タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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1-3-4 「告白券に書けばいい。対戦相手の名前をさ。」

 ハムは刹那のことが大好きだ。刹那がやいのやいのと煙に巻いてもしつこく付きまとってくる。そんな奴ではあるが、周りの目を気にしないわけでもない。だから、昼休みに俺らの教室に突撃してきたり、登下校に無理やりかぶせてきたりとかはしない。そんなことをしたら刹那に嫌われるってことがわかっているからだ。あくまでも奴は、偶然刹那に出会ったときにしか付きまとわないのだ。もっとも、その付きまとい行為も、刹那が生徒会の備品を運んでいれば率先して手伝う紳士のふるまいをみせる一方、刹那が明らかにただ移動してるだけって時に偶然出会ってしまうと、執拗に話しかけに行くナンパ男のようにもなる。だから刹那も、鬱陶しい男だと思ってはいるが、嫌いな男だとは思っていない。ハムも刹那から嫌われているとは感じていないから、はたから見ても彼はいつも幸せそうだ。うまそうに飯も食うし。ただ、そんな彼が唯一不愉快さを隠さないとき・・・それは、刹那からの愛を一身に受ける蘇芳会長と対峙した時だ。テスト前に会長と刹那が部室に来たときは、刹那の意識は我々に向けられており、会長ラブの気持ちは抑えられていた。公私混同しないよう、そこらへんはわきまえている。ただし今は違う。完全なプライベートで会長に会っているのだから、もう愛が止まらない。だからこそ、ハムにとっては面白くない。敵愾心がふつふつとわきあがるわけだ。別に会長はハムになにか悪いことをしたわけではない(ようにみえる)。会長にとっては、とばっちりもいいところだろう。

 

「誑かすだなんて、相変わらずハムさんは私に当たりきついですね。刹那からも言ってあげてくださいよ。」

「そうやって少年を自己の目的のために利用する姿が気に入らないのだ!」

「いや、貴方がそんな態度をとらなければ、そもそもこんなセリフは吐かなかったですよ?」

「ハム、まあ落ち着いて・・・」

 

 部長がどうどうとハムをなだめるが、刹那は会長の横に並び立ち、意気揚々とハムに対峙する。

 

「まったく、会長にそんなに敵意を向ける意味が分かりません。会長があなたに何かしましたか?」

 

 違うんだ刹那、これはハムの嫉妬心が歪んで現れただけなんだ。当事者だから、事態を客観視できないのか?ハムは数秒押し黙ったのち、横にいた部長に顔を向けた。

 

「・・・さっきの話と突き合わせると、次に私たちがぶつかる相手は蘇芳結衣のチームだな?」

「へ?ああうん、本当はもっと後にばらすつもりだったんだけど・・・。」

「それがわかれば十分だ。」

 

 ハムはにやりと笑ったのち、再び会長をにらみつけて、指をさした。

 

「蘇芳結衣!貴様を初戦で叩き潰してやる!宮永と一緒にな!逃げるなよ?」

「なるほど、龍華とハムさんはタッグを組んでいるのですね・・・。本当は2戦目に出る予定でしたが――――――」

 

 そういって会長は後ろに立っていたチームメイトに目配せした。3人とも頷いたことを確認し、

 

「いいでしょう。売られた喧嘩は買ってあげましょう。ではまた後程。」

 

 にっこり笑顔を振りまいて、会長たちはその場を後にした。

 

「か、会長も遼君たちと同じゲーム大会に出ていたなんて・・・」

「そもそもあの会長ってゲームやるんだ。しかも大会に出て、かなり勝ち上がるレベルだっただなんて。―――――よくいままで知られなかったわね?」

 

 怜の言うことももっともだ。あの美貌でゲーム大会に出て勝ち上がっているとなると、ネットで話題になっていてもおかしくなさそうだったのに、特にそういうのはなかった。

 

「写真撮影NG出してたからね。」

「ま、それなら納得ですね。ぼくらまだ高校生だし、人によってはゲーム大会で顔が割れるってのを望まない人もいるでしょう。」

 

 腕組みして、手を顎に当てて事態を静観していた静乃が口を開いた。

 

「で、刹那どうする?会長の雄姿を見に行く?多分もう少しで始まるんでしょ?」

「ああ。休憩後すぐの試合だな。」

「行きましょう!今すぐに!――――――と言いたいですが、静乃、怜、いいのですか?」

「いいわよもちろん。私も、あんな啖呵の切り方した人たちが、どんな結果になるのか見てみたいわ。」

「ま、大した時間にならなさそうだしいいよ。ついでに終わったらゲーセンで遊んでから次の店に行こっか。」

「お、盛り上がってきたね~~!とりま、3人はラウンドワンに向かっててよ。うちらは、対戦相手が決まってしまったことに対する対策をちょっと考えるからさ。」

 

 部長にそう言われ、怜と静乃、刹那の3人はその場を後にした。視界から消えたのち、部長も歩き出し、俺らもそれに追随した。

 

 

