タマゴのカラを割らないでっ! ―彼女づくりのサポートはしてくれるのにできなかったら皆殺しってマジ?―   作:すうどんたくろう

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第2部 同意?不同意?洗脳恋愛
2-1-1 「生徒会長様が悪魔のささやきしてるんだけど???」


  6/29(月)

 

 土日のFLD大会の後、しっかりとした反省会はできていなかった。ということで、今日の部活は大まじめに反省会をしようと部長が声掛けしたことで、皆部室に集まっていた。

 

「んじゃ、大会の反省と全道大会に向けての計画立てよっかあ。」

 

 ゲーム研究会の部長こと宮永龍華先輩はホワイトボードにいつものように題目を書き始めた。飄々としているものの、地頭が非常によく、ある程度のことは何でもできてしまうのが凄いところだ。正直先日のFLDの大会がなければ、その凄さを知らないまま過ごしていただろう。

 

「正直、蘇芳結衣のことは気に食わないが、見習うべきところがあったのも事実。自分の弱みを認めざるを得ないな。」

 

 金髪の天パ野郎、武士道《たけしどう》は腕組みしてそう呟いた。なお、彼のことは誰も本名で呼ばず、皆、愛称である”ハム”と呼んでいる。本人もそのことについてはなにも気にしていない。

 

「あれは私にとってもいい経験でした。狙撃のスタンスを考え直さないとですね。」

 

 ミディアムボブの少女、柄谷栞も大きく頷いた。一見おとなしい文学少女に見えるが、中身はただのゲーマーである。俺の中学の後輩だ。先日の大会では、居場所がないと自信喪失していたが、なんとか持ち直して見事勝利をもぎ取ってくれた。

 

「2戦目勝てたのは、実際奇跡みたいなもんだと思いますしね。部長の初見殺しが通じなかったら1セット目取れてなかったでしょうし、3セット目にもつれ込んだら、会長がすぐ対策とるでしょうから、勝てたか怪しいですよ。会長がマジで強すぎました。」

「それね。実際準決勝は2戦目ほど苦戦しなかったし、あの時は黙ってたけど、結衣のチームがマジで鬼門だったんだよねー。」

「部長と会長が組んでるチームに勝てる気がしませんね・・・」

「ま、なんで、今日の反省にはですね・・・特別ゲストを呼んでいるのですよ!」

 

 部長が高らかに叫ぶと、ちょうどタイミングよく扉が開いて――――

 

「・・・え?どうしたのみんな、ちょっとびっくりしちゃった。」

 

 我らがゲーム研究部顧問、梓先生がパソコンと書類を抱えてそこに立っていた。

 

「・・・部長さん、特別ゲストって梓先生のことですか?」

「・・・まさか、梓ちゃんがお飾り顧問だってこと忘れたの?」

「ちょっと宮永さん!?事実だとしても言わない方がいいこともあるよ!!!」

 

 梓先生は小柄な体に愛らしい顔、24歳と若く、学生から大人気の国語教師だ。半分なめられているが・・・。うちの高校が初勤務地のようで、さらに今年から一年生の担任も持ち始めている。柄谷のクラスの担任なこともあり、柄谷からの相談を受けたり受けなかったりしているらしい。梓先生は、「初年度から札幌で働けるなんてよかった~~」と安堵の声を漏らしていた。

 

「いいのかな梓ちゃん、こんな意味不明な部活の顧問になれたおかげで、休日もつぶされず、平日も嫌な先生から逃げてゆっくり仕事ができるんだからね?」

「いいのかな宮永さん、こんな意味不明な部活の顧問になったおかげで、部室を自由に使えるし、校内で堂々とゲームできているんだからね?」

 

 二人して喧嘩を売りあった後、部長は梓先生に近づき、肩を組んだ。

 

「いや~冗談だよ梓ちゃん、マジで助かってるんだって。それに全道大会進出も決めてきたから、実績も出したんだよ~。」

 

 なお、これはいつもの光景である。部長と梓先生は、プロレスまがいのことを毎度毎度行っているのだ。去年は最初こそひやひやしたが、今となっては恒例行事となって、ほほえましくもある。教師との距離が近すぎ感があるが・・・。

