タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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1-3-6 「その勘違いを、この場で矯正してあげましょう。」

「さあ!会長がよく見えるところまで行きますよ!静乃!怜!」

 

 刹那がぼくたちを置いてグイグイと群衆をかき分けて前へと進んでいった。ぼくは怜と顔を見合わせた。彼女が肩をすくめたもんだから、覚悟を決めてついていくこととした。ぼくとしては、会長が勝とうが負けようが正直どうでもいい。どっちにころんでも面白い結果になりそうだからだ。会長が勝てば、今までにないハムの面白い姿が見られそうだし、会長が負けたら刹那のハムへの態度はちょっと変わるだろう。会長ラブの心の中に入り込んだ不純物が大きくなっていくのだから。その不純物が、やがて会長ラブの刹那の心を覆いつくしてしまったら――――――うむ、やはり面白い。

 

「でも、会長ってゲームやるのね。意外だわ。」

「まあ、そうみられてもおかしくないよね。」

「何か知ってるような話しぶりじゃない。」

 

 怜が訝しげにこちらをみてきた。会長のことをよく知らない人からしてみれば、優雅に部屋で紅茶でも嗜んでそうな人にしか見えないからね。でも、ぼくは会長とそこそこ仲がいいから、実はそんなお高くとまった人ではないということをよく知っている。

 

「まあ、普通に友人だし・・・」

「そう。隠れオタってやつ?」

「もう死語だと思ってたその言葉・・・。でもまあ、それに近いっちゃ近いというか。あの人って顔面良すぎスタイル良すぎ、おまけに権力も持っているから、男女問わず憧れられている。憧れは理解とは遠い感情だってよく言うじゃん?真の意味で彼女のことを理解しているのは、あんまりいないんだ。ぼくは趣味が会長と同じだったから、偶然仲良くなったというか。そこで話を聞いていくと、暇つぶしでよくゲームはするということを知ったってわけ。」

「なるほどねぇ。ちなみにどんな趣味なの?」

「それは秘密。」

 

 ぼくがそういうと、怜はそれきり追及はしてこなかった。秘匿にされてきたことをばらすわけがないと理解したからであろう。ただまあ、こんな大会に出るほどだとは、正直ぼくも予想してなかった。こんな風に顔出ししたら、いずればれるのも時間の問題だろうに・・・。なんてことを思っていたら、司会と思しき人がマイクをもってステージに上がってきた。

 

「それではっ・・・!Aブロック2回戦、<DuOuD> 対<北山高校ゲーム研究部>の試合を始めますっ・・・!」

 

 会場がさらに盛り上がる。声援もすごい。一部アイドルコールのように野太い声も混じっているのが気になるけど・・・。

 

「このカードはなんと因縁の対決となります。前回全国大会に出場した<DuOuD>、このメンバーの一人がなんと<北山高校ゲーム研究部>として出場しているのです!チームを抜けて、一から自分のチームを作り上げて古巣と戦う・・・なんと厚い展開でしょうか!」

 

 解説役と思われる女性が興奮しながら説明を始めた。――――いや、この人すごく可愛いな。栞ちゃんも髪伸ばしてロリータ服でコーデすれば、あんな感じになりそうだな・・・。

 

「MAFUYUたんマジ天使!ふおおおおおお!!!!」

 

 厄介なオタクの声がするので視線を向けると、そこには伊藤のバカがサイリウムをもって興奮していたのがわかった。――――会長の身バレを心配していたけど、まさかこいつに知られ――――いや、こいつはマジであの解説者しか見ていない。対戦相手のほうに視線を向けていないから、気づかれないか・・・。それに、会長のほうも一応サングラスかけて身バレ防止策をとってるから、セーフっちゃセーフだけど・・・。

 

「ねえ、あれって伊藤よね?」

「ああ・・・。」

「―――――見なかったことにしましょう。あんなのと知り合いだなんて、思われたくないわ。」

「そうだね・・・。」

 

 ぼくたちは頷きあい、そっと彼の視界に入らない位置に移動した。

 

「さて、それでは、両チームから試合前に一言いただこうかと思いますっ・・・!まずは一回戦の勝者、<北山高校ゲーム研究部>から、おひとりどうぞっ・・・!」

 

 司会者は、マイクを宮永先輩に渡した。それをなんと、ハムが横取りして、会長を指さしながら宣言し始めた。

 

「私はこの場で、貴様を叩き潰すことを宣言しよう。少年を貴様にはやらん!!」

 

 彼のことを何も知らない人たちは、そのマイクパフォーマンスでさらに盛り上がった。そりゃ、はたからみたらプロレスだもんな。ただ、遼を含めた三人は、総じてみんな頭を抱えていた。そりゃあそうだ。部外者のこっちでさえ、共感性羞恥でいたたまれない。ましては、当事者の刹那は・・・。ちらりと刹那に目を向けると、「いつからあの男のものになったのですか!」とぷりぷりしていた。やっぱ可愛いわ。

 マイクが司会者のもとに戻されると、次は会長にマイクが手渡される。あんなマイクパフォーマンスをしたものだから、会長も引けなくなってしまっているだろう。ちょっと戸惑いながらも、咳ばらいを一度したのち、

 

「あの人は誰のものでもありません。その勘違いを、この場で矯正してあげましょう。」

 

 観客たちはさらに盛り上がった。ただの対戦ではない。チームを抜けた人が、古巣へと挑むこと、それに、一人の女性を巡った痴情のもつれのようなドラマ性も組み込まれたとなれば、もう盛り上がるなと言われるほうが難しい。刹那はいま、会長botとなり下がっていた。もう会長にメロメロだ。視界には会長しか入っていないだろう。

 

「こ、これはどういうことですか???Shido選手とSui選手が、ある一人を巡ってトラブっています!しかも、Shido選手は少年って・・・ええっ?DKとJKがショタを奪い合っている!?!?!?MAFUYUの大好物じゃないですか???しかも美男美女・・・・ちょっとこれで夏コミの原稿書いていいですか?」

 

 解説役のお姉さんのテンションがうなぎのぼりとなっていった。司会の人がどうどうとなだめていたが、興奮冷めやらぬという状態で素早くペンを走らせていた。やべー奴だと思って、聞こえてきたMAFUYUという名前で調べてみると――――なんと界隈では名の知れた人であることが分かった。こりゃ、会長も災難だ・・・。

 ひと悶着あった後、1回戦のメンバーが筐体の前に座った。さあいよいよ始まる。ハムが勝つのか、もしくは会長が勝つのか・・・。刹那の気持ちは、ここで何か変わるのか、最後まで見届けよう。

 

 

 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

 

 

 武士道―――もといハムは少年・・・中河刹那へぞっこんで、会長こと蘇芳結衣を目の敵としている。となると、大筋としては、ハムが会長を倒し、刹那の心に入り込むというあたりだろう。となると、私のサポート、フラグ建て対象からも、刹那を外すことが妥当といえる。当初、ハムの想いがここまでのものだとは思っていなかった。たとえ今、遼と刹那の仲を取り持ったとしても、ハムが障害になる。実態がつかめなかったからこそ、均等にフラグ建てに尽力していたけれど、もうそれは必要なさそうね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 私はそう結論付けた。これで候補は一人減った。残るは後――――――

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