実家に帰ったら、幼馴染が俺のパンツを吸ってた。   作:鳩胸な鴨

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短め


妹「……兄ちゃん、そういう趣味なん?」

「ふぅん…。珍しいね、自分が手綱を引けない相手を協力者に選ぶなんて」

 

とあるレストランにて。

お子様ランチを前に、サイズの合っていない服を着た童女が、怪しげな笑みを浮かべる。

それに対し、槇村はなんとも言えない表情を作った。

 

「手綱を引けないのは百も承知だ。

まずは、彼が簡単に切れぬほどの信頼関係を築く。それが対策課の総意だ」

「『自分はあなたの味方ですよー、だから言うこと聞いてー』ってお願いするつもり?

彼は素直に見えて、めちゃくちゃにひん曲がってるよ。

思い通りの結果にはならないんじゃない?

『カネちゃん』もそう言ってる」

 

言って、隣でコーラをストローで啜る男性へと目を向ける童女。

男性はそれに軽く頷くと、机にもたれかかった。

 

「ああ。不確定要素を要にするなど、愚策としか思えない。

目に見えたブレーキはあるものの、それを失った途端に詰むぞ」

「ああ。わかっている」

 

槇村の脳裏に浮かぶは、先ほど映像で見た、黒と金で彩られ、全身に碧の光を駆け巡らせた異形の姿。

ただの拳で、神すらも飲み込むほどの理不尽を顕現させる破壊の権化。

それが自分に牙を剥ける時が来るのでは、という不安が離れない。

そんな不安を飲み込むように、槇村はコーヒーを飲み干した。

 

「……私の仕事は、国を守ることだ。

国を滅ぼすような真似はしない」

「…だといいけど、ねぇ」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……あの、葵さん。俺、気にしてないからさ、その…。

…………えっと、あまりに女として屈辱的なその格好はやめた方がいいよ、うん」

 

帰宅してすぐに風呂に入ろうと思ったのが間違いだったのだろうか。

そんなことを思いつつ、俺は目の前の光景に軽く唾を飲み込む。

きめ細やかな肌に、くっきりと浮き出た背中の筋。

滑らかな曲線を描くスレンダーな肢体が、これでもかと眩い素肌を見せつける。

髪の間から覗くうなじは、人間とは思えないほどの妖艶さを誇っていた。

 

「……ごめんなさい…、ごめんなさい…!

私のこと、好きにしていいから…!

お願いだから、嫌いにならないでよぉ…」

 

全裸で土下座をかます恋人が、そこにいた。

そう。あろうことかあの時、葵にはバッチリ意識があったのである。

畜生。世界が葵に厳しすぎる。

冒涜的とも呼べるその光景を前に、俺の息子が暴れ出そうとするのを抑え、俺は葵を宥めた。

 

「嫌いにはならないけど…。

その、せめてバスタオルは巻こう?な?」

「私の体、そんなに嫌なの…?」

「嫌じゃない!むしろ眼福だけど…、その格好の土下座は趣味じゃないかな…?」

「…こうでもしないと、許してもらえない…。

お願い、お願いだから…」

「だーっ!気にしてないって!

悪いのはあの神様もどきだろーが!!」

 

…本当にどうしよ。

このメンタルを治すって、どうすりゃいいんだ。

助けてメンタルクリニックのお医者様。俺じゃ多分無理なんだけど、俺にしか治せない。

どうしたものか、と考えていると。

すっ、と扉を開けた妹が、露骨に顔を顰めた。

 

「……兄ちゃん、そういう趣味なん?」

「違うっての!!ノーマル!!

ちょっといろいろあって悪い方向に拗れちゃったんだよ!!」

「もう抱けよ…。

ほら、オレのゴムやるから…」

 

言って、生々しさ満載の薄い袋の束を投げ入れ、扉を閉める妹。

いや無理。無理だってこれ。

女断ちしてた童貞にこれはキツすぎるって。

それに、初めてのシチュエーションが恋人の初手全裸土下座とか、居た堪れないにも程がある。

 

「……あ、と。その、葵さん?

顔、上げて?」

「……はい」

 

とりあえず、このままでは埒が開かない。

ので、彼女に顔をあげてもらう。

見えちゃいけないところが丸見えになってるが、気にしない。

記憶の中の恋愛ドラマを参考に、俺は葵の顎を指で持ち上げた。

 

「……ん」

「むっ、むーっ…!」

 

ぴとっ、と唇を合わせる。

嫌ってないことの証明は、これで足りるだろう。

抵抗する葵を押さえつけ、数秒。

1分近く経ったところで密着した唇を離し、俺は頬を掻いた。

 

「その、さ。嫌ってないってのは、本当だっただろ?」

「…でも、やっぱり…」

「…じゃ、次のデートはどっか、遠くに行ってみようぜ。葵の奢りで。

それが罰ゲームってことでいいか?」

「……うん。……うん」

 

ぼろっ、と涙をこぼす葵を慰めるように、背中を優しく撫でる。

流石にこの表情を前に、いやらしい気分にはなれない。

俺は妹が投げ捨てて行ったそれを足で洗濯籠の下に隠した。

 

「じゃ、風呂入…、いや、先入るか?

俺、後でもいいし。ちょっとの間だったら待っとくよ」

「……や。一緒に入る」

「……………」

 

メンタルの問題はなんとかなったけど、なんか別の問題起きてません?

この雰囲気で断れるわけないんだけど。

俺は首を差し出すように頭を下げ、「はい」と声に出した。

と。葵は「やった」と言わんばかりに笑みを浮かべ、風呂場の扉を開く。

 

「入ろ。背中、洗ってあげる」

「………その、なんすか?このエアーマット」

「いいから。入ろ?」

「い、いや、あの…。流石にこれはハードルが高、ち、ちょっと、待って…」

「入ろ?」

「…………はいっ」

 

耐えろ、俺の息子。

今更ながらに隠した欲望の薄皮を恋しく思いながら、俺は風呂場に入った。




エアーマットは妹の気遣いな模様
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