「ふんふん、成程ね~。このISを考えた奴はキチガイだね。ISに核を搭載してシールドエネルギーを無限にする、か~。理論上も可能だからこうやって出来るけれどもこれじゃあ、今のISのあり方を否定してるね。まあ、別に良いけど。ただ、気に食わないのが操縦者の事を考えていないって言うのが気に食わない」
今、俺は博士に研究所のとある部屋に連れて来られている。
博士は俺が渡したデスティニーガンダムをスキャナーの様な機会に通してデータを取っている最中だ。
博士も核を積んでいる事にご立腹だ。あの篠ノ乃 束博士が操縦者の事を考えるなんてイメージが少しばかり崩れる。
「ほい、データが取れたし返すね」
博士はデスティニーガンダムを俺に返すと、ズイッと顔を覗き込んでくる。
「んで、君はどうする?それを使うのも良いけど、新しいISが欲しくない?この篠ノ乃 束さんが、君にぴったりのISを作ってあげよう!何が良い?遠距離?中距離?近距離?ふふ、勿の論で君にも協力はして貰うけれども」
面白そうに束博士は言うが、俺は束博士の腕を掴むと、
「俺は……僕は、貴女とずっと共に居たいです!」
原作だとIS学園に行く事自体が色々イベント発生場だし、束博士に着いていけば、少なくとも学園イベントは回避できるはず!
「えっと~、流石にそれは想定外かな~」
眼をまん丸にする博士。
ん?何かが可笑しい。
記憶を巻き戻してみれば、君どうする?→貴女とずっと共に居たいです。……告白してるじゃん!!
やばい。俺、博士に告白しちゃってるよ!!!出会ってそうそうの告白だよ!
「えっと、あのですね!?」
頭をフルに使って言い訳を考えてみるが一向に浮かばない。
「流石に私も女の子はちょっと……ね」
「僕は男です!こんな感じで体は女ですけれども、ベースは男ですよ!転生の際に16年間童貞で恋人もいなければ女の子と手を繋いだことすらなかったのに、いきなりロキとか言う男の神様が現れて好きだと告白されたんですよ!?あなたに解りますか?この感情!同性愛でもないのに好きだと言われたんですよ!?しかも、好きだから殺しちゃったとかほざやがるんですよ!ここに転生する時にここの知識と補助道具、それと絶世の美女をくれと言ったのに、神がくれたのは絶世の美女の体!Hするどころかお手てすら繋ぐ事も出来ない僕の苦悩が貴女に解りますか!?」
堰をきったダムの様に眼から涙があふれ出し、束博士に胸の内にたまった思いを吐きだした。
「えっと、そのごめんなさい。良ければ胸を貸すよ?」
束博士は俺の顔が凄いけんまくだったのか、若干の引き気味。
「うう、お借りします」
俺は、暫く束博士の胸をお借りして泣いた。
束博士の服が俺の涙と鼻水で汚れ、俺の眼からも涙が出ることが無くなるほど泣き止み、頭も先程の様な感情が高ぶっている時とは真逆に冷静になった時、俺は今現在の状況に気付いた。
【俺 は 、 篠 ノ 乃 束 博 士 の 豊 満 な 胸 に 顔 を 埋 め て い る!!!】
その現状に気が付くと同時に俺の鼻から赤い鮮血が勢いよく飛び出した。
「え!?ちょっと!!!尋常じゃないほどの鼻血が噴き出しているんだけども!!」
薄れゆく意識の中、最後に見たのは真っ赤になった博士の服。勢いよく出る俺の鼻血、博士の足もとに出来た俺が原因であろう血の池。そして、俺の鼻血で顔が汚れ、俺を驚いた表情で見てあたふたしている天使の様に思えた篠ノ乃 束博士の姿。
「束さんマジ天使」
グッと親指を立てて束博士に向けると同時に俺は意識を失った。
ただ、一つ解った事がある。童貞歴16年の俺には女の子の胸を触ると言う事はニトログリセリンの様な危険物扱いだと言う事だ。
○○○
俺が目を覚ましたのは、ベッドの上だった。
時間としては夜だろうか。研究所に設置されている窓には、明かりが入ってこない。
寝かされたベッドには、椅子に座った束博士がもたれかかるように俯いて寝ていた。博士は服を着替えたのか、最後に俺が見た鼻血で染まった服とは別のジャージに白衣を着た姿だ。
俺の服も博士が脱がしてくれたのか奇麗な服だって、あぶねえ!また鼻血が出そうになった!セーフ、今度はセーフ。イメージもすぐに辞めたし、セーフだ。うん、大丈夫な筈!