 

「え!それはおめでとう!これで私の安寧も約束されたものかな~。」

 

 梓先生はそういいながら手持ちのパソコンと書類を奥の自分の作業スペースに置き、座って作業を始めた。

 

「――――実際問題、全道大会進出が十分な実績になるんですか?」

「それは――――私のプレゼン次第かなあ。」

 

 カタカタとキーボードをたたきながら、そうこぼした。

 

「梓先生の説明わかりやすいですし、それなら安心ですね!」

「柄谷さん、実は上に説明するのと下に説明するのは、また違った難しさがあるんだよね・・・」

「梓ちゃ~ん、そんな不安になること言わないでよ~~~私がいるうちに安心させてよ~~~」

 

 部長は梓先生の後ろに立って、肩をぐわんぐわん揺らした。

 

「わかったわかった、がんばるから、がんばるからそれやめて~。」

 

 部長が攻撃(?)をやめると、梓先生はこめかみを抑えた。

 

「――――で、本当のところのゲストとやらは誰なんだ?」

「あ、それはだね―――」

 

 部長が返事をする際中、扉が開け放されているのにも関わらず、律義にノックをして入ってきたのは、

 

「――――なんかお取込み中でした?」

 

 この学校の生徒会長、かつ第二戦目の対戦相手、かつハムの恋敵である、蘇芳結衣先輩が入ってきたのだった。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「まさかこの私が蘇芳結衣から教えを乞うことになるとはな・・・。」

 

 部長の話によれば、蘇芳会長が先日の戦いの反省と、今後のトレーニングを手伝ってくれるとのこと。その辺で野良試合するよりは、レベルアップは確実だろう。

 

「でもいいんですか?会長業務もあるんじゃ―――」

「オンラインでいいならやれますよ。」

「そっか、その手がありましたね。」

「ちなみに今はこっち来て大丈夫なんですか?」

「今日は副会長に仕事を任せてきているので大丈夫です。今日はそもそも業務少なかったので、問題なしです。承認系の仕事だけは、後でやらなければなりませんがね・・・。」

 

 普段部長が座っている椅子に会長が座っていた。校則規定のスカート丈、そこからのびる黒パンスト、組まれた長い脚は照明が反射して妙になまめかしかった。俺はすかさずコーヒーを淹れ、会長に差し出した。会長は一口つけると、美味しいと言ってくれた。うれしいぜ。そしてそんな所作を見ていた柄谷は、ジト目を向けていた。俺が会長の足にドギマギしていたのがばれたのか、俺の執事ムーブがおかしかったのか、いったいどちらだろうか。

 

「蘇芳さん、すでに管理職みたいな貫禄あるよね・・・いや実質管理職なのかあ。」

「そうだよ梓ちゃん、平社員は平伏するほかないんだから。だから梓ちゃんも逆らっちゃだめだよ?」

「まず教員は会社員じゃないから――――ねえちょっと待って、おかしくない?私教員、あなたたちは生徒、むしろ生徒が平社員で教員が管理職ポジなんじゃないの???」

「先生、龍華の言うことを真面目に聞いちゃだめですよ。」

「梓ちゃん酷くない?生徒会長様が、悪魔のささやきしてるんだけど???」

「宮永さんがそうやってふざけてばかりいるからでしょ!大体蘇芳さんがいてもお構いなしに私をいじってくるけどさあ――――」

 

 梓先生の説教モードが始まってしまった。部長はその場に正座させられ、会長と梓先生が仁王立ちして部長を見下ろしていた。こうなるとしばらくかかるので、ハムと柄谷と目配せして、各自反省を始めることとした。俺は全員分のお茶を用意し、書記は柄谷に任せ、ハムが進行を務めることとなった。結局30分くらいたってから、ようやく正座から解放された部長がよろめきながら立ち上がり、我々がしていた反省に付け加える形でアドバイスを加える形となった。梓先生は仕事に戻ろうとしたとき、校内放送で呼び出され、げんなりした顔つきで職員室へと戻っていったのだった。可愛そうに、結局部長に説教しただけで終わってしまった・・・。

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