弾丸1発で死ぬ先生   作:戦える先生ものが読みたかった

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便利屋のお仕事

 

 ヘルメット団を撃退し、皆でアビドスへと帰る道すがら、セリカを救い出せた事を喜ぶ対策委員会の少女たちと異なり、先生は悩んでいた。脳裏に浮かぶのは、先ほど脅したヘルメット団の少女たちの怯えた顔。アビドスへの襲撃をやめさせる為とはいえ、あそこまで脅す必要はあったのだろうかと考えながら、先生は生徒たちの後ろをついて行く。黙りがちな先生を気にかけるようにセリカは声をかけた。

 

「ねえ、アンタ……じゃなくて先生! さっきから黙りがちだけどなんか気にしてるわけ?」

「ん? ああ、いやさっきのやり方で合ってたのかと思ってよ。生徒に手を出したくねえってのはあくまで俺のわがままだ。ここキヴォトスでは銃弾すら大した怪我にならねえ以上、ああやって脅すより1発ぶん殴った方がアイツらを怖がらせなくて済んだんじゃねえかって思って……っと、誘拐されたセリカに言うことじゃなかったな。すまねえ」

 

 言葉を切り、笑いかけた先生だが、セリカからの反応は鈍い。やはり自分に危害を加えた相手を気遣っているというのは言葉に出さない方が良かったかと先生が考えていると、顔を上げたセリカは勢いよく言葉を放った。

 

「そんな事はどうでもいいわよ! 先生が身体を張って助けてくれたわけだし……私が気にしてるのは、先生がいつまでもくだらない事に悩んでるってこと! 先生はこっちに来たばっかりなんでしょ!? だったら全部正しい事なんて出来るわけないじゃない! 今回の事で思う事があるなら次から活かせば良いだけ! それに……」

 

 セリカは捲し立てるような勢いで言葉を放った後、顔を赤くして続けた。

 

「私は、助けてくれて、嬉しかった。攫われた時、怖くて、もうみんなに会えないんじゃないかと思って……でも、先生は助けてくれた。だから、その、ありがとう……ございます」

 

 言葉を続けるにつれ、声量が小さくなっていったが、はっきりと感謝の言葉を述べるセリカ。先生は少し驚いた顔をしていたが、言葉の意味が頭に入るにつれ、口元を緩めた。そして、ポンポンとセリカの頭を軽く叩き、返答する。

 

「ああ、そうだな。これからに活かせば良いんだ。こちらこそ、セリカが無事で、良かった」

 

 セリカの顔は今や茹蛸の様に真っ赤だったが、不意に先ほどまで騒がしかった周りが静まり返っている事に気がつく。油が切れたロボットの様にぎこちない動きで辺りを見回すと、対策委員会の少女たちはニヤニヤした顔でセリカを見つめている。少女たちからのからかいを聞き、セリカが暴走するのはほんの少し先の話だった。

 

 アビドスに着き、今後について話す少女たち。先生は全く気にしていなかったが、どうやら戦闘中に行動不能にした戦車は違法品らしく、部品の流通ルートを探せばヘルメット団の裏の存在を探し出せるかもしれないかもしれないとの話だ。明日からはこの部品についても調べていこうと方針を決め、長い一日は終わりを告げるのであった。

 

 

 

 

 闇夜を蠢く影がある。敗北し、怯えながら別の拠点に着いたヘルメット団たちを待っていたのは四人の集団だった。銃弾が飛び交う中、的確な狙撃。小柄な少女からは想像もつかないほどの耐久力と、至近距離から放たれるショットガン、逃げ出そうとする団員を的確に狩るサイレンサー付きの拳銃、極め付けは鞄から取り出されたたくさんの爆弾。元より希薄なヘルメット団の戦意は、粉々に打ち砕かれた。地に臥すヘルメット団が見上げるのは、先ほどの四人の少女たち。彼女達の名は便利屋68。金さえ貰えばなんでもこなすと自負する凄腕のエージェントであった。

 

 

 

 

(そう、それこそ我が便利屋68! お金さえ貰えれば何となるのよ……! お金さえあれば……)

 

 街中を歩く少女、陸八魔アルの顔は暗かった。かの有名なカイザーコーポレーションからの大口の依頼を受けたは良いが、現金が全く手元にないのだ。その理由も確実に依頼を遂行するためにアルが有金を叩いて傭兵を大量に雇ったのが原因だった。手持ちの六百円で四人分の食事が出来る所を探してはいるが、このご時世中々見つからない。門前払いされるところも多く、便利屋のしゃちょうであるアルは頭を悩ませるのであった。