鼻を触ってみるが先程、鼻の奥が熱くなったけれども鼻血は出ていない。
良かった~。起きて早々の大惨事は勘弁してほしい。
「起きたようですね」
黒の眼球に金の瞳、銀髪の少女が部屋の入口に立っていた。
原作知識を思い出すと、確かこの子は
「クロエ・クロニクルだったか?」
「はい。博士からはクーちゃんと呼ばれています」
「ならば、俺……いや、僕もそう呼んだ方が良いか?」
「お好きなように」
「そうか。それじゃあ、クーちゃん」
「……」
俺がそういうとクロエ・クロニクルは、嫌そうな顔をした。
「おい、そんな顔をされたら俺はどうすればいいんだ?」
「ご自分でお考えください」
「この……まあいい。それじゃあ」
頭をフル回転させこいつの呼び名を考える。
博士はクロエ・クロニクルだからクーちゃん。呼びやすい名前の方が良いだろうし……それじゃあ
「クロクロ」
「……」
顔を更に嫌そうにゆがめられた。
それじゃあ、可愛らしく
「クロロン」
「クロロホルムみたいで嫌です」
こいつ、好き嫌いが多いやっちゃな~!クソ!それじゃあ、楽をしてやる!
「クロ」
俺がそういうとクロエ・クロニクルは顔を明るくさせ、嬉しそうな表情を浮かべた。
う、うそだろ!?クロエ・クロニクルだから頭文字二文字をとって、クロだぞ。俺が今まで考えた呼び名は一秒も掛からない程の超適当な呼び名に負けたというのか!?
「ん、んん~。おはよう」
艶めかしい声を出しながら束博士が起きた。未だ眠いのか眼をこすりながらの挨拶だ。
「博士、艶めかしい声はやめて下さい!中身が男なんで性で襲いたくなっちゃいます」
「あらら、名前すらまだ聞いてないのに襲われちゃうのか~私」
クッ!博士がこんなに可愛いなんて聞いてないよ!博士、こんなに可愛かったっけ!?天災といわれるほどの人物じゃなかったか!?
等と思っているとブッと鼻血が少し出始めた。鼻をつまみ、上を向いて首筋をとんとんと叩いて応急処置を行う。
「はい。ティッシュです」
クロが俺のそばにティッシュを持ってきてくれる。
「……随分と鼻血が出ますね」
「まあ、重度の花粉症だから」
「そうですか」
「鼻をかみすぎて鼻の粘膜が弱ってから鼻血が出やすいんだよ」
俺がもっともらしい事を言うとクロは納得したのか頷く。
騙している俺が言う事でも無いけれどもクロの将来が心配だ。将来、詐欺や変な人に捕まりそうな気がする。
「ふっふ~、重度の花粉症ね~」
博士はニヤニヤしながら俺と黒のやり取りを見ている始末。
何かを感じ取ったのだろうか?
それなら博士はエスパーかニュータイプでは無いだろうか?
「それで、君の名前はなんていうの?」
俺の名前、俺の名前………
「俺。いや、僕に名前なんてありません。博士が決めて下さい」
元の名前はあるけれども、こっちで俺を知る奴なんていない。ならば、新しい名前を貰っても構わないだろう。どうせ、今までの過去なんて思いでだし。
「そう。それじゃあ………」
博士は腕を組み、暫く悩んでいる動作を見せると
「カナ。君の名前はカナね」
「……カナ。俺、僕の名前はカナ!ありがとう博士!!」
嬉しさのあまり博士に抱き付く俺。
「フフ、カナは甘えん坊さんだね~」
博士の優しく俺を撫でてくれる。
ああ、至福の時。博士の柔らかい豊満な胸に埋もれ、頭を撫でて貰える。まさにこの世の楽園。
だが、次の瞬間
プシャアアアアアア
鮮血が飛んだ。主にティッシュで栓をしていた俺の鼻から。
それと同時に俺は貧血で意識を失った。