鋼の錬筋術師 -ニクメタルアルケミスト- 作:ベルゼバビデブ
「三流だと…!?ふざけるなよ…!この私が!神の元へと送り届けてやろう!!」
ただの杖を回転式機関銃へと錬成してぶっ放してきやがった。今の錬成、やはり賢者の石を使ってるらしい。
「はははははははは…は…!?」
どうやら俺を見て驚いたらしく、コーネロは目を目を見開いていた。
「いや、俺って神様に嫌われてるだろうからさ。行っても追い返されると思うぜ!」
この程度の攻撃、錬金術を使うまでも無ぇぜ!俺のこの鍛え抜かれた肉体なら全ての弾丸をキャッチすることなど容易なのさ!
因みにロゼはアルの背後にいるので無傷だろう。
「この…」
すると今度は銃口をアルに向けてぶっ放しやがった。今のアルは逃げる為にロゼをお姫様抱っこしているので両手が塞がっている上、背中を向けている。確かに手で弾くことは出来ない。
「きゃーーーっ!!!」
抱えられているロゼは悲鳴を上げているが問題はない。何故ならアルは…
「アウチッ!」
少し痛がる程度だろう。筋肉は全てを解決するからな!アルの黒光りする筋肉の装甲なら弾丸を弾くことなんて朝飯前だぜ。ま、さっきは万が一にも跳弾がロゼに当たらないようにという配慮しただけで俺らほどの筋肉ならば正面からの弾丸を仁王立ちで受けることも可能だけどな!
「アル!いったん出るぞ!」
「バカめ!!出口はこっちで操作せねば開かぬようになっておる!!」
俺が入ってきた扉を指差すとコーネロが嘲笑いやがった。へっ、馬鹿な奴だ。
「ああそうかい!」
俺は思い切り扉に向かって飛び蹴りをかました。俺程の筋力で飛び蹴りを扉にかませば扉なんてのは跡形もなく消え去るのさ!
「んなあーーーっっ!!??」
「出口が無けりゃ作るまでよ!!」
破壊と創造は表裏一体。扉を跡形もなく消し去り破壊した事で出口を作り、ロゼを抱えるアルと共に走り抜ける。
「何をしておる!追え!教団を陥れる異教徒だ!!早く捕まえんか!!」
コーネロも部屋から出ると、周りの手下達に追うように指示をしているのが聞こえた。
俺達が廊下を走っていると、複数の男達が廊下を封鎖しようと立ちはだかる。無駄な事だぜ。
「止まれそこの者!」
「ほらボウズ、丸腰でこの人数相手にする気かい?」
「ケガしないうちに大人しく捕まり…」
丸腰?この筋肉が見えないのか?…仕方ない、少しビビらせるか。俺は走りつつ、壁に右腕を突っ込んだ。そのまま走る勢いで壁の中の鉄筋を数本引き千切る。そして右手で持つ数本の鉄筋のうちの一つを左手に取り、思い切り投擲した。
まぁ、圧倒的筋肉を持つ俺が鉄筋を投擲すればそれはほぼ弾丸だ。鉄筋が男のうちの一人の脚を貫通したため、男とその周りの男は一気に狂乱状態に陥った。まぁ、自分たちが持つのは棒なのに対して、彼方が実質銃を持っていればそうなるだろうぜ。さらに怪我をした者を逃す為に人手を割く為、俺達が通る道は自然と開けるって寸法だ。
「くっ…手強いぞー子供だからといって油断するな!」
教主の手下がそう言った瞬間、ロゼをお姫様抱っこしたアルがその丸太のように太い脚で蹴り飛ばしていた。蹴られた手下は勢いよく壁を貫通したが、まぁ、圧倒的筋肉が犇く脚部で蹴られたら普通そうなるわな。
俺達が走っていると、他の部屋とは異なる部屋を見つけた。
「お?この部屋は…」
「放送室よ。教主様がラジオで教義をする…」
こんな時にも親切に説明してくれるロゼの言葉を聞き、俺はニヤリと笑う。
「ほほーう。なぁアル、頼みがあるんだが…」
〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜
アルフォンスはロゼを一旦屋外の安全なところに置き、自身は一気に跳躍して鐘を盗み出した。エドワードの企みは教主自らに悪事を喋らせ、それをスピーカーで街の住民に聞かせることである。そのスピーカーの役目をするのが鐘。とはいえ、鐘そのままではスピーカーとしては十全ではない。錬成を行い少し形状を変えるのだ。
