俺が博士に拾われてから10日間経過した。
「248回、1000ℓ以上……これ、何の数字だか解る?」
博士の突然の問いに俺は困惑する。
「何の数字ですか?それ」
「貴女がこの10日間の内にISスーツを着替えるために更衣室に行って今まで自分の体を見てぶっ倒れた回数とその為に使われた輸血量の合計数量だよ!!最初、更衣室で鼻血出してぶっ倒れた時はあまりの出血に死んだんじゃないかと思ってあせったよ!それに、お陰でISスーツの新調が遅れるわ、予定が押し込むわで大変な事に成ってるんだよ!それと貴女、どんな体の構造をしてるの?普通、ここまでぶっ倒れると死んでも可笑しくないよ!?人間離れしすぎでしょう!?IS以外の事には全然興味が無いけれども、あなたの体構造にはすごく興味がわくよ!何これ?最早ギャグ漫画の主人公みたいじゃない!」
「博士、それはネタバレと言う奴です」
「知ってるよ!知ってるから!!」
「あのですね、博士!自分で言うのも何ですれども自分、中身は男、外見が超絶美女なんですよ!?童貞こじらせすぎた男子高校生には、美女の裸は大ダメージなんですよ!?」
「え!?男子高校生ってここまで鼻血を出すの!?」
「自分は出しますよ!!」
「兎 に 角 !今日と言う今日は、クーちゃんに着替えを手伝って貰うから早くISスーツに着替えて!じゃないと実験が始めれないよ!」
「……はい」
博士に指示され渋々クロエ・クロニクル、通称クロと博士がいる部屋を後にし、クロエに手伝って貰いながら着替える事に成ったのだが……
「それでは、着替えを手伝いますので脱いでください」
今現在、目隠しをされてクロに手伝って貰いながら服を脱ぎ脱ぎしている。
これは、これで別の意味での刺激が来る!
俺にMっ気は無かった筈なのだが……なんだ、この未知の刺激は!!
クロの手が俺の体に触れる時の感覚。
柔らかく、ほんのりと温かい小さなクロの手が俺の体にソフトタッチする。
触れるか、触れないか。目隠しをされているので解らない。
これは、心臓に悪いぞ!!
「……鼻血が出てますよ」
クロがそう言って俺の鼻にティッシュを詰めてくれる。
「ありがとう」
お礼を言ってクロと二人で脱ぎ脱ぎ再開。
「!!!」
クロの微笑ましい小さな胸が俺の体に触れて声に成らない悲鳴を上げてしまった!
俺は、クロの小さな胸が体に触れた瞬間に体中に衝撃が走った。
まるで雷に打たれたかのようなすごい衝撃。
クロの胸は小さいが確かに柔らかい女の胸だ!
表現し難いが、兎に角柔らかい。一つハッキリしているのは
断 じ て 、男 の 胸 で は 無 い !!
前世で虚しくて自分の男だった時の胸、揉んだ事ありますよ。
やった時の後悔感と虚しさ……半端無かったな~
「あ、鼻血が」
クロのセリフを聞き終わる前に俺は意識を手放した。
「起きて、起きてったら!!」
可愛らしい女子の声を聴き、眼を開くと博士の顔が視線に移った。
柔らかい感覚が俺の後頭部からする。
……これは、まさか!?
伝 説 の 膝 枕 で す か ! ?
男だったら彼女にされたい事Best10に入る伝説の膝枕。
キスしたい、手を繋ぎたい、一緒にご飯を食べたいに連なる、彼女にされたい事。
「俺、もう死んでもいい。我が人生に一片の悔い無し!!」
「カナ、何言ってんの!?」
しれっと博士に驚かれるが、俺みたいに童貞こじらせた男なら仕方ないだろう。
「俺、幸せ者だ。うん、何時お迎えが来ても良いや」
「まだ若いよね!?というか、そろそろ起きて。実験したいから」
ふう、出来る事なら博士の膝枕をもう少し堪能したかった。
だが、それは欲張りというものだろうか………
「何でさめざめと泣いてるのさ!?」
「あ、いや。出来る事ならもう少し膝枕を堪能しときたかったな~って思って」
「そんなに膝枕が良いなら実験が終わったらしてあげるよ」
「マジで!?」
驚きのあまり上半身を起こすどころか、起立して博士を見る。
「良いよ。膝枕くらい」
「やった~。博士大好き」
「現金だな~」
博士とそんな何気ないやり取りをしていると、
「……」
無言で背後に立っていたクロに横腹を思いっきりつねられた。
「#%&#!?」
言葉に成らない奇声に近い悲鳴を上げてしまう。
何なんだこいつは!?クロの握力が半端ない事を思い知らされる。
クロに抓られた事によって尋常では無い痛みが俺を襲う。
「なにこの子!?ゴリラ並みの握力なんだけど!?博士、この子怖いんすけど………」
「誰がゴリラですか!誰が!!」
青筋を額に多数浮かべ、クロは俺にアイアンクローを仕掛けてくる。
ああ、俺の頭が、頭がっ!!!
