弾丸1発で死ぬ先生   作:戦える先生ものが読みたかった

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ミレニアムへの学園訪問①

 

「先生、こちらです!」

「おおユウカ! 先日ぶりだな。今日はよろしく頼むぜ」

 

 早瀬ユウカからの挨拶を受け、先生も挨拶を交わす。本日は三大学園の一つ、ミレニアムサイエンススクールへの会談の日だ。アロナにも手伝ってもらい、D.Uから電車を乗り継ぎ、たどり着いた先生は学園を見上げる。先日訪れたトリニティもそうだが、マンモス校なだけあり何もかもが大きい。先生は改めてキヴォトスの規模の大きさを再確認するのであった。

 

「先生、一つ報告があります。本来ならば、ミレニアムの生徒会長である調月リオとお会いして頂くつもりだったのですが、本日はどうにも都合が付かない様でして……申し訳ないのですが先生にお会いしたいという部活をいくつか紹介させて貰えないでしょうか?」

「おう、予定があるなら仕方ねえ。あくまで今日は挨拶の予定だったからな。案内頼むぜ、ユウカ」

「はい! では、こちらからお願いします」

 

 

 ユウカに連れられて校内を巡る先生であったが、先日訪れたトリニティとはだいぶ様子が異なっていると肌で感じた。トリニティの生徒はどこかよそよそしい者が多い様な印象であったが、ミレニアムの生徒たちは好奇心旺盛なためか、気軽に話しかけてくる。もちろん、セミナー所属のユウカが慕われている事もあるだろう。冷酷な算術使いとも揶揄される彼女だが、その懐は深く、皆から頼りにされている一面が垣間見える。目的地に着くまで、まだまだ時間がかかりそうだった。

 

 野球部で代打バッターを頼まれ、場外まで吹き飛ばすようなホームランを打ちユウカに呆れられたり、トレーニング部の乙花スミレと会うなり、互いに無言で熱い握手を交わしたりとあったが、遂に最初の目的地に到着する。ミレニアムの中でもハードウェアを中心に取り扱うエンジニア部だ。

 

 ユウカがエンジニア部のドアを開け、先生の訪問を告げようとしたがドアの向こうが何やら騒がしい。嫌な予感がしたので耳を澄ませてみると、何やらドタバタと動き回るような音がする。いつもの如く、製造した物で騒ぎを起こしているのだろうと、ユウカは怒りながら扉を開けた。

 

「こらっ! 今日は先生が来るって言ってたでしょ! いつものようにドタバタしてないで……」

「あわわ〜! 止まって! 止まってくださ〜い!!」

 

 ユウカの声を掻き消すような大声を聞いた途端、先生はユウカを片手に抱え跳躍する。1秒前までユウカが居た箇所には大量の弾丸が通過していた。先生はユウカを抱き抱えたまま、ドアの向こうの様子を伺う。その目線には険しさがあり、戦闘状態への移行を表していた。

 

 扉の中の部室では、3人の女生徒が足の生えた洗濯機(?)達と撃ち合いをしており、その余波で扉の付近まで弾丸が飛んできた様だった。

 

(なんだこれは……)

 

 今まで多くの敵と戦ってきた先生だが、足の生えた洗濯機との戦いは経験しておらず、少々フリーズする事となった。ユウカも同様に中を見たらしく、ため息を吐いた。

 

「先生、今洗濯機相手に撃っているのがエンジニア部の3人です……彼女たちは腕は良いんですが作った物がよく暴走することがあるので、今回もおそらくそれだと思います。……あとそろそろ下ろしてください」

「あ、ああ……すまねえ。ちょっと現状が把握できなくてな……キヴォトスってのはこんなのもアリなんだな」

「ここ以外では多分ないですけどね……それで先生、もうすぐ終わるでしょうから飛び出して行ったりしないでくださいね」

 

 既に脚に力を溜めていた先生は、図星を突かれ、黙り込む。ユウカから釘を刺されていなければ1秒後には飛び出して行っていただろう。わずかな期間で先生の性格を把握しつつあるユウカは、先生の向こう見ずな行動を阻止できた事で安堵するのであった。

 

 撃ち合いも終わりに近づき、残り1台まで数を減らした洗濯機だが、突如を撃ち合いを止め、外へと向かう扉へ走ってきた。機械の暴走か、はたまた自己保存のプログラムが組み込まれているのか、定かではないが部屋の外、つまりこちらへ向かってきた。前に出ようとする先生を押し留め、ユウカは先生へと自らの力を示すのであった。