「さっきの話だけどまだ信じられない。そうまでしないと錬成できないなんて…」
ロゼの元まで鐘を片手で掴んで持ってきたアルフォンスにロゼは驚きの声を出す。勿論、普通大の大人が複数人で持ち運ぶような大きな鐘を片手で掴んで運んできたことだけではない、コーネロの奇跡の業でしか錬金術を知らないロゼには等価交換のルールがいまだによく飲み込めて居なかったのだ。
「錬金術の基本は『等価交換』デス。何かを得ようとするならそれなりの代価を支払わなければいけまセン。ブラザーの筋肉も筋トレという代価を払ったこそ今のブラザーがあるんデス」
「それは錬金術と関係なく無い?」
そう会話をしつつ指圧で屋上を削って描いた錬成陣により鐘をスピーカーへと錬成した。
〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜
俺の居る放送室の扉を思い切り開けたのはコーネロだった。
「小僧ォォ…もう逃さんぞ〜〜〜」
俺はというと、暇だったので天井に指を突っ込み、懸垂をしていた。そのまま懸垂を継続しつつコーネロに話しかける。
「もうあきらめたら?あんたがオレ達を襲わせたり、合成獣をけしかけたり、銃をぶっぱなしたって事はロゼが広めてくれるだろうぜ?」
「ぬかせ!教会内は私の直属の部下だし、バカ信者どもの情報操作などわけもないわ!」
俺が天井で懸垂することで奴の視線は上に向く。足元にあるマイクには気が付けないだろう。俺は懸垂を続けつつ、わざとらしくため息を吐いた。
「やれやれ、あんたを信じてる人達もかわいそうな事だ。」
「信者どもなぞ戦のための駒だ!ただの駒に同情など不要!!それになあ神のためだと信じ幸福のうちに死ねるなら奴らも本望だろうよ!」
相当頭に血が昇ってるらしく、訊いてないことまで勝手にペラペラと喋り出しやがった。
「錬金術と奇跡の業の区別もつかん信者を量産して駒はいくらでも補給可能!信者達から寄付という形で金を集め、従順な信者どもによる死をも恐れぬ最強の軍団を作り上げこの国を取る!これしきの事で我が野望を阻止できるものか!ロゼとかいう女にはこの賢者の石を使って恋人を甦らせるとでも言っておけば口封じなど訳もないわ!!うわははははははは」
高笑いをするコーネロに流石の俺も懸垂を止め、天井から指を引き抜いて床に降り立った。あ、駄目だ。笑いが我慢できん。
「ぶははははは!!」
「!?何がおかしい!!」
まだ気がついて無いのか。それじゃあそろそろネタバラシといきますか!
「だぁーからあんたは三流だっつーんだよこのハゲ!」
「小僧!!まだ言うか!!それにあのクロビカリもハゲではないか!!」
アルのあれはスキンヘッドでありハゲでは無い…はずだ。俺はコーネロにONになっているスイッチを見せつけ、ついでにコーネロの脚元を指差す。
「まっ…まさか…貴様ぁーーーッ!!!いつからだ!!そのスイッチいつから…」
おーおー、焦ってる焦ってる。
「最初から、もー全部だだもれ」
今頃街中が放送に耳を傾けてるだろうよ。
「なっなっなっ…なんて事を〜〜〜〜〜っっ。…このガキ…ぶちこr…」
はっ、相手を殺したいと思うなら口で出す前にまず動けって話だぜ、だから三流なんだよ!
「遅ェよ!!」
杖を賢者の石を使って再度回転式機関銃を錬成して攻撃しようとしたらしいが、それを手刀で切り裂いてやった。コーネロは驚いているが、俺の鍛え抜かれた凄まじい肉体から放たれる高速の手刀なら金属をも易々と切断できるなんてのは当たり前のことだぜ。
「言っただろ?筋力がちがうってよ」
「私は…私は諦めんぞ…。この石がある限り何度でも奇跡の業で…」
切り裂かれた回転式機関銃を賢者の石で再度錬成とは…諦めが悪い奴だ。
「ちっ…」
しかし、錬成されたのは金属とコーネロの肉が醜く融合した腕らしき物。リバウンドだ…!