「頭が、頭がっ!頭が割れるように痛てえ!!」
ああ、頭の中に温かいものが流れ込んでくる。
もしかして、脳の血管切れたかな~
「クーちゃん、STOP STOP!!それ以上やると本当に死んじゃいそうだからSTOP!!!実験前に人材が死んじゃったら意味が無いよお!」
束さん、マジ天使!!言葉は、あれだけど…道具としか見ていないようだけど。
束さんのおかげで俺をアイアンクローしていたクロの腕の力が緩み、俺は解放される。
「うう、博士。ひどい目にあったよぉー」
「よしよし」
束の胸に抱きつくと、束は子供をあやす様に俺を慰めてくれる。
マジ束さん天使だよぉ!
もう、束さんが彼女として欲しい。
もう束さんの道具で良いや!
こみ上げてくる鼻血を必死に気力で辛抱する。
「それじゃあ、実験しよう?カナの専用機を作る為の実験を、ね?」
「うん」
束に促されるまま待機状態の量産型IS 打鉄に触れる。
直後、俺の頭の中に膨大なISの操縦データが流れ込む。
なんか、不思議な感覚だ。まるで見た事は無いけれども、走馬灯を見ているような自分が自分じゃない感じがする。
「調子は、どう?」
束さんに言われて俺は眼をあけると……
武装、残量エネルギー、行動可能範囲、操縦方法、今現在の位置情報と周辺情報、その他諸々がまるでヘルメットを被っているみたいに画面の隅に表示され、画面の真ん中には今現在の俺がいる博士の実験場の様子が映し出される。
「良好です」
俺は、ISを纏っていた。
気分も普通。
と言うよりも、初めてISに乗った為、気分が高揚している。
ガンダムに初めて乗った時のアムロもこんな感じだったのだろうか。
「それじゃあ、そのまま上昇してみて」
束さんの指示通りに上昇するため、表示されているISの操縦方法通りに体を斜め前に僅かながら傾ける。
すると、ISは非固定ユニットのスラスターを噴かせながら地面から1m位上空まで移動した。
『OK.凄いよカナ!今簡単にIS適性を測定するついでに動かして貰ったけど、IS適正はSに限りなく近いAだよ。正当な評価で言うならA+++だよ』
博士がオープンチャンネルでそう言って来るが、
『恐らく俺を転生させた時に、あの糞野郎。悪神ロキとか言う変態がそうさせたんでしょう』
『こら、カナ!俺じゃなくて、僕。もしくは、私って言いなさい』
『束…博士の指示ならそう言いますが、博士。図々しいかもしれませんが、それじゃあ一つお願いしても良いですか?』
『何?』
『博士の事を、束って呼んでも良いですか?』
『……う~ん。どうしようかな~』
ハイパーセンサーで見える実験場の地面で測定機器に囲まれた博士は、悩むそぶりを見せていた。
やはりダメなのだろう。
……うん、恋人気分を味わいたかったのだが、これ以上の高望みは罰当たりとなのだろう。
『まあ、良いよ』
そうか。やはりダメかって、良いの!?
『良いんですか!?』
『別にダメな理由ないからね』
やった!
『ありがとうございます!!』
『早速、武装を
『了解しました』
俺は、武装を見る。
武装
・近接武装
・95口径特殊レーザーリボルバー
・
この3つのみ。
最後のは、一体何なんだろう?
まあ、良い。どうせ実験中に使うだろう。
俺は近接武装
すると、手に紫色の大鎌が現れる。
刃渡り、1.8m程の巨大な鎌だ。
『それじゃあ、これを全部斬って無力化してみて』
束がそう言うと、彼女の傍に16連装ミサイルポッドが現れ、俺に向かって次々と射出される。
俺は、向かって来るミサイルの弾頭を
ミサイルの一つを斬ると弾頭がまるで良く研がれたナイフで紙を斬るみたいに、簡単に斬れた。
弾頭を失ったミサイルは、俺の横を通り過ぎ大分離れた距離で爆発を起こす。
『す、凄いよ!束、凄いよ!!まるで紙を斬るみたいにミサイルが斬れるよ!』
『ふ、ふん~でしょでしょ。それは、
束の説明を受けている間にもミサイルは次々と俺に向かって発射されるが、俺はそれらの弾頭を全て斬り捨てる。
ミサイルは次々と弾頭を無くし、あらぬ方向に飛んで行って爆発を引き起こす。
『近距離戦のデータは取れたから、それじゃあ次は中・遠距離武装を
束に指示されるがまま、近接武装
すると、手にはずっしりとした重量感あふれる巨大なリボルバーが現れた。
『それじゃあ、この的に向かって発砲してみて』
束がそういうと、少し離れた俺の前方に球状の的が3つ現れた。
俺は、両手で95口径特殊レーザーリボルバー
すぐに、95口径特殊レーザーリボルバー
ドゴオオオオオンン!!!
