タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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1-3-9 「自分の言葉で語ってくださいよ」

 MAFUYUさんの部長の解説は的を射たものだろう。普通あんなパラメータの振り方をしない限り、あの瞬殺芸はできやしない。頭ではわかっているが、そんなおそろしいほどに部長の耳ってよかったっけ・・・?という思いがあった。――――普段から部活で作曲活動してるから、絶対音感とかあるかもしれん。

 

「なあからた――」

 

 と言いかけて、柄谷の様子がおかしいことに気づいて、止まった。柄谷は神妙な顔つきで俯いていた。

 

「―――どうした?」

「え?」

「や、なんか雰囲気が――――もしかして、部長がスナイパー上手かったこと気にしてる?」

 

 柄谷はピクリと肩を揺らすと、こちらを見ずにつぶやき始めた。

 

「それちょっと思いましたけど、スナイパーの方向性が違うんで大丈夫です。あの感じだと、部長は”静”のスナイパーはできるようですね。止まった相手を止まって撃つ。ただ、私は”動”のスナイパーですから、差別化はしっかりできていると信じたい・・・ですけど・・・」

 

 柄谷の言葉はだんだんとトーンダウンし、やがて完全に沈黙してしまった。両手は膝の上でぎゅっと握りしめられていた。―――大丈夫と口では言っているが、明らかに不安がっている。その人に新たな強みが見つかっただけだから、あまり気にしなくてもいいのに、と思ってしまうのだが、こればかりはパーソナルな考え方だから、気にする人はとことん気にしてしまうだろう。アイデンティティが失われかねないのが怖いのは、理解できる。

 

「まあ、柄谷の言う”静”のスナイパーって、かなり相手もステージも選ぶからな。”動”のスナイパーができるんだったら、最初っからしてただろうし、それをしていないってことは、できないってことなんだろう。大丈夫。汎用的なスナイパーはやっぱり柄谷しかいないよ。」

 

 返事はなかった。握りこぶしもぎゅっとしたままだ。俺は小さく嘆息し、天井を見上げた。―――これは結構思い悩んでいる。中学時代から見てきたが、勉強にせよなんにせよ、こいつは結構気落ちしやすい性質なのはよくわかっている。が、ちょっと言えばすぐ立ち直るのも知っている。なのに今回はそうじゃない。―――これは次の俺らの対戦まで尾を引きかねないな。

 

「柄谷、次の試合勝てると思うか?」

 

 埒が明かないから、俺は話題を変えた。数秒彼女は沈黙、そして、

 

「それは・・・部長がもしタッグ相手なら・・・先輩も上手ですから・・・」

「てことは、お前は俺なら勝てると信じているわけだ。あってるよな?」

「それはそうですけど――――」

「俺はお前ならやってくれる。必ず勝てる。そう信じている。」

 

 柄谷の卑屈オーラに飲み込まれちゃだめだ。俺のペースに巻き込むしかない。

 

「柄谷は俺を信じているなら、柄谷の信じる俺を信じてほしい。それに、俺はお前と組むのが最強だと確信している。いつも通りやれば、そう簡単には負けないさ。てか柄谷が来る前にスナイパーしてたの見た覚えないから、スナイパーポジはやっぱ柄谷しかいないって。」

 

 俺はぽんぽんと柄谷の頭をたたいた。そのとき、握られていたこぶしはゆっくりと開かれていった。柄谷は大きく深呼吸すると、パッとこちらを向いた。

 

「そうですね・・・。私ひとりじゃ勝てなくても・・・・・・・先輩とならいけそう気が、いやいけます!」

「よし、その意気だ!ようやく元気を取り戻したな。」

「すいませんでした先輩、迷惑かけて。でも、説得するときくらい自分の言葉で語ってくださいよ。」

 

 手を口に当てて笑う柄谷を見ると、もう完全に調子は戻ってそうだなと思った。

 

「―――いやいや、違うぞ?下手な謙遜は相手の想いを傷つけかねないというかだな・・・アニキはそれを教えてくれたというか・・・。きっかけは何でもいい。他人の意見を自分の中に落とし込みさえすれば、それはもう自分の言葉になるんだってば!―――にしても、よくこんな古い作品知ってたな。流石アニオタ。」