「っぎゃああああああああう…腕が…私の腕が!!」
状態から察するに、肉体の中に金属が混ざっている。そりゃあ激痛だろうな。しかしどうして…いったい…
「ああああああぁああ痛ああああ」
言葉を続けようにもコーネロがうるさいので俺は胸倉を掴んで左頬に平手撃ちを叩き込んだ。
「うっさい!」
「ぶあ!!」
最初は頭突きでもしてやろうかと思ったが、圧倒的鍛錬により全身が最早筋肉の権化とも言える俺が頭突きなどしようものならそのあまりの衝撃にコーネロの頭蓋骨は粉砕され脳味噌は爆散しちまうかもしれない。ので、ここは力加減を調節しやすい平手打ちに変更だ。
「ただのリバウンドだろうが!!ギャーギャーさわぐな!!」
「ひィィイイイ〜〜!」
「石だ!賢者の石を見せろ!!」
「ひィ…いっ石!?」
次の瞬間、コーネロの指から何かがひび割れるような音が聞こえた。指の骨…じゃないな、すると指輪に付いていた賢者の石は砕け落ちると粉のようになり風に飛ばされて消えてしまった。
「壊れ…た…。どう言う事だ!『完全な物質』であるはずの賢者の石がなぜ壊れる!?」
俺はコーネロの胸倉を掴み問いただすが、コーネロは首を横に振った。
「し、知らん。知らん!!私は何もきいてない!!」
「偽物…?」
「あああぁたすけてくれ、お願いだ、私が悪かった〜〜石がないと私は何もできん。たすけてくれェェェ〜〜〜」
くそ…ようやく見つけた賢者の石が偽物だと…!?俺は胸倉を離してコーネロを放り投げる。
「ここまで来て…やっと戻れると思ったのに…偽物…」
なんかどっと疲れたな…。…俺が座り込むと、何やら背後に気配を感じた。コーネロの奴…まだ何か企んでるな?俺ほどの圧倒的筋肉を持ってすれば背後の気配を敏感に感じ取ることくらい容易だ。この感じだと…なるほどな、リバウンドで生成された右腕の尖った棒で俺を刺し殺す算段か。懲りない奴だな…
「おい、おっさんあんたよォ…」
「はいィ!?」
俺は振り返らずに言葉を続ける。
「街の人間だますわオレ達を殺そうとするわ、しかもさんざ手間かけさせやがってそのあげくが『石は偽物でした』だぁ?」
俺は圧倒的筋肉により、座り込んだままの姿勢からの跳躍で跳び上がった。
「うわぁ!!」
俺はコーネロの目の前に着地すると、右手を高らかに掲げる。
「ざけんなよコラ!!俺の鉄鎚喰くらっとけ!!」
俺が振り下ろすは圧倒的筋肉が犇く右拳。それが脳天に直撃し、コーネロは泡を吹いてぶっ倒れた。安心しろ、手加減はした。相手が例え悪人でも殺しはしねえ。それに、コイツへの正式な裁きは軍に任せれば良いからな。
今までロゼを守る為に側を離れていたアルと合流し、今回の件を話し、俺はため息を吐いた。
「ハンパ物?」
「ああ、とんだムダ足だ。」
俺は…光沢ある黒い肌にスキンヘッドのゴリマッチョという姿になってしまった弟を見る。
「やっとおまえの身体を元に戻せるかと思ったのにな…しょうがない。また次さがすか…」
ま、クヨクヨしても仕方がない。考えを切り替えて立ち上がると、反対にロゼが座り込んでしまった。
「そんな…うそよ…だって…生き返るって言ったもの…」
「あきらめなロゼ。元から…」
俺はその場でスクワットをしながらロゼに言葉を掛ける。
「…なんて事してくれたのよ…」
ロゼから返されたのは騙していた教主を倒した事への感謝ではなく、寧ろ非難だった。まぁ、何かに当たりたい気持ちはわかるけどな…
「これからあたしは!何にすがって生きていけばいいのよ!!教えてよ!!ねえ!!」
涙を浮かべて叫ぶロゼに俺はスクワットを止める。現在ほ俺の姿勢は所謂空気椅子状態である。
「何にすがって…か、分かった。教えてやる。」
俺は上裸になり、空気椅子をやめ、その圧倒的筋肉を更に隆起させるように力強く全身を振るわせてからダブルバイセップスフロントを披露した。
「筋肉だ。歩かず走れ。負荷をかけて進め。あんたにはこれから立派になる足がついてるじゃないか」
ロゼは暫く黙ったままであったが
「スクワットから…始めようかな…」
と筋肉にすがろうとしていた。よし、これで大丈夫だな!