 

「アルちゃん! あったよ600円以下のメニューがあるお店!」

 

 灰色がかった白髪に大きな黒のリボンを付けた少女、浅黄ムツキは明るくアルに声をかけた。アルの幼馴染でもあるムツキは、この状況も楽しんでいる様で、笑いながら駆け寄ってくる。その声を聞き、店を探していた他の社員である伊草ハルカと鬼方カヨコもアルの周りに集まってきた。ハルカはいつもの様に暗い顔で何やらぶつぶつ呟いており、一同の頭脳派であるカヨコは、先のことを考えて頭が痛くなっているのか苦い顔だ。こうして、昨晩ヘルメット団を華麗に片付けた一行は、昨日の姿とは一転、頭を悩ませながら柴崎ラーメンへと入店するのだった。

 

 四人で一杯のラーメンを頼んだ便利屋を哀れに思ったのか、店主の好意でゆうに10人前はあるだろうラーメンが提供される。意気揚々と食べ始めた一行に隣の席の少女達が話しかけると、あっという間に彼女たちは意気投合した。ムツキとカヨコは彼女たちが今回のターゲットであるアビドス高校の面々であると気がついたが、悪戯好きのムツキの計らいにより、アルだけが気が付かないまま店を後にするのだった。

 

「なななな、なっ、何ですってー!!!?!!?!!?」

 

 ネタバラシをし、白目をむいて叫ぶアル。この顔を見たいんだよねえと言わんばかりのムツキの笑顔や戸惑っているハルカの顔を見て、カヨコの渋面はさらに渋くなるのであった。

 

 

 

 

「校舎南に15km! 大規模な集団を発見しました!」

 

 アヤネからの指摘に、顔を引き締める対策委員会の少女たち。ヘルメット団を壊滅させたばかりなのに、またもや襲いかかる者がいるのを見て、背後にいる者の執念を目の当たりにした様な気になる一行だが、このままやられっぱなしではいられない。武器を手に取り、迎撃に出撃する。

 真っ先に飛び出して行った先生を追い現場に着くと、なんと相手は先ほどラーメン屋で会った少女たちで、金で雇った傭兵と共にアビドスを襲う刺客であることを高らかに宣言してきた。先ほどの恩を忘れた様に振舞う彼女たちに怒りを燃やす一行は、交戦を開始するのであった。

 もはや慣れた様に相手の武器を破壊していく先生だが、不意に顔を険しくさせると大きく飛び退いた。一瞬前まで立っていた箇所には散弾で大きく穴が空いており、目線を向けるとこちらを睨む少女の姿がある。

 

「ああああ、アル様の邪魔をするなら死んでくださいいいいいい!!!!!」

 

 自らの言葉で興奮したのか、ショットガンを連射する勢いがさらに強まるハルカ。周りの傭兵達に当たろうがお構いなしのその様子は、先生の攻めに出る手を遅らせるほどだった。一瞬足を止めた先生だが、殺気を感じさらに飛び退く。銀髪の目つきが鋭い生徒が遠くから脚を狙っていた。そのまま止まっていれば脚を撃ち抜かれていただろう。今までとは違う練度の相手に、先生がギアを上げるか迷っていると、横合いから銃弾が敵を殴りつける。ノノミのガトリングガンから放たれる弾丸は、先日と同様に防御が薄い生徒達をバタバタと薙ぎ倒していった。勢い良く暴れるハルカのショットガンに対抗するのは、盾を構えたホシノだ。凄まじい勢の散弾を盾で受け、隙に銃弾を差し込む事で堅実にダメージを与えていく。シロコはドローンを用いて後衛を狙い、動きを撹乱しており、セリカは先日の鬱憤を晴らす様に大暴れしている。傭兵たちは見る間に数を減らしていった。

 

 ──悪寒。不意に訪れた感覚の元へ先生は目を向けた。小柄なリボンを付けた少女、ムツキがカバンを投げ込もうとしている。おそらく爆薬だろうと一瞬で判断した先生は、ハルカと撃ち合いを続けているホシノの側へ、鋼の如く鍛え上げられた脚の筋力を爆発させ、特攻。ハルカも爆弾が投げ込まれることを知らされていたのだろう。投げ込まれたカバンに合わせて下がろうとしていたが、一つの誤算が。倒れた傭兵に足を躓かせ、転倒してしまった。ホシノを抱き抱えた先生だが、転んだハルカを見ると更に加速。転倒していた少女ごとハルカを掬い上げると、急いで飛び退いた。