銃口から極太のレーザーが打ち出され、俺は予想外の反動で手元が狂う。
レーザーは的を掠めるが、勢いを失うことなく地面に巨大なクレーターを創った。
『それは、6発撃てるからね。銃弾は極太のレーザーだよ~。まあ、威力を追求した分反動が凄いから慣れていくしかないけれどね』
束の説明を聞きながら、俺は的に向かって再度撃鉄を起こし、引き金を引く。
今度は、銃をしっかりと握り反動に負けない様に銃を握りしめる形だ。
全弾撃ち終わるが、的の真ん中には当たらなかった。
代わりに、的の真ん中周辺に6発中3発は命中した。
『それじゃあ、最後の武装に行ってみよう~!』
束の陽気な声がオープンチャンネルで耳に入ってくるが、まあ実際最後の武装
95口径特殊レーザーリボルバー
『それは、近距離、中距離、遠距離を総合させた武装だよ。カナが持っていたISの武装をモデルに作ってみたんだ。それじゃあ、これらを撃墜して見せてね~』
束はそう言うと、地面の至る所からミサイルポッドが出現する。
その数、10や20なんて生易しい物じゃない。
まるで白騎士事件を思い起こさせるほどの量のミサイルポッドの銃口が俺に向いている。
ドドドドドド!!!
轟音と共にミサイルポッドから一斉にミサイルが発射され、俺に向かってミサイルが距離を縮めてくる。
食らえばシールドエネルギーがゼロに成りそうなくらいの量。
『
俺がそう叫ぶと、画面にミサイルを複数ロックするマルチロックオンシステムが作動し、向かって来るミサイル全てをロックした。
そして、背中の非固定ユニットから出ているレーザーで作られた蝶の様な巨大な翼が動き、まるで蝶が羽ばたくように俺を囲んで飛んでくるミサイルたちを全て破壊する。
俺に向かって飛んできていたミサイルは
周囲がミサイルの爆発で熱風を引き起こす。
俺はすぐさま博士の許に飛んでいく。
理由は簡単。ミサイルの爆風と破片から博士を守るためだ。
まあ、必要ないかもしれないが……
博士の許へと飛んでいく間にも近接武装
『束、大丈夫ですか!?』
束の許に着いた俺は、束にそう尋ねるが
「カナ、大袈裟だよ~。天才篠ノ乃 束さんだよ?あれぐらい何でも無いよ~」
当の本人は、あっけらかんとしている。
「それなら、良かったです」
安堵の息を吐いた。
「それで、カナ。カナから見て、何か改善点はあった?」
「え、あ、はい。武装の
博士は腕を組み、暫し考える素振りを見せる。
「フム、……成程ね。と成るともう一つ近・中・遠距離総合武装を考えた方が良いかな?それと、
「やはり反動が凄いですね。ただ、反動が凄いのに見合うだけの威力はありました。ですが、6発と言うのがちょっと心もとないですね。弾を増やす事は出来ないんですか?」
「う~ん。出来るっちゃ出来るんだけど、威力が落ちるんだよね~。でもでも、当たれば一発KOだよ」
「それは、凄いですね」
95口径特殊レーザーリボルバー
一発当たればKOって、威力高すぎやしないか?
「まあ、第四世代の試作機としては良いデータが取れたよ」
「第四世代?」
確か装備の換装無しでの全領域・全局面展開運用能力の獲得を目指した世代で織斑一夏と篠ノ乃 箒しか持っていなかった筈だが…もしや、俺が来たことで話が変わってしまったのか!?
「うん。箒ちゃんにプレゼントするため、第四世代の実験機を作ってたんだ~。それが、この機体 ガブリエル。遠・中・近距離全てに、装備の換装無しで対応できる第四世代型機体なんだよ~」
「束、
「お!良いね良いね!カナ、凄く良いアイディアだよ。それ!
「束、徹夜は駄目です!ちゃんと寝て下さい!!」
「大丈夫だよ、カナ。束さん、細胞単位でオーバースペックだから」
「徹夜したりすると早死にしますよ」
「大丈夫大丈夫」
「束が死んでは、僕が悲しい!お願いですから徹夜はやめてちゃんと寝て下さい!」
「むう、カナは頑固だな~」
「頑固なのは、束の方です!」
「解ったよ。それじゃあ、ちゃんと寝るよ」
「そうして下さい」
「んじゃ、はい。おいで、カナ」
束はそう言うと正座し、ポンポンと自身の膝を軽く叩く。
「約束の膝枕」
束にそう言われ、俺は顔を赤くさせながら俯き黙って束の膝に頭を預ける
あ、あれだ。改めると何だか気恥ずかしいな。
「カナ、顔真っ赤だよ」
笑みを浮かべる束。
「……束の意地悪」
「可愛いな~、カナは」
可愛い。中身男である俺にとって褒め言葉であるのだがあまり嬉しくない台詞だ。
だが、何故だかうれしくは無いのだが普段人に関心を持たない束に褒められたためかうれしい気がする。
「これからも宜しくね。カナ」
「はい。束」
こうして、俺のテストパイロットとしての初めての実験は終わった。