 

「先生、見ていてください。キヴォトスでの生徒はこう言った事も出来るんです」

 

 ユウカは精神を集中させ、自分を包むように多角的なシールドを貼る。先生もいざとなったら再び自分が飛び抱えるつもりで集中していたので、目の前で起こったことに瞠目した。洗濯機から放たれた弾丸を瞬時に計算し、万が一にも先生に当たらないように角度を付けて受け流す。そして愛用のサブマシンガンを2丁構え、弾丸を射出。最適な角度で放たれた弾丸は狙いを過たず洗濯機の稼働部を破壊し、沈黙させる。かくして、エンジニア部の騒ぎは収束したのであった。

 

 

「だ〜か〜ら〜! いつも言ってるじゃない! 思いつきで家電に武器を足したり自走させたりしちゃダメだって! 誰も怪我しなかったからよかったものの……!」

「す、すまないユウカ……つい洗濯機の改造に夢中になってしまって……先生が来ることをすっかり忘れていたよ」

「忘れていたよ……じゃないわよ! 全くいつもいつもアンタ達は……!」

 

 ユウカが気炎を上げて怒っているのを眺めながら、先生は破壊された洗濯機へと向かう。マジマジと見てみると、洗濯機部分は普通だが自走できるように脚が二本付いており、洗濯機の脇には銃器が付いている。こんな奇抜なものは初めて見たと、先生が感心していると、叱り終わったのか、ユウカと先ほどの三人と共に先生の元へ向かってきた。三人の方を向き、先生が挨拶を行う。

 

「ドタバタしてたが初めましてだな。俺は大加美という。コイツらは君たちが作ったのか?」

「初めまして先生、私はウタハ。エンジニア部の部長を務めてる。迷惑をかけたようで申し訳ない」

「いや、誰も怪我してねえなら別に構わねえよ。走る洗濯機なんて初めて見たしな!」

 

 先生が洗濯機に付いて言及すると、しょんぼりしていた三人が目を輝かせ始める。自分たちが作った物に興味を持ってもらったので嬉しいようだ。

 

「そうだろう先生! このキヴォトスにおいてすら、走る洗濯機は未だに見たことがない物だ! 見てくれ! 二本足で走れるように予算を注ぎ込んだんだ」

「防水……防弾性能はもちろん、Bluetooth機能もバッチリ付けてます」

「そうなんです! ヴェリタスにも協力してもらって敵を倒すためのプログラムもしっかり組み込んでるんですよ!」

 

 ウタハに続き、ショートパンツに編みタイツを履いた生徒と、自らの谷間にネクタイを通した奇抜な格好をした生徒が続く。どうもエンジニア部は作った物を紹介したくて仕方ないらしい。それを聞いたユウカはまた青筋を立てる。

 

「どう考えても洗濯機には要らない機能でしょ! 洗濯機に要らない機能ばっかり付ける必要はどこにあるの?!」

「全く……付ける理由なんて一つしか無いだろう」

 

 ウタハがそう言った後、三人は口を合わせて答える。

 

「付けた方がカッコよかったから!」

「アンタたちは〜!!!」

「ワッハハハハ!!! 付けたかったから付けたか! 確かにそうだな!!」

 

 ユウカは怒り、先生は爆笑しながらエンジニア部の回答を聞く。ミレニアムの賢いバカ達こと、エンジニア部とのファーストコンタクトはここに終わったのだった。

 

「改めまして私はウタハ。隣の二人はヒビキとコトリだ」

「初めまして……先生、私はヒビキ」

「初めまして! 私はコトリです!」

「おう初めまして! これからよろしくな!」

 

 再び挨拶を交わした一向は、緩い雰囲気の中、先生はエンジニア部に要件を聞く。

 

「それで、だ。君たちは俺に会いたいと聞いていたが……何か問題でもあんのかい?」

「いや、特に問題があるわけでも無いんだ。今回会いたかった理由はただ一つ! 先生、パワードスーツに興味は無いかい?」

「パワードスーツ?」

「そう、先生はキヴォトス外から来られたとユウカから聞いてね、弾丸1発で致命傷になり得るだろう? だから、そうやすやすと弾丸を通さず、パワーを補助するような物があったら便利じゃないかと思ってね。それで、どうだい先生?」

 

 ウタハが代表して要件を話すと、先生は嬉しそうに微笑む。着任したばかりなのに自分を気遣ってくれた生徒がいる。その想いに多大な慶びを感じながら、回答する。

 