 

 凄まじい轟音が当たりに響く。火薬を盛大に入れていたムツキのカバンは周りの砂を巻き込み、爆発した。かろうじて巻き込まれずに済んだ先生だが、腕の中でモゾモゾと動く感触に気付き、視線を向ける。ダラリと力を抜いているホシノと気絶している様子の傭兵の少女が見える。そして、戸惑っている様子のハルカと目が合った。追撃が無い事を確認すると、先生は三人を地面に下ろす。飛びすさるハルカだが、手に持ったショットガンを撃つ様子は無い。言葉を詰まらせながら、先生に話しかけた。

 

「ど、どどどどうして、貴方たちと敵対してる私みたいなゴミクズを助けたんですか……?」

「おう、……正直なところ何にも考えてなかった。結構ヤバそうだと思って無意識だったぜ。怪我、ねえか?」

「えっ、あっ、は、はい。だ、大丈夫ですぅ……その、ありがとうございました……」

「ああ、気にすんな……とは言ってもアレだよな。そうだ! お前の名前を教えてくれねえか?」

 

 自分なんかの名前をと卑下する彼女に何度か尋ねた先生は、彼女の名前が伊草ハルカである事を知った。そのままアビドスを襲うのを辞めてくれないかと尋ねるも、彼女は社長の方針だからと譲る事はなく、だが申し訳なさそうに俯いている。言葉に詰まった一行だったが、砂埃の向こうから声が響くのを耳にするのであった。

 

「ハルカ! 一旦引くわよ! 思っていたより数倍手強いわ! 返事しなさい!」

「は、はい! 分かりました!」

 

 叫び返すハルカは、先生たちに顔を向ける。ペコリとお辞儀をして砂埃の向こうに駆けていく姿を見つめる先生は、隣で同様に見ていたホシノに声をかけた。

 

「良かったのか? 逃しちまって」

「まあ、誰も怪我なかったし良いんじゃない? おじさんも今日は疲れたよ〜」

 

 伸びをするホシノを先生は見つめる。その本心を確かめるかの様に。その視線に気がついたホシノは、にへらと笑いながら言葉を続けた。

 

「正直、捕まえて裏を吐かせようかとも思ったけど、先生は多分やりたがらないでしょ? だから、これで良いんだと思うよ〜」

「……頼りねえ先生で済まねえな」

 

 先生の言葉に、ホシノは首を横に振る。先生はどの生徒にも優しいのは、先日のヘルメット団の一件からも分かっている事だったからだ。生徒のためを想う先生など、大人を信用していないホシノからすると眉唾ものだったが、この数日間の動きを見れば、そう努めようとしているのは感じられた。未だに信用する事はできないが、先生の意を汲むのは今後の事を考えると悪くない。そう思いながらホシノは、砂埃が晴れ、こちらへ向かってくるシロコ達を見ながら思考するのであった。

 

 

 

 

「ああ、良かったわハルカ! 怪我はないわね?」

「はっ、はいアル様! 私は大丈夫です……」

「ごめんね〜ハルカちゃん。ハルカちゃんが巻き込まれそうなところに落としちゃって……」

「いっ、いえ! ムツキ室長は悪くないです!!! 悪いのは転んでしまった何も役に立たない蛆虫以下の私のせいですので……」

「はいはい、そこまで。それでハルカ、先生と話したんでしょ? どうだった?」

 

 会話を切り上げ、先生の印象を聞くカヨコ。カヨコの言葉を受け、ハルカは言葉をつっかえながらも辿々しく印象を語るのだった。敵である自分を助け、背後から撃つことも無く解放してくれたと。それを聞き、社長のアルは内心絶叫するのだった。

 

(なんか凄く良い人じゃない〜!!!!! ただでさえやりにくいのにもっとやりにくくなっちゃったじゃないのよ〜〜!!!!!)

 

 便利屋68、彼女たちと先生の顔合わせは、アルの更なる苦悩を生む事になったのだった。

 

 




感想で地の文がめちゃくちゃだとのご指摘を頂き、改めて読み返してみましたが確かにぐちゃぐちゃでした…とりあえず1話と2話は少し変更してみたのですが、おそらくまたまだおかしな箇所はあるかと思われます。もし、今後も変だと思われた箇所などがございましたらご指摘頂けると嬉しいです。それと重ねて、もしよろしかったらで構いませんので、評価や感想を頂けると幸いです。至らぬ点は多々ありますが、今後ともよろしくお願いします。
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