

 

 

 ではこの男の内心はどうか?

 

 

(誰のせいで寝れてねーと思ってンだよ!!お前が前回のレースで俺の想定よりも遅いタイム叩き出したからだろぉぉぉッ!!?)

 

 

 なかなかにクズであった。

 

 

(俺の想定ではあのメンツなら余裕勝ちできると思ってたのにさぁぁぁ、良い勝負してんじゃねぇよぉぉマジで冷や冷やしたわ!!!おかげでメニューの見直しが必要になったじゃねぇーかッ!!)

 

 そう、この男ガチのクズである。

 

(クソ!! トレーナーはかなり儲かるって思ってめんどくさい勉強して入ったってのになんだ? このブラックな職場は?! なぜ誰も文句を言わない!? 毎日が残業! 休日はこの女が家に来て心が休まらん!! 休日くらい休ませろやぁぁぁ!!)

 

 なぜこんな男が厳しすぎる条件を突破したのか────

 

 

 この男、性格はクソだが無駄に才能があった。

 

 周りの子達よりも早く物心が付き、自分で考える力があった。

 間違いなく男は天才の部類だろう。

 そんな男が自分の考えが周りから良く思われないと理解するまで、そう時間はかからなかった。

 

『本性がバレれば面倒なことになる』

 

 男は思考を巡らせた結果、「周りから善人だと思われれば少なくともマイナスな事にはならないだろう」───という結論に行き着いた。

 

 その時から男はクールな善人キャラを演じることにした。

 それも幼少の頃から今に至るまで演じ続けた。もはや人生の全てを演技に注ぎ込んだと言ってもいい程、クールキャラを演じながら生活してきた。

 ……ここまでくれば必然とも言えるが、幼少の頃より演じ続けた演技のレベルは今や誰にも見抜けぬ程に成長してしまったのだ。

 

 厳しいトレセンの面接官すらもその本性に気づくことができず、クズはトレーナーとなってしまった。

 

 

 

 

 この物語は、ガチのクズとそれを取り巻く少女たちの物語である。

 

 

 

 

 




(゚Д゚)ノポイ⌒・(ウンチ) ヘ(゜ο°;)ノ(ギャー)

面白ければ高評価、感想のほどよろしくお願いします( ノ;_ _)ノ



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