クソ親父殿と壮絶な喧嘩をして、はや数年――。
ここ中国で修行初めて、ようやく落ち着きを取り戻しつつの日々を送っている。
どうも、みなさん初めまして。早乙女 天馬さんです。いちおう、武者修行と称してニート生活をしております。
今日も今日とて、朝にゴミ出しと近くのコンビニで買った弁当を食べ、精神修行で二度寝を送る日々を送っています。うん、こう別に人にいまの俺の状況を伝えるとむなしくなるな。なんだこのごく潰しはとか、働けNEETとか、頭に響くような怒号が聞こえてしまう。
まぁ、修行で鍛えられた鋼の精神で気にはしませんよ。そう俺にはこれがあるのだから――。
そうやって俺は机に置かれている、空色の封筒に目線を写す。一か月に一回の俺の癒しの時間。封筒の宛名には早乙女 天馬(NEEさん)と書かれている、上級者向けの弄りをされているが、送り主は俺の妹 早乙女 乱馬だ。
俺が武のさらなる頂きを目指すのに、いまの環境じゃダメだという理由で親父殿と喧嘩していらい、直で会ってはいない。だから、俺の記憶の乱馬はまだまだよちよち歩きと拙い喋りの子供のままで完結している。けれども、手紙の内容を読めばいまの乱馬は活発で元気っ娘の、もうめちゃむちゃ可愛いい子に育っていると捉えるほどの印象を受けてしまう。
乱馬の成長はこの手紙を読めばわかる。小学時代、中学時代ときていまは高校生時代だ。花の青春、乱馬にスカートが似合う素晴らしい時代です。うん、いいね! 写真くれないかなぁ……。
おっと、少し脱線してしまいましたわ。
「乱馬はもう高校一年か。乱馬なら制服はなんでも似合うだろうなぁ。うふふ」
気持ち悪いと思わないでほしいです。乱馬からの手紙で、久しぶりに気分が高揚してしまうから仕方ないのです。
よし、では開封の儀をを行うッ!!! この開封の儀とは、某ようつべBerの人たちのように、高度の編集技術でやるアレではない。
そう、まずは!
「すぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううう!!!!!!!!」
匂いを嗅ぐのが第一歩です。
最初は気持ち悪いと思ったが、万引き常習犯の思考なのか何回かやればそんなの思わんくなっちまったモンスターになった。けれども、匂いは大事だ。
まず、香水の匂いがしたらヤバイ。たしかに女性なら香水などするのはいいことだが、香水をつける理由で一番多いのは他者を意識しているという証拠となる。もし、もし乱馬ちゃんに気になるような奴、もとい男、もといチンくそ野郎がいたら俺は思わず、よろしくおねがいしまぁすという言葉とともにミサイルをチンくそ野郎の頭上に降らせる自信がある。
匂いを嗅いだが、うんお日様の匂いがするぅ。紙の独特のような匂いだが、多少お日様のような爽やかな匂いを探知。これは、乱馬の匂い。乱馬ちゃんが俺のために時間をかけて手紙を書いて、それを封筒にしまうときについた乱馬ちゃんの匂いっ!!!
目をカッ!と見開かせ、封筒を思い切り開ける。勢いをつけ、乱馬ちゃんを受け入れる準備を整えたのだ(手紙のことです)。
中身も勢いよく開く。そこには――――
「『パパだよぉ~ん(玄馬)』」
とりあえず、早乙女 玄馬を近いうち殺す予定をたてた俺である。
「んで、親父殿から手紙なんて久しぶりだな」
部屋はあれたが、とりあえず平常心を取り戻した。部屋中に五寸釘が乱雑に刺された藁人形、黒魔術を思い浮かぶ血文字など少々エキセントリックな部屋となり、もう敷金はかえってこないだろうが関係ない。
親父殿からの手紙は言葉通り、本当に久しぶりなのだ。最後は乱馬の学費に関して相談したことぐらいだから、1年半ぐらい前か?
ということは、今回も乱馬に関係あることかと思い、先ほどの手紙を再度読み込み始める。
「なになに、『天馬よ、久方ぶりだな。お前の最高の親父、玄馬だ。今回乱馬には手紙を遠慮してもらった。私たちのこれからについて話をしたくてな』」
「これからって、また引っ越しするのか? 北斎かやつは」
「『まず、私が目指す無差別格闘早乙女流について。昨今の近代化、それに伴い武は現状飽和状態になっておる。スポーツと武、さらに活人拳と殺人拳など多く存在するなか、多種多様な武術ができたからこそ制御ができなくなっておる。我らが目指す武の頂きは、時代が進むにつれ険しく厳しい道のりになるのは当たり前。だからこそ、私が師から受け継いだ無差別格闘流が時代に置いて行かれぬよう、さらに先に進めるよう日々研鑽するのは、これすなわち格闘家の宿命。これすなわち、我ら親子が目指す頂きに一歩ずつ亀のように進む進歩』」
「……武の頂き、か」
ふと、天井を見上げてしまう。頂きというワードで見上げてしまうのは何とも言えないけれども、親父殿の伝えたいことはよくわかる。慣れないことなのに、俺に包み確殺思いをぶつけるのは、親父らしいといえばらしい。
お互い同じ道ながら、違えてしまった。けれどもいつかは道はまた一つに戻る。人生とは、武とはといまでも考える。
それと同時に、最高の親父と書かれた部分を黒く塗りつぶす作業。ごめん、もういまあんたに対して殺すか剥ぐかしか考えられないんだわ。
作業が終わり、再度手紙を読む。
「んで、こんな長ったらしいんだ。何か重要なことをそれとなくしようとしているんじゃねぇの、親父殿」
「『――と、長ったらしく語ったもんだが、これを乱馬にも同じように伝えたら『なげ』と言われました。たしかに、自分でも思うけど長いなぁと思い、率直に伝えようと思います。』なら書くなよ!」
感情のまま手紙を破ろうとしたが、まだ続きがあるみたいなのと俺の再度光る鋼の精神のおかげで破る寸前で手を緩める。
凄い嫌な予感はしつ、手紙を読む。こんだけ前置きあるのは、親父の「ワシ、やっちゃいました」という隠語だ。今度は何やらかした……んだ……。
「『えぇ、天馬に許嫁ができました。やったね息子よ!!』」
「……………えっ」
「『あと、乱馬が男になった。どうしよ』」
「うぉあおあぁcsjかああq!?」
メガトン級のことを平気に書いた親父殿。脳が追い付けず、部屋中をバンビのように駆け巡る俺。
そう、これは俺が武の頂を愚直に駆け上る、それだけではない話である。