「お前達は優しいな、ありがとう。気持ちは非常に嬉しい……だが、今回は遠慮させてもらうぜ」

「どうしてだい、先生? お代も要らないし、性能もすごい物を仕上げさせてもらうよ?」

「Bluetoothも……付ける」

「銃器なんかもとんでもないのを付けますよ!」

 

 エンジニア部の三人が口々に言うが、先生は首を横に振り、続ける。

 

「さっき会ったばっかりだが、お前達の腕を疑ってるわけじゃねえ。ただ、パワードスーツを着るとどうしても初動が遅くなるだろう? 今の身体は俺なりに素早く動けるように仕上げてあってな……いざという時は誰よりも早く駆け出せるようにしてえんだ」

 

「それは……生徒を助けるためですか……?」

 

 ユウカが声を絞って尋ねる。先生は我が意を得たりと言わんばかりに大きく頷いた。この人はどうしてここまでしてくれるのだろう。ユウカは胸の思いを抑えきれず尋ねた。どうして先生はキヴォトスに来たばかりなのにそこまでしてくれるんですか、と。先生は胸を張りながらその疑問に答える。

 

「俺は、先生だからだ。先生が生徒を守るのは当然だ。大人の責任でもあるし、何より俺がお前達を守りてえからだ。それだけだよ」

 

 ──胸を抑える

 

 この人は、バカだ。キヴォトスの人が並大抵のことでは傷つかない事を知っていて、だけども皆を守ろうとしている。とんでもない大バカだ。でも、だからこそ真っ直ぐだ。先生は、生徒を守るためなら喜んで鉄火場の中へ飛び出していくだろう。その事を確信してしまった。ユウカはそう思い、そして決意した。この人の力となろう。先生が飛び出して行っても守れるように、傍らにいて支えてあげよう。先生の理想を叶えつつ、先生自身も守れるようにと。傍らで聞いていたエンジニア部も、ユウカほど強くは無いが似た思いを抱いたのだった。

 

 

「おう! じゃあ俺たちは別の部活んとこに行ってくるからまた今度な! 浪漫は大事だけど気をつけるんだぞ!」

 

 先生は手を振りながら離れていく。ウタハ達も手を振り、先生が見えなくなるまで離れていくのを見つめていた。先生がすっかり見えなくなると無口気味なヒビキがポツンと呟いた。

 

「すごい人が……来たね」

「ああ、肉体だけではなく心まで大きい人だった」

 

 ウタハがヒビキの言葉に続くと、コトリも感じ入った様に話す。

 

「先生って、正直このキヴォトスに必要なのかと思ってました……勉強はBDで出来るし、どういった事をしてくれるんだろうと。でも、これが“先生”なんですね」

「ああ、そうみたいだ。では、諸君、分かっているな」

 

 はい、とウタハの言葉に二人が答える。やるべきことはシンプルだ。パワードスーツを創る………………。先生は必要無いと言っていたがそれはあくまで先ほどまで想定していたパワードスーツだ。あの鍛え抜かれた肉体の加速に負けない様なパワードスーツであれば、先生も喜んで着るだろう。

 そうすれば先生の理想の一助にもなるはずだと、三人は言葉を交わさずとも理解していた。そして、何より楽しそうではないか! エンジニア部の方向性にも一致しているし、挑戦のし甲斐もたっぷりある。今日は時間がなかったが、先生のスペックを測らせてもらい、最高な物を仕上げよう。エンジニア部の三人は良い目標が出来たと思い、早速それぞれの作業を始めるのであった。

 

 

「先生、この前連絡した時にも話しましたが、私もシャーレに参加させてもらっても良いですか?」

「おう! もちろん良いに決まってるぜ! ただ、ユウカはセミナー……? っていう大変な立場なんだろ? 大丈夫なのか?」

「はい! 大丈夫ですので安心してください! 先生は事務作業が苦手そうですし、時間を見つけて手伝ってあげますよ」

 

 そいつは心強いなと答える先生を横目に見ながら、ユウカは先ほどの決意を新たにする。この人の手助けがしたいと、素直な感情でそう想った。これは計算ではなく、ユウカ自身の感情だ。出会ったばかりで入れ込みすぎだと、頭の片隅によぎったが関係ない。彼が生徒達を手助けしてくれる様に、私たちも彼を手伝おう。その仲間を増える様にと、ユウカは次なる部活へ先生を案内するのであった。

 

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