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「にしても栞ちゃん、マジで存在を隠してたね。」

「陰のものにとっては、あの空間はまぶしすぎました。なんですか会長の連れのメンバー。顔面偏差値半端なかったですよ???」

 

 確かに、連れの男2人と女子1人はイケメンと美少女だった。男子の片方は、ダウナー系陰キャに見えるが、顔立ちは整っているおかげですべてを帳消しにしていた。もう片方は体育会系の細マッチョで、とてもゲームをやるような奴には見えなかった。中性的なのが好みなら前者、スポーツマンが好きなら後者といった感じだろう。一方女子の方は、ハーフアップにした地雷系女子って感じだった。服装も童貞を殺しそうな服を着ていた。正直たまらん。

 

「あの体育会系の男は私も知らないから、たぶん高校で知り合った人だね。」

「なるほど・・・にしても、あの状況下でも何食わぬ顔でイチャイチャしてたから、相当メンタル強いですよ。あのオタクカップル。」

「へ?」

 

 俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。カップル?

 

「気づかなかったんですか?まあハムさんと会長のやり取りが目立ちすぎましたからね・・・。あの姫っぽい人、ずっと陰キャイケメンと腕組んでて、男のほうも姫をなでなでしてるし、なんなんだーって感じでした。」

「・・・部長それほんとですか???」

「本当の話だけど、ただ、それここ数週間前の話だから、たぶん浮かれてるだけだと思う。とはいえ、彼らが国広と栞ちゃんの対戦相手。正直手ごわいよ。何事にも動じないタフなメンタル持ってるから。二人の世界に入っちゃってるから。相手のミスでは絶対に勝てない。こっちが純粋な力量で上回らないと、いけない。まあ、裏を返せば、相手に動揺させることさえできれば、たやすく勝てるとは思う。これまでそんな経験がなかったものだから、その辺の対応は遅れるだろうね。」

 

 ハムじゃないが、俺も怒りがふつふつとわいてきた。俺が彼女づくりに命張ってるのに、相手はイチャイチャちゅっちゅしてるだなんて、許せねえ。逆恨みだってわかっていても、ぶち壊したくなってくるぜ!

 

「柄谷!あのカップルぶっ潰してやろうぜ!」

「ですね!遊びじゃないんだぞってことを思い知らせてやりますよ!」

「や、遊びでやってなかったから全国まで進んだんだけどね。。。」

 

 部長のつぶやきには耳も傾けず、めらめらと燃える闘志に俺は突き動かされていた。

 

 

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 だからこそ、思わぬ横槍に、俺は面食らうこととなった。ラウンドワンに戻ったとき、ふと電話が鳴っていることに気づいた。非通知設定。嫌な予感がして、電話に出ると、

 

『やあ国広君、ちょっとトイレに向かってくれないか。話したいことがあるんだ。』

 

 ここまで一切の関与をしてこなかった竜崎が、急に動き出したのだった。急いでトイレに入り、周囲に誰もいないことを確認した後、シャツの胸ポケットの中から竜崎を外に出した。

 

「次の一戦は負けられない。そうだね?」

「ああ、そうだけど・・・」

「そして、あのカップルをぶっ潰したい。その気持ちもあるね?」

「まあ・・・」

「なら話は簡単だ。――――カバンの中の、内側のポケットを見てみてほしい。」

 

 言われるがまま、俺はカバンをまさぐった。すると、何かが入っていたのがわかった。少なくとも、俺は出発前こんなものを入れた覚えはない。こんな紙切れ――――――あれ?

 

「告白券に書けばいい。対戦相手の名前をさ。」

 

 相手の名前を書けば、自分のことを好きになってくれる、恋愛サポートアイテム。なのに、竜崎はそれを本来の用途とはずれた使い方を提案してきた。

 

「え?でもこれって恋愛のサポート用だよな?」

「だからサポートしてるじゃないか。ゲーム研究部内のフラグ構築のサポートをさ。勝てばまたフラグが立つ。そのために、相手を利用すればいい。」

 

 まるで悪魔のささやきだ。なまじあの女の子がかわいいからたちが悪い。確かに告白券を使う相手は知り合い以外のほうがいい。記憶消去や封印なんてめんどくさいオプションが付いてくるからだ。とはいえ・・・

 

「ここに名前を書けば、相手は国広君にぞっこんだ。対戦に集中なんてできるわけがない。心にスキができるんだ。ならばもう、わかるだろう?勝てば本命のフラグが立ち、練習として相手の女の子と仲良くもできる。幸い、付き合ってまだ数週間なら、一線を越えている可能性は低い。さあ、書くんだ。」

 

 まるで悪魔のささやきだ。竜崎の提案は、相手の男側の気持ちを完全に無視している。だってそうだろう?こんなのNTRだ。たとえ記憶操作で俺の記憶があのカップルらからなくなっても、告白券の効果作用中は男も俺のことを認知している。だから竜崎の提案は、俺に間男になれって言っているようなもんだ。だから受け入れがたい。受け入れがたいが、勝ちたいのも事実。俺は――――――――――――――

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