「この作品勧めてきたのは先輩でしょ―――」

 

 と柄谷が言葉を紡ごうとすると、会場のボルテージが急に上がったのが分かった。うっかりしていた。柄谷を励ますためにモニターから目を離していた。そうして、俺らはかなり驚くこととなる。なぜなら、気づかないうちにもう試合が終わっていたからだ。

 

 

 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

 

 

 多分それなりに上手い相手だったんだろうけど、場慣れはしてないように思えた。この戦い方の敵にかち合った時の逃げ方ができていなかったから。結衣もきっと、相方に私のことは話していたんだろうけど、対応なんてできっこないよね。知らないはずだもん。このプレイングは、ゲー研作ってから――――結衣と一緒にやらなくなってからだから。ヒントをくれた栞ちゃんには感謝しかないね。それと―――

 相手を速攻で落とした私は、急ぎハムのもとに向かった。もっとも、狙撃で戦うわけじゃない。あんなに目まぐるしく動いているのを狙い撃てるほど、練度は高くないから。だから、ハムのアシスト、結衣の足を少しでも止められれば・・・

 戦地につくころには、両者のHPはかなり削られていた。それも、ハムが残り3割、結衣が5割といったところ。このままいくと、間違いなくハムはやられる。だけど、きっちり5分耐えきってくれてよかった。結衣の強さは機動力と判断力にある。相手の攻撃をしっかり躱して、確実に隙を突くためにはその2つの能力が飛びぬけていないとできない。だから、その2つを抑えるんだ。私が勝つことが目的じゃない。ハムを勝たせることが目的なんだ。

 私はハムに合図を出すと、後退しながら結衣をさばきはじめた。これは仲間内で決めていた合図だ。結衣も近距離タイプがゆえに、ハムとの距離を詰めざるを得ない。私は、結衣とハムが通る可能性が高い通路に”仕込み”をしていく。そうして準備が整ったのち、ビルの上に上った。二人の戦いがよく見える。そして、二人が自分が上ったビルを素通りしたのを見届けると、飛び降りて真後ろから銃を乱射する。私を倒して下がるか、横のビル群に隠れ、二人を対面に迎え撃つだろう。結衣は私がプレイングを変えていることをまだ知らない。試合が終わった後のリプレイを見るまではわからない。だからこそ、私が中距離プレイングだと勘違いしているはず。そこが付け入る隙なんだ。

 結衣は私に気づくと、すぐに横道に逸れ始めた。―――そうだよね、挟み撃ちに真っ向勝負しないのが普通は最適解と思うよね。けれど、それが悪手なんだ。結衣がそれた横道には、私が仕込んだ()()()()がある。結衣が横道に入った瞬間、固定砲台の発射を行った。ただ、こんなのに引っかかるほど結衣は間抜けじゃない。結衣はおそらく、上に躱して先に進むだろう。だからこそ、そこには()()がしっかり仕掛けてある。ダメージは求めていない。ヒットストップが起こるだけでいい。ただもちろん、結衣はそれすらも躱すかもしれない。けれど、()()()()()()()()()()()()、と、脳のリソースをそちらに割くことができたら成功だ。国広のプレイングスタイルがないと、こんなこと思いつかなかったな。

 ハムが結衣の入った横道に入る。上手くいって。もしも作戦がうまくはまれば、きっとさすがの結衣も飽和するはず。そうなれば――――

 

 

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「1試合目はスピーディな試合運びとなりました!勝者は<北山高校ゲーム研究部>ですっ・・・!」

「Sui選手とShido選手は画面映えする激しい戦いを繰り広げていましたね。その裏ではFATE選手が詰将棋のような動きをしていました。FATE選手が平和選手の動きをしっかり捉えて狙撃し、かつSui選手の動きを読んでトラップを仕掛けていなければ、成し得なかった勝利でしょう。―――Norris選手とCarat選手のプレイングのいいとこどりしたプレイングですね。―――<DuOuD>から脱したことで、一皮むけたんでしょうね。」

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