なぜなら…筋肉は裏切らない!
〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜
エルリック兄弟がリオールの街を去った後、街には混乱が起きていた。当然である。教主自らが己の悪行…街の住民を騙していたと高らかに告白していたのだから
「教主を出せ!俺たちをだましていたのか!!」
「開けろ!説明しろ!!」
幸い建物の入り口は教主と共に信者を騙していた者達が抑える事でなんとかなっていたが、最早時間の問題である。更に言えばエルリック兄弟が軍に通報をしているため、正式な軍隊がやってくれば鎮圧など早々になされるだろう。だが、そんな状況でも諦めんとするコーネロは未だ痛む頭を押さえながらふらふらと建物内を歩いていた。
「…くそ!!あんな小僧に私の野望を…冗談じゃないぞ。これまでどれだけの投資をしたと…」
「ほーんと、せっかくいいところまでいったのに台無しだわ」
自分しか居ない筈の室内で聞こえた声にコーネロは顔を上げた。
「久しぶりに来てみれば何この騒ぎ。困った教主様ねぇ」
言葉を発していたのは黒い服に美しいウェーブのある黒髪が特徴的な美女であった。そしてその女の近くには同じく黒い服に身を包み、合成獣の足に齧り付いている太った男が座っていた。
「あ…あんた達どういう事だ!!あんたがくれた賢者の石!壊れてしまったじゃないか!!あんなハンパ物つかませおって!!」
そう、コーネロはこの女から賢者の石を受け取っていたのだ。しかし、女の方は腹を立てるコーネロに対し冷たい視線を返すのみ。
「いやぁね。あなたみたいなのに本物渡すわけないじゃないの」
その声音からは呆れていると言った感情がよく伝わってきた。その態度にコーネロは更に腹を立てる。
「ぐ…この石を使えば国を取れると言ったではないか!!」
女は唇に人差し指を当て、斜め上を見るように少しだけ首を傾けた。
「ん〜…そんな事も言ったかしら?こっちとしてはこの地でちょっと混乱を起こしてくれるだけでよかったのよね」
コーネロは女の態度に…「自分を騙したことへの謝罪」が全く見られなかった事に、自分が信者達を騙していたことを棚に上げて怒りに身を震わせた。更に女は馬鹿にしたように言葉を続ける。
「それとも何?あなたみたいな三流が一国の主になれると本気で思ってたワケ?あはははは!!ほんっとおめでたいわぁ、あなた!」
自分の野望が挫かれたこと、騙された事、そして今の嘲笑、コーネロは拳を握り締め、歯軋りを鳴らす。
「このっ…!」
止めていた足を一歩ずつ踏み出すコーネロとは対照に、今度は太った男の方がコーネロに指を指した。
「ねぇラスト。このおっさん食べていい?食べていい?」
「だめよグラトニー。こんなの食べたらお腹こわすわよぉ…こんな三流…いえ、四流野郎なんか食べたらね」
瞬間、コーネロは歩みを走りへと変え、左拳を引き絞った。相手が女であるならば男である自分の拳を叩き込めば無事では済まない筈だと。
「ぬああああ!!どいつもこいつも私を馬鹿に…」
拳を突き出さんとしたその刹那、ラストと呼ばれた女の爪が急速に伸び、コーネロを突き刺した。
「あなた、もう、用済みよ。」
ラストは爪を引き抜き、目を閉じて溜息を吐いた。
「あーあ、せっかくここまで盛り上がったのに…また一からやり直しね。お父様に怒られちゃうわ」
伸ばした爪を元に戻し、次はどうしようかと考え目を開けるとグラトニーと呼ばれていた太った男がコーネロに齧り付いていた。
そのまま物の数秒で腕を平らげている様子を見てラストは仕方がないと言ったように声を漏らす。
「おや、食べちゃいけないったら…」
〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜
俺とアルは揺れる汽車内で逆さ片手腕立て伏せをしていた。圧倒的筋肉を維持する為のトレーニングは移動時間も欠かさない。
「1200…1201…誰ものってないねブラザー。1202…1203…」
「おかげでトレーニングがしやすいな。…1503…1504…だいたいこんな所に観光もないだろうけどな。…1505…1506…」
もうすぐ次の目的地…東の終わりの街、ユースウェル炭鉱に到着するな。
エドワードの錬金回数、未だに0
そしてロゼへの人体錬成に関する説明が不十分問題。